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INTERVIEW / ジオラマラジオ


「ようやく今、表現できる立場になった」――90年代生まれのジオラマラジオが語る、90年代カルチャーへの愛憎入り交じった想い

2018.08.08

東京・下北沢を拠点に活動するインディ・バンド、ジオラマラジオが初のオフィシャル・リリース作品『ZOMBIE CASSETTE』を8月4日(土)にリリースした。

早耳のインディ・リスナーの耳目を集める彼らは、ren matsumura(Vo.)、mina sakakibara(Key. / Vo.)の2人を中心に、現在はサポート・メンバーを交えた6人編成で活動している。

2015年に“RO69JACK 2015 for COUNTDOWN JAPAN”にてオリジナル楽曲「コンクリート」で入賞したジオラマラジオは、その後、音源リリース前からNHK-FM『赤い公園・津野米咲のゆうがたパラダイス』や宇多丸(RHYMESTER)がパーソナリティを務めるTBS ラジオ『アフター6ジャンクション』内の「下北沢GARAGE特集」で音源がかかるなど、業界内にてジワジワとその認知を拡大させてきた。

彼らの音楽は、USインディ的なローファイなギター・ポップとして展開しながらも、そのメロディ・ラインにはグラスゴー的なカラフルで鮮やかなポップさも感じさせる。さらに、ボーカル・renの歌唱も相まり、時折J-POP的な要素も感じさせるなど、その音楽性の広さに驚きを隠せない。

そんな彼らが今回、初の音源をリリースするということで、バンド結成のエピソードから今作について、そしてジオラマラジオのアティチュードの根底に迫る話など、笑いも交えながらラフに語ってもらった。

Interview by Takashi Komine
Photo by Takazumi Hosaka

[ L→R:ren matsumura(Vo.)、 mina sakakibara(Key. / Vo.) ]


――初めてのインタビューということで、まず始めに結成のエピソードを教えてもらえますか?

ren:結成は……「モバゲー」ってあるじゃないですか? そのモバゲーの僕の日記に、minaちゃんの足跡がついてて、「バンドやってるのでよかったら組みませんか?」って感じで……。

――え? そんなところから?

ren:ごめんなさい、嘘です。

――(笑)。

ren:普通に学校の繋がりです。僕がバンドをやりたくて、その時ちょうど彼女はドラムがやりたかったらしいんですけど、無理やりキーボードでお願いして(笑)。

mina:小さい頃からエレクトーンとピアノをやってたんですよ。

ren:バンド組むときに、ちょうどキーボードを探していたんです。もうそれ以外のメンバーは決まってて。たまたまminaちゃんに会って、「あ、そういえばキーボードやってたよね?」ってなって。「こういう時はタイミングが大事だから」ってことで入ってもらったんですけど、結果的に僕たち2人しか残らなかったという感じです(笑)。

――なるほど(笑)。ジオラマラジオは“RO69JACK 2015 for COUNTDOWN JAPAN”に入賞した時はメンバー5人編成で、その後にすぐ活動休止しましたよね。

ren:5人編成の時に、「このまま続けててもなぁ」……っていう空気になって、一回シュッとさせようってことにしたんです。2人って結構スタイリッシュでいいなって思って、2人だけで弾き語りとか、細々と1年くらい活動してました。それから新しい曲ができて、またバンドでやりたいなって思い始めたんですよ。その曲が今回EPに収録されてる「HEPBURN」なんですけど、この曲の方向性でいこうって決めて、サポート・メンバーを集めて、今に至るという感じです。

ren:僕、基本的にメンバーという概念がどうでもよくて。今のサポート・メンバーも基本固定でやってるんですけど、正式なメンバーかサポートなのかって、実質肩書だけじゃないですか。だから、それなら正直どっちでもいいなと。海外至上主義というわけではないんですけど、結構日本のバンドって、メンバーっていう形式に対してシビアだよなって思うんです。責任が重いというか。ずっと同じメンバーでやるっていう美学ももちろん素晴らしいんですけど、海外のバンドって、結局ボーカルしか残ってないけど、バンドは続いているっていうのがよくあるじゃないですか? メンバーに拘りすぎて、結果的にバンドを潰してしまうっていうことにもなり得ると思って。

