9月13日(金)にSpotify主催イベント、『Early Noise Night #12』が大阪・心斎橋MusicClub JANUSにて開催された。
『Early Noise Night』は、Spotifyがプッシュする国内ニューカマーのライブをいち早く体感できる場として、耳の早い音楽リスナーからの支持を獲得しているイベント。プレイリスト『Early Noise』と連動しながらコンスタントに回を重ね、今回で12回目の開催。およそ1年ぶりの大阪開催となったこの日は、Kitri、秋山黄色、Maica_n、kiki vivi lily、Omoinotake、THE CHARM PARKといったシーンやジャンルも異なる個性豊かな面々が顔を揃えた。
地元・大阪のリスナーはもちろん、日本全国、果ては海外の音楽好きからの支持を得ているレコード/CDショップ「FLAKE RECORDS」の店主、DAWAが開場と共にDJプレイ。国内外の最新インディを中心としたセットリストで会場の空気を温めた後、FM802のラジオDJ・土井コマキと竹内琢也によるMCで本イベントの概要が説明される。そして彼らの呼びかけに応じて今宵の1番手として登場したのは、姉妹ピアノ連弾ボーカル・ユニットのKitri。
控えめな照明に照らされたグランド・ピアノが、会場の赤いカーテンともよく映えている。1曲目の「LIFE」から2人で1台のピアノを操り、華麗なサウンドで会場を包み込む。また、曲によってはヒナがギターを弾く展開も。どこか童謡すらも彷彿とさせるようなエヴァーグリーンなメロディと歌声が印象的な、瑞々しいポップ・ソングは、長い一夜の幕開けにもぴったりだ。丁寧で、しかしどこか笑いも誘うMCの空気感も含め、彼女たちの飾らない姿に多くの人が魅了されたことだろう。
矛盾律
さよなら、涙目
羅針鳥
再びFM802の竹内による紹介を挟み、今度は一転激しいロック・サウンドを展開するSNSで話題沸騰中のソロ・アーティスト、秋山黄色が登場。本人曰く久々の3人編成だったとのことだが、音の薄さを微塵も感じさせないテクニカルな演奏はお見事。演奏もボーカルも、スタジオ音源とは比べ物にならないほどの熱量で観る者を圧倒していく。MCでは「新人で期待されているっていうのは嬉しいんですけど、いつまでも肩書が新人のままじゃしょうがない」と、クレバーな視点もみせてくれた。最新曲「夕暮れに映して」から彼の知名度を拡大させた「猿上がりシティーポップ」と疾走感溢れる展開で幕を閉じた。
クラッカー・シャドー
夕暮れに映して
猿上がりシティーポップ
この日の3番手は、徳島育ちのSSW・Maica_n。このイベントの翌日に19歳になったばかりという若さながら、すでに山崎まさよしやCharとの共演も果たすなど、各方面から注目を集める逸材だ。『Early Noise』プレイリストにも選曲された「秘密」でライブはスタート。幼少期より父親の影響で聴いていたという60〜70年代ロック、ポップスを彷彿とさせる、風通しの良いオーセンティックなサウンド。そこにどこか歌謡曲のようなテイストも感じさせるセンスで会場の空気をガラッと塗り替えていく。「決まった振り付けとかも全然ないので、みなさん自由に歌って踊って」というMCと共に曲名通りの軽やかなダンス・ナンバー「Dance with me」でステージを後にした。
Hanakoさん
タバコと私
Dance with me
WONKメンバーやSweet William、冨田恵一といった豪華ミュージシャン参加の最新作『vivid』でも注目を集めるkiki vivi lilyは、同作にも参加しているMELRAWこと安藤康平、そして無礼メンの菅野颯がバックを固めるトリオ編成で登場。音と音の隙間を活かした絶妙なレイドバック感に、オーディエンスもそれぞれ体を横に揺らす。MCは最小限ながら、「物販もあるので、最後まで楽しんでいってください」「私しかいないので、私が売ります(笑)」と笑いを誘った。歌とラップを自由に行き来する歌唱スタイルは、まさに今日的。終始ピースフルな空気で満たされたステージであった。
80denier
AM 0:52
カフェイン中毒
Waste No Time
Copenhargen
Dance with me
kiki vivi lilyのアーバンかつチルな音世界を経て、いよいよ終盤戦へと突入したこの日のイベント。ストリート・ライブで鍛え上げたピアノ・トリオ、Omoinotakeは初っ端からアクセル全開で突っ走る。ベース、ドラム、鍵盤の3人の演奏も盤石ながら、サポートの柳橋玲奈によるサックスも高揚感を煽る。MCでは「Spotify Early Noise Night呼んでくれてありがとうございます」「いちリスナーとしても、Spotifyはめちゃめちゃ使っていて。眠れない夜に、『Peaceful Piano』というプレイリストをかけて眠るのが大好きです」と、私的な話まで飛び出す。ファンキーなパーティー・チューンからメロウなバラードまで、バンドの全てを短い時間に詰め込んだかのようなセットリストで会場を沸かした。
Blanco
惑星
Never Let You Go
この日のトリを務めるのは、アメリカ人SSW/マルチ・プレイヤーのTHE CHARM PARK。アコースティック・ギターのオーガニックな音色、そして情景描写豊かなサウンドで、長時間に及んだイベントを大団円へと導いていく。ギターとドラムだけながら、聴く者をどこか遠くへと連れ去るようなサウンド・スケープを展開。途中、ニュー・アルバム『Reverse & Rebirth』を11月にリリースすることも発表。少しぎこちない日本語ながらも、時にはユーモアを交えたトークでも会場の空気を掌握する。大きなコール・アンド・レスポンスを起こした「Don’t Stop」、「もう(声を)潰すところまで潰してみます」と言い放ち、ソウルフルな歌唱もみせた「Imperfection」で終幕。ステージを去った後も鳴り止まない拍手が、ライブの満足度の高さを物語っていた。
Ordinary
Don’t Stop
Imperfection
普段では中々交わらないような、ジャンルレスなラインアップを実現した今回の『Spotify Early Noise Night』。きっと目当てのアーティスト以外にも新たな発見をしたオーディエンスも多かったのではないだろうか。今後もプレイリスト、イベント共にSpotifyが取り組むプログラム『Ealy Noise』の動向に期待したい。
Photo by 松本いづみ @mini12du
Text by Takazumi Hosaka
【イベント情報】
『Spotify Early Noise Night #12 Osaka』
日時:2019年9月13日(金) OPEN 18:00 / START 18:30
会場:大阪・心斎橋 Music Club JANUS
料金:前売 ¥1000 / 当日 ¥2000 (各2D代別途)
出演:
[LIVE]
秋山黄色
Omoinotake
kiki vivi lily
Kitri
THE CHARM PARK
Maica_n
[MC]
土井コマキ
竹内琢也(FM802 DJ)
[DJ]
Spincoaster
DAWA (FLAKE RECORDS)
主催:Spotify
協賛:Chupa Chups
協力:FM802 BEAT EXPO / Spincoaster
企画・制作:Spotify / Music Club JANUS / キョードー関西