INTERVIEW

Superorganism

「脳にビビッとくる」曲作りから紐解く、個性溢れる8人=“ポップ”の生態! 絶妙なバランス感覚で進む、彼らの宇宙船を追いかけて――

「Something For Your M.I.N.D.」は初めてリリースされた楽曲にもかかわらず、目を見張るほどのスピードで昨年の音楽シーンを席捲し、彼らはそこからたった2曲でワールド・ツアーを行うまでの存在に登り詰めた。そんな異例の新人バンド、Superorganism(スーパーオーガニズム)が2月5日にShibuya WWWにて初の来日公演を果たした。

ボーカルを務める日本人シンガー・Oronoの凱旋ともなった今回のライブは、映像や振り付けなどによってエンターテイメント性の高い演出が施されており、コンサートよりもショーに近いものだったと言えるかもしれない。オーディエンスの表情に浮かんでいたのも笑みばかり。そして、その楽しいステージの立役者は、やはり何と言ってもポップなサウンドの数々に違いない。

というわけで、今回のインタビューではその楽曲制作の中心人物であるふたり――HarryとEmilyに話を訊いた。ソングライターのふたりがOronoに惹かれる理由から、Superorganismとしてのポップ観、ソーシャル・ネットワーク時代の泳ぎ方まで、彼らが理想とするものの核心に触れられたように思う。

世界中からメンバーが集まっていたり、バーチャルな世界の自由さを喜びつつも、それを皮肉るような表現をしていたりなど、多かれ少なかれ、彼らの活動には社会性が窺える。また、多層的なボーカルは現代メディアの状況を象徴しているかのようでもある。こうした特性を頭の片隅に留め、以下のインタビュー本文を読んで頂ければ、きっとよりいっそうの理解が得られるはずだ。そうして、3月2日(金)にリリースされる1stアルバム『Superorganism』を心待ちにして頂けたら幸いだ。

Interview & Text By hikrrr
Interpreter by Yuriko Banno
Photo by Ray Otabe

Harry (Gt.)

Emily (Key.)


――まず、昨夜行われた日本でのライブの感想を教えてください。

Harry & Emily:アメイジング。(日本語で)サイコー!(笑)

Emily:日本はこのバンドがライブをするのにぴったりの場所だと思うんだよね。Superorganismにとってはまさに完璧だよ。

Harry:Oronoと出会ったのもこの日本だしさ。メンバーそれぞれで出身地が違うから、まぁいわゆる“ホーム”ってものがけっこう曖昧なんだけど、そういう意味では日本に来ると「ホームに帰ってきた」という感じがすごくするんだ。

――そうなんですね。では次に、その日本で出会ったOronoさんについて訊かせてください。ソングライターのおふたりから見た、シンガー/リリシストとしての彼女の魅力とは何でしょうか?

Emily:本当に彼女自身がユニークな人だから、その才能がまるごと歌詞に現れているのが分かるし、やっぱりあの世界観っていうのは彼女にしか出せないものなんだと思う。それは彼女の生い立ち――つまり、日本に生まれたけどアメリカに行って、そこにあるカルチャーにどっぷり浸かって……という経験――があって育まれたものだと思うんだけど、そういうものをすごく自然に出せるところに惹かれたね。そもそも自然体ということがすごいし、そういうフロントマンだってことをものすごく感じる。だから、彼女が書く歌詞にはいつも驚かされるよ。リリックを付けるときには、ある程度は「こんなことを書こうと思う」って感じで色々ディスカッションしたりするんだ。で、彼女がそれを持ち帰って実際に詞をしたためるわけなんだけど、「うわ、自分には到底こんなもの書けないな」と思うものを独自の視点で書いてくるんだ。本当に才能に溢れてる人だと思うよ。

Orono (Vo.)

――そんなOronoさんのユニークな人柄を表すようなエピソードは何かありますか?

Harry:予測不能なところがあるんだ、普段からね(笑)。何か特定のエピソードと言うのは今は思いつかないんだけど、僕がすごく覚えているのは、最初に「Something For Your M.I.N.D.」を作ったときのことだね。デモ・トラックを送ったら彼女はすぐにボーカルを入れて返してきてくれて。それでパって聴いたときの冒頭の1行が“I know you think I’m a psycho-pass(私のことサイコパスだと思ってるでしょ?)”だよ?(笑)
予想してた内容を軽く超えてくる辺りが、「やっぱコイツおもしろいな」と思ったし、あと彼女はすごく矛盾だらけなんだよね。背が小さくて可愛らしく見えつつ、けっこう毒も吐くし、それでいて30代の人くらいの賢さや落ち着きもあってさ。何も言わず静かに、皆んなの話を聞いて観察してたりとかね。そうかと思ったらまた可愛いところもあって。大人びて賢いところと、若さの両方が共存している気がするよ。

――それが、Superorganismが“ポップの変異体”と呼ばれる理由のひとつになっているかもしれませんね。ただ、あなたたちはポップな存在であるということにそもそも“こだわり”はあるんでしょうか?

