先日公開したRootscoasterに引き続き、Future Funkのパイオニア的存在、マクロスMACROSS 82-99のインタビューをお届けする。
Vaporwaveと参照元や方法論を共有していながらも、そこにフレンチタッチ〜フィルター・ハウス的な手法を加えることにより、ネット世代による異形のダンス・ミュージックとして確立されたFuture Funk。Skylar Spence(元Saint Pepsi)やHarrison、Spazzkidなどのアーティストが頭角を現したことにより、当初はネット上で完結していた同シーンも次々とリアルの場へと侵食し始めている。
そんな中、今回まさかの来日公演が実現したマクロスMACROSS 82-99は、そのネット上での神秘的な存在感とは裏腹に実際に会ってみると非常にフランクで実直な青年。話を聞いてみればそのサウンドやアートワークなどが、決して捻くれた感性からの産物ではなく、ある意味必然的なアウトプットの形であることがよくわかるはずだ。
また、記事の最後には、彼が出演を果たした渋谷Lounge Neoにて開催された”Pool”でのDJのセットリストも掲載しているので、是非ともチェックを!
Interview & Photo by Takazumi Hosaka
Interpreter by Aoi Kurihara
—日本に来るのは初めてですか?
うん、初めてだよ! まだ昨日着いたばかりなんだけど、本当にクレイジーだね。色々なものがたくさんあってゴチャゴチャしていて。今のところ本当に楽しくて、素晴らしい時間を過ごせているよ。食べ物も美味しいしね。それに、僕はずっと日本に来たいと思い続けていたから、その夢が叶ったんだ。これからの滞在中も絶対に素晴らしい時間になると思う。
—昨日はどこかに行きましたか?
まず成田空港に着いて、そのまま渋谷に直行したんだ。初めての日本だったから、まずは渋谷を見てみたくてさ。それから荷物を置きに新宿のホテルへ向かった。それでまた渋谷に戻って、街をブラブラしながら写真を撮ったよ。特に目的があったわけじゃなくて、足の赴くままに写真を撮りながら散歩したんだ。それで原宿に着いて、何時間かその辺りをふらついてたよ。明治神宮にも行ったんだけど、とても美しいところだね。それからまた渋谷に戻った頃にはもう夜になっていたんだけど、街の照明がキレイで、夜景が素晴らしかったね。クレイジーだよ。
—なるほど。それでは音楽的なキャリアについてお訊きしたいと思います。まず、マクロスMACROSS 82-99という名前で活動を開始したのはいつ頃からなのでしょうか?
2013年の頭ぐらいだったと思うんだけど、プロジェクトを始めたキッカケは、ただ自分の頭の中にある音楽的なコンセプトを実際に表現してみたかったからなんだ。君の知っている通り僕は日本の音楽に強く影響を受けていて、それを形にしたかった。
—では、そもそも音楽も含めて日本のカルチャーに興味を持ったキッカケは何だったのでしょうか。
日本のカルチャーと出会う最初のキッカケとなったのは僕の父だね。僕の父は日本の映画の大ファンだったんだ。それで僕にも日本の映画を見せてくれるようになったんだけど、初めて観た時が具体的にいつ頃だったかはわからないし、この感覚はなんと言葉に表して良いのかわからないけれど……とにかく、とても感動したんだ。子供のころに観た僕にとってはガツンと頭を打たれたような、そんな衝撃だった。あと、もちろん音楽にも心を打たれたんだよね。それが始まりかな。
—その最初に見せてもらった映画のタイトルは覚えていますか?
イエス。『AKIRA』だよ。
—『AKIRA』やその他の日本の映画は、メキシコではポピュラーな存在だったのでしょうか?
いや、全くもって有名ではないね。いわゆる”クールな人たち”の間では流行っていたようだけど、いわゆるサブカルチャーだよね。
—そこから自分のプロジェクト、マクロスにはどうやってたどり着いたのでしょう?
ここにたどり着いたのはどちらかというと音楽、Vaporwaveの影響があると思う。2012年〜2013年辺りにVaporwaveを聴いていたんだけど、その日本的なアートワークに強く惹かれたんだ。当時ちょうど何か新しい音楽プロジェクトをやりたいと考えていた僕にとっては、まさに「これだ!」と思うものだった。僕にとってVaporwaveのアートワークはどこかノスタルジーを感じさせるものだったんだ。Vaporwaveから感じたものと、父が教えてくれたものを一緒にしたのが今のマクロスなんだよ。
—なるほど。Vaporwaveのアートワークや映像というのは、主に日本の80〜90年代くらいの頃のものをサンプリングしたものが多いですよね。そういったものを日本人が観て、ノスタルジックを感じるのは自然なことだと思うのですが、なぜ遠く離れたメキシコのあなたがそういったものからノスタルジーを感じたのでしょうか?
