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INTERVIEW / SOMETIME’S


SOMETIME'Sが語る、フレキシブルな活動スタイルの利点。初の全国流中盤『TOBARI』制作背景を軸に、ふたりの現在地点に迫る

2020.11.04

SOMETIME’Sが初の全国流通盤となる1st EP『TOBARI』を10月21日(水)にリリースした。

2017年よりライブ活動を開始したSOTA(Vo.)とTAKKI(Gt.)によるユニット、SOMETIME’Sは。中心人物の2人以外はメンバーを固定せず、しかし、ライブや音源ではフルバンドさながらの豊かなサウンドを鳴らす、今日的な活動スタイルを展開している。ソウル、ファンク、R&Bを軸としたグルーヴィーなサウンドを、時には風通しのいいポップスとして、そして時にはロック的なダイナミックな楽曲としてアウトプット。そのウェルメイドな作品はすでに各方面から注目を集めており、EPの最後を締め括る「Morning」はMBS/TBSドラマイズム『そのご縁、お届けしますーメルカリであったほんとの話ー』オープニング主題歌にも起用されている。

今回はそんな1st EP『TOBARI』を紐解くべく、8月に掲載した初インタビューに続きSOTAとTAKKIのふたりにインタビューを行った。(編集部)

Interview & Text by Naoya Koike
Photo by Official


「まだ何者でもない僕たちを覗いてください」

――インディーズながらも各地のラジオでオンエアされ、SNSでも反応が見られます。その実感は感じていますか?

SOTA:アレンジャーとして関わってくれている藤田道哉と3人で話すんですけど、僕ら自身は実感がないんですよ(笑)。本当に流れてるのかなって。でも、ありがたい限りですね。

――8月に初の配信ライブ行われましたが、こちらの感想も教えてください。

TAKKI:実際に演奏するまで想像もできませんでしたが、楽しめました。

SOTA:楽しかったですね。音源をリリースをする以前はライブしかしてなかったですから。今も一番したいのがライブですね。

――おふたりは基本的にSOTAさんが作曲、TAKKIさんが作詞を務めています。ボーカルが作曲でギタリストが作詞というのは珍しいスタイルだと思いました。

SOTA:自分ではそこまで不思議に思いませんが、よく言われますね。TAKKIが前やっていたバンドで作っていた歌詞の世界観が好きだったので安心して任せています。もちろん、よほど歌詞にしたいことがある時は入れてもらうこともありますよ。

TAKKI:作曲で一番大切なのがボーカルのメロディですから。そこはSOTAに一任していますし、彼が作るメロディを僕が作れる気がしません。曲のコード感やアンサンブルのイメージは、アレンジャーを含めて3人でやっている感じですね。

――では新EP『TOBARI』についても教えてください。この趣深いタイトルはどの様に決定したのでしょう?

TAKKI:当初から「文章ではない方がいいよね」と、ふたりで話していました。今までの曲も英語のタイトルが多いのですが、日本語を大切にしたいという想いがあるんです。そこで僕から「古き良き日本語をタイトルにしてシリーズ化したい」と、この名前をSOTAに提案しました。

SOTA:まず字面がよかったですね。意味的にも「まだ何者でもない僕たちを覗いてください」って感じで合ってるし。

――先行シングルは「Honeys」、「Take a chance on yourself」、「I Still」でした。これらを先にリリースした理由は?

TAKKI:本当は出しても「Honeys」だけで、他のシングルを先行リリースする予定ではなかったんです。でも、コロナ禍の影響で最初のスケジュールとは違う形になり、チームで話し合って先行リリースすることに決めました。

SOTA:アルバムの曲順については、レコーディング後からすでに2人で話していました。なので、EPのリリースが決まった時に即決でしたね。

――1曲目の「Get in me」はオープニングに相応しいファンク曲でした。

TAKKI:アンサンブル重視で、演奏していて楽しい曲になっています。いつもSOTAがめちゃくちゃな英語で歌うデモから歌詞を作っていくんですが、特に「Get in me」はそうで、歌詞の意味は無いに等しいですね。でも歌いまわしのフロウをデモのものから変え過ぎないようにしました。あとはクワイア調にならないように重ねたコーラスもポイント。イントロとアウトロにある声リフも挑戦でしたが、コーラス・ワークをモダンに使えたと思います。

SOTA:この曲は主メロとオクターブ、上下に1本ずつの4声を自分の声で重ねています。小学校の時に合唱部に入った時期もあってか、声の和音が好きなんです。前のバンドでもコーラスを担当していました。メインにもなるし、バッキングの要素にもなるのがよくて。SOMETIME’Sを始めた時からコーラスでのアプローチをやりたかったので、上手くできてよかったです。

――「Simple」はいかがでしょう?

