Anderson .PaakがUniversal Musicと共同で立ち上げた新レーベル〈APESHIT Inc.〉と名門〈BLUENOTE〉と契約を果たした新星、DOMi & JD BECK。
SNSにUPした演奏動画で大きな話題を呼び、昨夏には1stアルバム『NOT TiGHT』をリリース。先述のAnderson .Paakをはじめ、ThundercatやHerbie Hancock、Busta Rhymes、Snoop Dogg、Mac DeMarcoなど、世代やシーンを超えた豪華な面々が参加し、第65回グラミー賞では「最優秀新人賞」を含む2部門にノミネートされるなど、多方面からの注目を集めた。
そんな若き俊英が現在来日中。東京・南青山Blue Note Tokyoにて5月12日(金)まで3日間にわたる公演を行うほか、今週末開催の『LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL JAPAN 2023』への出演も果たす。本稿では来日直前にオンラインで行ったショート・インタビューをお届けする。(編集部)
Interview & Text by Naoya Koike
Photo by Official
――先月開催された『Coachella』でのパフォーマンスを映像で拝見しました。まずは改めて出演の感想からお願いします。
DOMi:とてもよかったです。
JD Beck:そうですね。そして砂漠で信じられないほど暑かった(笑)。
DOMi:あまり『Coachella』について知らなかったので、いつものように演奏しようと行ってみたら、想像以上に巨大なフェスで。それでいてしっかりとオーガナイズされていて、驚きました。
JD Beck:想像していたよりも多くのオーディエンスが集まってくれて、楽しかったです。
――オフィシャルでアーカイブ映像がUPされている「SMiLE」は、あなたたちのデビュー・シングルで、これまでに何度も演奏されてきたと思います。そのなかで表現が変化したりは?
DOMi:アルバム版はJDのドラム・ソロがあるものの、基本的には作曲したままの演奏になっています。でも、今はメロディを弾いてからのBセクションで私がソロも取っていたり、よりクレイジーに演奏できるようになりました。
JD Beck:自然発生的にそうなりました。曲をどう弾けばいいか理解できてきたし、自信もついてきたからかもしれない。最初の頃は正確な演奏を心掛けていたけど、今はそこまで意識しなくて大丈夫になったので、よりクールな決断もできるようになりました。今は常にプレイのなかで新しい何かを探そうと試みています。
――また演奏時にDomiさんはタブレットではなく紙の譜面を使用している一方、Beckさんは暗譜でコントラストを感じました。
JD Beck:正反対ですね。
DOMi:頭が真っ白になるのが怖いんです。メンタル的なことだと思いますが、何か助けが必要で譜面を見ています(笑)。
JD Beck:僕は譜面を観ながら演奏できないんです。以前はできたんですけど、プレイの内容が同じになるのが嫌で。だから目を閉じているか、DOMiを見つめています。
DOMi:タブレットを使わないのは、私が紙で使っているA4サイズのものが見当たらないことと、持ち運ぶときに気を遣わなきゃいけないから。
JD Beck:今は本を持ち歩く人が少ないし、紙の方がカッコいいよね。
DOMi:そう、オールドスクール!
――なるほど。1stアルバム『NOT TiGHT』のリリースから10ヶ月ほどが経ちましたが、作品全体を振り返ってみていかがですか。
DOMi:まだ10ヶ月しか経ってないなんて信じられません。もう10年くらい前に感じる。
JD Beck:本当に大昔のことのようです。ある意味、僕らが命を吹き込んだものだなと今は感じます。馴染んだ魂の断片であり、今はもう自分が書いたものではないという気さえする(笑)。
DOMi:もう次の作品の準備をしているので、余計そう感じるのかも。収録曲の制作は5年前から始まっていたので、私たちにとっては初めて聴く人ほどフレッシュな音楽ではなかったですし。でも、ライブで弾くのは常に楽しいしワクワクします。
JD Beck:とはいえ、音源はもう聴けないですね……。少なくとももうしばらくは。落ち込んでしまうので(笑)。今は演奏しながら、新しい命を吹き込んでいる感じ。それはとても気分がいいし、新曲を書くこともエキサイティングですね。自分たちから出た新しいピースが……
DOMi:新しいどこかに連れて行ってくれる。
JD Beck:そう。出産が始まった感じ(笑)。
――なぜ音源を聴くと落ち込むのでしょう?
DOMi:もう何度も聴き過ぎたからですね。曲を書くのは簡単だけど、辛い作業でもあります。ある意味でPTSDみたいになる。
JD Beck:すべてのいい感情と悪い感情がぐちゃぐちゃになるんです。だからこそ演奏するのが楽しいし、また聴くのも恐ろしい。
――興味深いです。では来日を控えたおふたりが日本に持つ印象は何でしょう?
