不安定なイギリスの今を象徴するかのようにShame、Idles、Dream Wife、Goat Girlなど、政治的な主張を掲げたパンクな若手バンドが混戦する中、南ロンドンのシーンより頭角を現してきた6人組、Sports Team。
主に90年代の音楽から影響を受けたという彼らは、オールドスクールなギター・ロックをアイロニーたっぷりにかき鳴らす。そのがむしゃらなロックンロールは、思わず聴く者の身体を揺さぶることだろう。EP『Winter Nets』1枚のみしかリリースしてないにも関わらず、最近ではUKアンダーグラウンドの音楽シーンをリプリゼントし、若者を中心に指示を獲得している『So Young Magazine』の表紙を飾ったほか、「DIY」による期待の新人を選出する“Class of 2019”にも選ばれるなど、注目の新人バンドと言える。また、UKツアーはすでにソールドアウト公演も珍しくなく、国内での彼らの確かな人気ぶりも伺える。
今回は2月にSkypeで行った、Sports Teamの中心人物・Alexへのインタビューをお届けする。
Interveiew by Aoi Kurihara
Photo by Laura Maccabee
――よくSNSで日本語を発信していますけど、メンバーの誰かが日本語を勉強しているのでしょうか?
Alex:いや、Google翻訳を使っているだけ。自動翻訳を使って、ただベストを尽くしているだけ(笑)。日本語の投稿を翻訳するとちょっとおかしな英語になるよね。あ、Oliは少しだけわかるかな。
――そもそも日本語に、日本に興味があるのはなぜ?
Alex:東京のBig Love、タワーレコードとか、日本には素晴らしいレコード・ストアがまだあって、そういったレコード・ストアが自分たちのこと発信してくれたことがキッカケかな。日本はまだフィジカルで聴く人も多くいるみたいだし、レコード・ストアが生き残っているよね。日本は音楽に対してパッションがあるんだなって思う。
――昨年、The Magic Gangが来日した時にインタビューして、あなたちのことをとてもお気に入りのバンドとしてお勧めしてくれました。彼らとは仲が良いのでしょうか。
Alex:そうだね、昨年の後半に一緒にライブをやっていたんだ。とても素晴らしい経験だよ。ギターのRobは彼らのアルバムにも参加していて、クレジットされているよ。
――あなたちはPavementやThe Family Catなど、主に90年代の音楽に影響を受けているんですよね。90年代というのはちょうどあなたたちが生まれたばかりの時だと思うのですが、なぜこの年代の音楽に惹かれるのでしょうか?
Alex:僕らがやっているようなオールドスクールなギター・ロックは、イギリスでも大きなムーブメントになっていたから、小さい頃から聴いてたんだ。今はShameみたいにポストパンクで、反骨精神と怒りを持ったバンドも出て来ていて、確かにそういったバンドと僕らには通ずる部分もあるけれど、僕らはもっとロマンティシズムなサウンドを好んでいる。昔からPavementみたいな90年代のアメリカのインディ・バンドをよく聴いていたね。90年代のイギリスのバンドは、もっとポップだったと思うし歌詞もあまりおもしろくなくて。ShameやIdlesみたいなパンク・バンドも好きだけれど、僕たちはもっとギター・ロックなんだ。
――そういえば、Twitterに「I’ve just told Alex ‘Crooked Rain’ is 25 years old and he’s asked who Crooked Wayne is so I’m not sure he likes Pavement as much as he claims to in interviews」(Pavementのアルバム・タイトルをAlexが聞き間違えたので、インタビューでPavementが好きと言っているのは本当なのか、という内容)と投稿されてましたね。
Alex:ハハハ(笑)。僕が聞き間違えたのをおもしろく書かれただけだよ。僕は本当に彼らが好きなんだ。
I've just told Alex 'Crooked Rain' is 25 years old and he's asked who Crooked Wayne is so I'm not sure he likes Pavement as much as he claims to in interviews
— Sports Team (@SportsTeam_) 2019年2月14日
――話にも挙がったShameをはじめ、今のロンドンのシーンには政治的なメッセージや怒りを内包したパンクなバンドが多いのではないかと思います。今のこの流れをどう思いますか?
