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Superorganism / It’s All Good


気怠いけど、気持ちいい。そんな不思議なナンバーを放つ新参者は、どこまでもミステリアス! この魅力は一体......?

2017.04.30

未だ謎多きグループ、Superorganismが新曲「It’s All Good」を公開しました。その首謀者となるのは、US・メイン州に住む17才の女の子、Orono。どうやら彼女は日本人のようで、他にロンドンの友人が7人参加しているとのことです。

今年2月にリリースされたデビュー・シングル「Something for Your M.I.N.D.」*は、郷愁を無理矢理バーチャルに再現したような空気感が絶妙でした。そしてそこにある気怠さからは、ネット文化の匂いが(今作「It’s All Good」の楽曲公開に先行して、断片的にYouTubeへアップロードされていた映像も、まさにそれですね)。

ただ、”気怠さ”というものをその一言で表現したくないと思わせるのが今作。サウンド面では前作に増してそのきらいがありますが、(意図的かどうかはさておき)気怠さを気怠く表現する皮肉な手法によって、コンセプトとしては逆説的に高次化しているように思えるからです。すなわち、マイナスにマイナスを当てがったプラス表現ということになります。
また、概して、単なる愚鈍な楽曲になってしまいそうなものをこのクオリティでアウトプットできるというのだから、思わず拍手してしまいますね。

さらには、一見投げやりなサビのメロディも、なかなか良い仕事をしています。抽象的な例を挙げますがお許し下さい。「水を張った鉢の中だけしか泳ぐことの出来ない魚が、いざ外へ出ることが出来たら、彼は喉が渇いて渇いて仕方なかった」というような、ここにはある種の”気持ちよさ”があると思うのです。つまり、温い現実と憧れる世界との乖離に気付き、普遍的だけれども自分にとって本当に必要なものを発見できた時の「これだっ!!」という快感です。それを一手に引き受けているのが、このサビのような気がしてなりません。(憧れや夢を持っていると認識するのであれば、それは一つの現実的な態度ですよね)

気怠い日常の中に巻き起こるたくさんの小さな出来事への喜びと期待を、直球で表現するのはどこかこそばゆい――詞曲の間のギャップは、そんな気持ちの現れなのかもしれません。勝手な見解ながら、これぞハイパー・ポップと言うにふさわしいのではないでしょうか。不安定な雰囲気を持ちながら、どこか心が落ち着いてしまう不思議な楽曲。次回作も楽しみに待ちましょう。

*Frank Oceanが、自身がホストを務めるラジオ番組でオンエア。現在、YouTubeやSoundCloud、Apple Music、Spotifyなどからは残念ながら削除されています。非公式ではありますがこちらからどうぞ。
9月6日に復活しています!


【リリース情報】

It's All Good

Superorganism 『It’s All Good』
Release Date:2017.04.26 (Wed.)
Label:Cut Your Hair
Tracklist:
1. It’s All Good


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