INTERVIEW

INTERVIEW / MONJOE (talk about JY『星が降る前に』)

「その想いや考えに至るまでのプロセスが一番大切」――DATS、yahyelの一員として活躍するMONJOEが語る、歌詞に対するアプローチ

JYと岩井俊二によるコラボ企画EP『星が降る前に』が3月28日(水)にリリースされた。

本作は岩井俊二が作詞、プロデュース、そしてMV監督までを務めた楽曲「星が降る前に」を元に、さらに4人のプロデューサーが新たに楽曲を制作するといったもの。
亀田誠治、Seiho、MONJOE、山本加津彦といった、それぞれジャンルも世代も活躍するフィールドすらも異なるプロデューサーたちが、岩井俊二による歌詞を軸に、独自の解釈を持って新たな楽曲へと仕上げた4曲が追加収録。他に類を見ないユニークな企画作品となっている。

今回は、この一風変わった作品がどのようにして生まれたのか。その制作の裏側を追うべくMONJOEにインタビューを敢行。言わずもがな、DATS、yahyelという新世代を代表する2バンドのメンバーとしても活躍する彼が、この楽曲とどのように向き合ったのか。そして、歌詞に対するアプローチ、スタンスを深く掘り下げることに。

Interview by Takazumi Hosaka
Photo by Izumi Gibo


――まず、この一風変わったプロジェクトの話をもらった時、どう感じました?

MONJOE:率直に……「マジか」って感じでした(笑)。しかも、これまでに他のアーティストさんの楽曲をプロデュースさせてもらった経験はあっても、メロディまで担当したことはなかったんです。でも、今回はメロディまでやらなくちゃいけなくて。だから、自分にとってもひとつのチャレンジになるなって思いましたし、こんな無茶な納期でお願いしてくるなら、もういっそのことめちゃくちゃ早く完成させてやろうって燃えましたね(笑)。
1日か2日くらいで最初のデモを送って。そしたら、「もっとアップテンポなVer.が欲しい」って言われて、それもすぐに返しました。最初はもっとダウンテンポで、夜にしっとり聴く感じに仕上げたんですよね。たぶん、この歌詞をパって見たら誰もがそういうイメージをすると思うんですけど。その上で、敢えて「アップテンポで」っていうオーダーをくれたおかげで、作品としてはパンチのあるものに仕上がったんじゃないかなって思います。

――短い期間で完成させられたのはなぜなのでしょう? メロディやアイディアが自然と降りてきたのでしょうか?

MONJOE:実は自分が作り置きしていたトラックの断片のようなものがいくつかあって。今回、それを使ってみたんですよね。早く仕上げられたのはそれが大きいですね。ただ、メロディに関しては確かに「降りてきた」っていう感覚があったかもしれません。最初、出だしの「今ね、今」のところがめちゃくちゃ難しいなって思ったんですよ。でも、何か色々試していくうちにパッとハマるものができました。

――JYさんの歌声の印象は?

MONJOE:すごく声が柔らかいので、今回頂いた岩井さんの歌詞にもすごくフィットするなって思いました。何ていうんだろう、女の子っぽい言葉というか、こんなこと言われたら男はキュンときてしまうなっていう、柔らかくて可愛らしい言葉にピッタリだなって。

――今回の作品に参加している他のプロデューサーさんたちの楽曲を聴いて、どう思いましたか?

MONJOE:「個性、強っ」って思いましたね(笑)。音を聴いただけで、「この人の曲だろうな」ってわかるというか、良い意味でそれぞれの色が際立っていて、おもしろい作品になっていますよね。

――MONJOEさんに依頼がきたタイミングというのは、岩井俊二さんのオリジナルVer.はすでに完成していた時期なのでしょうか?

MONJOE:いや、まだできていなかったと思います。僕は岩井俊二さんの曲も聴かずに、歌詞だけで膨らませていきました。

――歌詞から全てを作りあげていくのはもちろん、歌詞先行でそこにメロディを当てはめていくという工程も、普段は中々やらないことですよね。

MONJOE:全くやったことなかったですね。そもそも、日本語詞を取り扱うっていうこと自体が未知の領域でした。ちょうどこの話を頂いたタイミングが、個人的に自分でも新たに日本語詞にトライしてみようと思っていた時期だったんですけど、挑戦しようとは思いつつも、最初は全然自信がなかったんです。そんな状況でこのお話がきたので、自分を否が応でもやらなきゃいけない状況に追い込んで(笑)。

でも、やっていく中で自分にとっての発見も色々あって。そもそも、この歌詞は岩井俊二さんがすでに完成させている歌詞なわけで、つまりはここからいいメロディを作ることは絶対に可能なんですよ。読解問題みたいに、歌詞の中にすでに答えがあるというか。あと、歌詞の中でどの言葉に重きを置くか、どの言葉をちゃんと聴かせるのか、っていう部分はすごく勉強にもなりました。「こうやって考えていくんだな」って。この曲の場合は、「今ね、今」をいかに上手く聴かせるか。「そんな気がするの」とか「写真送るね」とか、そういう柔らかい言葉を、メロディに乗せた時にどう聴かせるか。そういう点はすごく意識しましたね。

――歌詞を作る際に感じる日本語と英語の構造上の違いについて、MONJOEさんはどのように感じていますか?

