INTERVIEW

Nulbarich

夏フェス出演控えるNulbarichに訊く、バンドの成長ストーリー。バンド一丸となって目指す武道館と、その先の景色

Nulbarichが11月に開催する初の武道館公演が、早くもソールドアウトとなった。2016年に始動し、その活動はわずか2年ほどの期間ながら、この急速的な活躍ぶり。一体誰が想像できただろうか。9月に行われたJamiroquai来日公演のサポート・アクトを務めたことも含め、まるでここまでの流れが運命であったかのような、そんな必然性も感じさせる。

そんな中、9月にはDisco Fries、Oliver Nelsonら海外DJ/プロデューサーらによるリミックス音源を集めたEP『The Remixes』のリリースも発表された。予てより世界を見据えていたようにも思えるNulbarichは、一体今、どこを見据え、突き進んでいるのか。武道館のその先にはどのような景色が広がっているのか、バンドのフロントマンであるJQにその本音を訊いた。

Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Official


――3月に2ndアルバム『H.O.T』をリリースしましたが、そこからこの数ヶ月を経て、今、バンドはどんなコンディションだと言えるでしょうか?

JQ:リリースのスケジュールっていう意味では、昨年よりは少し余裕ある感じだったので、ある程度はメンバーも各々の時間が取れていたと思うんです。バンドとしても次のフェーズへ向かっている感覚もあるし、それぞれがその準備をしているっていう感じなのかなって思います。
なので、一番はまず控えているフェスやイベントをしっかりひとつひとつこなして、そこでの経験をバンドとして吸収していきたいです。あとはやっぱり武道館公演も近づいてきているので、そこにも焦点を合わせていければなと。具体的な出来事があったわけではないですけど、みんななんとなくそういう意識を共有していると思います。

――舞台が大きくなるにつれて、何かバンドとしての見せ方などに変化などはありますか?

JQ:特にはないですね。僕たちは演奏すること以外の、パフォーマンスっていう部分があまり得意ではなくて。しっかりと「いい音」を奏でるっていうことに集中するだけっていうか。そこはステージが大きくなっても変わらずですね。ただ、会場が大きくなっていくにつれて、どうしても出音がボヤけていってしまうので、そこはPAさんと話し合ったり、機材も見つめ直したりして、常に改善点を考えています。それこそ照明さんもPAさんもメンバーの一員とも言えるくらい一丸になって、いいステージを作れるように動いています。

――9月には初のリミックスEP『The Remixes』がリリースされます。このアイディアはどこから出てきたのでしょうか?

JQ:すでに世界的にはクラブ・ミュージックのシーンだけじゃなく、ロック・バンドやSSWの作品でも、リミックスEPやリミックス・シングルっていう形でのリリースが一般的になっていますよね。そうやってコラボすることによって、普段はなかなか混じり合わない層に原曲が届いたり、逆にリミキサーの名前が知れ渡ったりする。これからは日本の音楽もグローバル化していかなければいけないと個人的には思っているので、僕らの楽曲を海外の実力のあるDJ/プロデューサーの方にリミックスしてもらおうと思い、実現に至りました。

――前回のインタビューでも、「半年に一回くらいのペースでは何かを出したい」とおっしゃっていましたが、タイミング的にもまさにですよね。

JQ:そうですね。ただ、オリジナル作品をコンスタントに出し続けるっていうのもいいと思うんですけど、何か昨年とは違った動きもしてみたかったんですよね。バントとして新しい試みにも挑戦してみたかったですし。

――日本ではバンド・シーン/ポップ・シーンと、リミックス文化のようなものはまだ結びついていない印象がありますが、その点についてはいかがでしょうか?

JQ:結びついていないんですけど、それぞれ独自には発展していっているなという印象です。あと、こういう試みって、聴く人にとってもそうだし、自分たちにとってもすごく刺激的なものだと思うんですよね。自分の想像の範囲外のものができるというか。

――確かに。今作をいち早く聴かせて頂いた中で、Nulbarichの楽曲とダンス・ミュージックとの相性のよさにも驚かされました。

JQ:リミックスって、僕の中ではある意味リスキーなものでもあると思っていて。最初に原曲っていうひとつの「正解」がある中で、リミキサーの方がそれを再構築して、自分の名義を付けてリリースするわけじゃないですか。時にはオリジナルを愛している人たちからの反感を買うこともあるだろうし、往々にして「オリジナルの方がいいよね」ってなることも多いんじゃないかなって思うんです。でも、僕的には原曲を自分のサウンドの中に取り込んで、「おれだったらこうする」っていう感じでぶち壊したような作品も大好きで。そういう意味では今回のEPもすごく新鮮でしたね。発見も色々とありましたし。

――今回のりミキサーの選出はどのような基準で?

JQ:元々僕が好きで作品をよく聴いていた人たちを中心にオファーさせて頂きました。Disco Friesとかは昔から大好きでしたし。

――JQさんは元々DJもされていたんですよね?

