INTERVIEW

THUNDER

THUNDERが語る、ジャマイカ制作秘話、そしてコロナ禍で高まるライブへの渇望。「やっぱりライブやな! これをやる人生だな」

兵庫県は尼崎に拠点を置くレゲエ・アーティスト、THUNDER(トンダー)が「JAtoJA」、「HIGH LIFE」と2作のシングルを9月にリリースした。

コンスタントな作品リリースに加え、地元尼崎では2005年から人気イベント『尼爆』、2016年からはレゲエ・フェス『尼崎レゲエ祭』を主催するなど、常にシーンの最前線で存在感を放ってきたTHUNDER。昨年リリースした最新アルバム『GRAY』、そして今年リリースした「Justice」に続く新作は、ジャマイカを拠点にDJ&セレクターとして世界中で活躍するYAADCOREを客演に迎えた「JAtoJA」、そして力強い決意と仲間への思いを込めた「HIGH LIFE」の2曲。

今回は共にジャマイカにて制作された2曲のシングルの背景を訊くべく、THUNDERへリモート・インタビューを敢行。新作についてだけでなく、ジャマイカ滞在話からコロナ禍でのフラストレーション、果ては同郷の後輩にあたるという変態紳士クラブのGeGとの間柄まで、話題は多岐に渡った。(編集部)

Interview & Text by Naoya Koike


――ジャマイカに滞在されていたそうですが、あちらの様子はいかがでしたか?

THUDNER:とにかく行って、バイブスをもらいに行った感じです。2月はそうでもなかったですが、3月くらいになると「チャイニーズ!」「コロナ!」と軽い人種差別がありました。現地の3割くらいの人がそんな対応ですから。ジャマイカに中国人が持ってきたと思われていて、アジア人ということで言われたんでしょうね。「日本人だから大丈夫だ」と返してましたが。イベントも全部中止で3月はほとんど行けませんでした。ジャマイカは手厚い保険がないので病院に行く習慣がないんですよ。風邪でも行かないので、かかったらヤバいという雰囲気でした。

――ジャマイカは時間がスロウに流れるイメージがありましたが、そういう一面もあるんですね。

THUDNER:音楽的にもそうですよ。ジャマイカは治安が悪いし、お金がないからか、激しかったり悲しい歌が好きな人が多いです。2008年に一番流行ったVYBZ KARTEL「KILL DEM ALL & DONE」は“お前ら全員殺す”みたいな攻撃的な歌でしたし(笑)。僕は日本人なので無理にそういう曲を歌わなくてもいいかなと。日本は落ち着いてる国なので人は優しいですし、ランキングにも優しい歌が多く入っている印象です。

THUDNER:もちろん現地ではレゲエ以外にもR&Bとかも聴かれています。あとはスカやヒップホップ、アフロビート。最近だとトラップも。特にR&Bは皆好きで早い時間から合唱したりしていますね。ジャマイカにはアメリカの音楽好きな人が多いですよ。

――滞在の目的は新曲制作で?

THUDNER:予定はありませんでしたが、YAADCOREとコンビネーションした「JA to JA」を作ることができました。彼はもともと日本に興味がある人なんですよ。ジャマイカのスタジオで紹介してもらった時に、「オケ要らない?」と訊かれて、トラックを聴かせてもらって仲良くなったんです。

THUNDER & YAADCORE

――「JAtoJA」のビートもYAADCOREさんの手によるものですか?

THUDNER:ビートは彼の友人が作ったものです。すでに現地の友人・Singer Jahに助けてもらいながら作っていたリリックがあって、それがヴァースの最初になっていて。それを歌ってみたらYAADCOREが「お、いい感じやん。明後日くらいに録音しよう」と。話が早かったですね(笑)。それで約束の日に歌を録っていたら、彼がノリノリになりだして「俺も歌乗せるわ」とリリックを書き始めたんです。それでコンビネーションができ上がりました。

THUDNER:よくスタジオに彼の先輩アーティストや友達のラスタマンが来るのですが、彼らは「リリックが物語調になってて面白い」と言ってくれました。内容は「僕はジャマイカに来たら、とりあえずガンジャを買いに行くよ」「こうやって吸うよ」という説明が1コーラス目。次からはYAADCOREが自分のストーリーを入れて、3コーラス目でまた僕が日本で起きた出来事を歌う。最後はジャマイカ人がクスッと笑う感じのオチになっています。

――連続のリリースとなる「HIGH LIFE」についても教えてください。

THUDNER:この曲はジャマイカで制作を行なった楽曲です。本当は早く出したかったのですが、良いサビが思いついているだけに完璧にしたくて。日本に帰ってからオケのキーが高いか低いか、力加減はどうかなど、かなりのパターンを試しました。新しいダンスホールに挑戦する気持ちで、3カ月から4カ月ほど研究に近い作業を重ねました。

――野望を感じさせるリリックに仕上がっていますが、こちらについては?

THUDNER:「全てを手に入れていく」と歌ってます。レゲエではバズることを「ボス」と言いますが、この曲では「バズりたい=ボスりたい」というのが全てかもしれません。時間がかかった部分もありましたが、最終的には言いたいことを言えたと思います。

――ジャマイカ滞在を経て作った曲は他にもあります?

