INTERVIEW

Klan Aileen

「迫力」や「ハイブリッドな豊かさ」からは敢えて遠ざかる。全てを突き放すかのような新作で目指した、Klan Aileenの音作りとは 

Klan Aileenが5月に3作目となるニュー・アルバム『Milk』をリリースした。

松山亮(Vo./Gt.)と竹山隆大(Dr.)の2人編成になって久しいKlan Aileen。本人たちが意図するところではないと思うが、彼らは安易なトレンドなどへの目配せを感じさせることもなく、常に周囲から一定の距離を置いているかのような、孤高の存在感を放ち続けてきた。そして、それが故に文脈付けて評ずるのが非常に難しくもあり、同時にそこがまた魅力でもある。本作はそんな彼らの独自性を推し進め、より鋭角的に研ぎ澄ましたかのような作品だ。

今回はそんなKlan Aileenの松山と竹山の両名にメール・インタビューを敢行。その回答の端々からは他者を突き放すかのようなニヒリズムを感じさせつつも、音作りにおいては冷静な現状分析も行っていることも伺える、貴重な内容となった。

Interview & Text by Takazumi Hosaka


――前作リリースからこの1年半ほどの期間は、Klan Aileenにとってどのような期間だったと言えますか?

松山:特に変わり無く、良い音楽を探しながら、バンドをより良くするには。みたいな生活でした。

竹山:巨大資本、構造、プアワーカー、音楽キャリアと日常生活のズレ、非常に嫌気が差していました。

――その期間において、Klan Aileenとして目指す方向、もしくは自分たちのアイデンティティに変化は起きたと思いますか?

松山:アルバム制作の途中で目指す方向が変わったという感じで、レコーディングに入った段階では、前より良い曲をより良い音で録ろうと思っていただけで、作品も前作の延長線上にあるようなものが出来ると思っていました。

竹山:多角的に捉えて盲信しないこと。何事にもフラットであること。音楽ジャンルの大横断もかなりするようになりました。

――レコーディングとMIXは昨年の9月から今年2月までと記されていますが、その5ヶ月ほどの期間で方向転換するタイミングがあったと。

松山:いや、そもそも一番最初のレコーディングは5月で、そこから2人で「これじゃない気がする」ということになり、曲を改めていちから作り直す作業を9月から始めたんです。その中で、太鼓の音に竹山から割と明確な要望があって、その音色に合うアレンジにしようというところから開けていった感じです。

――本作はデッドなドラム、ささくれ立ったギターの音色がとても印象的です。サウンド・プロダクションにおいて、目指していた指標、指針のようなものを言語化するとしたらどのようなものになるでしょう?

松山:太鼓の音は完全に竹山の要望で、僕はそれを割とオフマイクで録りたかった。ロック・バンドではない音をロック・バンドの録り方をしたらおもしろいんじゃないかと思って。あと、最近の海外のロック・バンドのドラムの音が似通っているように感じて、今は迫力とかハイブリッドな豊かさみたいな部分に、ロックのおもしろさはないんだなと思ったので、そこから遠い音にしたかったです。

竹山:ドラムにおいては、古典の音を現代の感覚で蘇らせること。大雑把に言えばデッドと捉えられるかもしれませんが、ふくよかなミドルを意識しながら音を作りました。

――レコーディング時の新たな機材面でのこだわり、工夫した点などを教えて下さい。

松山:機材は前作と同じもので、実際に鳴っている音にこだわって作ったという感じです。録りでどうにでも作れると思ってたんですけど、鳴ってる音は録った後では変えられないということにようやく気づきました。あと、さっき話したのと同じ理由でギターに関しては全部ラインで録りました。

竹山:新たではないんですが、ドラムはかなり工夫しました。どうやったらあの音になるのかという質問に対して「実は……」と答えるとかなりビックリされます。確か松山のアイデアなんですが、あれが本当バシッとハマりました。詳しいことは直接聴いてください(笑)。

――ミックス時に意識した点、そして苦労した点は?

松山:ドラムをミュートし過ぎて、ドラムに聴こえなくて苦労しました。キック、スネア、エアの4トラックを同時に再生してもホントに「トッ、コン。トッ、コン」みたいな感じだったので、キックとエアの2トラックをカセットテープに突っ込んでそれをパソコンに戻して、みたいなことをしました。マイクを6本立てても、実際に使ったのは2、3本という曲が多くて、立てたマイクを全部使った曲はないです。「心配性」と「Ovni」のギターと「元旦」のピアノは階段の上から流して、階段の真ん中くらいにマイクを立てて録ったりしました。

――プレス・リリースには今作のサウンドを表すに際して、Susumu Yokota『Acid Mt Fuji』、Yves Tumor『Serpent Music』と、2つの作品名が挙げられていました。実際にこれらの作品は今作に影響を及ぼしていますか?