MONJOE:もう全然別物。全く違うなっていう感じなんですよね。慣れてないっていうのもあると思うんですけど、普段英語で歌うことに慣れていると、日本語の母音の部分が上手く歌えなくて。だからそれに合わせてメロディや言葉を変えてしまいたくなるんですけど、今回の場合はそれができないので(笑)。

――最初からすでに完成している歌詞があるから(笑)。

MONJOE:はい(笑)。今回の曲も、一番最初のデモの段階でおれが歌った仮歌は本当に悲惨だったんですけど(笑)、女性に歌ってもらうと意外としっくりくるというか。JYさんのボーカルを聴いたらキュンとくるし、「かわいい〜〜」って、ひとりのファンになった気分で楽しんじゃいました(笑)。

でも、こういうプロデュース・ワークってそういう気持ちも大事なんだなって思いましたね。仕事でトラック作りました、メロディ作りました。はい、納品して終わり。ではなくて、それを誰が歌って、受け取る人はどう感じるか、そういうところまで意識しないといけないなって。逆に曲を聴いてるだけで、そういうところまで配慮したプロデューサーなのかどうかも、作り手にはわかってしまうと思いますし。

――少し本筋からは外れてしまうのですが、MONJOEさんが個人的に日本語詞に挑戦してみようと思ったのはなぜなのでしょうか?

MONJOE:元々自分でもいつかは挑戦してみたいっていう気持ちがあったんです。自分の引き出しを増やしたいし、単純に海外の真似事だけしてるやつらって思われたくない。そういう気持ちが最近強くて。やっぱり日本っていう国で活動しているので、J-POPっていう枠組みの中で、自分たちの音楽がどういう風に作用するのかっていうことに重きを置いてるんですけど、それなのにいつまでも英詞でやっているのは少しダセえなって思ったんですよね。日本人のアイデンティティを背負うっていうわけではないですけど、あくまで日本人として、日本語でもこんなことができるんだっていうのを見せたいっていうか。

――作曲家、アーティストにとっての歌詞って、メッセージ性を何よりも重要視する人もいれば、完全に音として捉える人もいますよね。MONJOEさんは、普段からどのようなスタンスで作詞を行っていますか?

MONJOE:そうですね……どうなんだろうな。これまで英語で歌詞を作ってきたということは、そこまで言葉に重きを置いてないとも言えますし、でも、メッセージというか、主張、伝えたいニュアンスは絶対にある。それこそ何もがなかったら僕は表現作品として全く意味がないんじゃないかと思いますし。ただ、言語に関してはあまりこだわりはなくて、一番音としてカッコいいものを選んでるだけっていう話で。
他の国の人たちと比べて、日本の方って音楽における歌詞の内容、言葉の意味を大切にするっていうことをよく聞くんですけど、今回日本語詞の曲に挑戦してみて、何となくその理由もわかったような気もしますね。

――なるほど。

MONJOE:一方で、改めて考えてみると、小さい頃に自然と聴いていた流行りのJ-POPとかでも、僕はあまり言葉を追ってなかったなって思うんですよね。音として聴いていたというか。今になって、昔聴いていた曲に対して、「あ、こんなこと歌ってたんだ」とか思うことが結構あって。言葉というよりかは、メロディライン、音として捉えていた。だから、僕も主張や伝えることがあっても、聴いてくれる人たちにそれを押し付けたりはしたくないですね。そもそも音楽って、日常の中でBGM的にかかってて「あ、これいいな」っていう感じで楽しんでもいいものだと思いますし。
もちろん、こだわるのは重要なんですよ。いざ歌詞にフォーカスを絞ってみたら、「こんな内容だったんだ」みたいな、そういう気付きを与えるのは表現者としてすごく大事だと思いますし。

――話を本筋に戻して、実際の制作プロセスはどのような形で進目ていったのでしょうか?

MONJOE:僕の仮歌を入れたトラックを送って、OKが出たら、次はガイド・ボーカルをAAAMYYYに頼みました。彼女の声質もすごくピッタリでしたね。それを元にJYさんとレコーディングに臨みました。
僕、誰かのレコーディングに立ち会って、「じゃあ、もう一回いこっか」とか、そういう指示を出したりディレクションしたりするのが初めてで、めちゃくちゃ緊張しちゃったんです。意見求められても、「あ、僕は……いいと思います」みたいな(笑)。
実際、僕は「これもアリだし、それもアリ」っていう感じで、優柔不断になってしまいがちで。あまりディレクションは向いてないなって思いましたね(笑)。

MONJOE:僕が口を出したのは、基本的に技術的なことと言うよりはニュアンスの部分なんですけど、それでも聴こえ方がすごく変わってきて。やっぱり歌詞、言葉の伝わり方が全然違うんですよね。

――例えば、この曲を歌うのがもしJYさんじゃなかった場合、メロディは変わっていたと思いますか?

