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INTERVIEW / Boy Pablo


「僕自身としてもアーティストとしても、自分らしさが重要なカギ」ーーDIYなスタイルで躍進続けるBoy Pablo。飾り気のない彼の魅力に迫る

2019.01.24

楽屋とロビーを隔てる高い壁をよじ登り、スマホを片手にひょっこりと顔を出し笑顔を見せるBoy PabloことPablo Muñoz。彼はチャーミングでツッコミどころ満載のMVに、甘いメロディーを乗せた「Everytime」で大躍進を果たしたノルウェー期待のSSWだ。

壁越しからは、地元の友達でもあるバンド・メンバーたちの、ふざけ合っている話し声や笑い声が絶えず聞こえてくる。スマートフォンの画面越しに見ていたお茶目でハッピーな彼らは、想像通りどこまでも自由かつ自然体な姿でそこにいた。

大ヒットを巻き起こした1st EP『Roy Pablo』に続く新作、『Soy Pablo』(Roy、Soyときたら次はToy?笑)を10月にリリースしたBoy Pablo。その熱も冷めまま、11月には待望の初来日公演が開催された。当日のライブでは、Pabloの伸びやかな歌声やパワフルなギター・プレイもさることながら、バンド・メンバー紹介時に突如始まるBeat It(Michael Jackson)、Gabriel(Gt.)のサプライズ誕生日祝い、そしてその誕生日ケーキをオーディエンスに配るなど、枠にはまらない自由奔放なステージに、会場は大いに沸いた。その光景は、彼の大ヒットが決して偶然などではなかったことを確かに証明しているかのようであった。また、Pabloへの愛情で溢れているであろうオーディエンスの合唱も絶えず、多幸感で満たされた一夜になった。

今回は初来日ライブの開演直前に、Pablo本人へのインタビューを敢行。シャイな表情と優しい笑顔の中、時折真剣な顔を交え、真摯に質問に答えてくれた。

Interview & Text by Ryota Suto
Interpreter by Takazumi Hosaka


――日本は初めてですよね? いかがですか?

Pablo:まだ街自体はそんなに観れていないけど、街の光がカラフルでとても楽しいよ。

――Nintendoのゲーム機を持ち歩いてると聞きましたが、今回のツアーでは持って来ていますか?

Pablo:ハハハ(笑)。残念ながら今回は持って来ていないけど、普段のツアーにはSuper Nintendoを持っていってる。
  
――そうなんですね(笑)。では、まずはあなたの音楽キャリアについて伺いたいと思います。「Everytime」のMVで大きな注目を集めた時を振り返って、別のインタビューでは「複雑な感情でよくわからなかった」と答えていましたが、今となってはどうでしょう? 冷静に振り返ることができるようになりましたか?

Pablo:まだ実感はあまりないけど、実際にファンの人たちがライブなどで(「Everything」を)歌ってくれている姿を見ると、すごくよかったと思う。うん、今では誇りに思えるようになったよ。

――「Everytime」のMVは「あまり計画を練らないまま撮った」とのことでしたが、そのユニークな仕上がりと飾らない姿が素敵でした。自分らしさを出すことや自然体でいることに対して、何か秘訣はありますか?

Pablo:昔のポップ・ミュージックのシーンでは、自分を偽っている例がたくさんあったと思うけど、今は時代も変わってきていて、自分自身を大切にするアーティストも増えてきているよね。僕自身にとってもアーティストとしても、自分らしさが重要なカギだから、今後もそれは大事にしていきたいな。

――先ほどのリハーサルからも、自然体でハッピーな雰囲気が伝わってきました。

Pablo:ありがとう。それが僕らのスタイルなんだ(笑)。

――あなたの楽曲やMVの雰囲気には、あなたの人柄が表れているように感じます。実際に、自分はどのような性格だと思いますか?

Pablo:僕はあまり多くを話さないシャイな性格で。場の中心にいるというよりかは、その横にいるような、チルな人柄だと思う。

――1st EP『Roy Pablo』のリリース後、大きいレーベルからの誘いがきたのではないでしょうか。それでもなお、〈777 records〉に所属する理由とは?


Pablo:確かにたくさんのオファーをもらったけど、僕にとっては今の家族のようなチームと共に歩むのが一番いいと思ったんだ。大手のレーベルに所属すると、曲やMVをリリースする際に、確認だったり承認だったり、色々必要になってくると思うんだけど、僕はなるべくシンプルな状態のまま届けたいんだ。実際に、今もチーム内で全て上手く回せているから、変える必要はないかな。


――また、別のインタビューでは「(自分にとって)曲を作ることはセラピー」と答えていましたが、1st EP『Roy Pablo』から2nd EP『Soy Pablo』にかけて、心境と環境の変化はありましたか?

