INTERVIEW

Brasstracks

Brasstracksが手にした「ゴールデン・チケット」。障壁を取り壊し、世界へ羽ばたく2人の現在地

NYを拠点とするデュオ、Brasstracksが1stアルバム『Golden Ticket』を本日8月21日(金)にリリースした。

グラミー賞の最優秀ラップ楽曲賞にノミネートされたChance The Rapper「No Problem」を筆頭に、Mark Ronson、Anderson .Paak作品への参加、そのほかLidoやGallantのリミックスを手掛けるなど、プロデューサーとしての側面でも注目を集める一方、そのオリジナリティ溢れる記名性の高いサウンドで、アーティストとしてのキャリアも確固たるものとしてきたBrasstracks。

先鋭的なビート・ミュージック/ベース・ミュージックと親和性の高い初期から、徐々にオーガニックなサウンドへとシフト。オーセンティックなR&B、ソウル、ファンクを想起させるシングル群を収録した本作『Golden Ticket』は、まさにエヴァー・グリーンな輝きに満ちた1枚だ。客演/コラボレーターにはSamm Henshaw、Robert Glasper、Masego、Common、Col3traneといったシーンや世代、国境も越えた面々が名を連ねている。

今回は待望のアルバム・リリースということで、6月末にメールにて行ったインタビューを掲載する。2018年のインタビューからおよそ2年。彼らの現在地を探る。

Text & Interview by Takazumi Hosaka

[L→R: Conor Rayne Ivan Jackson]


――NYでは新型コロナウイルスによる外出制限もだいぶ緩まってきたようですが(※2020年6月末)、この3ヶ月ほどの外出自粛期間はどのように過ごしていますか。また、このコロナ禍はBrasstracksの活動にどのような影響を与えましたか?

Conor:色々とスローダウンしましたね。最初は戸惑っていたけど、段々慣れてきて。ちょっと休んで散歩してみたりするのもいいんじゃないかって思うようになりました。今はとにかく果てしなく時間があるから、それと上手く付き合っていこうとしています。

Ivan:時間があるのは悪いことじゃないですよね。コロナ禍における影響を挙げるとすると、他のミュージシャンに会ってコラボできないことですね。これまでは会いたい時に会って一緒に演奏できていたけど、もちろん今はそれができない。Conorと私は会って作業していて、私たちでベースのほとんどはカバーできますし、機能しなくはないんですが、3〜4人のバンドを集めて演奏するっていうのはまだまだできなそうですね。

――今作『GOLDEN TICKET』はいつ頃制作に取り掛かったのでしょうか? また、何かスタートのきっかけなどがあれば教えて下さい。

Ivan:たぶん、作業をしていた期間は合わせて2年くらいですね。真剣にアルバム制作として動き出してから完成するまでは、1年くらいだったと思います。きっかけは自分たちにもわかりません。というのも、私たちは常に音楽を作っているので、トラックの中には2年前に作られたものもあったりするんです。でも、アルバムという形にしていくのを意識し始めたのは2019年の3月。アルバムを意識し始めたのも、これといった理由はありませんでした。私たちの場合、音楽を作るのに特別なモチベーションみたいなものは特に必要なくて、自然の流れなんです。「なぜ、どのようにして作り始めたのか」っていうのは私たちにとっては一番難しい質問です(笑)。

Conor:音楽は常に作っているので、それをEP、シングル、アルバム、どのプロジェクトにするかだけの違いです。フルレングスを作るとなると、それはEPやシングルとはまた異なってきます。

Ivan:作った音楽をどういう形で作品にするかは、その時のムードによります。アルバムの前にリリースした『Before We Go』っていうプロジェクトがあるのですが、あのプロジェクトは“Before we go make an album”(アルバム作り始める前の)プロジェクトという意味だったんです。だから、あのプロジェクトが仕上がったところで、“よし! いよいよアルバムを作るぞ!”っていうムードになりました。

――今作はこれまでのあなたたちの象徴的なサウンド、ゴスペル的な重厚なブラスなどが少し薄まり、これまで以上にボーカルに重きを置いた、オーセンティックなソウル、ファンク、R&Bなどの要素が強いように感じました。アルバムを制作するにあたって、何かコンセプトのようのものはあったのでしょうか。

