踊Foot Worksによるワンマン・ライブ“ODD FOOT WORKS”が5月3日(金)東京・渋谷WWW Xにて開催された。4月にリリースしたばかりの2ndアルバム『GOKOH』のリリース記念ライブとも言える本公演。ポップとドープとユーモアの限界を絶妙なバランスで更新し続ける、踊Foot Worksの最新ライブをレポートする。
なお、踊Foot Worksは5月11日(土)に神戸VARIT.にて開催する“SPIN.DISCOVEY vol.11 in KOBE”にも出演する。関西地方の方はこのレポートを読んで、ぜひ今の踊Foot Worksを目撃しに足を運んでいただけると幸いである。
Text by Kohei Nojima
Photo by Machida Chiaki
開演待ちの場内のスピーカーからは何やらコントのような話し声が流れていた。しばらくして、これがGEISHA GIRLS(ダウンタウン)のアルバム『THE GEISHA GIRLS SHOW – 炎のおっさんアワー』(1995年)であることに気がついた。同アルバムはお笑いやコントが盛り込まれたコミック・バンド的な体裁でありながら、坂本龍一やTOWA TEI、小室哲哉、ANI(スチャダラパー)などが参加しており、音楽的にもクオリティの高いアルバムとして話題を集めた作品である。
この機会に改めて同アルバムを聴いてみると、“国民的なお笑い芸人”というポップな存在がお笑いと音楽において先鋭的なことを試みたことから生まれてくる歪さ、ヒップホップ、ロック、テクノ、ボサノバなどアルバム内での音楽性が多岐に渡る点などは踊Foot Worksのスタンスと相似するものがある。また、本日の公演名は“GOKOH Release Party”などではなく“ODD FOOT WORKS”という彼らのグループ名を冠している。つまり、このワンマン・ライブは踊Foot Worksのフィロソフィーを体現する場でもあると、捉えることができるのではないだろうか。そう考えるとm彼らがこのアルバムを開演前のBGMに選んだことにも合点がいく。
余談だが、逆さまの接吻のMVも映画『大日本人』など松本人志が手がけた映画の世界観に通じるものがあるな、とふと思った。PecoriはRHYMESTERのMummy-Dとの対談でもダウンタウンの松本人志について言及しており、もしかしたらダウンタウンのかなりのファンなのかもしれない。
ステージが暗転し、まずはボーカルのPecoriを除くメンバーが登場。バックには「ODD FOOT WOKRS」という文字が映し出され、アルバムのオープニング・ナンバーでもある「2019 IN EXCAVATE」のバンド演奏からライブはスタート。『GOKOH』のジャケットは史上最強のクソゲーとも称される『E.T.』(ATARI 2600)をサンプリングしたSF感のあるジャケットであったが、ステージでも「スターブレード」や「スターフォックス」などシューティング・ゲームを想起する宇宙空間の映像が映し出されている。
この日は大井一彌(DATS / yahyel)と澤村一平(SANABAGUN.)という2名の腕利きドラマーをサポート参加。前半パートは主に大井が、後半パートは澤村がそれぞれドラムを務めており、楽曲によってはツイン・ドラムも展開するなど、非常に豪華な編成で行われた。
怒涛のオープニング・セッションの後に「What’s Up!? 調子はどうですかー!?」と髪を赤く染めたPecoriが登場し、アルバムと同じ流れで「JELLY FISHI」に突入。音響も素晴らしく、この日はPecoriのラップがいつにもましてクリアに耳に届く。
2曲目には早くもアンセム「N.D.W」が投下され、大合唱が発生。淡々とラップする音源とは打って変わって感情をむき出しにラップするPecori。それにオーディエンスも応えていく。続く3曲目は「bebop kagefumi」と立て続けにライブでの人気曲を披露。「宇宙旅行へようこそ! アガれ! アガれ! アガれー!」とオーディエンスを煽り3曲目にして早くもこの日最初のピークを迎えた。
この日は演奏時に曲名が1曲、1曲、異なるロゴでスクリーンに投影されていた。それぞれゲームや、映画、ドラマ、アニメなど、様々なモチーフを想起させるデザインになっており、サンプリング精神と彼ららしいユーモアを視覚面でも感じ取ることができた。
最初のMCでPecoriが「疲れたな。ちょっと飛ばしすぎたな」と息をつきながら、5月3日が踊Foot Worksにとってとても大切な日であることを伝える。2年前の同じに日に初めてライブを行い、その翌年にワンマン・ライブを、そして本日渋谷WWW Xをいっぱいにできたことに喜びを爆発させた。
その後、現在女優の永野芽郁に大ハマリ中だというPecoriは「永野芽郁!」「Pecoriに届けー!」(※のちにTwitterで「芽郁ちゃんに届けだったね」と訂正)。という私情しかないコール・アンド・レスポンスをオーディエンスに要求。こういう無茶が受け入れられるのも、ワンマン・ライブならではである(ワンマンでなくてもやりそうではあるが)。
ここから少しペースを落とし「GIRAGIRA NEON」から、この日の登場はなかったが、中村佳穂をコーラス迎えた「MILK」をプレイ。ここでは終始クールなTondenheyのギター・ソロが冴え渡っていた。
続いてPecoiの呼び込みで、佐藤千亜妃(きのこ帝国)が登場。「髪と紺」のAAAMYYYのパートを佐藤が歌うというスペシャルなステージを披露。佐藤の透明感と憂いを帯びた声がバッチリ楽曲にハマっていた。
佐藤とのMCで「永野芽郁の知り合いがいたら『いい人がいた』って伝えといて」と本気気味にアピールしたところで、さらにスペシャルな展開が続く。Tondenheyがトラックを手がけた、佐藤千亜妃の「Lovin’ You」をメンバーが演奏し、さらに間奏の8小節ではPecoriがオリジナルのラップを披露。向かい合う佐藤とPecoriの姿が印象的であった。