MONJOE:それは……わからないですけど、たぶんこの歌詞自体が、JYさんを意識して作ってますよね。なので、他のアーティストさんだったらそもそも大前提が成り立たない。

ディレクター:この歌詞は、岩井俊二さんがJYと一緒にアメリカでタクシーに乗ってた時に、彼女が星の写真を撮っていたことからインスピレーションを受けたそうです。彼女も韓国から出てきて、今は日本で活躍している。でも、星空っていうのは日本でも韓国でもアメリカでも繋がっている。そういうことをJYに向けて書いた歌詞になっています。

MONJOE:それは……ヤバいっすね(笑)。そんな何でもないような出来事を歌詞にして送れるような人間におれもなりたいですね。歌詞って作った人の思いとか考えが一番顕著に表れるじゃないですか。でも、人間が考えられることって、人間の頭で思いつく段階で、すでに別の人間が考えていることなんじゃないかって僕は思っていて。そんな中でどうやってオリジナリティを出していくか、唯一無二のものにしていくかっていうことを考えると、それはその人がその想いや考えに至るまでのプロセスでしかないって僕は思っていて。今回の歌詞も、岩井俊二さんがJYさんに向けて書いたっていうストーリーが見えてくるからこそ、こんなにも独創的な作品になっているんじゃないかなって、今改めて思いましたね。

自分がやっているバンドでも、そういうところが一番大事だと思っていて。「おれはこんな大層なことを考えている」「誰も考えたこともないようなことを言っている」って思ってても、それは絶対に他の誰かが先に考えてたりすることだと思うんですよ。だからこそ、そこに辿り着くまでのプロセスが大事。伝えたいことがありきたりな、普遍的なことでも、そのプロセス次第ではオリジナルなものになり得る。
そういったストーリー、背景、バックグラウンドみたいなものが、アーティストが自分の色を出していくにあたっても、一番大切なんじゃないかと思います。

――今回のような外部プロデュース・ワークに関して、今後もやっていきたいと思いますか?

MONJOE:今回の作品で自信がついたんですよね。日本語を扱うことに関して。なので、バンド以外でもまたこういう機会があったらぜひ挑戦してみたいです。さっきも話しましたけど、自分で日本語詞に挑戦する前にこのお話がきて、っていうこの一連の流れが、何か不思議な運命じみたもののように思えるんですよね。

――今回のプロジェクトは、自信の作詞におけるスタンスに大きな影響を与えてくれたようですね。

MONJOE:はい。僕、今でも言葉に対しては本当に自信がないんですよ。日本語も英語も中途半端で。

――それは、海外と日本、両方で生活していたから?

MONJOE:って言うと、言い訳になってしまうと思うんです(笑)。単純にあまり勉強してこなかった。国語が苦手だったから(笑)。
そういうことを周りの人とかに伝えたら、「自分が信頼を置ける人と一緒に歌詞を作ってみれば?」って言われて、そういう制作方法も試してみたりしました。
僕が書いた歌詞を修正してもらったり、他の人が書いた歌詞に僕が付け足したり、様々な方法で作り上げていって。その中で、ひとつ「これだ!」っていう方法を見つけたんです。最初にまず英語でAメロを作って、それと同じメロディでBメロを日本語にする、とか。そういう手法なんですけど、これを思いついてから、今まで一番苦手で嫌いな工程だった作詞が、「超簡単じゃん!」って思えるようになって(笑)。
しかも、先に英語のラインがきて、その後に日本語がくるっていう方法だと、日本語詞がすごくよく聴こえるんですよね。日本人だからこその「待ってました!」みたいな感じで(笑)。
よくよく考えてみたら、そんな手法は今まで数え切れないほどのひとたちがやってきたことだと思うんですけど、自分の中では大発見だったんです。

――やっぱり英語と日本語、両方使った方が自分らしさをより出せるというか。

MONJOE:そうですね。それに、英語と日本語両方使えることを持ち味にしてもいいのかなって思うようになりました。あと、上手く説明できないんですけど、英語だと言葉のもつ意味とか表すものっていうのがよりストレートで、日本語の方がもっと丸いというか、曖昧な気がするんですよね。そういうそれぞれの言語の特性みたいなものもわかってきたような気がしていて。今後の作詞にも活かせそうです。


【リリース情報】

JY 『星が降る前に』
Release Date:2018.03.28 (Wed.)
Cat.No.:SRCL-9733/5
Price:7,000 + Tax
Tracklist:
[DISC 1]
1. 星が降る前に Prod by 岩井俊二
2. 星が降る前に Prod by 亀田誠治
3. 星が降る前に Prod by Seiho
4. 星が降る前に Prod by MONJOE
5. 星が降る前に Prod by 山本加津彦
[DISC 2]
星が降る前に Prod by 岩井俊二 -Music Video-
星が降る前に Prod by 岩井俊二 -Music Video Making-
運命と出会うまでの1週間

※完全生産限定盤:CD+DVD、LP仕様豪華パッケージ、トートバッグ付き、PlayPASS対応

■知英/JY オフィシャル・サイト:https://jiyoung.jp/

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