正直に言ってそれを説明するのはとても難しいけれど、それはたぶん父の影響だと思う。昔、父が僕に日本の何か、具体的には憶えていないんだけど、写真や絵を見せてくれたんだ。そのとき僕はそれを完全に理解することはできなかったんだけど、すごく印象的で、自分の心の中にずっと残っていたんだよね。今でもその記憶に残っている日本のイメージが、僕の音楽を作るときのインスパイア源になっているんだ。だから日本的なイメージを見ると、そういった気分になるんだと思う。
—話は変わりますが、あなたのアーティスト名に入っている「82-99」という年号の意味は?
『マクロス』のアニメを放送していたときのチャンネルが82で、それが開始されたのが99年だからだよ。
—なるほど。では、DTMを始めた経緯を教えてください。
マクロスを始める前にもいくつか音楽プロジェクトというかバンドを実はやっていて。ギター、ドラム、ベース、なんでもプレイしていたんだよね。その頃の僕はDaft PunkやJusticeとかのフレンチ・エレクトロ〜ディスコっぽい音楽を聴いていたこともあって、それらにとてもインスパイアされた感じの音楽をやっていたんだけど、しばらくしたらもっと彼らのような、よりダンサブルな音楽に近づきたくなったというか、バンドよりもプロデューサーとして音楽をやりたくなったんだ。そこからラップトップを買って、Daft PunkやJusticeの音楽をサンプリングして作曲を始めた。彼らの音楽は僕がサンプリングで音楽を作っていくにあたってもすごくお手本になったよ。
—PCを使って音楽を作りだした最初の頃から、今のようないわゆる”Future Funk”と呼ばれるようなサウンドだったのでしょうか?
いや、違うね。マクロスをやる前はさっき話したようにフレンチ・ディスコの影響を受けていたから、そういった感じの曲を作っていたんだ。もっと踊れる90’sのダンスっぽい感じの曲だね。でもそのうち、そういった曲を作ることに飽きちゃったんだ。同じようなメロディーの繰り返しだから、簡単過ぎたんだよね。それがマクロスとして今のような音楽スタイルを始めたキッカケかな。DTMを始めた当初はサンプルをベースとしたディスコ、ハウスのプロデューサーになりたかった。そしてその後Vaporwaveにガツンとやられた。その2つの要素を足してみた結果がFuture Funkという今の音楽スタイルに結実したんだ。
—先程Vaporwaveのアートワークにとてもインスパイアされたとおっしゃっていましたが、音楽的な面ではどうでしたか?
初めてVaporwaveの音楽を発見して聴いてみた時は、とても新しい、新鮮なものに感じたね。僕自身も他の人々にこの説明できないような気持ちを与えることができるような音楽を作りたいと思ったよ。
—あなたがマクロスとして音楽を作り始めたちょうどその辺りから、世界中で同時多発的にFuture Funkと呼ばれるサウンド・スタイルを持つアーティストが台頭してきたかと思うのですが、当時このようなシーンの盛り上がりをどのように感じていましたか?
うーん……難しい質問だね。僕はVaporwaveを聴き出したぐらいの頃と同時に、僕よりも先にFuture Funkをやっていたアーティスト、例えばSaint Pepsi(現・Skylar Spence)やHarrisonの音楽に出会っていたんだ。僕はトラックを作る上で彼らの音楽からとても強く影響を受けた。単純にVaporwaveよりもFuture Funkの方が踊れてハッピーなサウンドだよね。だからこそ、Future Funkの音楽は急激にポピュラーになったんじゃないかな。難解だったり悲しい曲を聴くよりも、踊れて楽しい方が誰でもいいよね。
—日本のカルチャーとの出会いは先ほどお訊きしましたが、そこからどうやってさらに深く掘っていったのか教えてください。
やっぱりYouTubeだね。YouTubeは他の人たちがプレイリストを作ってくれていたり、システムが関連する曲、似たようなテイストの曲を自動でレコメンドしてくれるよね。だから1曲気に入った曲を見つければ、そこから似たような曲どんどん掘っていけるんだ。例えば角松敏生の曲を1曲選んで、そこから他の曲、他の曲にどんどん飛んで行くようにね。実際僕が今好きな曲がどのぐらいYouTubeで出会ったものなのかはわからないけど、YouTubeは音楽と出会うためのとても良いツールだっていうことは間違いないよね。
—今回の来日公演はDJとしての出演ですが、DJとしてのキャリアはいつ頃からスタートさせたのでしょうか?