SOTA:アレンジャーの藤田が「こういうリフがある」とアイデアを出してくれました。EPのなかで唯一、彼のトラックに音をはめていく作り方をしていて、一番最後まで試行錯誤を重ねました。リリックはその場のノリで作った感じで。

TAKKI:デモに入っていた歌詞の印象が強すぎて、そこから逃れられなかったですね(笑)。

――ギター・ソロも印象的でしたが、そこにこだわりは?

TAKKI:特にはなくて、ファースト・インプレッションで弾くことが多いですし、作り込まないスタイルです。レコーディングの時にSOTAが「○○の部分がよかった」とジャッジして、修正していく感じ。どちらかというと、Aメロ/Bメロのリズムやグルーヴにこだわりがあるんです。ライブの時はドラムに強く当たることが多くて、よく「厳しい」と言われます(笑)。

――EPのなかで割とポップ目な仕上がりになった「Morning」についても教えてください。

TAKKI:これは僕の推し曲で、タイトルは「何かを決断したり、変わろうと思った時の朝は日常と違うな」、と思った経験から来ています。歌詞は「夢の岐路に立つ若者をフックアップする」という内容にしました。「頑張れ」と背中を押すというよりも「やるなら待ってるよ」というスタンスの応援歌です。

SOTA:これ、実は僕の弟が題材になっているみたいなんです。

TAKKI:彼が悩みながら「これからやりたいことを探す」と言っていて、「兄ちゃんがステージで待っててくれるよ」というイメージで書きました。こういうことを兄ちゃんに言われたら嬉しいな、と。

SOTA:メロディは、もともとファルセットで歌う予定だったんですが、最終的に僕にとって美味しいキーまで下げた地声で歌っています。それが曲のポップな印象に繋がったのかもしれません。もとの歌い方だったら違うテーマの曲に仕上がっていた可能性もあります。


「トレンドっぽくはあるけど、いなたさもある」

――ところで、最近のおふたりの曲はホーン・セクションが活躍するアレンジが多いですね。これについてはいかがですか?

TAKKI:「Morning」のメイン・リフは藤田が考えてくれましたが「Take a chance on yourself」などはサポートのサックス奏者・永田こーせーさんのアイデアです。基本的にブラス・アレンジは彼にお願いすることが多いですね。まだライブでホーン・セクションを入れたことがないので、やってみたいとは思ってます。

SOTA:ホーン隊にこだわりがあるというわけではなく、派手にしたかったのと、単純に「曲にハマったな」と。「Honeys」と「Take a chance on yourself」は、自主制作した2枚目の音源にも入っていて、今回はリアレンジなんですよ。

――サポート・メンバーも実力派揃いですよね。

SOTA:昔からの知り合いなので、みんな信頼しています。

TAKKI:ドラムの冨田洋之進(Omoinotake)は初期から2年くらい一緒に活動してます。ドラマーとしては相当クセがあって、ピースが上手くハマった感があるんですよ。僕が前のバンドを解散してから2年間スタジオ・ミュージシャンとして仕事をしていて、そこでの繋がりの人が多いです。ピアノの清野雄翔さんだけは「はじめまして」でした。

――前のバンドはそれぞれどんな音楽性だったかも気になります。

SOTA:僕は以前にツイン・ボーカルのロック・バンドをやっていました。

TAKKI:僕はピアノ & ボーカルとベースがいるトリオ。バラードのみをやるバンドでしたね。今sumikaのキーボードを担当している小川(貴之)がボーカルだったんですよ。

SOTA:僕がイベントに呼んだり、対バンも多かったですね。

――なるほど。では話を戻しましょう。「Take a chance on yourself」は他の曲に比べて、洗練というよりも土くささを感じました。以前「今の流行になっているサウンド感が必ずしも好きではない」という発言もされていましたが、それと関係はありますか。

SOTA:実は僕らにとって、この曲の様な“いなたさ”を持った曲が多いですし、やりやすい曲調でもあります。色々な引き出しを持ちつつやっていきたいと思っていますが、後から振り返ると、この雰囲気の曲が多いはず。

TAKKI:今時のサウンドはミニマルすぎるというか、デスクトップ・ミュージックに主流が近づいていきましたよね。やっぱりエレキ・ギターをラインで録るのか、キャビネットから出る音を生で録るのか、というのは大きく違うと思います。そういう部分が作品にも反映されていて、エアの音もふんだんに入れました。「Honeys」もトレンドっぽくはあるけど、いなたさもある。それが自分たちの求めている方向性なのかもしれません。

――最終目標はカリフォルニアに自身のスタジオを持つことですもんね。

SOTA:あれは適当に大きいことを言ってしまった部分もあるんですけど(笑)。

TAKKI:結成した時は「まず、メジャーのシーンで通用する音楽である必要がある」と話していて。裏道みたいなところから行きたくなかったんですよ。古い人間なので「メジャーで通用させて海外に行く、そこからさらに認められないとグラミー賞は見えないよね」みたいな話をしてました(笑)。