――作曲は基本的にrenさんが?

ren:そうですね。ただ、僕ひとりで作っているとどうしても似通ったものができがちなので、基本的にメンバーは僕と異なる音楽が好きな方がいいと思っていて。あと、作曲する時は楽器もあまり使わないですね。ギター弾きながらだと、どうしても自分の手癖になって、その自分の手癖を超えるメロが出てこないんです。だから、ふと頭に思い浮かんだメロやアイディアをボイスメモに落とし込むっていう形を取っています。それこそ、何ていうんだろう……「僕の生活」みたいな。日常の記憶みたいな感覚が強いかもしれないですね。そのボイスメモのパーツを完璧に頭の中で組み合わせて、完成させてからパソコンに落とし込んでいます。

――ジオラマラジオというバンド名にしたきっかけは何だったのでしょうか?

ren:ギリダサいバンド名がいいなと思っていて(笑)。横文字だと分かりにくいし、覚えられないじゃないですか。だから、カタカナがいいかなと思ってまして。この名前はそれこそ17歳〜18歳の時に思いついたんですけど、適当に言葉を羅列して、「ジオラマと……ラジオ。語感いいな。キャッチーだな」って。

mina:私が入った時からジオラマラジオでしたね。

ren:初期の頃のドラマーと、大学1年生の時にカフェで話してて、「おれ、バンドとかやりたいと思っていて、バンド名だけ先に考えてあるんだよね。ジオラマラジオっていうんだけど」って言ったら、そのドラマーが「それめちゃめちゃいいじゃん。キャッチーで覚えやすいし」って言ってくれて。そこからこの名前がスタートしてますね。そのドラムがいなければ、このバンド名じゃなかった可能性もあります(笑)。

――背中を押してくれたというか。「ギリダサい」っていう基準もかなり絶妙なところですよね。

ren:そうですね。オシャレ過ぎてもなぁっていうのがあって。ギリダサいくらいの方が、単純に人に覚えてもらえやすいんじゃないかなと思って。SuchmosのYONCEとか、SEKAI NO OWARIとか、何か一発で覚えられるキャッチーさがあるじゃないですか。そういう大衆性みたいなものは、その頃から意識していましたね。

――では、今回初のオフィシャル・リリース作品となる『ZOMBIE CASSETTE』をリリースすることに至った経緯を教えてください。

ren:色々なメディアにも扱ってもらえるようになったのに、パッケージがなさ過ぎるって思ったんです。配信もしてないし、YouTubeとかSoundCloudでしか聴けなくて。なので、現状のジオラマラジオというのを真空パックする、名刺代わりみたいな作品を作ろうっていう感じですね。これもタイミングが重要な気がしていて、「今だな」って思ったタイミングでリリースしたかったんです。やっと「これがジオラマラジオだ」っていう音が完成したというか。

――今のところ、サブスクなどでの配信は予定されていないんですよね。

ren:サブスクは今後追々っていう感じですね。ただ、ダウンロード・コードは入っているので、カセットを手にとって貰えれば、あとは普通にPCなりスマホなりで聴いて頂けるかなと。あと、今回はZINEも作っていまして、それを読むと僕らがどういう感じのバンドなのかがわかると思うので。

――リリースに先駆けてMVも公開された「薄荷」についてお聞きしたいのですが、個人的にこの曲はバンドの中でも異色な曲だと感じました。

ren:自分的にはさらっとできた曲で、いい曲だなとは思っていたんですけど、最初は表立って出す曲ではないかもって思っていたんです。でも、意外と周囲の人たちから人気で(笑)。あと、本当は「HEPBURN」のMVを撮ろうと思っていたんですけど、赤い公園のギターの津野米咲さんのプッシュもあり、今回は「薄荷」のMVを作りました。

mina:MV撮ろうとしてた1週間前くらいだよね?