Ivan:私たちが作るアルバムの内容は、そのアルバムを作る時に自分たちが何にハマっているかで変わってきます。その時聴いている音楽たちが共存するスペースを作ることが、アルバムのコンセプトになるんです。Conorと私がアルバムを作るにあたって、何よりも最初に実行したのはディスカッション。その時の自分たちがどの位置にいるのかを話し合いました。そのディスカッションの中で、当時の私たちはStevie Wonderなど70年代の音楽をたくさん聴いていることがわかって、お互いが刺激を受けている曲のプレイリストを作り、そのサウンドの数々を自分たちのやり方でどう表現できるかを考えることから始めました。

――あなたたちの日本でのライブ(2018年)も拝見しましたが、DJのように曲をシームレスに繋いでいくセットが印象的でした。今作ではクラブ・ミュージックからよりオーセンティックな方向へシフトしたと思いますが、ライブにも変化は起きそうですか?

Ivan:それはライブに来てあなたの目で確かめてほしいです(笑)。もちろん違いはあるし、そのプランは立てていますが、それが何かはまだ明かしたくありません。

Conor:どうなるかはこれからのお楽しみですね。

――先行シングルとなった「Change For Me feat. Samm Henshaw」では、軽快なトラックに反して、リリックは複雑な疑問を投げかけるような内容となっています。この曲のリリックはどのようにして生まれたのでしょうか。

Ivan:まずLAでインストのトラックを作って、それをSamm HenshawにInstagramで見せました。それから彼としばらく曲について話し合った後、NYで一緒にスタジオに入って、アイディアを出し合いました。そうやってアイディア投げ合う中で、その歌詞のコンセプトに辿り着きました。皆が“ワーオ! すごいね”って思っても実際はそうじゃないっていう経験がSammも自分たちにもあって。外から見えるものと中から見てるものが違うという状況。その歌詞のコンセプトが出てくるまで、ただただアイディアを出し合いました。

――制作において他アーティストとのセッションの割合がどんどん多くなっているみたいですね。今作も大部分をセッションで作り上げたのでしょうか。

Conor:はい。今回はアルバム制作を始めた時点で友達や他のミュージシャンたちとかなりの数のセッションを行いました。セッションのためにこれまで以上に多くの人々を招いたのは、私たちにとって新しい経験でした。ベース、ドラム、ギター、ピアノ。最初からバンドとして曲を構築していきました。PCだけでなく、スタジオでも多くの時間を費やしたこと、それが今回のアルバムの大きな要素になっていると思います。

Ivan:今回はミュージシャンたちに声をかける前の時点でのプロダクション作業が前回よりも断然少なかったんです。アイディアはライブ・スタジオでミュージシャンたちと出し合いました。

――インタールード的に挿入されている「Disco Breaks」などからはセッションの楽しげな雰囲気が伝わってくるようです。今作で特に印象的だったセッションを挙げるとすると?

Conor:まさにその曲。Robert Glasperとのセッションはアルバムのために計画されたものじゃなくて、彼と共演することが目的のセッションだったんです。最高でした。彼はおもしろい人で、常にジョークを言って笑わせてくれました。

Ivan:3時間のセッションで、始まってから2時間45分はただ会話をしていました。で、残り15分で“そろそろ何かプレイしたほうがいいよな?”ってRobertが言ってきて。“確かに”って答えました(笑)。それからジャムが始まると、その15分で4つのアイディアが生まれて、それが3つのレコードに収録されることになりました。「Improv #1」と「Improv #2」(2017年発表『For Those Who Know,Pt. I』、2018年発表『For Those Who Know,Pt. II』にそれぞれ収録)と「Disco Breaks」は、全部同じセッションででき上がった曲なんです。

――『GOLDEN TICKET』という言葉にはどのような意味が込められているのでしょうか?