松山:『Acid Mt.Fuji』をロック・バンドでやる、がコンセプトでした。Yves Tumorに関しては本当に良く聴いていて、「The Feeling When You Walk Away」という曲がドラムとギターと歌で成り立ってるなと思って「脱獄」にあの感じを落としこもうと思ったんですが、実はベースが超重要であの感じは出せませんでした。『Acid Mt.Fuji』も『Serpent Music』も曲中に環境音がいっぱい入ってて、それはやりたいなと思ってました。

竹山:どちらの作品もアンビエンスの下で鳴ってるリズムをどういった譜割りで作るのかを考えました。いわゆるオーソドックスな8ビートが効果的に作用する作品を作ろうとは思っていなかったので。

――上記以外で、制作期間中によく聴いていた作品などがあれば教えて下さい。

松山:This HeatとBohren & Der Club Of Gore、DJ Krush、Lotto、Dungen、Krakatauなど。

竹山:Clara Mondshine『Luna Africana』、Robert Wyatt『Rock Bottom』、The J.B.sの全ての作品

――リリックはより砕けたというか、口語体のような表現が増えたように思いました。何か作詞面におけるアプローチの変化があったのでしょうか?

松山:歌詞に関しては相変わらずこだわりがないのでよく分かりません。

――「脱獄」、「心配性」、「Infra」などではこれまでに以上にボーカルが前面に出ていると思いますが、何かボーカルに対する意識に変化はありましたか?

松山:ボーカルが真ん中にドンとあるのをカッコいいなと思うようになったというのはあります。というか、前作が聴こえなさ過ぎたという反省もあります。

――すでに様々なところで言及されていると思いますが、「元旦」では以前よりKlan Aileenが持っていたミニマルな反復要素をより研ぎ澄まし、もはやテクノを想起させる域にまで到達しています。この曲からはギターとドラムの2人組であることの可能性を拡張せんとする意思のようなものを感じましたが、実際におふたりにはそういう考えや、話し合いは行われましたか?

松山:いえ、この曲にこんなにリアクションがあること自体想定していませんでした。「ここで寝るだろうな」とか、そういう遊びに近い感覚で作ってました。

――一方でブルージーな「Ovni」は、アシッド・フォークのような趣もあり、今作にアクセントを付ける役割を果たしていると思います。唯一の英詞ですし、この曲だけ異質な印象を持つ人も多いと思うのですが、この曲をアルバムに入れるにあたって、何か狙いや意図はありましたか?

松山:硬質な音楽を参照しながら作っていたので、プリミティブな人間味のある曲がひとつ欲しいなとは思っていて、アコースティックな「歌モノ」というか。Pixiesのうるさい部分を全部抜いた感じになったなと思ってます。

――今作を『MILK』と名付けたのはどのような考えから?

竹山:タイトルに関してはポピュラリティーのある言葉にしようという話で、アルバムを聴いた印象を日常にあるもので連想するゲームなんかをやってました。

松山:食べ物を連想させるアルバムは良いという話になって、アルバム自体は色としては白かなと思っていたので、それを2つ合わせると「牛乳」になりました。「豆乳」っていう案も一瞬ありました。

――前回のインタビューでは「2ピースとしての限界を拡張したい」といったことをおっしゃっていましたが、今作を1年半前の自分たちが聴いたら、どんな感想を抱くと思いますか?

松山:「おー、音こだわったねぇ!」

竹山:「明るくなったなぁ」


【リリース情報】

Klan Aileen 『Milk Sessions』
Release Date:2018.06.24 (Sun.) ※
Tracklist:
Price:¥1500 (Tax in)
1. 1st Take Is The Deepest
2. 平坦
3. 遠ざかるものたち
4. Long
5. interlude Pt. 1
6. 水
7. Nomapi
8. Krush

※Klan Aileenのライヴ会場、MAGNIPH STOREにて販売予定

==

Klan Aileen 『Milk』
Release Date:2018.05.23 (Wed.)
Label:MAGNIPH / Hostess
Cat.No.:HSE-8040
Price:¥2,800 + Tax
Tracklist:
1. 脱獄
2. 心配性
3. 再放送
4. Infra
5. 流氷
6. 元旦
7. Ovni
8. Masturbation

※フォーマット:CD

■Klan Aileen オフィシャル・サイト:http://klanaileenband.com/


【イベント情報】

Hostess Club Presents Klan Aileen “Milk” Tour

6月24日(日)愛知・名古屋spazio rita
Open 19:00 / Start 19:30

7月1日(日)大阪・アメリカ村Clapper
Open 18:00 / Start 19:00

7月12日(木)東京・新代田Fever
Open 19:00 / Start 20:00

[制作・主催]
イーノス

[協力]
MAGNIPH/ホステス・エンタテインメント

チケット:オールスタンディング ¥3,500 (税込・1D別途)

■公演詳細:http://ynos.tv/hostessclub/schedule/20180624.html

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