INTERVIEW

iri

「自分の感情をあるがままに」――新作『Shade』で立ち返ったiriの原点

iriが待望の3rdアルバム『Shade』を3月6日(水)にリリースした。

これまでにも気鋭のプロデューサー勢との共作というスタイルで、数多くの作品を発表してきたiri。本作では、大沢伸一を始め、tofubeats、grooveman Spot、Shingo.S、三浦淳悟(PETROLZ)、澤村一平 & 隅垣元佐(SANABAGUN.)らが初参加し、iriのサウンドに新たなエッセンスを注入している。

これまで以上にヒップホップへと大きく接近した曲や、ジャジーかつアーバンな表情を見せる曲まで、より多彩な表情をみせる新作『Shade』。今回はそんな本作の制作に際した精神面を訊いた。

Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Haruna Aoi


――3rdアルバム『Shade』のリリースおめでとうございます。アルバムの話に入る前に、昨年発表のシングル『Only One』から、これまでの期間を振り返ってみたいと思います。アルバム制作からイベント出演など、忙しくされていたと思うのですが、実際にはいかがでしたか?

シングル『Only One』が8月に出て、今回のアルバム制作もそうですけど、初の自主企画もあったので、結構あっという間に時間が過ぎていってしまったという印象です。自主企画は東名阪で開催させて頂いて、tofuさんやKEIJUさん、唾奇さん、STUTSさん、SIRUPさんといった豪華なアーティストのみなさんと一緒のステージに立てて、すごくよかったですね。私も普段から彼らの音楽はよく聴いてますし、音楽もただカッコいいだけじゃなくて、すごく強いメッセージ性みたいなものを感じるんですよね。そういうところに惹かれて、オファーさせて頂きました。

――今回のアルバムは、タイトルにも表されている通り、「自分の中にある影をあるがままに表現」した作品になっているとのことですが、そのような思考に辿り着いた経緯を教えてもらえますか?

私が初めて作詞作曲をやり始めた頃に作った曲って、当たり前ですけど聴いてくれる人のこととかを全く考えずに、ただ自分の言いたいこと、表現したいことを曲にしていたんです。それが活動の規模が大きくなっていくに連れて、「もっとポジティブな言葉にした方がいいかな」と意識するようになっていってたんです。でも、ある時ふと「それって何か違うかも」って思ったんです。自分の中にある暗い部分も、あえてポジティブにしなくてもいいんじゃないかって。自分の感情をあるがままに伝えた方が、いい作品が作れるんじゃないかなって考えるようになりました。

――それは何かキッカケだったり、トリガーになった出来事などがあったというわけではなく?

去年、NIKEさんとのタイアップで、人の背中を押すような作品を作らせて頂いたんです。もちろんそれも私の中から自然に出てきた想いなんですけど、それから時間が経って、いつの間にかそこで出来上がったキャラクターを演じているような感覚になることがあり、それって私っぽくないなって思ったんです。だからといって、別に暗い曲を書いたつもりでもないんです。色々なことを考えすぎずに、もっと純粋に自分の内面と向き合ってみようと。

――そういった本作におけるテーマのようなものが見えてきたのは、タイトル・トラックとなる「Shade」が出来上がった時なのでしょうか?

基本的に今作の楽曲はほぼ同時期に出来上がったものが多いので、特別そういうわけではないですね。同時進行で複数の曲を作っていくうちに、見えてきたという感じです。

――「Shade」は大沢伸一さんと初のコラボということでも話題となりました。この楽曲はどのように生まれていったのか教えてもらえますでしょうか?

3rdアルバムをリリースするにあたって、これまで私の作品を聴いてくれていた方々も、思わずハッとするような曲をリードにしたいっていう考えがありました。大げさに言ってしまえば、ファンの方が引いてしまうくらい、インパクトのある曲を作りたかったんです。大沢さんと一緒に作りたいと思ったのは、彼のソロ名義の作品のテイストが、その時に考えていたイメージとすごくリンクしたからなんです。なので、最初は音色とかも攻めた感じで、ビートもバキバキな曲を作っていたんですけど、制作途中で大沢さんからいきなり「思いっきり音数を絞ってみたらどうかな」っていう意見が上がりました。「近年のテレビやラジオでかかるような曲って、ノリがよくて踊れるような音楽が主流だけど、そういうところで音数も少なくて、iriの声が前に出てるような音楽が流れてきたら、僕だったら気になると思うし、僕はそれを聴いてみたい」って言ってくれたんです。そこからグイッと方向転換して、無駄な装飾を削いだシンプルなサウンドで作り上げていきました。その後もお互いの意見を交換し合いながら、〆切ギリギリまでふたりで練って。大沢さんも「絶対後悔したくないから」って言ってくれて、最後まで付き合ってくれました。すごい時間はかかったけど、その分納得のいく作品にできたのかなって思います。

――大沢伸一さんとの作業で、印象に残っていることはありますか?

