Jinmenusagiがニューアルバム『ALXVE』(読み:アライブ)を本日11月27日(木)にリリースした。
インディペンデントチーム〈業放つ〉の設立前、2014年に発表されフィジカルは即完売・入手困難となった4thアルバム『LXVE -業放草-』(読み:エルエックスブイイー・ゴウホウハーブ)。時代背景を投影した都市での生きづらさ、若者特有の闇、孤独、逃避。死からの逃避ではなく生きることそのものを描いた自伝作品としてファンの間では今なお語り継がれる作品になり、当時23歳だったJinmenusagiの存在を広く知らしめた作品である。
同作から11年、本作『ALXVE』は、その物語の正式な続編となる作品だという。かつて闇(病み)を描いた青年が、家族とは、幸せとは、この半生で何を失い、何を得たのか──それらを赤裸々なまでに吐露し成熟した大人として生と「今」を語る。このアルバムは、現代ストラグルに向き合い続けた先に見出す「生きる理由」を音楽に昇華した、Jinmenusagiというひとりの表現者の到達点だという。
客演には1an(Sour inc.)、ACE COOL、ANARCHY、C6ix、D3adStock、仙人掌、鎮座DOPENESS、般若が参加。プロデューサーには同じくD3adStock、DJ KRUSH、DubbyMaple、hokuto、Sweet Williamに加え、自身のビートメイカー名義・LEEYVNGがクレジットされている。マスタリングはKendrick LamarやChildish Gambinoの作品を手がけ、グラミー受賞経験のあるベテランエンジニア、Mike Bozziが担当している。

【リリース情報】

Jinmenusagi 『ALXVE』
Release Date:2025.11.27 (Thu.)
Label:インディペンデント業放つ
Tracklist:
01. NEET
Produced by Sweet William
Lyrics by Jinmenusagi
02. Justin (feat. DJ 1an)
Produced by LEEYVNG
Lyrics by Jinmenusagi
Cuts by 1an (Sour inc.)
03. BASHAUMA (feat. 鎮座DOPENESS)
Produced by LEEYVNG
Lyrics by Jinmenusagi, 鎮座DOPENESS
04. オービス (feat. ANARCHY)
Produced by LEEYVNG
Lyrics by Jinmenusagi, ANARCHY
05. Aruku
Produced by LEEYVNG
Lyrics by Jinmenusagi
06. BAKI (feat. 仙人掌)
Produced by LEEYVNG
Lyrics by Jinmenusagi, 仙人掌
07. Shiawase (feat. C6ix)
Produced by LEEYVNG
Lyrics by Jinmenusagi, C6ix
08. Ni De Ai (feat. D3adStock)
Produced by D3adStock, LEEYVNG
Lyrics by Jinmenusagi, D3adStock
09. うそさ (Prod. by hokuto)
Produced by hokuto, LEEYVNG
Lyrics by Jinmenusagi
10. 今じゃない (feat. 般若)
Produced by LEEYVNG
Lyrics by Jinmenusagi, 般若
11. 冨山と山本 (feat. ACE COOL)
Produced by LEEYVNG
Lyrics by Jinmenusagi, ACE COOL
12. 吉光と花郎 (feat. DJ 1an)
Produced by DubbyMaple
Lyrics by Jinmenusagi
Cuts by 1an (Sour inc.)
13. 新しい友達いらない
Produced by DubbyMaple
Lyrics by Jinmenusagi
Mixed by Joe Iron
14. KO KO DA (Prod. by DJ KRUSH)
Produced by DJ KRUSH
Lyrics by Jinmenusagi
Cover Art by KINONINIKO
Track 01〜12, 14 Mixed by Ozzy from EVOEL STUDIO
Track 13 Mixed by JOE IRON
Mastered by Mike Bozzi (Bernie Grundman Mastering)
『ALXVE』は、前作『LXVE』の世界観を継承しつつも、11年の時を経て大人になったJinmenusagiが、喪失と再生を繰り返す人生そのものを題材に紡いだストーリーテリング・アルバムである。
アルバムは全14曲で構成され、その一つひとつが異なる人生の断片を描くオムニバスのように紡がれ、聴き進めるほどに作者の生き様を体感できる構成で生々しいパッケージングに仕上がった。
更に、LEEYVNGとしてのセルフプロデュース力も格段に進化した事もリスナーには伝わるだろう。ブーンバップからトラップ、ジャーク・ドリル、ドラムンベースまでジャンルを横断する様はLEEYVNGの意欲と引き出しの多さを物語る。ヒップホップというジャンルの土台を尊重した上で現代的に自身のルーツを落とし込むアイデンティティ溢れるサウンドデザインは繊細かつ豪快。自家製のビートは本人のオリジナリティを惜しみ無く抽出し表現する為の土台、パレットの様な役割を担い、若手からレジェンドまでを包括する豪華客演とプロデューサー達を引き連れ、Jinmenusagiのメロディアスなフロウと硬質な低音ボイスは楽曲毎にカラーを変え、縦横無尽にALXVEというキャンパスに人生を殴り描く。