ren:そうそう。「より多くの人に届くのは「薄荷」だと思う」って言ってくれて、「米咲さんの言うことは全部聞きます!」って(笑)。
「薄荷」のMVはカネコアヤノさんやGateballersのMVも撮っている小熊達起さんという方に撮ってもらったんですけど、「君たち顔のアップ初めてなんじゃない?」って言われて、「確かに!」と思って(笑)。

mina:いつもiPhoneで撮ってたからね(笑)。しかも、全部自分たちでやってるから、どっちかが映ってるとどっちかが映っていないっていう(笑)。

ren:初めて外部の人に制作してもらったので、ハイファイな感じが出せたと思います。ひとつ開けたものがあってもいいかなって。基本的にイメージを向こうに伝えて、後はお任せで。僕、いつもステージではグラサンかけてるんですけど、撮影の時、小熊さんに「今回お前はグラサン禁止な」って言われて(笑)。

――(笑)。先程、赤い公園の津野米咲さんの名前が上がりましたが、彼女との繋がりはどこから?

ren:僕らは下北沢GARAGEを拠点にさせてもらってるというか、いつもよくして貰っていて。たまたま僕らが下北沢GARAGEでライブをしていた日に、米咲さんがラジオの仕事があって。それが終わってタクシーで帰宅していたところ、運転手さんが道を間違えちゃって、「じゃあ、せっかくなんでこのまま下北沢に行ってください」って言って、フラッとGARAGEに来てくれたんですよ。GARAGEのスタッフさんも「今イチオシのバンドなんです」みたいな感じで紹介してくれて。それからですね。僕、赤い公園も大好きなんですよ。それこそさっき話した大衆性と普遍性の話に通ずる部分を感じていて。

――偶然というか、運命というか(笑)。

ren:僕ら、基本的に運だけでここまで来てます(笑)。米咲さんもその後、まだ一曲もリリースしていないのに自身のラジオで曲を流してくれたりして。あと、ライムスター宇多丸さんの『アフター6ジャンクション』で紹介してもらったのも、下北沢GARAGE繋がりですね。下北沢GARAGE特集というのがあって、その中でピックアップしてもらいました。チャンスっていうのは誰にでもくると思うんですけど、そのタイミングが色々と重なって、運命てきだなって(笑)。
固定のメンバーも今、すごくよくなってきた時期だし、昔はデモを配っても反応なかったのに、最近は色々な人がピックアップしてくれて。それこそ今回のインタビューのオファーもそうだし。

――過去の楽曲についても伺いたいのですが、RO69で入賞した「コンクリート」という曲から、先程も話に上がった「HEPBURN」では、かなり印象が異なりますよね。

ren:「コンクリート」は僕が17歳の時に作った曲なんですけど、まさに受験勉強真っ只中で。その受験勉強に全然身が入らなくて、ぼーっとしてた時にできた曲で。当時、Arctic Monkeysの『AM』がちょうど出た頃で、「うわ、これだ!」と思ったんですよ。その後高校を無事に卒業して、大学に入って、バンドを組む余裕ができてから、改めて完成させました。だから、作曲のメソッドとかも何もわからない状態で作った曲なんです。その時の僕の頭をそのままパッケージしたというか。
そこから曲作りの方法を模索していって、21歳くらいの時にfrendsipという元DATSのメンバーだった旺くん(清水旺)っていう狂人と始めたバンドがあるんですけど(笑)。

https://www.youtube.com/watch?v=BV2YvGs9t2I

ren:そのバンドで一か月に10曲くらい、とにかくハイペースで曲を作り続けたんです。そこで曲の構成とか、作曲の方法論を学んで。何ていうか、色々な音楽を聴いてはいるけど、それをどうアウトプットすればいいのかわからなかったというか。そういうコツみたいなものを、frendsipで身につけて。それで久しぶりにジオラマラジオの曲を作ろうって思ってできたのが「HEPBURN」だったんですよね。