これまで、レコーディングの時に誰かからの指示を受けて歌録りするってことがあまりなかったんですけど、この曲に関してはレコーディングの時に、私のボーカルの癖とかについて「そこは少し抑えめで」とか、「フェイクっぽい感じに持っていかないで」とか。そういうアドバイスをくれたんです。結果として曲にもメリハリができたし、そういう的確なディレクションはすごく勉強になりました。今後の自分の制作にも生かしていけるんじゃないかと思います。

――続く「Wonderland」と「Common」に関しては、これまでのiriさんの作品の中で最もヒップホップに寄った楽曲と言えると思います。後者に関しては完全にラップ・パートと呼べる箇所もありますよね。

そうですね。今も昔も普段からヒップホップはよく聴いているので、これも自然な変化のうちかなと思います。トラックに関しては、(本作で「Wonderland」「Keep on trying」を手がけた)ESME MORIくんには一応リファレンスになる曲があって、プラス「タイトめなビートで」という大雑把な要望だけお伝えしました。MORIくんとはこれまでにも何回も一緒に制作をしているので、結構言わなくても伝わる部分があるんですよね。STUTSくんが手がけた「Common」に関しては、実は最初私が「Garage Band」で作っていたデモを元にしているんです。そのデモがすごく暗い感じのトラックだったんですけど、それをSTUTSくんに送ったら、「もっと明るい感じにしたい」って言ってくれて。でも、歌詞はどうしても変えたくなかったので、トラックだけガラッと雰囲気を変えました。歌詞に「our train」っていうラインがあるんですけど、そこにかけてSTUTSくんが電車の音も入れてくれました。

――「歌詞はどうしても変えたくなかった」とのことですが、それだけ強い想いがこの曲にはあったのでしょうか?

基本的にトラックに合わせて歌詞を変えることはあまりしたくないんです。

――「Common」の歌詞はセンチメンタルな感情を刺激する内容で、どこか物語を想起させる部分もあります。これはご自身の実体験などが元になっているのでしょうか?

そうですね。ただ、この曲の歌詞に関しては、珍しく書き溜めていたものを使っています。元々溜めていたリリックをくっつけて完成させました。

――先程も言ったように、ラップに接近したフロウが増えていると思うのですが、そういった自身のボーカルにおける変化は、歌詞を書く上で何か影響が及びますか?

いえ、特にないです。ラップっていう意識では書いていないですし、(歌詞の書き方は)昔も今も一緒っていう感じです。ただ、やっぱり自分が歌っていて気持ちいい乗せ方を見つけるまでは、じっくり時間をかけて考えます。

――grooveman Spotさんが手がけた「cake」やtofubeatsさんプロデュースの「Flashlight」は、一転して4つ打ち調のポップなサウンドです。中でも、tofubeatsさんとは初の共同制作になりますよね。こちらはいかがでしたか?

そうですね。tofuさんは自主企画にもお呼びしましたし、元々作品をずっと聴いていたので、「いつかご一緒したい」とは考えていて。今回、それが実現しました。最初はKEIJUさんとの「LONELY NIGHTS」みたいな感じになるかなって想像してたんですが、結果としては全然違う感じに仕上がりました。その意外性も含めて気に入っています。

――tofubeatsさんとはどのようなやり取りを?

最初に私が3つくらいコードを指定させて頂いて。そこからトラック作ってもらって、私がサビを作って、っていう感じのキャッチボールで作り上げていきました。何かちょっと「宇宙っぽい」というか、そういう不思議なイメージで書いた曲です。「LONELY NIGHTS」みたいなヒップホップではないんですけど、これも私がやりたかったこととしっくりハマったなって思いました。

――個人的にはKan Sanoさんがアレンジを手がけた7曲目の「飛行」からアルバムのムードが変化するような気がします。Shingo.Sさんが手がけた「Sway」や三浦淳悟さんなどが加わったジャジーな「mirror」など、生音のグルーヴを生かした、よりアーバンなサウンドが中心になっていくなと。

特に意識はしていなかったのですが、言われてみればそうかもしれません。ESME MORIくんと作った「Keep on trying」も、ギターが中心のメロウな曲ですし。最後の「mirror」は、元々ジャズっぽい曲をやってみたいという気持ちがあって、今回はPETROLZ・三浦淳悟さん、Kan Sanoさん、SANABAGUN.の澤村一平さん、隅垣元佐さんっていう自分の好きなプレイヤーの方と一緒にスタジオに入って、セッション的な方法で作り上げていきました。

――今日的なヒップホップ、R&Bを下敷きにしつつも、ジャジーだったり、ラウンジ的要素だったりと、様々なジャンルをスムーズに横断するのがiriさんらしいですよね。

音楽ジャンルって、今はもう気にしない人が多いんじゃないかと思っています。もちろん、言葉で説明するためには細かく分けられた名称とかがあると便利なんですけど、わたしはそこには縛られていたくないですね。

――アルバム全体の話に戻るのですが、ポジティブな部分もネガティブな部分も、包み隠さずに表現するということに関して、恐怖心やプレッシャーのようなものは感じませんでしたか?