JQ:はい。ただ、DJといってもハウスとかの4つ打ちではなくて、どっちかというとジャジー・ヒップホップっぽいのだったり、スクラッチとかをやっていました。なので、実はこういうサウンドは自分では意外と通ってきていないテイストなんですよ。それもあって、「ここをこうイジってくるんだ」という驚きも多かったです。
単純に普段こういう音楽を聴いている方々にもNulbarichの音楽が届けばいいなって思いますし、ジャンルや方向性を変えて、またこういうリミックス作品を作るのもアリなんじゃないかなって考えてますね。

――海外進出も意識されていると伺ったので、海外DJ/プロデューサーにリミックスをしてもらうという今回の企画は、その手始めだったり?

JQ:当初からそういうことを考えていたわけではないんです。自然と名前を挙げていったら海外の方中心になっていて。ただ、結果的に海外進出というか、今回のEPを通して日本以外の方々へ僕らの音楽を届けることができるんじゃないかって思うようになりました。すでに世界中の人が世界中の音楽に触れることができる環境になっていますけど、日本に興味がない海外の人が自然に日本の音楽に辿り着くっていうのはきっとまだまだ難しいことだと思うので、そういう意味でも今回の企画、作品っていうのは大きいことなんじゃないかなって。

――なるほど。確かに海外進出という言葉が出てはいるものの、Nulbarichは日本も世界も特に意識せず、非常にフラットに活動している印象があります。

JQ:勝負の仕方って色々とあると思うんですけど、Nulbarichをスタートさせた頃から念頭に置いているのは、何も考えずにとりあえず本気でやってみる。一通りやってみて、後から考えてみる。っていうことなんです。よくスポーツとかの世界で言われる話しなんですけど、何か具体的な目標を定めると、そこへ向けて終盤失速してしまうらしいんですよ。なので、何事も通過点として捉えなければいけない。僕らもそれに似た考え方をしているというか。だから、僕らもインタビューで「バンドとしての目標」とかを聞かれたりするんですけど、そこでは到底叶わないような大きなことを言うようにしているんです、「マジソン・スクエア・ガーデンに立ちたい」って(笑)。
最終地点をそこに据えて、自分たちの活動を振り返ってみると、今回のリミックスEPも決してズレてないんじゃないかなって思うんです。

――具体的、現実的な目標がないと、不安になったりはしないのでしょうか?

JQ:どうなんでしょう……。確かに不安もありますし、逆に期待もあります。ただ、安心感がないくらいの方が、僕はいい曲作れるような気がしています。わからないですけど(笑)。
ゼロからモノを作っていくのって、やっぱりそういうことだと思うんですよね。何一つとして当たり前のことがない、リスキーな環境下に置かれている方がいいのかなって。

――音楽っていうのは「正解」がないが故に、迷ったり悩んだりする方も多いと思うのですが、Nulbarichとしてはいかがですか?

JQ:迷ったらたぶん、その曲や作品は出さないですね。仰るように音楽って「正解」がないので、自分の楽曲を守ってあげられるのも自分しかいないんですよね。もちろん、世に出てから「ここはもっとこうしておけばよかった」とか思う時はあるんですけど、その曲をパッケージングして、リリースするまでは、「これで世界穫れる!」くらいの意識でいないとダメなんじゃないかなって思うんです。いい意味で勘違いしているというか、ハイになっている状態。

Nulbarichとしても、個人的にも、常に何か新しいものを探している状態、パワーアップしている瞬間に一番のモチベーションを感じるんですよね。それはたぶん、僕が自分の中に「これがおれだ!」っていうものを何も持っていないっていう自覚があるからなんです。強いて言うならば親から授かったこの声以外には何もなくて。だからこそ、色々な物事を勉強したり、吸収して、成長していかなければいけない。

――具体的な目標、現実的な到達点を掲げずに、ここまでの実績が付いてくるっていうことはすごいことですよね。それこそ、本格始動してからわずか2年ほどで武道館公演を成し遂げるわけですから。

JQ:それは……メンバーやスタッフに感謝っていう言葉に尽きますね。このタイミングで武道館に挑戦させてくれるっていうことは、Nulbarichというものを作り上げているメンバー、スタッフ一人ひとりのモチベーションの高さがないと絶対にできない。やっぱり日本武道館っていうのは特別な場所で、そこへ立つまでのストーリーも重要だし、会場を押さえることができたっていうことも含めて、運命だと思うしかない。ちゃんとリスクを背負って、みんなで夢見ようぜっていう雰囲気を感じる。そして僕はその責任を背負わないといけないと思いますし。

――そういった責任は、やはりモチベーションに繋がりますか?