――frendsip以外にもMYODOというバンドもやっていますよね。

ren:このバンドも旺と一緒にやってるんですけど、売れるとか人気出るとかを度外視にして、ただ自分たちが作りたい曲をひたすら作って、サブスクにひたすら上げるというプロジェクトですね。もちろん色々な人に聴いてもらえたら嬉しいですけど。1ヶ月前くらいに始動して、最初は「David Bowie再解釈」、「2018年におけるDavid Bowieとは?」というテーマで始めたんですけど(笑)。そのときその時でやりたいことをひたすらやっていくというもので、frendsipのサイド・プロジェクト的な感じです。

――frendsipやMYODOと、ジオラマラジオでの活動はご自身でどのように線を引いているのでしょうか?

ren:曲の作り方として、やってることは変わっていないと思います。でも、frendsipやMYODOは基本的に共作なんですよね。Logic(DTMソフト)のデータを投げ合って完成させていく。なので、ジオラマラジオの方がよりストレートに自分が出ていると思います。

――個人的にジオラマラジオの楽曲からは、現行のUSインディからグラスゴー的なサウンド、さらに歌謡曲まで、幅広い音楽性を感じます。その幅広い音楽的影響の根源的な部分についてお聞きしたいです。

ren:音楽メディアのインタビューなので、きっと「90’sのオルタナが〜」とかっていう回答をした方がいいと思うんですけど、僕の根底にあるのは、ミスチルとSMAPなんですよ(笑)。

――ミスチルとSMAP!?

ren:はい。SMAPになりたくてバンドやってる……というか、SMAPに楽曲提供するというのを目標に最初やっていたんですけど、解散しちゃったんで(笑)。
元々大衆音楽、いわゆるポップスが大好きで。日本でも、海外でも結局歌ってることは同じだし、歌心が要にあるのが魅力的だと思っていて。もちろん海外のオルタナとかインディも大好きですし、リズム・パートとかにはブラック・ミュージック的なエッセンスを入れたりしているんですけど、根底にあるのはJ-POP、みたいな。

――minaさんはいかがでしょう? 何かrenさんと共通している部分は?

mina:私はrenくんと違ってあんまりたくさん音楽を聴く方ではなくて……強いて一個挙げろと言われたら村八分です。

――ジオラマラジオの音楽性からは想像もつかない(笑)。

ren:彼女は僕と違って狭く深く掘り下げていくタイプなんですよね。

――ジオラマラジオの音楽性を語る上では、renさんの特徴的なボーカルも外せないと思うのですが、何か明確な影響源などはあったりしますか?

ren:特にないですね(笑)。曲作るときもそうなんですけど、「〇〇っぽいもの」を作るっていう意識は特になくて。ミックスやアレンジの段階では多少大衆性をとかを意識しますけど、作曲やボーカルに関してはただただ自然体というか。

――先ほど、ポップスって日本も海外も結局歌ってることはあまり変わらないとおっしゃていましたけど、そういったポップスに影響を受けた自覚がありつつも、ジオラマラジオの作品の歌詞は結構違いますよね。

ren:う〜ん、何ていうか、タッチというか筆致は確かに違うんですけど、中身は結局愛だの恋だの、出会いや別れっていう単純なことしか歌ってないんですよね。その筆致みたいな部分はおそらく色々な映画や音楽からの影響で形成されてると思うんですけど。あと、最近倖田來未さんの曲にめちゃめちゃ興味があって。あの、本当にすごいんですよ。歌詞に顔文字入ってたりして。

mina:泣いてる顔文字とか入ってるよね(笑)

ren:そうそう。倖田來未さんのそういう部分に、僕は勝手にユーミンとかオザケンとかを感じてしまうんですよね。歌ってること、一緒なんじゃないかなって。ユーミンの「DESTINY」と倖田來未さんの「恋のつぼみ」とかを聴いて、時代の違いと、客観か主観かの違いだけで、核の部分は同じじゃんって思ったんですよね。もちろんユーミンはユーミンでとても繊細な筆致で書いてるから、そこは違うんですけど。その同じことを歌っているっていう部分が普遍性に繋がって、だからこそ多くの人々の心に届くんじゃないかなって。

