FEATURE

FEATURE / 空音「BLOOM feat. TENDRE」


若きラッパーの開花宣言。TENDREと彩るエヴァーグリーンな最新曲で告げる、空音の“今”と“これから”

2020.12.02

ラッパーの空音がTENDREを客演 & プロデュースに迎えた新曲「BLOOM feat. TENDRE」を11月25日(水)にリリースした。

本作は12月16日(水)にリリースする3rdアルバム『TREASURE BOX』からの第2弾先行シングル。第1弾となった「scrap and build」とはそれぞれ悪魔と天使をモチーフにしたカバー・アートワークからもわかる通り、180度イメージの異なる、まるで対になるかのような作品となっている。

SSWのkojikojiとのコラボ曲「Hug feat. kojikoji」で一躍大きな注目を集めた空音。また、以降もメロディックなフロウが印象的な楽曲や、作品毎に4つ打ちのダンサブルなトラックから2ステップ、UKガラージ、フューチャー・ベースなど、多彩なトラックを自在に乗りこなすセンスは、音楽的なバックボーンの広さを感じさせると同時に、急速的なブレイクには付きものの、ヘイターからの批判の的にもなっていたようだ。「scrap and build」はタイトル通り、そんな自身のポップかつメロウなパブリック・イメージを破壊し、再構築するかのような気概を感じさせる一曲。

5人組バンド、Klang Rulerのフロントマンとしても活動し、個人名義ではAAAMYYYやAce Hashimotoともコラボを果たすほか、BAD HOPの後輩として親交の深いラッパー・Snozzz、そして彼を擁するクルー・OGFのビートも手がけるプロデューサー・yonkeyが手がけた重心の低いトラップのビートに、捲し立てるようなフロウで<俺が何回 作っても 言っても/HIPHOP 通らしい/難しい奴 うっさいよ/好きな物の為に 他を落として/語る だっさいよ>と攻撃的にラップする。<ヘイターなんて ただのバイ菌じゃん>と外野の声を一蹴するようなラインから、<俺はそこらの一発屋じゃない/ジャンルの檻では暴れ足りない/から 空音がジャンルさ 黙りなさい>と、実に頼もしいボースティングも含んだ、まさに“ヒップホップ”な作品となっている。

一方、「BLOOM feat. TENDRE」ではジャズやソウル、R&Bなどに精通したマルチ・プレイヤーのTENDREらしい、生楽器のような温かみも感じさせるミドル・テンポのトラックが印象的。メロディックなベースや穏やかな鍵盤の音色など、まさにエヴァーグリーンなポップネスを湛えた1曲だ。

空音のラップも「scrap and build」から一転、余白を感じさせるリズミカルなフロウで、ポジティブに自身の今とこれからを歌う。<なんせ この名に恥じないよう歌う/凛々しき リリシスト故の美学>や、ブリッジでTENDREが優しく歌う<空の音が聞こえたら/方時も離れやしない/誰のものでない真実を/迷わずに目指して>といった自身のアーティスト名であり、本名でもある“空音”という名前にかけたリリックや、<喜怒哀楽で彩る 白紙から/気付けば ワクチン代わりの類い無いバース/誰かの心の病に効いてた>というラインなどはなんとも気の利いた言い回しだ。

また、冒頭の<あくまで Hot でいる 俺だけは>や、<洒落てても いつか萎れるのさ/水に生けた華が物語るな>といった部分には空音らしいアイロニーと棘も感じられる。自らを花瓶に飾られた花ではなく、ストリートの土に咲く花であることを宣言しているかのようだ。続くラインは<ほら 冒頭で言ったろ 俺だけは/いや TENDRE も加わりゃ 二輪も咲く>。ラッパーとして、音楽家として、大成することを高らかに告げている。野心的という点では「scrap and build」にも通じる作品とも言えるだろう。

2019年には1st EP『Mr .Mind』を含む2枚のEPと、1stアルバムをリリースした空音。2020年に入ってからは仙台、東京、福岡、名古屋、大阪を回る全国ツアーも開催。そして6月には2ndアルバム『19FACT』を発表。その堂々たる姿から思わず忘れてしまいがちだが、彼はまだ19歳の若きラッパーだ。外から見れば順風満帆にしか見えないこの快進撃の裏側には、きっといくつもの苦悩や困難な出来事があったであろうことは想像に難くない。

しかし、空音は歩みを止めない。早くもリリースを控える3rdアルバム『TREASURE BOX』には、先述のyonkey、TENDREに加え、お馴染みのRhymeTube、Shun Maruno、そしてFAITHの「19 (空音 Remix)」でタッグを組んだmaeshima soshi、さらには初のコラボとなる〈Chilly Source〉のillmore、A.G.O、MADLISKらがプロデューサーとして参加。これまでで最も多彩な顔ぶれがラインナップしている。もちろん、まだアルバムの全容を聴いたわけではないが、タイトル通り宝石箱のような楽曲たちが詰め込まれているであろうことを期待してしまう。

あまりにもハイペースなリリースに驚かされつつ、今後もそのスピードに振り落とされないよう追いかけ続けたい。すでに蕾の季節は通り過ぎた。果たして、若きアーティスト・空音はどのような花を咲かせてくれるのか。開花の瞬間を今か今かと楽しみに待ちたいと思う。

Text by Takazumi Hosaka


【リリース情報】

空音 『scrap and build』
Release Date:2020.10.21 (Wed.)
Label:Victor Entertainment
Tracklist:
1. scrap and build

==

空音 『BLOOM feat. TENDRE』
Release Date:2020.11.25 (Wed.)
Label:Victor Entertainment
Tracklist:
1. BLOOM feat. TENDRE

==

空音 『TREASURE BOX』
Release Date:2020.12.16 (Wed.)
Label:Victor Entertainment
Tracklist:
・scrap and build [Produced by yonkey]
・only one [Produced by illmore]
・Future skin [Produced by A.G.O]
・MenU [Produced by RhymeTube]
・player [Produced by maeshima soshi]
・BLOOM feat. TENDRE [Produced by TENDRE]
・モウマンタイ [Produced by Shun Maruno]
・宝箱 [Produced by MADLISK]
・誰かの正義の歌 feat. yonkey [Produced by yonkey]

※曲順:後日発表

空音 オフィシャル・サイト


Spincoaster SNS