アルバムの幕開けは『NEET』。「俺は東京都のニート」と言い切るジメサギは社会の外に立ちながらも、その中で息づく生き方の選択を宣言する。Sweet Williamの屋形船で深夜を航海するかの如く怪しく響く妖美なビートが、本作のスケール感を広げ日常の中の哲学を静かに照らす。次に鳴るのはLEEYVNGのハードなキックが刻む中、自らの価値を自分で決めるという”正”の宣言。『Justin』とは象徴だ。誰かに評価されずとも、己の才能でステージを光らせるラッパーの名に「チートなしで実績解除」とこれまでの経歴をスキルで提示する。
3曲目は『BASHAUMA (feat. 鎮座DOPENESS)』。NEETのスタンスでありながら成人男性としての避けられない宿命を詠うこの楽曲は理性と本能、知と野生の境界線を飛び越え責任を果たす漢たちの一曲に仕上げ、鎮座DOPENESSとの唯一無二の化学反応を起こす。そして、馬車馬はストリートのレジェンドANARCHYとの『オービス』を通過する。ジュエリーよりも輝く“ORBIS(眼)”を持つ者だけが、真実を見抜けるというテーマを掲げた楽曲は両者のスキルとリアルでヒップホップの格式を再確認させる。
シングルカットにて本作の皮切りとなった『Aruku』。「クラブだけでしか会わないやつは、一生かけても合わない。」このフレーズが象徴するように、都市の孤独と歩き続ける意志を描いた内省ナンバーだが、LIVEではファンも一緒に合唱する共感を生んだホットチューンになった。続いてアルバムへの期待が高まる中、作品の輪郭を形成したシングルカットの『BAKI (feat. 仙人掌)』が6曲目を飾る。03-Performanceにて映像が公開されシーンのトレンドさえもを切り裂いた肉体的な比喩でラッパーを語る哲学的ハードコア。「吸うことより吐くものこそラッパーはこだわる」と、日本語ラップの歴史に強烈な一節を刻み込んだ仙人掌との邂逅が、東京ヒップホップの現在地を象徴する。
本作の折り返しには『Shiawase (feat. C6ix)』が幸福とは何かを問う。「しあわせ」を祈り合うC6ixとのデュエットがジメサギなりの幸福論を軽やかにフロウに乗せる。
幸せを解き、愛の意味を知ったジメサギから手向けられる『Ni De Ai (feat. D3adStock)』は最愛の妻に向けて綴られた言葉で束ねた花束。儚くも普遍的な生活の中で紡がれる愛を描く。そして「子どもの頃楽しかったなんて、嘘さ。」とジメサギらしいシニカルな歌詞を遺す『うそさ (Prod. by hokuto)』。過去と大人になった自分を対話させるリアルなリリックはhokutoの叙情的ビートと共に懐かしさと痛みを包み込む。平等に時間を経て成長した現代を生きるリスナー達の共感を誘う一曲になり得るだろう。
上がりきった感情のボルテージに叩き込まれる10曲目は『今じゃない (feat. 般若)』。「今じゃない」と繰り返される拒絶が成熟した人間の自制と現代ストレスをポジションありきで解像度高く映し出す。ドラマ《警視庁麻薬取締課 MOGURA》にて主演 / 般若との共演を果たし、楽曲は世代と精神のバトンリレーとして強烈な共鳴を放つ。アルバム終盤に差し掛かりギアを上げたジメサギが次に放つのは盟友ACE COOLとのストイックな一手『冨山と山本 (feat. ACE COOL)』。ラップゲームにおいて10年前からスタンスを変えない両者の信念と執念が交差する。シーンにおける風神雷神の如くスキルでACE COOLとの魂のバース交換を果たし、生きる反骨と呼べる一曲が誕生した。
続いては、リスナーならビートが鳴った瞬間にDubbyMapleが現れたと分かる音像で迎えるのは『吉光と花郎 (Prod. by DubbyMaple)』。鉄拳シリーズのキャラ名を冠した、まるでコンボを繋ぐかの如くフリースタイルで自由にラップを蹴りまくり実戦的にバースの連鎖を刻む本曲。隙を見せないフロウと緊迫感のある間合いで獣の眼をしたジメサギが小節を埋める。POPYOURS2025のステージで言い放った「新しい友達いらないわ。」というセリフを曲の終盤にサンプリングさせ、13曲目には『新しい友達いらない (Prod. by DubbyMaple)』を収録。SNS時代の虚勢と不要な“つながり”を拒否し、過去の軌跡と孤独を誇りに変えた。DubbyMapleはジメサギが音楽を始めて初めて出来た友達だ。本作の自叙伝において欠かせないピースとなっている。過去も今もDubbyMapleのビート上で、Jinmenusagiのリリシズムは常に極限まで研ぎ澄まされる。
そして、本作最後の楽曲は日本のみならず海外でも高いプロップスを誇る世界的なDJ/プロデューサー DJ KRUSHからの挑戦状だ。『KO KO DA (Prod. by DJ KRUSH)』と題されたラストソングはジメサギ本人も大尊敬している先輩から課せられたチャレンジとなった。
「俺はここだ。」自分の存在そのものを音楽として刻むアルバムの終盤は正に、ラッパー道を追求する1人のヘッズの姿でありラッパーを生業とする成人男性の人生がそこには在った。ALXVEの「生」を告げるラストメッセージは、血生臭くその道をゆく者の背中で語り“ここで生きている”という現実を証明した。
__客演においても日本が誇るラップ・レジェンドを多数召喚し、百戦錬磨のベスト・オブ・ベストのラッパーたちにも負けず劣らずのスキルでスピットするJinmenusagiは、ここ10年で最も気合の入ったラップをしている。
更にはKendrick LamarやChildish Gambinoの音を手がけ、グラミー受賞経験のあるベテラン・エンジニア Mike Bozziがマスタリングを担当する本作は、文字通り最高のクオリティをもってして今後20年は日本のヒップホップの基準となるアルバムとなった。
その力作を作り終えたまさに「今」がJinmenusagiの最高到達点であり、次なるステージへ向かう為の通過点であった。










