アーティスト・コムアイが第一子妊娠を発表。合わせて妊娠から出産に至るまでを追いかけるアート・ドキュメンタリー『La Vie Cinématique映画的人生』の製作、そしてクラウドファンディングの開始もアナウンスされた。
出産予定は今夏。母子ともに健康な状態を確認した上で今年5月から日本を離れ、海外での出産を計画しているという。結婚に関しては、子の父となる映像作家・文化人類学者の太田光海(あきみ)と籍は入れない予定で、恋人関係のまま認知をする形になる。
太田氏は、これまでに自身初となる映画『カナルタ 螺旋状の夢』(2021)で海外の映画祭で数多くの賞を受賞したのち、帰国後にシアター・イメージフォーラムから全国各地の映画館へと約1年にわたり上映を続け、令和4年度文化庁映画賞では「文化記録映画優秀賞」を受賞。製作中のアート・ドキュメンタリー『La VieCinématique 映画的人生』の監督を務める。
クラウドファンディングではコムアイを主題とする太田光海監督の最新作『La Vie Cinématique 映画的人生』の製作支援を募る。コムアイの妊娠期間中に彼女のアート制作や民俗芸能などを探究する旅に間近で並走しながら、出産までの過程を記録する本作は、“一つの命が誕生する”という人間の営みの本質に立ち返りつつ、この世界の希望と課題、そしてかけがえのない国内外の人間の営みを映し出すという。
ドキュメンタリーをベースにしながらも創作的要素を掛け合わせることで、胎児が曖昧な状態で存在する“こちら側”と“あちら側”の間の世界を表現。キーコンセプトは、“コムアイの胎児の視点から、この世界はどう映るのだろうか?”。2024年の完成後には海外の映画祭での上映と国内外での劇場公開を目指す。
クラウドファンディングは本日3月10日(金)から5月9日(火)まで実施されている。
コムアイは2012年に水曜日のカンパネラの初代ボーカルとしてデビューしたのち、2021年の脱退を経て、アーティストとして声と身体を主に用いてジャンルを横断した表現活動を国内外で展開してきた。常に自身の身体から表現を生み出してきた彼女は、映画公開に先駆ける形で、4月9日(日)まで開催中の『やんばるアートフェスティバル2022-2023』で、今回の妊娠からも影響を受けた作品『切れても切れても、結ぶことを』(2023)を発表。本作品では、沖縄北部の大宜味村・喜如嘉(きじょか)の重要無形文化財である芭蕉布、その制作工程から着想を得て自身の身体を用いた作品シリーズを展開している。
また、会場で流れる楽曲は、コムアイが過去のライブで歌唱した即興音楽、胎児の心音、東南アジアの笙であるケーンを夜の会場で演奏した音源で構成されてる。糸を息に置き換え、息継ぎをし、結べない息を結ぼうと試みたという。会場で風に吹かれている写真は、コムアイが妊娠していることで“体内に結び目を持ったような”感覚を得て、胎児の父親の祖母と初めて会った際に様々な種類の握手を行なっている様子を収めたもの。
【コムアイ コメント】
妊娠してから、身体全体が工事現場になったような感じです。
いつか、と思っていたけど、夏に30歳になってみたからといって自分が準備万端な大人になるわけでもなく、
恋人と話すうちに、むしろいつまでも完璧でない、子供のような自分たちでありながら、
子という存在と影響しあい変化していくことが面白いのかもしれないと、心境に変化がありました。
今までもわりと自由にしてきたように、
自分たちと子に合った半定住を、その都度、探求しながら生きていきたいと思っています。
それはぼんやりとした理想として心の中にあったけれど一人で踏み出せるほどではなく、
どちらが誘うでもなく冒険に出かけられるような恋人に巡り逢えたことに、
心から感謝しています。
現在や未来の選択は、私が今まで出逢ってきた人たちから学ばせてもらったおかげであり、
特に人と信頼を築くことは過去の恋人や友人に多くのことを教えてもらいました。
彼の選択もまた同じように、私の知らないたくさんの方々から学んだ結果であり、その方々への感謝の思いが尽きません。
人生のゴールでもなんでもなく、ただの通過点にいる修行者のご報告ではありますが、
一つの節目を迎えている実感も確かで、人生は無駄なことがなく豊かなものだと噛み締めております。
自分らしく生きようと勇気をもてるのは、ひとえに今まで自分を受け入れて応援してくださっているみなさまのおかげです。
いつもありがとうございます。
気持ち新たに、今後も精進して参ります!
みなさまが健やかに春を過ごされますように。
— コムアイ