JD Beck:『FINAL FANTASY』の音楽には大きな影響を受けました。最も美しい音楽のひとつだと思います。あと、僕は坂本龍一さんのファンでもあります。今日においても、彼が遺した多くの音楽から新しい発見をすることができます。
DOMi:音楽以外もあるよね。
JD Beck:そうだね。日本の近代建築には子どもの頃から魅了されてきたし、食べ物も大好き。服でいえばミハラヤスヒロさんは本当にアメイジングで、日本に行くのが楽しみ過ぎます。空のスーツケースを持っていって、1年分のワードローブや日本の色々なものを詰め込んで帰りたい(笑)。
DOMi:海外に旅行した人の話を聞くと、「よかったよ! でも、あそこは少し気になった」という感想が多いんだけど、日本に行った人は毎回「とにかく行った方がいい」って言うんです。ネガティブな感想を一切聞かない唯一の国です。
JD Beck:確かに。あとは東京にすごい数の人が歩いていたり、(日本語で)「ヤバい」って聞きます。
DOMi:夜通しやることがあるから眠れないらしいですね。
――おふたりのファッションもお洒落ですし、ステージ上に花を飾ることも多いですよね。そういった視覚的な面について、どのような意識を持たれていますか?
DOMi:私たちはあらゆる芸術的な要素を検討します。ミュージシャンはときに自分自身を音楽のみに縛りつけますが、本来は全ての物事をアーティスティックに扱うことができるし、そうすることで革新的でユニークなスタイルを見つけることができるんだと思う。
JD Beck:自分たちが強いヴィジョンを持っていることもあってか、視覚的な部分までこだわってしまうんです。たぶん、それは日本文化にもインスパイアされていると思う。例えば桜や庭園などが持っている世界観とか。一回、ステージに池と鯉を置こうと考えたんですけど、それは無理でした(笑)。そういったものも掛け合わせることで、自分たちの表現が成立するんだと思います。
――最後にブルーノート東京公演と『LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL JAPAN 2023』についての意気込みをお願いします。
DOMi:ブルーノートでは全6公演を素晴らし内容にするのと同時に、それぞれで異なるプレイを披露して、お客さんと一緒に楽しめたらと思っています。1時間15分くらいの尺だと思うので、時間いっぱいエンジョイできれば。フェスでは40分くらいしかできないので、たっぷり演奏するつもりです。
JD Beck:音楽的にもちょうどいい長さで、ライブによる『NOT TiGHT』の完璧なプレゼンテーションになりそうですね。今まで以上にいいライブにしたいと思います。『Love Supreme Jazz Festival』はブルーノート公演を終えた後なので、その頃には時差ボケも治って内容も濃くなるんじゃないかな(笑)。
――ちなみにフェスのタイトルはJohn Coltrane『Love Supreme』に拠りますが、それについて何かイメージはあります?
DOMi:クールなネーミングですね。
JD Beck:「Love Supreme」というフレーズをよく耳にするので気づきませんでした。何かそれにまつわる曲をやったらいいかもしれない。
DOMi:何かコルトレーンをオマージュするような形でできればいいかも。あとは他のアーティストとコネクションができたら嬉しいです。
JD Beck:演奏が終わってから4日間オフなので、できるかぎり色々なことを発見する時間にしたいな。
DOMi:ローカルな人たちと一緒に過ごせる時間が持てれば嬉しいです。
【イベント情報】
DOMi & JD BECK Live at Blue Note Tokyo
日程:2023年5月10日(水)、5月11日(木)、5月12日(金)
[1st] OPEN 17:00 / START 18:00
[2nd] OPEN 19:45 / START 20:30
会場:東京・南青山 Blue Note Tokyo
料金:Music Charge ¥9,900
■公演詳細
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『LOVE SUPREME JAZZ FESTIVAL JAPAN 2023』
日程:2023年5月13日(土)、5月14日(日)
会場:埼玉県・秩父ミューズパーク
※DOMi & JD BECKは5月13日(土)「THEATRE STAGE」に出演
■公演詳細
【リリース情報】
DOMi & JD BECK 『NOT TiGHT』
Release Date:2022.07.29 (Fri.)
Label:Blue Note Records / Universal Music
Tracklist:
1. LOUNA’S iNTRO
2. WHATUP
3. SMiLE
4. BOWLiNG
5. NOT TiGHT
6. TWO SHRiMPS
7. U DON’T HAVE TO ROB ME
8. MOON
9. DUKE
10. TAKE A CHANCE
11. SPACE MOUNTAiN
12. PiLOT
13. WHOA
14. SNiFF
15. THANK U