以前、「自分の作品がリスナーにどう受け止められるかがわからないですよね。それって怖くないですか?」って聞かれたことがあるんですけど、それを怖がっていたら、こういう音楽活動はまず不可能だと思います。勇気を振り絞って自分を表現しないと、やっている意味もないんじゃないかなって思うんです。

――確かに。

誰かに何かを伝えたいわけではなくて、自分がその時に思っていたこと、感じていたものを作品として形に残していく。それをたまたま誰かが聴いて、何かを感じてくれたらいいかなって思います。何を感じるか、どう受け取るかは聴き手に委ねたいです。

――曲を書く、音楽を作るという行為は、iriさん自身にとってどういった作用をもたらすと思いますか?

曲を作ると、すごく(自分が)楽になるんですよね。日々の生活の中で抱える様々な感情を、私の場合は人に上手く話すことは中々できないから、それを音楽にする。そうすると、気持ちがスッと軽くなる。これは音楽を作り始めた時にも強く感じていたことなんです。

――アルバム・リリース後はツアーの開催を控えていますが、意気込みなどはいかがでしょうか?

今回は生楽器のサウンドが増えたので、それをどう再現しようか考えています。自分のパフォーマンス自体も、より進化させなければいけないなって考えているところです。

――DTMに関しても引き続き勉強中でしょうか?

「Ableton Live」を勉強してるんですけど、難しくて中々……(笑)。Garage Bandでは今でも作り溜めしているんですけど。それと同時に、ギターで作れる曲も今後は増やしたいと思っています。

――今作で、ギターで作った曲はありますか?

「飛行」の1曲だけですね。

――今後は昔の作り方に回帰するかもしれないと。

そうですね。もっと勉強して、より自分らしい作品、自分が納得できる作品を作れるようにしたいです。


【リリース情報】

iri 『Shade』
Release Date:2019.03.06 (Wed.)
[完全生産限定盤](CD+Tシャツ) VIZL-1537 ¥5,500
[初回限定盤](CD+DVD) VIZL-1538 ¥3,700
[通常盤](CD) VICL-65134 ¥2,900
Tracklist:
1. Shade  produced by大沢伸一
2. Only One arranged by Yaffle(Tokyo Recordings)
3. Wonderland arranged by ESME MORI(Pistachio Studio)
4. Common arranged by STUTS
5. cake arranged by Grooveman Spot
6. Flashlight produced by tofubeats
7. 飛行 arranged by Kan Sano
8. Sway arranged by Shingo.S
9. Peak arranged by ケンモチヒデフミ(水曜日のカンパネラ)
10. Keep on trying  arranged by ESME MORI(Pistachio Studio)
11. mirror  arranged by 三浦淳悟(PETROLZ)、澤村一平 & 隅垣元佐(SANABAGUN.)

※完全生産限定盤(CD+Tシャツ)(VIZL-1537)は、KYNEの描いたイラストのTシャツ付となります。
※画像はイメージの為実物と異なる場合がございます。
※TシャツのサイズはLサイズとなります。
※完全生産限定商品につき、生産数に達し次第予約終了となる場合がございます。

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※画像はイメージの為実物と異なる場合がございます。

キャンペーン詳細


【イベント情報】

iri Spring Tour 2019 “Shade”

日時:2019年4月5日(金) OPEN 18:30 / START 19:30
会場:東京・EX THEATER
[問]クリエイティブマンプロダクション 03-3499-6669

日時:2019年4月7日(日) OPEN 17:00/START 17:30
会場:札幌・DUCE SAPPORO
[問]ウエス 011-614-9999

日時:2019年4月11日(木) OPEN 18:30 / START 19:00
会場:高松・DIME
[問]デューク 089-947-3535

日時:2019年4月13日(土) OPEN 16:00 / START 17:00
会場:梅田・CLUB QUATTRO
[問]清水音泉 06-6357-3666

日時:2019年4月14日(日) OPEN 17:00 / START 17:30
会場:名古屋・CLUB QUATTRO
[問]サンデーフォークプロモーション 052-320-9100

日時:2019年4月16日(火) OPEN 19:00 / START 19:30
会場:仙台・MACANA
[問]クールマイン 022-796-8700

日時:2019年4月18日(木) OPEN 19:00 / START 19:30
会場:浜松・FORCE
[問]サンデーフォークプロモーション静岡 054-284-9999

日時:2019年4月20日(土) OPEN 17:00 / START 17:30
会場:広島・セカンドクラッチ
[問]キャンディー・プロモーション 082-249-8334

日時:2019年4月21日(日) OPEN 17:00 / START 17:30
会場:福岡・BEAT STATION
[問]キョードー西日本 0570-09-2424

前売り ¥3,900 /当日 ¥4,400 (各1D代別途)

※4月5日(金)EX THEATER公演のみ、指定 ¥4,400 / ¥4,900 (各1D代別途)もあり

チケット一般発売日:2019年2月2日(土)10:00~

iri オフィシャル・サイト

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