https://www.youtube.com/watch?v=BnflYjXDaA4

――ジオラマラジオの歌詞って、所々に結構突き刺さる言葉があるような気がします。

ren:行間とかは結構意識していますし、情景描写であっても、細かくは書き過ぎないようにも心がけています。僕の中でのヴィジョンもあるし、ちゃんと考えて作ってるんですけど、それが別に間違った伝わり方をしても全然よくて。それこそが大衆音楽だと思っているので。作詞面ではユーミンやオザケン、阿久悠さん辺りからの影響も大きいですね。

――00年代以降ではなく、90年代やもっと前、それこそ昭和のカルチャーからも影響を受けていると。

ren:00年代以降も大好きなんですけど、やはり90年代生まれなので、生まれた時の空気感みたいなものをパッケージしたいっていう想いがあって。90年代の、世紀末の頃のヒリヒリした感覚というか。それこそ、ライブで電飾を使ってるのも実はPavementのパクりなんです(笑)。

――(笑)。

ren:90年代からの流れって今もずっと地続きな感じがあると思っていて。それがダサいというか、「まだ90年代にしがみついてるの?」みたいな見られ方もあるとは思うんです。でも、僕らは95年に生まれて、00年代、10年代を生きてきて、ようやく今、表現できる立場になった。だからこそ、もう一回自分たちの生まれ育ってきた空気感を届けたいというか。別に古い人間ではないんですけど、2010年代のマインドで、過去のライブラリーにアクセスして、それをアウトプットしたい。
やっぱり、僕の中には90年代に青春を過ごせた人たちに対する憧れと悔しさがあるんです。それこそ愛憎入り交じったような、複雑な感情で。だからといって後ろばかりを見ているわけにもいかないので、そういった過去のカルチャーをすくい上げることで、今の時代をもっとおもしろくしていければなって思います。

――音楽以外で影響を受けたカルチャーはありますか?

ren:映画は大好きですね。最近はそんなに観れてないのですが、暇なときは1日3〜4本くらい観たり。あと、minaちゃんはホラー映画が大好きで。さっきの話音楽の話に通じてくるんですけど、ひとつのジャンルをとことん突き詰めるというか(笑)。

mina:幼稚園くらいから、ずっとホラー映画にハマってて(笑)。小学生でTSUTAYAを知って以来、自分でひたすらレンタルしまくって。感想を書くわけではないんですけど、一応タイトルだけ書き残していたら、すごい量になりました(笑)。

――では、一番好きなホラー映画は?

mina:『チャイルド・プレイ』(原題:Child’s Play)の2です。他にもたくさんあるんですけど、強いて挙げるなら。怖いだけじゃなくて、ギューっと鷲掴みにされる感じというか……(笑)。

ren:もはや怖いか怖くないかとか、そんな単純なことじゃないもんね。ホラー映画が「怖い」っていうのは、ラーメンが「熱い」っていうのと同じくらい大前提(笑)。

――ハハハ。ちなみに、renさんがお好きな映画は?

ren:フェリーニとか、ゴダールが好きですね。あと、僕もホラー映画が好きなんですけど、その中でも特にゾンビ映画が好きで。今回のEPのジャケットもゾンビだし。

――「Zombies!」という収録曲もありますしね。

ren:「Zombies!」は去年のハロウィンにリリースしたんですけど、この曲はジョージ・A・ロメロ(George Andrew Romero)というゾンビ映画の基礎を作った監督が去年亡くって、それがきっかけでできた曲なんです。その監督の有名な言葉で、「人間なんていつか死ぬのだから、我々はみんな生きる屍だよ」というのがあって、その言葉がすごく好きだったんです。何ていうか、そう考えると楽しく生きられるじゃないですか。だからこの曲の歌詞にも「この世界の誰もが生きる屍かもね」っていう一節が出てくる。