JQ:うん、プレッシャーにもなりますけどね(笑)。言い方悪いけど、ストレスになってしまう場合もあれば、ガソリン(燃料)になる時もある。今は、真っ直ぐそこへ向かっていくことが大事なのかなって思います。ただ、そこに立ってみた時の自分が何を発するか、何を感じるかっていうのは、すごく楽しみですね。まだ想像もつかないですけど。

――今回の武道館公演のキッカケにもなったという、Jamiroquai来日公演のサポート・アクトを務めた際の感想は?

JQ:正直、「Jamiroquai」と「武道館」っていうダブル・パンチが大きすぎて、記憶が飛んでる部分もあるんですけど(笑)。ただ、同じステージに立ってるのに、レベルが違いすぎてすごく悔しいなって思ったのは覚えています。とんだ勘違い野郎だと思われるかもしれないんですけど(笑)。
それと同時に感謝もしているし、すごく複雑な感情でしたね。(自分たちとJamiroquaiは)別物、別次元だっていう風に考えちゃえば楽なんでしょうけど、僕もいちアーティストとしてもっと成長しなければっていうことを痛感させられた。そしてその相手がJamiroquaiで本当によかったなって思います。

――なるほど。

JQ:これからもNulbarichの成長していく過程をみなさんにお見せできればいいなって思いますね。でも、「Nulbarichらしさ」っていうものを世の中で最もわかっていないのは僕らだと思うんですよね。考えて、狙って作るんじゃなくて、それぞれが今までインプットしてきたものが自然な形で自分たちから出てくるっていうのが「音楽」だと思っているので、これからもNulbarichがどうなっていくかはわからないんです。でも、そういう不安定な要素も含めて、みなさんには楽しんでもらいたい。

――今後は夏フェス出演が多数控えていると思いますが、何かフェスでの思い出や、印象に残っている出来事などはありますか?

JQ:フェスって、毎回ちょっと寂しさが残るんですよね……。会場へ行って、音チェックとリハをして、演奏して終わるっていう。なかなかお客さんと同じエリアにも行けませんし、基本的には裏のケータリング・エリアで少しまったりして帰ることが多い。表側ではたくさんの方々がすごい楽しんでるのに、僕らがフェスを体感できるのはステージ上しかなくて。すっごく楽しいんだけど、一瞬で終わってしまって何か寂しいっていう(笑)。

しかも、当たり前ですけど本番の尺もワンマンとかに比べたらかなり短いわけで、その短時間に集中してドカーンとぶつけないと、すごく後悔しちゃうんですよね。昨年も色々なフェスへ出させて頂いて、フェスならではの感じもわかってきたと思うので、今年はより一層エネルギッシュなパフォーマンスをお見せできるのかなと。

――直近だと“Corona SUNSETS FESTIVAL”がありましたよね。いかがでしたか?

JQ:僕らの出番は16時くらいだったので、とにかく暑かったですね(笑)。野外フェスでもたいていステージって日陰になるように屋根が付いてるんですけど、あの時は日差しがステージに当たっていて。ただ、浜辺なので風は結構あって、都会の嫌になるような暑さみたいな感じではなかったんですけど。

――野外ならではの開放感などは感じますか?

JQ:屋内は屋内でサウンド面での迫力とかを出しやすいし、空間ごと演出が作り込めるんですけど、野外はそれとは別のところに魅力がありますよね。開放感があるというか、「大地の上で歌っている感」がある(笑)。

――直近では“WILD BUNCH”が控えていますよね。

JQ:そうですね。僕らは初出演なんですが、一生懸命やるっていうのは当たり前ながら、錚々たるアーティストさんたちが出ているので、(彼らに)負けないように頑張りたいですね。可能であればフェス自体も楽しみたいんですけど……前乗りでしたっけ?

マネージャー::前乗りですね。

JQ:そうか……。僕、ライブの前日はお酒を抜いているので、前乗りだとお酒飲めないんですよね(笑)。山口県もなかなか滞在する機会がないので、楽しみたいんですけど、どうやらまた弾丸で帰る感じになりそうです(笑)。


【イベント情報】

WILD BUNCH FEST. 2018
日程:2018年7月28日(土)、29日(日)
会場:山口きらら博記念公園

※雨天決行(荒天の場合は中止)

オフィシャル・サイト

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Nulbarich ONE MAN LIVE at 日本武道館 ※SOLD OUT※
日時:2018年11月2日(金) OPEN 17:30 START 18:30
会場:日本武道館
料金:前売 ¥6,500 ※SOLD OUT

※座席:全席指定
※整理番号、指定ドリンクなし

[問合せ]
クリエイティブマン 03-3499-6669


【リリース情報】

Nulbarich 『The Remixes』
Release Date:2018.09.05 (Wed.)
Label:Victor Entertainment
Tracklist:
1. Zero Gravity (Disco Fries Remix)
2. Almost There (Tobtok Remix)
3. Kiss You Back (Oliver Nelson Remix)
4. In Your Pocket (19th Ave. Remix)

Nulbarich オフィシャル・サイト

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