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FEMM 『404 Not Found』

“FEMM2.0”が実現させた、よりエモーショナルに現行ポップスに寄り添うサウンド

これまでにコンセプチャルなビジュアルやサウンド、エンターテックなパフォーマンスで、アメリカのティーン世代を始め、ヨーロッパ、南米、アジアでもインフルエンサーからのサポートをきっかけに熱狂的な支持を集めてきたRiRiとLuLaによるラップ・デュオ、FEMM。先のディケイド、つまりテン年代においては現在のフィメール・ラップ・ブームの先駆け的役割を担っていた彼女たちだが、本日11月20日(金)にリリースした新作EP『404 Not Found』では今年2020年から始まる新たなディケイドに合わせて、“FEMM1.0”から“FEMM2.0”へと進化を遂げ、新たなFEMMサウンドを体現している。

“FEMM2.0”とは、コンセプト的に見れば、マネキン・デュオとしての機械仕掛け的プラスティックさから“より人間的でエモーショナルな表現”への進化に他ならない。では、それがどのようにサウンド面に表れているかといえば、それは、現行のストリート・カルチャーから生まれるトレンディーなポップスを“有機的なもの”、つまり人間的でエモーショナルな表現を可能にするものの象徴として取り入れている点だろう。

DaBabyの大ヒット曲「BOP」を手がけたStar Boyを始め、〈PC Music〉の立役者であるDanny L Harle、HABANERO POSSE、KM、Loesoe、Radical Hardcore Clique、Duke of Harajuku、YUA、DIANA CHIAKIら世界的プロデューサーからクラブ・シーンで人気のプロデューサー、さらに注目の女性プロデューサーまで幅広く現行のポップス/ポップ・カルチャーに関わる名手が参加した本作では、かつてのエレクトロニカなアプローチによるスケールの大きいサウンドは鳴りを潜めた印象を受ける。しかし、その一方でボトムヘヴィーな重低音とダークなインダストリアルさの強度は増しており、今様のポップスのトレンドが着実に彼女たちらしいサイバーパンク的退廃感にインストールされている。

また、機械仕掛けの存在からより人間的な存在へとアップデートされるという意味では、EPの構成によって語られる“1.0”から“2.0”へのアップデートを感じさせるストーリーに注目したい。HABANERO POSSEによるどことなくTimbalandを思わせるトリッキーな変則ビートの「Sit Down」、YUAによる廃墟の中にある巨大なコンピューター、そこに接続された様々な電子機器やケーブルを想起させるSF的ホラーなテクスチャーが現れた「Bury Me (with all my $$)」、Danny L Harleによるハイパーポップ(Hyperpop)的なウワモノとゴム(Gqom)やUKファンキーが融合した最近のUKアフロビートを彷彿とさせるビートとトラップが融合した「Peach」、DIANA CHIAKIによる往年のThe Prodigy、Pendulumを思わせるレイヴィーなドラムンベース「Play By The Rules」のように前半はインダストリアルなテイストのサウンドが目立つ。

しかし、後半は、そのテイストは踏襲しつつも、KMによる白昼夢的でまさに“サイボーグが見る夢の世界”を表現したようなドリーミーなメロディが印象的な「Boss」、チープな音色ながらもエモーショナルかつ有機的なメロディが涙を誘う、Star Boy、Loesoe、Duke of Harajuku、Radical Hardcore Cliqueによる「Level Up feat. Duke of Harajuku」というように、ストーリー・テリングな曲順構成によって、機械仕掛けの彼女たちがアップデートされることで、より人間的でエモーショナルな表現を行えるようになるまでの“軌跡”が表現されている。そして、これは本作のリリースに先駆けて公開された「Level Up feat. Duke of Harajuku」のMVで描かれる彼女たちの“アップデートのプロセス”ともリンクする内容でもあることから、そこで“描かれなかった前日譚”のように筆者は感じた。

加えて、2018年のEP『doolhouse』にも“進行中の楽曲”として、「Play By The Rules」(当時の楽曲名は「untitled02」)、「Boss」のインストが収録されているが、これも“FEMM1.0”から“FEMM2.0”へのアップデートの伏線的な部分のように感じる。それが本作に収録されることで回収されるという形は、これまでのファンとっては先述のストーリーがより具体的なものとして感じられる要素になっているはずだ。

本作のタイトルが示す“404 Not Found”とは、インターネット上で存在しないページを示すステータス・コードだが、それが示すとおり、2020年現在においては、かつての“1.0”期の機械仕掛けのFEMMは存在しない。しかし、現在、我々が暮らす世界で人工知能がより人間的な表現を可能にするべく進化し、人間に寄り添うものになってきていることと同じ様にFEMMもまた“2.0”へとアップデートされることで、現行のポップスに魅了される我々の感情に寄り添った音楽的表現を可能にしている。その時代性を帯びた進化によって、このディケイドも世界は、彼女たちの音楽に魅了され、再びフィメール・ラップ・シーン、延いてはポップス・シーンを牽引していくことだろう。

Text by Jun Fukunaga


【リリース情報】

FEMM 『404 Not Found』
Release Date:2020.11.20 (Fri.)
Label:avex entertainment inc.
Tracklist:
01. Sit Down [Prod. HABANERO POSSE]
02. Bury Me (with all my $$) [Prod. ANJULIECAT]
03. Peach [Prod. Danny L Harle / Radical Hardcore Clique]
04. Play By The Rules [Prod. Diana Chiaki]
05. Boss [Prod. KM]
06. Level Up feat. Duke of Harajuku [Prod. Star Boy / Loesoe / Radical Hardcore Clique]


FEMM オフィシャル・サイト

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