THUDNER:あと2、3曲くらいあったんですが、全部ボツにしました。その代わり、8月は調子が良くて5曲くらい作ってます。今後は10月にも1曲出す予定ですし、ひと月に1曲くらいは出していけたらと。あと数曲「これやな」という曲ができればアルバムも作りたいですね。

――現在のライブのない状況はいかがですか? 配信ライブについても感じることがあれば。

THUDNER:配信ライブは先日の『渋谷レゲエ祭』が3回目でした。ApolloとYouTubeでやった時は盛り上がって楽しかったですが、やっぱりライブしたいですね。僕らは現場主義でやってきたので、それがないのは音楽家として辛い。ハコ的にはまだイベントが組みづらい状況ですが、本当は今すぐにでもやりたいです。この前、大阪・JOULEで『ワヤフェス』という大きな企画があって「やっぱりライブやな! これをやる人生だな」と感じましたね。

THUDNER:そもそもレゲエを好きになったのも、アンダーグラウンドで見たライブの衝撃があったからなんです。僕が最初に行ったクラブは17、18年前の大阪・I to I。まだ好奇心で行っていた中学生にとって、音のデカさがすごかったですね。SHINGO★西成が歌っていた「天王寺ZOO feat. 勝」がめっちゃカッコよかった。そこからクラブに行くようになって。


――最初はヒップホップから入ったんですね。

THUDNER:そうなんです。でも合間にかかるレゲエの怪しい感じに喰らったんですよ。DJの横で人が話しながら盛り上げて、内容がコンシャスなのも衝撃でした。極めつけはすげえ悪そうな人が集まっているのに「これ何やろ?」という曲でも大合唱が起きること。T.O.K.「I Believe」でライターが付いて、皆が歌っている光景は特に印象的でした。その曲は“愛を信じてる”という超良い歌。それで「こんなにオシャレな文化なのか!」と。


THUDNER:あとは生い立ち的にレゲエを好きになりやすかったのかもしれません。16歳の時にはYELLOW CHOICEの弟子みたいになって、その時に「本物とは何ぞや」ということを教えてもらったんです。「レゲエやるんやったら、ジャマイカ行け」と。それに実際に現地へ行くとレゲエが好きになるんですよ(笑)。あれ以上の音楽はないですね。そのインパクトを尼崎でも残せればと思ってます。

――地元といえば、変態紳士クラブのGeGさんとも旧知の仲ということですが、そちらについても教えてください。

THUDNER:もともとゴエモンと名乗っていたので、僕らはそう呼んでます。中学生時代、隣の学校の同級生の弟で。彼はその時から僕のことを知っていたみたいです。僕が20歳になった時にゴエモンが「レゲエバンドをやっているんですよ」と話しかけてきて、それをきっかけにANADDA REBELというバンドを5年くらいやっていました。

――この新譜のリリース以降で取り組みたいことなどがあれば教えて下さい。

THUDNER:実は最近フリースタイルに取り組んでいて、それでできた曲が集まっています。今までよりも柔らかい曲作りをしようと。何回もやり直しをしたり、歌詞に悩みすぎると、録音にすごい時間がかかるんですよ。なので歌詞を書かずにブースに入って1行ずつ録ることにチャレンジしています。その方がナチュラルに言葉が出てくるんですよ。

YouTubeでDEMARCOというDEEJAYの曲作り動画を見たら、その方法が紹介されていたんです。それを取り入れてみたら案外楽しくて。もちろん後から「ダサいな」とも思ったりもしますが(笑)、それも含め“そのまま”を出していこうと。THUNDERでは作りこむ曲をやって、別名義でラフな曲を出していこうかな、とも考えてます。

――なるほど。これから歌っていきたいトピックなどはあります?

THUDNER:日常のことですね。好きなNetflixの映画についてとか、の曲を作ったりしています。先日有馬の滝に友達と行った時の一日を書いた歌とか、「姉夫婦」という曲を書いたり遊びながら作っています(笑)。

あと、最近は沖縄のラッパー・CHOUJIを聴いてインスパイアされましたね。お会いしたことはないのですが、友人に「スタイルが少しTHUNDERに似てる」と紹介されて知ったのですが、リリックが柔らかいなと。ナチュラルかつリアル、背景も感じられて良いラッパーだなと思います。トリニダード・トバゴのPrince Swannyの周辺でも新しいダンスホールのムーブメントが起きていて、そこにも注目しています。地元で主催している企画の『尼爆』も続けていきたいですね。


【リリース情報】

THUNDER 『JAtoJA』
Release Date:2020.09.01 (Wed.)
Label:J.A RECORDS
Tracklist:
1. JAtoJA

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THUNDER 『HIGH LIFE』
Release Date:2020.09.16 (Wed.)
Label:J.A RECORDS
Tracklist:
1. HIGH LIFE
2. HIGH LIFE RIDDIM / SAZANAMI STUDIO

THUNDER オフィシャル・サイト

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