始めたのは2014〜2015年ぐらいかな。僕の音楽を聴いてくれた友達がパーティーをやっていて、「僕のパーティでちょっとプレイしてくれない?」みたいな軽い感じで誘ってくれたんだ。でも初めてやったときは難しいと思ったよ。しかもFuture Funkはその頃ポピュラーなジャンルではなかったから、その時はディスコとかをかけたんだ。でもそれはつまらなかったね。そこからもっと自分が本当に今好きなテイストの音楽でプレイしてみたいなと思ったし、お客さんにももっと僕のプレイに集中してほしいな、って思ったんだ。その後いくつか場数を踏むうちに、DJとしても慣れてきて今のスタイルを確立したっていう感じかな。とにかく、クールなことがやりたかったんだよね。
—では、実際エージェントなどを付けて、プロのDJとして活動し始めたのはいつぐらいからなのでしょうか?
実はかなり最近のことなんだ。去年ぐらいからかな。
—既に他の国でもプレイしているのでしょうか?
数ヶ月前にリマ(ペルーの首都)でプレイしたよ。それで今日本に来ていて、これから香港でプレイしてくる。ヨーロッパの方にも近いうちに行けたら良いなと思っているよ。今年はなんだか僕のDJ人生でとても素晴らしい年になると思うね!
—先ほど名前が挙がったSkylar Spence(Saint Pepesi)やHarrisonといったFuture Funkシーンから出てきたアーティストは、どんどん音楽性も変化し、様々なフィールドで活躍するようになりましたよね。今後あなたのサウンドやスタイルはどのようなものになっていくと思いますか?
まさに今作っている音楽はこれまでとはちょっと異なるものになっているんだ。それは別に僕がFuture Funkをつまらないと感じたからではなくて、何かもっと新しいサウンドを作りたいと思ったからだし、まさしくHarrisonやSaint Pepsiの新しいサウンド・スタイルにインスパイアされたからでもある。彼らの音楽は本当に素晴らしくて、アーティストというよりもプロデューサーとして尊敬しているんだ。僕の次のアルバムはもっとHip Hopの要素を盛り込んで、これまでと比べるとFuture Funkの要素は薄まったものになると思うよ。
—あなたは初期の頃から様々なFuture Funk、Vaporwave系アーティストとコラボしてきましたが、今後もコラボの予定はありますか?
今作成中のアルバムには、何人かのメキシコのアーティストと一緒に制作している曲もあるんだ。地元の仲間たちとやりたくてね。あとは、決まっているわけではないけどたぶんHarrisonとなにかやると思う。でも今のところはメキシコの、地元の仲間たちとやる予定だね。
—メキシコにもそういったFuture Funkのような音楽を共有できるコミュニティなどはあるのでしょうか?
そうだね、メキシコでは大きなコミュニティはないけれど、Future FunkやVaporwaveをシェアできる友人は数人いるからね。
【マクロス MACROSS 82-99 DJ Set List at #POOL924 , LOUNGE NEO】
Macross 82-99 & Lotus Cloud – Back At It (Ft Le Real)
Conscious Thoughts & Android Apartment – Make Love
LBCK – Carpe Diem (Ft. C Plus)
Yung Bae – I Want You Back
Skylar Spence – Fiona Coyne
Anamanaguchi – Pop It
Macross 82-99 – Horsey (Ft Sarah Bonito)
Macross 82-99 – Bad Girl (Ft. Lancaster)
Flamingos & Yung Bae – Groovin’
Macross 82-99 – This Feeling (Ft. Soul Bells)
Tanuki – Baby Baby
Dan Mason – Flavor
Macross 82-99 – Fun Tonight!
Kane West – Don’t Stop
Kero Kero Bonito – Cat vs Dog (Kane West Remix)
Facy Sedated – Spaghetti
Herzeloyde – Distracted
Geotheory – Mind Control (ft Ramzoid)
Kero Kero Bonito – Lipslap
Harrison – Mugen
Conscious Thoughts – Starstruck
LBCK – Real Caviar (ft. Chuuwee)
Superset 420 – Booty Bounce
Yung Bae – 私は愛に ハイです (Macross 82-99 Edit)
Macross 82-99 – ッ(Ft. UPPER)
【マクロスMACROSS 82-99】
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