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Black Boboi / Red Mind


リズム構成には知的な一面が覗き、ヒプノティックに残響する。そして、テンポの衝動性……! この特異点から逃れられるか

2019.06.01

東京拠点の音楽コミュニティ・レーベル〈BINDIVIDUAL〉より出ずるBlack Boboiは、小林うてな、Julia Shortreed、ermhoiの3人から成るバンド。元よりそれぞれ別の活動を行う彼女らが、“個”ではなく“集”としての新たな可能性を模索する。そのひとつの形がこれだ。

そして、本日6月1日(土)にリリースされた3rdシングル『Red Mind / 4hours』には、対照的なサウンド・スケープが描かれている。
「4hours」は、大切な人が離れて行くまでの4時間という架空のストーリーを元に、ぼんやりとした記憶の中を覗き込むような楽曲に仕上がったとのこと。是非とも2曲合わせて聴いてみてほしい。

爽やかで、どこか夢のような心地を抱かせるスティールパン。しかし新曲「Red Mind」におけるその楽器は、脳が揺らぐような旋律でリフレインする。これまでのイメージとは異なる表情に惹きつけられていると、そこへ淡白かつ硬質、そしてダブ感のあるドラム・パッドが加勢してくる。鼓膜に残るリヴァーブと金属的な音色に酔いしれて、身体は今にも浮き上がりそうだ。疾走感ある幾重ものリズムが焦燥を煽るせいか、私は、ジリジリと熱を帯びて行くような感覚に陥った。

それから、メロディには当然ながら歌詞が付されている訳だが――発声法のせいだろうか、プリミティヴな空気に満ちている。民族的な要素がエクスペリメンタルな楽曲にすんなり溶け込むことへの驚きはもはやないに等しいけれど、それでも礼讃してしまう。また、この謎めいた雰囲気を醸し出す要因は他にもあるように思う。例えば、中盤に鳴り始めるシンセサイザーだ。レトロ・フューチャリズムに忠実なその脈拍は、反射的に、美しき80年代への憧憬を立ち上げる。

ところで、サウンドが聴覚から全神経へ伝ってゆくと、統合的に唯一だった音像は解けるように豊かな広がりを見せる。音楽はあらゆる心象に姿を変え得るのだ。すなわち、上述したようなイメージは、あくまで多くの内のひとつに過ぎない。

前作「Ogre」については絵画に喩えたが、今回も引き合いに出したい。作品を目の前にしたとき、そこに飛び込んでみたことはあるだろうか――想像の世界が待っている。額縁の中から全天球を見回して、自分だけの景色を楽しむ時間は何物にも代えがたい。そうした“余白”を好みの尺度としてみるのも、きっとおもしろいはず。

それで言うと『Red Mind / 4hours』は、それぞれに固有の世界観が広がっているだけでなく、その2つの間にもグラデーションがあり、とても味わい深い。

Text by hikrrr


【リリース情報】

Black Boboi 『Red Mind / 4hours』
Release Date:2019.06.01 (Sat.)
Label:BINDIVIDUAL
Tracklist:
1. Red Mind
2. 4hours

BINDIVIDUAL オフィシャル・サイト


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