Ivan:私たちはアルバム・タイトルを決めるにあたって、ひとつ以上の意味を持つ言葉を探していました。でも、このタイトルの私たちにとっての意味は、音楽業界で自分たちが活動できていることへの感謝の気持ち。2人とも、残りの人生をずっとアンダーグラウンドなシーンでライブしているか、もう少し年を重ねた時に大学で音楽講師の仕事ができたらいいなと思っていました。自分たちがこんな風に活動できるとは想像もしてなかったんです。

でも、Brasstracksがジワジワと大きくなっていって、これまでとは違う様々な状況で自分たちを見てもらえるようになった。そして、メジャー・レーベルから契約したいと言ってもらえるまでになった。その時、“ワーオ!これは俺たちにとってのゴールデン・チケットだ!”と思ったんです。中には、私たちのことをミュージシャンと知らなくて、プロデューサーという一側面しか知らない人たちもいたのに、ミュージシャンとして契約してもらえたなんて。私はトランペット・プレイヤーとして、Conorはドラマーとして認められた瞬間でした。そのチケットを手にしてドアを開けてみると、沢山の興味深いことが私たちを待っていました。一言では説明できないこの状況が、私たちにとって“ゴールデン・チケット”が意味することです。

――タイトル・トラックとなる「Golden Ticket」はMasegoとCommonとの共作ですが、どのように制作したのでしょうか。

Ivan:この曲のコーラスは全部Masegoが書きました。普段だったら私とConorも作詞作業に関わるのですが、今回はMasegoともCommonとも遠隔でコラボすることになったので、彼らに任せました。実は、アルバム・タイトルを決めるよりもこのトラックの方ができたのが先で、CommonがMasegoに乗ってきた時に、“コレだ!”って思いました。Masegoはすでに私たちのフィーリングを十分に表現してくれていましたし、曲のコンセプトを完全に形にしてくれていたのですが、Commonが乗せてくれた“I came to the door to knock down the door”というフレーズを聴いた時に、これこそがアルバム・タイトルだと確信したんです。

私とConorはゴールデン・チケットを手にしたことで障壁を取り壊し、より多くの人々や世界への道が開けたわけで、それはすごくラッキーなことだと思っています。そして、私たちのそのストーリーにインスパイアされて、他の人々にも同じ経験をしてほしいと思っている。だからこそ、この曲のタイトルをアルバム・タイトルにすることにしたんです。

――前回の日本でのショーはいかがでしたか。日本で再びあなたたちのショーを観れることを望むファンも多いので、何かメッセージを頂けますか?

Ivan:日本でのショーは最高だった。

Conor:あの時、私たちは時差ボケがすごくて。

Ivan:セットの時間が午前3時だったし(笑)。

Conor:でも、素晴らしいショーでした。東京も大阪も、ファンとオーディエンスが異なっていて、それがすごく良かった。日本の観客は皆かなり集中して音楽をしっかり聴こうとしてくれます。

Ivan:そういうオーディエンスの方が絶対良いと思います。最初の頃は50人くらいの前で演奏していたから、日本でパフォーマンスした当時は、まだ何百人、何千人の前でプレイすることには慣れていなかったんです。東京の時は多分600人前後だったと思うんですけど、オーディエンスの皆がしっかりショーを楽しんでくれるもんだから、それ以上の人数に感じたのを覚えています。他の国のオーディエンスって、ショーを観ながらパーティしたりするのですが、日本の皆は音楽を聴こうという姿勢をしっかり見せてくれた。あれは特別な体験でしたね。日本に自分たちのファンがいるなんて思ってもいなかったですし、それまで日本に行ったことがなかったから、ビックリしました。日本のファンは最高です!

Conor:またすぐ日本に戻るから! その時を楽しみにしていてください。

Photo by Shawn Jordan (@syra____)


【リリース情報】

Brasstracks 『Golden Ticket』
Release Date:2020.08.21 (Fri.)
Tracklist:
1. Basket Case
2. Hold Ya (feat. Lawrence)
3. Nothing Better (feat. John Splithoff & Fatherdude)
4. Will Call (feat. Elliott Skinner & Victoria Canal)
5. Not Far Away (feat. Tarriona ‘Tank’ Ball & Jackson Lundy)
6. Disco Break (feat. Robert Glasper)
7. Change For Me (feat. Samm Henshaw)
8. Guidelines (feat. J. Hoard)
9. Missed Your Call (feat. Col3trane)
10. Disco Break 2
11. Golden Ticket (feat. Masego & Common)
12. Movie (feat. Ady Suleiman)
13. Three Steps (feat. Jackson Lundy)

配信URL

Brasstracks 日本レーベル・サイト

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