Pablo:1枚目と2枚目の間と言っても、曲自体は1〜2年前くらいに作曲していたから、表現されていることはそれほど変わっていないよ。自分の心境の違いとしては、元々はリリックを作ることがそこまで好きではなかったけど、今はリリックを通して、自分の感情を表現する楽しさや素晴らしさを学んでいきたいと思ってる。環境の違いとしては、曲自体を昔より効率よく作れるようになったかな。あと、僕が一緒に曲を制作している義理の兄さんがいるんだけど、これまで以上に長く一緒に作業するようになって、仲や相性がよりよくなっていったんだ。

――あなたから見たバンド・メンバーの印象を教えて下さい?

Pablo:グループとしては、「一緒にバカなことをやれる友達」みたいな感じかな。彼らと一緒に音楽を作れることにはすごく感謝してる。他のセッション・ミュージシャンとかもいる中で、彼らのような、自分のことを理解してくれる人と一緒にいれることができて、とても光栄だよ。

――PEPSIのTシャツ、トラックパンツにストリート・ブランドなど、あなたのファッションはカラフル&ユニークな着こなしがチャーミングですよね。何か意識していることはありますか?


Pablo:シンプルに好きな服を着て、好きじゃない服は着ない。それだけかな。確かにストリート・ファッションは好きだから、その中からよく選ぶ。

――今日はTyler, the Createrのブランド、Golfの服と靴を着用していますが、やはり彼のことが好きですか?

Pablo:うん。何年も前からTylerのInstagramをフォローしているんだ。彼のブランドのことも、彼が着ている服も全てが大好き。

――Tyler, the Createrへインタビュー
はどうでしたか?

Pablo:Fabioが777tvで初めに行ったインタビューだよね。最高にクールだった。

――バンドやアーティストの世界ツアー、アジア・ツアーでは、日本が飛ばされることも増えてきましたが、今回来日してくれて本当に嬉しく思います。日本でのライブが決まった経緯、理由などはありますか?

Pablo:シンプルに東京がカッコいいからかな。アジア・ツアーを練っている時に、「東京は行くでしょ!」みたいな感じだった(笑)。理由というよりかは、当たり前のように決まったな。

――最近では、アジアから世界へ羽ばたくアーティストも目立ってきました。特に気になるアーティストなどはいますか?

Pablo:アジアの中ではPhum Virphitの話をよく聞くよね。ネットを通して知って、個人的にも興味を持っているし、今後も注目していきたい。(マネージャーに)Fabio! アジアで注目しているアーティストいる?

Fabio::Kero Kero Bonito(笑)。

――Kero Kero Bonitoはロンドンですよね(笑)。あなたにとって、Fabioはどんな人ですか?(Fabioは、会場外でメンバーがはしゃぐ中、後ろから冷静にカメラを回す敏腕マネージャー)

Pablo:彼とはBoy Pabloを始める前からの長い付き合いで、ずっと友達。Boy Pabloをスタートさせてからは、色々な人にライブ・オファーのメールを送ってくれたりした。そこから少しずつ場を広げていくうちに、自然と僕のマネージャーになったんだよ。もちろん、今も友達としても仲がいいんだ。
  
――今後どういうアーティストを目指していきたいですか?

Pablo:今は、どういうアーティストになりたいかとかは特に決めてないかな。今のベッドルーム・ポップとか、インディ・ロックのシーンは音がみんな似通っているよね。強いて言うなら、その中で自分のサウンドを確立させて、聴いたらすぐにBoy Pabloだとわかるような、そしてみんなが惹かれるようなアーティストになりたいな。あとは曲の中での実験や研究をもっとしていきたい。ライブの面で言うと、今のメンバーはすごい相性がいいし、仲もいいから、変えていこうとは思っていないよ。


【リリース情報】

Boy Pablo 『Soy Pablo』
Release Date:2018.12.05 (Wed.)
Label:Big Nothing / Uktra Vibe / 777
Tracklist:
1. Feeling Lonely
2. Wtf
3. Sick Feeling
4. T-Shirt
5. Limitado
6. Losing You
7. Tkm

国内盤:初CD化、歌詞/対訳付

リリース詳細


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