【REPORT】

細野晴臣 × ハマ・オカモト  世代を超えたベーシスト対談

細野晴臣とハマ・オカモトがラジオで再び邂逅。両者の対話から紐解かれる『HOCHONO HOUSE』の魅力と、ふたりの共通点

細野晴臣がメイン・ナビゲーターを務めるラジオ番組『Daisy Holiday!』(Inter-FM/4月7日、4月13日OA予定)と、FM COCOLOによる特番『HOCHONO RADIO』(4月7日OA予定)にて、細野とOKAMOTO’Sのベーシスト、ハマ・オカモトとの対談が実現。細野が3月にリリースした最新作『HOCHONO HOUSE』についてはもちろん、世代は大きく異なれど、共にベーシストというポジションとしての共通点や音楽家としてのキャリアについてなど、その話題は多岐に渡った。

すでに面識があり、ちょうど1年ほど前にもラジオで共演経験のある両者。細野のプライベート・スタジオからお届けする『Daisy Holiday!』では、その当時の話やお互いのベーシスト論などの話題に花が咲く。「やる人がいないから」「みんなギターをやりたがる」といった理由からベースを始めたという両者にも共通する「ベーシストあるある」から、お互いが最初に手にしたベースについても言及。細野は「全部借り物。最初は買う気もなかった」と語り、当時市場に進出してきた日本の2大メーカーのひとつ、Guyatoneのベースを使用していたことを明かす。その後も借り物を使用してきた細野が、初めて自身で購入したのははっぴいえんどのエンジニア、吉野金次を介して入手したというフェンダーのジャズ・ベース。色々買って試してみたが、結局は当時買ったこのフェンダーを現在も使用しているという。また、一時期愛用していたフェンダー・プレシジョン・ベースは悲しいことに盗難にあったが、もしそれがなければ「今でも使っていたと思う」と語るほど、強い思い入れがあったようだ。

一方、同じくフェンダーの入門セットから入ったというハマ・オカモトのエピソードも挟みつつ、最近改めて聴き返したところ「自分で(自分の演奏が)上手いなって思った(笑)」という高橋幸宏「La Rosa」が流れる。細野は自身のプレイを「ロック色がない」「根が地味」と称するが、ハマ・オカモトは「このミュート具合」「遊びにいっている感覚」と、細野のベースの特徴を挙げつつ、その特異性に改めて唸らされていた。

細野が最近聴いていたという、OKAMOTO’Sの最新アルバム『BOY』から「Higher」をかけると、ハマ・オカモトは寝っ転がって弾いたプリプロ・テイクを同曲に使用していることを打ち明ける。細野も「デモ作ってる時に弾いたやつが、一番よかったりするよね」と、これまたミュージシャンあるあるで盛り上がる。

ハマ・オカモトがMCを務めるFM COCOLO『HOCHONO RADIO』では、細野の新譜『HOCHONO HOUSE』について言及。同作の制作は、自身のスタジオにて全篇に渡ってひとりで作業していたという細野。最も集中していた1ヶ月ほどの期間は、自分の体のことも忘れるほど作業に没頭し、トイレに行くのも忘れていたという。

そもそも、1973年に発表された名盤『HOSONO HOUSE』のリメイク作となる本作。その制作の直接のきっかけは、ハマ・オカモトの友人でもあるnever young beachの安部勇磨の言葉。しかし、後々振り返ってみると、先にも話に上がった吉野金次も同様の言葉を投げかけていただけでなく、10年ほど前には自身でも発言していたことが発覚したと語る細野。理由は定かではないが、潜在意識として、やり残していることがあったのではないかと自己分析する。

当時の事務所からソロ作品を提案されたことを受け、制作を始めた『HOSONO HOUSE』。一軒家に機材を持ち込んでレコーディングするという奇抜なアイディアも、エンジニアの吉野の発案だったという。楽器の件もそうだが、人の縁で歯車が動いていく辺りがなんとも細野らしいエピソードだと言えるだろう。

また、当時のデモ・テープを聴くと、実際に『HOSONO HOUSE』に収録された完成版とはアレンジが大きく異なるという。それは、ひとりで作ったデモをバンドでアレンジし直したことに由来している。今作は先述の通りひとりきりで制作に及んだということで、そのデモを改めて参照し、特に「住所不定無職低収入」などは当時のデモ音源に限りなく近い仕上がりになったそうだ。

1975年のライブ音源を使用している「パーティー」について、ハマ・オカモトは「変わってないっていう言い方は失礼かもしれないですけど、歌声は当時から本当にそのままですよね」と指摘。細野も間髪入れずに「僕もそう思った」「なんでこんな変わらないんだろう」と返す。また、SNSでは海外のファンから、「1曲だけ古い曲が入っている」というリアクションが届いたと続け、ブックレットなどもないストリーミングやDLが主流の今の時代ならではのエピソードを展開する。

さらに、ハマ・オカモトの鋭い考察はこの後も続く。「『HOSONO HOUSE』というオリジナル作品があって、それを自分ひとりでリメイクするということで、『これで良いんだろうか?』というような迷いがあったんじゃないのか」との問いに、これまた「その通り」と、自身の胸中を当てられるのが心地良さげでもある細野。「軽い気持ちでやろうと思ったのが後悔の始まり(笑)」との言葉で笑いを誘いつつ、当時作った歌詞、サウンドが今の自分に合わないことに気づき、「こんなに難しいのか、と思った」「途中で諦めた」などの苦難の道程が明かされる。

しかし、そんな茨の道を突き進むモチベーションとなっていたのも、安部勇磨の存在なのだという。「安部くんを驚かせてやりたいと思って」とピュアな動機を語る細野に対し、「あいつは幸せ者ですね(笑)」とハマ・オカモト。続いて、「自由気ままに作った」と細野が語る『omni Sight Seeing』(1989年作)などを引き合いに出しながらも、「ずっとレールが続いている感じ」「そこに今の新しい感覚が繋ぎ合わさっている」と『HOCHONO HOUSE』を評し、「すごく好きなアルバムです」とリスペクトの意をストレートに伝えた。

収録の合間に「僕が聞きたいことをただただお聞きしてしまいました(笑)」と照れるハマ・オカモトの表情には、尊敬するミュージシャンとの対話に対する最大級の喜びが表れていたように思う。

また、収録外でも常に機材や音楽の話で盛り上がるふたりの姿を第3者の目線から見ていると、キャリアの差を忘れさせるような、ピュアな音楽家としての素顔が垣間見えた気も。優れた音楽や作品は時代を経ても受け継がれていく。そんな当たり前のことを、強く再認識させてくれる光景であった。

Text by Takazumi Hosaka


【リリース情報】

細野晴臣 『HOCHONO HOUSE』
Release Date:2019.03.06 (Wed.)
[CD] VICL-65086 ¥3,000 + Tax
[LP] VIJL-60196 ¥4,000 + Tax
Tracklist:
01.相合傘~Broken Radio Version~
02.薔薇と野獣
03.恋は桃色
04.住所不定無職低収入
05.福は内 鬼は外
06.パーティー
07.冬越え
08.終りの季節
09.CHOO CHOO ガタゴト・アメリカ編
10.僕は一寸・夏編
11.ろっかばいまいべいびい

※共に全11曲収録
※作曲/編曲/演奏/Recording & Mixing by 細野晴臣

細野晴臣 オフィシャル・サイト

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