Emily:(ポップというのは)なんかこう、自分たちがピンとくるものなんだ、すごく自然にね。キャッチーな曲を聴くとすぐに脳が反応するでしょ? 自分たちがいち音楽ファンとして曲を聴くとき、そこが1番の鍵になるし、やっぱりそういうところに惹かれる。そして「この曲を書いた人はどういうアーティストなんだろう」っていう風にもっともっと知りたくなっていくし、「その人と繋がりたい」という気持ちにもなる。ポップ・ミュージックによるこの感覚を自分たちもリスナーと共有したいんだ。だから、このバンド活動を通して“脳にビビッとくる”、そんな音楽を作りたいと思ってるよ。

――「ポップは自分たちにとって“鍵”である」ということですが、世間一般で言うポップと、Superorganismとして定義するポップの間に何か違いはあったりするのでしょうか。

Emily:いや、そこに全然違いはないと思うし、例えばSpotifyのプレイリスト「New Music Friday」とかを聴いて思うけど、それこそすべてを包括するのが“ポップ・ミュージック”なんだよね。僕はオーストラリアで育った時から、そういう風にずっと音楽を聴いてきた。ポップ・ミュージックのチャンネルにラジオを合わせると――まぁこれは90年代なんだけど――Oasisがかかったかと思うと、Lou Begaの「Mambo No.5」がかかったり、Backstreet Boysがかかったり、次にはThe Avalanchesがかかったりというように、全てがポップという傘の下にあって、全てがポップなんだ。たぶん、みんな考え過ぎなんだと思うんだよね、「ポップということの概念は何か」って。だって、メインストリームのラジオを聴いたら全部同じじゃない? 少なくとも自分としてはそう思ったし、実際にそうだったんだ。

Harry:僕は、音楽の表現方法が違うと思ってるかな。ジャンル分けってやっぱり人が後付けで作ったものだと思うんだ。だから、その中にギャップがあって当然だとも思う。例えば音だけを純粋にクロース・アップしてみたら、ギターがメインで鳴っている曲もあるかもしれないし、曲によってはシンセがたくさん鳴っているものもあるかもしれない。でも、そういう風に(他とSuperorganismの)表現方法が違っても、楽曲そのものの構成はポップの伝統に沿ったものであって。実は違うところよりも共通点の方が多いと思うんだよね。

――なるほど。では、社会におけるポップの効果や役割をひとことで言うと何だと思いますか?

Emily:人と人を結び付けるものかな。別に音楽に限らずポップ・カルチャー全てに言えると思うんだけど、人と人が共有できる言語であったり体験であったりすると思うんだよね。で、それを通して、全然お互いのことを知らない人たちが繋がることができる。まぁ例えばニュースもそうだと思うんだけど、同じ体験を分かち合えるものっていうのは、「誰かと結び付きたい」「誰かと通じ合いたい」という人間として当たり前の気持ちに応えるんじゃないかな。だから、そこに発信する人と受け手がいて、ということ自体が“ポップ”なんだと思う。

Harry:そうだね、“グローバル・コミュニケーション”なんだと思うよ。

――そうするとやはり、このバンドの音楽もそうした役割を果たせたら理想的だということですか?

Emily:まさにそうだね。例えば、実際、自分たちのライブっていろんな人たちが来るんだよ。年齢も本当に様々だし、すっごく若い14歳くらいの子が「行ってもいい?」って言ってくることもあれば、Oronoのおじいさんが来たりだとか。あとはけっこう年上のロッカーも来るし、若いポップ・ファンが来たり、あるいは収集好きのいわゆるオタクみたいな人たちとか、とにかく幅広いんだ。一方で、アーティストもお客さんも全員同じような格好してるコンサートとかもたまにあるよね。そういうのに行くと、「え、みんな同じ格好してる。大丈夫か自分?」と逆に思っちゃうんだ。というのは、ターゲットにされているところにどっぷりハマっちゃてる、手中に収まっちゃってる感じがすごくてさ。自分たちSuperorganismはそうじゃなくて、本当にみんなが会場に来れる音楽をやりたいと思っているし、大衆に向けられるポピュラー・カルチャーを象徴していると思うよ。