Alex:良いとは思うよ。僕はそういったバンドはすごく好きだね。エナジーがすごく放たれていて。Idlesとかね。彼らの歌詞はとてもポリティックな内容だよね。でも、The Magic Gangはどちらかというと逆で、音楽に対してロマンチックで逃避的だと思う。僕はどちらも好きだな。歌詞を気にしない、っていうリスナーもいるし。でも、どちらにせよまずはサウンドが一番重要だと思う。
――バンドについて話を聞かせてください。なぜSports Teamという名前にしたのでしょう? 検索にも引っかかり難くて、オンライン上であなたたちの情報を探すのはとても大変です(笑)。
Alex:あまりちゃんと考えずに決めたんだよね。こんなにちゃんとバンドをやっていくとも考えてなかったし。6人メンバーがいて、チームとして動くからスポーツ・チームみたいかな、って。こんな適当に決めたのに、今年の“SXSW”の“Best Band Name”に選ばれたよ。
――なるほど、実際にお気に入りのスポーツ・チームはありますか?
Alex:うーん。僕自身、サッカーには全然興味がなくて。HenryとOliはサッカー好きみたいだけど、僕はクリケットが好きなんだ。よく試合も観戦してる。イギリスでは人気だよ。
――「Kutcher」という曲は、ハリウッド俳優のAshton Kutcher(アシュトン・カッチャー)について歌っているようですが、なぜ彼について歌にしようと思ったのでしょうか?
Alex:彼という存在に対して、僕らはノスタルジーを感じるんだ。『パンクト』(原題:Punk’d)という彼がホストしていたTVショーを知っている? ドッキリ番組なんだけれど、僕たちがティーンの頃にポピュラーだったんだ。それで彼の曲を書いた。彼は有名なハリウッド俳優だけど、色々なTVショーにも出ていて、変なキャラもこなせるしおもしろいと思う。
――バレンタインの日にDemi Moore(デミ・ムーア)についてのバレンタイン・カードをInstagramでポストしていましたよね。それもアシュトンに関するジョーク?(Demi MooreはAshton Kutcherの前妻)
Alex:ハハハ、まさにそうだよ(笑)。
――昨年、デビューEP『Winter Nets』を〈Nive Swan Records〉からリリースしましたよね。同レーベルは新興レーベルと言っても差し支えないと思うのですが、そこからリリースに至った経緯は?
Alex:僕らはラッキーだったんだ。メンバーと出会ったケンブリッジ大学を卒業した直後に、ロンドンでライブをやるようになって、その時は小さなライブだったんだけれど、たまたまDave McCracken(Ian Brown、Depeche Mode、Florence & The Machineなどを手がけたプロデューサー)が僕たちを観て気に入ってくれて、それで彼とスタジオで一緒にEPを制作することになった。彼には音楽関係の素晴らしい友人がたくさんいるから、僕らのことをすごくサポートしてくれて。ここのレーベルも彼の繋がりだね。
――2作目のEPとなる『Keep Walking!』が3月にリリースされますが、前作からどう変化していると言えるでしょうか?
Alex:『Winter Nets』ではヨーロッパの古い固定概念に対するクリティカルで皮肉的な内容を歌ってたんだけど、今作『Keep Walking!』は、ロンドンのスタジオが高くて、ウェールズの方でレコーディングしたんだ。前作より1年経ってるし、その間ステージに立って経験を積んだから、異なる感覚で作られたというのは間違いないね。
――1stアルバムをリリースする予定は?
Alex:今年か来年か、いつかはわからないかな。でもアルバムのために動いてはいるよ。
――アルバムを出したらぜひ日本に来て欲しいです!
Alex:とりあえずBig Loveには行きたいね。日本ツアーとなったらビジネス・トリップだからあんまり見て回れないかなぁ。何かオススメあったら教えてね!
【リリース情報】
Sports Team 『Keep Walking!』
Release Date:2019.03.08 (Fri.)
Label:Holm Front Records
Tracklist:
1. M5
2. Get Along
3. Ski Lifts
4. Casper
5. Georgie