――なるほど。

ren:……今考えると、僕らの楽曲は映画にちなんだものが多いかもしれません。「HEPBURN」もオードリー・ヘップバーンからとっていて、イントロでは『ティファニーで朝食を』(原題:Breakfast at Tiffany’s)をサンプリングしていて。

――そうなんですね。「Zombies!」のイントロも映画から?

ren:「Zombies!」は、ジョージ・A・ロメロの『ゾンビ』(原題:Dawn of the Dead)という映画からサンプリングしました。最初にゾンビが現れて、全員がパニックになってるシーンの音を使ってるんですけど、なるべくバレないように。コアな趣味はなるべくさり気なくアウトプットする方が大衆的かなと(笑)。

――今後のバンドの展望、方向性に関してはいかがでしょうか? 何か見えているものはありますか?

ren:まず、バンドとして色々な人に聴いてもらいたいっていうのはずっとブレてなくて。それが一通り達成して、音楽的にもやりきったなってなったら、映画監督になりたいです(笑)
先ほどの映画の話に繋がるんですけど、ゴダールも参加していた「ジガ・ヴェルトフ集団(The Dziga Vertov Group)」という政治的思想の強い映像作家集団が昔存在していて。そういうのを僕たちジオラマラジオでもやりたいですね。これは割と本気で言ってます(笑)。

mina:じゃあ私は衣装提供するね。

ren:いや、みんな映画監督なんだよ(笑)。音楽でお金を稼いで、それで映画撮れたら最高ですね。

――かなり野心的ですね。バンドとしての展望がすっ飛んでしまいましたが(笑)。

ren:バンドとしては、とにかくハイファイなサウンドにしたいです。コアな層に支持されるバンドっていうのもカッコいいと思うんですけど、僕ら的にはやっぱりポップでありたい。今の音楽性の軸は変えずに、かつ多くの人へ届けられるように、試行錯誤していければなと。あと、とりあえず次の目標はアルバムを作りたいですね。

mina:私は服を作りたいです。

ren:バンドのマーチャンダイズも色々考えていきたいですね。今、メジャーと契約しなくても生活ができているバンドって、結局ライブやマーチャンダイズが大きいと思っていて。「DIYです」という感じで売り出したいわけではないんですけど、とりあえず自分たちでできることはやろうかなと。後ろ盾も本当に何もないですし(笑)。

――海外ではバンド以外にもレーベル、コレクティブでマーチャンダイズを作って販売したりっていうのが普通になっていますもんね。

ren:そうですね。そういう海外の動きにいち早く反応しているっていう意味では、サニーデイ・サービスをとても尊敬しています。自分たちでできる範囲のことはやって、特に大きい後ろ盾がなくともメイク・マネーしている感じがすごくいいですよね。とはいえ、さっきも言ったとおりDIYにこだわっているわけでもないので、何かいい話があれば飛びつきます(笑)。その時その時で、ベストな選択をしていきたいですね。


【リリース情報】

ジオラマラジオ 『ZOMBIE CASSETTE』
Release Date:2018.08.04(Sat.) *
Price:¥1,500
Tracklist:
A1. HEPBURN
A2. ミツバチ
B1. 薄荷
B2. Zombies!

※カセットテープ+ZINE「peppermint diaries vol.1」同封

『ZOMBIE CASSETTE』 特設サイト


【イベント情報】

下北沢GARAGE × CLOW × 恋は魔物 × tokyotender 共同企画
第2回 下北新都心

日時:2018年8月11日(土) Open 15:30 / Start 16:00
会場:東京・下北沢GARAGE
料金:¥2,500 / ¥3,000 (各1D代別途)
出演:
CLOW
恋は魔物
tokyotender
ジオラマラジオ
メロウ・イエロー・バナナムーン
錯乱前戦
ナツノムジナ
TAKOPEO (interval act)

※大学生 ¥500off / 高校生以下チケットフリー(Drink ¥500のみ)、要学生証提示

[info]
GARAGE

チケット:GARAGE(店頭販売・電話/メール/フォーム予約)

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