Harry:役割とかそういうことについては楽観的に考えているけどね。Superorganismって、とにかく人を排除して活動するよりも、「一人ひとりが協力し合ってこそ素晴らしいものが生まれる」ってことを体現してるバンドだと思うんだ。だから昨日集まった人たちも、ひょっとしたら考え方が少し違うかもしれないし、それぞれに異なる問題を抱えてるかもしれないけど、ライブの間の40分だけは同じ音楽を体験してひとつになれた気がしている。それこそが、ポップ・ミュージックやアートの果たせる役割だと考えてるよ。

――ありがとうございます。少し話が変わるのですが、ソーシャル・ネットワーク時代の産物や動向というのは、あなた方の表現活動にどんなメリットをもたらしましたか?

Harry:ああ、根本的なところに(メリットをもたらした)ね。

Emily:例えば、それがなくなるって考えた場合、電気のない時代に戻るのと同じ感覚なくらい、画期的なものかな。創作活動や表現活動、ましてや音楽だけに限らず、生活そのものがインターネット、ソーシャル・メディアによってすごく変わっているよね。原点から言うと、最初にNapster(主に音楽用のファイル共有サービス)があって、そしてインターネットのこの現状がある――そうじゃなきゃSuperorganismは存在しなかっただろうね。NapsterとかSpotifyとか、そういうサービスのおかげで、本当にジャンル関係なくあらゆる音楽を聴けるようになって、圧倒的な量/幅の音楽から影響を受けるようになったから(今がある)。それに、8人のメンバーもSNSがなければ出会うことはなかっただろうし。そして、音楽を作るにしても、インターネットやSNSなどがあることによって色々なノウハウを得られた。スタジオや機材を借りたり、プロの技術を教えてもらったりする機会がない、そんな自分たちでも音楽を作れる環境がある。作った曲をリリースするということに関しても、“すぐそこ”にアップして人に聴いてもらうことができるから、やっぱり根本的なレベルでその影響は大きいよ。

――そうした環境の中で制作されたあなたたちの1stアルバムというのは、どのような内容になっているのでしょうか。可能な範囲でヒントを頂けたら嬉しいです。

Harry:本当にバラバラな8人の個性が集まってできた、多様性のある作品になっているよ。それはサウンドについてはもちろん、テーマもそう。そして曲の作り方まで多彩なんだ。自分たち8人がアルバムを制作していた時期に“生きていて思っていたこと”が、そのままそこに反映されるからかな。でも、そういうバラバラな曲たちの中にも共通点があることに気付くんだ。作っているときは分からないものなんだけど、でき上がってから改めて聴くとね。そして、そういうフィーリングがこのバンドの基礎となったわけだから、このアルバムはまさにSuperorganismの土台と言えるかもしれない。仮に「Something For Your M.I.N.D.」をビッグバンだとしたら、今回の作品で自分たちの宇宙ができ上がって、これから色々な星ができて行くのかなと思っているよ。

――「星を形作ってゆくこと」が今後の展望だと思いますが、まだ存在が知られておらず、自由に活動できていた頃と、有名になった現在との間では、何か違いは生じているのでしょうか。

Emily:僕ら、基本的には引きこもりバンドみたいな感じなんだ。金曜の夜でも8人とも家に居てレコーディングしててさ(笑)。
やっぱり8人いると、外部の人の力を借りなくても自給自足できるんだ。まさに島国みたいなバンドかな。たぶん有名なグループっていうのは、プロデューサーだとかMVの監督だとか、基本的に周りにいる様々な人たちと一緒に組んで作品を出すわけじゃない? でも、自分たちは基本的に外部の人と組まずに、自分たちの中で完結しているから、たぶんそういうところは今後も変わらないかな。今回のアルバムは1台のシンセで作ったわけなんだけど、ひょっとしたら今後はそれが2台になるとかいう大胆なことをしてしまうかもしれない(笑)。

Harry:とは言え、経験が作品に影響を及ぼすっていうのは起こり得ることだからね。今まさに自分たちが経験してるこの生活っていうのは、以前と全く違うわけだから、僕らが作っている音楽にも反映されていくと思うよ。それから、アーティストとしても成長を止めたくないからさ。1枚目ではハイファイなポップ・ミュージックや、MVを作ることを学ぶことができた。でも、そこで満足するのではなくて、2枚目ではもっともっと成長し続けたいと思ってる。やっぱり8人いるからこそ、切磋琢磨してお互いから刺激を受けながら高い山や崖を一緒に登って行くんだ、って感じかな。だから、そういう意味では変化があるだろうけど、圧力がかかって来たりとか、そういう外部からの影響はないと思うよ。