SOTA:とりあえずデカい話をするのが好きなんですよ(笑)。

――それを踏まえて、それぞれの洋楽から受けた影響についても教えてください。

SOTA:個人的には、Daryl Hall & John OatesがSOMETIME’Sをやるに当たって、一番大きな影響になっていると思います。学生の時に両親がベスト盤をリビングで聴いていて、好きになりました。彼らも2人組だし、ソウルやR&Bからの影響がありつつも、ポップスとして通用するメロディを作ってるので意識しているのかもしれません。

TAKKI:僕はギターを勉強するために洋楽を聴いてきたので、リスナーとして洋楽を求めていた感じではないんです。だからR&Bがバックボーンかと言われると違和感がありますね。ギタリストを聴くことが多いので、どちらかというとジャズのエッセンスが強いと思います。Norman BrownやDavid T.Walkerとかメロウな人が好きでした。ファンクならMaceo Parkerとか。彼のバックのギターも好きだけど、サックスの音と説得力が好き。でもバックボーンと聞かれたら、邦ロックと言った方がしっくりきますね。


「フレキシブルにできるなら、ふたりの方がいい」――ユニットとしての利点

――では最近おふたりが聴いている音楽は?

SOTA:年代とかは詳しくなくて、ミーハーな部分もしっかり持ってるので普通に流行っている曲とかは聴きます。あと、最近は一周回ってMr.Childrenですね。ライブの映像で桜井和寿さんが歌っている姿に泣いているファンを見て、僕が泣いちゃうっていう(笑)。

TAKKI:僕がギタリストとして注目しているのは磯貝一樹さん。めちゃくちゃ上手いなと思いますし、実際に対バンしたこともあるのですが、「バケモノだな」と(笑)。それから、あれよあれよという間に有名になりましたね。いつ聴いてもセンスがいいし、インスタに動画を上げ続けるエネルギーもすごい。あとはTENDREの河原太朗さん。自分で全部レコーディングするところも驚きです。

――それこそInstagram上にいる、世界の凄腕プレイヤーたちは底が知れませんよね。

TAKKI:そういった方々と戦おうとすると落ち込むので、創作物で戦うイメージです。曲という武器はバンドマンしか持てないですから。歌詞も書かせてもらっていますし、「創作している」という意識は専門のギタリストよりあると思います。

――バンドという話が出ましたが、ふたりともバンドという形態を辞めています。ユニットの方が小回りが利く印象がありますが、それについてはいかがですか。

SOTA:小回りの利かなさが嫌だから、ふたりで活動している面はあります。でも、活動を始める時からライブはバンド編成ということは決めていました。いいミュージシャンはお互いにたくさん知っているし、そういう人たちとフレキシブルにできるなら、ふたりの方がいい。

TAKKI:ハッピーなことしかありません。音楽のこと以外に気にすることが増えると大変なんです。

SOTA:制作はアレンジャーの家で3人ですることが多いです。そっちの方が捗るんですよ。

TAKKI:重要はレスポンスの早さです。曲作りの時は「これとこれ、どっちがいい?」と質問する時もデータより、その場で3人で話し合った方がいい。正解の感覚も一緒にいないと共有できないのかなと思います。ひとりで聴くのとは全然違いますから。

――では最後に、次のライブについての展望をお願いします。

SOTA:前回のライブはフロアでメンバーが対面しながら演奏したのですが、今回はステージでやります。仲の良いYONA YONA WEEKENDERSとツーマン。楽しみです。

TAKKI:ホーン隊を入れたくて、何とか予算を組んでもらいました(笑)。この編成では初めてのライブなので期待です。あと先のことは見えてないですけど、曲はたくさん作っていますよ。まだまだいい曲を出せるなと感じてます。


【配信情報】

SOMETIME’S “TOBARI” RELEASE EVENT
『YouTube Streaming Live vol.2 supported by MTV』

日時:2020年11月6日(金) START 19:30
配信:MTV YouTubeチャンネル
出演:
SOMETIME’S
YONA YONA WEEKENDERS

※アーカイブ期間:11月12日(木)23:59まで


【リリース情報】

SOMETIME’S 『TOBARI』
Release Date:2020.10.21 (Wed.)
Label:SOMETIME’S
Tracklist:
1. Get in me
2. Honeys
3. Take a chance on yourself
4. Simple
5. I Still
6. Morning*

*MBS/TBSドラマイズム『そのご縁、お届けしますーメルカリであったほんとの話ー』オープニング主題歌

SOMETIME’S オフィシャル・サイト


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