*以下のビデオの冒頭で、Oronoの生活の様子を垣間見ることができる。

――つまり、Superorganismの一貫性というのは、8人で活動し作品を生み出すことにあるのでしょうか。

Emily:うーん、わかんないな。明日気が変わるかもしれないから(笑)。ルールがないというのがこのバンドだし、でも逆に「やっぱりおもしろいからルール作ろうよ」ってことに明日なるかもしれないし。その時その時で自分たちが感じていることを一番大事にしていきたいんだよね。だから変な線引きはしたくないと思っているし、その場のノリってものがとても重要なのかもしれない。何かやってみて「あ、これイイ感じじゃん」「これもいいね」っていうことをすごく大切にして作品を作っていきたいと思ってるからさ。だから、やっぱり今すぐにはわからないかな。

Harry:将来的に、外部の人間と何らかの形でコラボレーションすることを考えていないわけじゃないし、当然やりたいとは思ってるよ。

Emily:確かにそうだね。

Harry:だけど、これまでに自分たちがずっと音楽をやってきて、最終的に今いる8人が残った。たくさんの人と繋がりができて、色々な人たちがSuperorganismを出たり入ったりしたからこそ、この8人になったっていうことにはやっぱり意味があるよね。それは例えば人としてのノリが合うとか、同じ波長であるとか、あるいは阿吽の呼吸で作業ができるとか、そういうことだと思うけど。だから、当分の間はこの8人でやっていくつもりでいるよ。

――少し話は戻るのですが、(おふたりが言ったように)確かにインターネットは多様性を促すものであると思います。しかし、近年では“Post-truth”という言葉が流行ったように、使う人によっては自分に都合のいいものや心地いいものだけを取り入れる、排他的なツールとしても機能します。あなた方自身はなぜ、多様性を広めるツールとしてインターネットを使うのだと思いますか?

Emily:“Post-truth”という言葉で、わざわざ問題を言い換える必要もないと思うんだ。つまり、事実と異なるものを普及させようとする人たちっていうのは、インターネット以前からいくらでもいたよねってこと。紙媒体でもどんなメディアでもね。もちろんインターネットにそういう弊害があることは確かなんだけれど、今の時代は、事実かどうかをチェックすることもすごく簡単になってきてるわけで。

Harry:たぶんインターネットって、人間としての本質、元々持っている素質っていうものをそのまま反映しているんだと思う。人間には、好奇心旺盛だったり、常に「向上したい、成長したい」と思っていたりするすごく良い面もあれば、無知だったり見解が狭かったりっていう側面もある。また、ネットを通じて知識を広めることができる一方で、自分の考えをただ押し付けるために利用している人もいる。その両方が(インターネットによって)虫メガネのように強調されて、大きくなっているんじゃないかな。少なくとも僕らは、“人として善い”使い方をしたいんだ。

――最後にひとつお伺いします。自分たちの音楽を通じて、音楽や社会の未来に何を投げかけたいと考えていますか?

Emily:Superorganismの音楽って、自分たちが社会をどう見てるかってことをそのまま反映してると思うんだよね。

Harry:だから、「進むのはこっちの方向だよ」とか、「こういう例があるよ」っていうものを今の世の中に対して掲げられていたらいいな。やっぱりアーティストには、社会に向けてポジティブなものを示すっていう責任があると思うんだ。混沌とした時代になっているからこそ、前向きな考えや楽観的な希望を投げかけたい。聴いた人がそういうものを持てる楽曲をアウトプットしなければならないと考えているよ。


【リリース情報】

Superorganism 『Superorganism』
Release Date:2018.03.02 (Fri.)
Label:Domino Recording Co. / Hostess
Cat.No.:HSE-2106
Price:¥2,300 + Tax
Tracklist:
1. It’s All Good
2. Everybody Wants To Be Famous
3. Nobody Cares
4. Reflections On The Screen
5. SPRORGNSM
6. Something For Your M.I.N.D.
7. Nai’s March
8. The Prawn Song
9. Relax
10. Night Time
11. Something For Your M.I.N.D. (Joe Goddard Remix)*
12. Something For Your M.I.N.D. (el_der remix)*

*日本盤ボーナス・トラック

※日本盤オリジナル・アートワーク、ボーナス・トラック2曲、メンバーのOronoによる歌詞対訳、ライナーノーツ(小田部仁)付
※アルバム『Superorganism』プレオーダー受付中! 新曲「Everybody Wants To BeFamous」を含むシングル4曲配信中!
http://hyperurl.co/xzqtdo

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