佐藤がステージを去り、「VIRTUAL DANCER」「PRIVATE FUTURE」と『GOKOH』の中でも核となるようなキャッチーな楽曲を続けてプレイ。「PRIVATE FUTURE」では先述の大井一彌と澤村一平がツイン・ドラムを展開。会場を大きく沸かせた
続くMCでは7月3日(水)に東京・渋谷クラブクアトロにてSTUTSとのツーマン・ライブが開催される旨、そして同日に新曲「KAMISAMA」を加え、2枚組という形で『GOKOH』のフィジカルCDをリリースすることが発表。駆けつけたファンにとっては嬉しいニュースが届けられることとなった。
西部劇をイメージしたロマンチックなリリックの「HORSEMAN DRIFT ROMANCE」を皮切りに、ライブは終盤戦に差し掛かる。Pecoriのフリースタイル風のアカペラからスタートした「夜の学校」では、大きな歓声と合唱が巻き起こる。さらに「逆さまの接吻」「NEASE」とミドル・テンポのグルーヴィーかつアンセミックな楽曲が続き、オーディエンスはゆったりと左右に揺れる。
SunBalkanがトラックをが手がけた「テレコになって」では、レコーディングではPecoriが300回トライしたというクシャミもしっかり再現されていた。続いて、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)がステージに登場し、アルバムのタイトル曲でもある「GOKOH feat.オカモトレイジ」で本編もクライマックスに突入。
まるで安全地帯のようなメロウなサウンドと、クワイトのビートという歪な組み合わせながらも、ライブのキラーチューンとして成立するようなポップさをも擁している同楽曲から、踊Foot Worksのアイデンティティと進化を強く感じることができた。そう言えばステージのバックに映し出される、放射状に流れていく星がどこか後光のようにも見える。
「Instagramが映える曲です」と紹介し、本編ラストは「SEASONS」。TondenheyもSunBalkanも楽器を置き、マイクを握る。そしてPecori→Tondenhey→Fanamo’→ SunBalkanとマイクをリレーしていく。以前に見た、「時をBABEL」も素晴らしかったが、メンバー全員がマイクを手に取り歌唱するというスタイルが踊Foot Worksのひとつのスタイルとして定着したように思う。オートチューンが施されたマイクを優しくパスしていく姿になぜかグッとくるものがある。「ありがとう。踊Foot Worksでした」と突然の本編終了にオーディエンスも一瞬不意を付かれて戸惑いを見せたものの、温かい拍手が送られた。
アンコールではまずFanamo’が一人で登場し「HERAGI」を歌唱。この日、唯一とも言える冷たく張り詰めた空気が会場を包んだ。「アンコールありがとう! 最後まで盛り上がって帰ろうぜ!」と「Tokyo Invader」「Arukeba Gravity」と踊Foot Worksの楽曲の中でも屈指のポップでピースフルな楽曲でライブを華やかに締め括った。
メンバーがステージを去り、客電が灯り、これで終わりと思いきや最後にGiorgio Givvnがプロデューサーを務める謎のラッパー、Qiezi Maboが登場し「Tokyo Invader (Giorgio Givvn Remix)」をパフォーマンス。まるでゲームを全クリした後のボーナス・ステージを見ているような気分であった。
佐藤千亜妃、オカモトレイジ、Qiezi Maboと多様なゲストが登場し、最初から最後まで一筋縄ではいかない踊Foot Worksの世界観を体現した90分間。パフォーマンスは素晴らしいものであったし、その流れにも唸らされた。しかし、どこか「お客さんが大人しい」と感じた人もいるのではないだろうか。コミュニーケーションが噛み合っていないなと感じる瞬間が何度か見受けられたのも正直な間奏だ。これは踊Foot Worksの掴みどころのなさにオーディエンスたちがまだ対応できていないからなのか、チームが途上であるということの表れなのかはまだわからない。なんせ初ライブから2年しか経っていないのだから。
しかし、そんな歪さや違和感を圧倒的なポップと知性のあるユーモアで飲み込み、エンターテイメントして昇華できるのが踊Foot Worksの魅力であることを、このライブを通して改めて認識することができた。きっと彼らはこれからも私たちを何度も驚かせ、楽しませてくれることだろう。例えばの話、今後、彼らがGEISHA GIRLSのような作品を完成させても決して不思議ではない。踊Foot Worksのこれからにさらなる期待を寄せずにはいられない一夜となった。
■Set List
01. 2019 IN EXCAVATE (intro)
02. JERRY FISH
03. N.D.W
04. Bebop Kagefumi
05. GIIRAGIRA NEON
06. milk
07. 髪と紺 feat.佐藤千亜妃
08. Lovin’You feat.踊Foot Works(佐藤千亜妃)
09. VIRTUAL DANCER
10. PRIVATE FUTURE
11. HORSEMAN DRIFT ROMANCE
12. 夜の学校
13. 逆さまの接吻
14. NEASE
15. テレコになって
16. GOKOH feat.オカモトレイジ
17. SEEASONS
[Encore]
01. HELAGI
02. Arukeba Gravity
03. Tokyo Invader (Giorgio Givvn Remix)
【イベント情報】
Spincoaster Presents “SPIN.DISCOVERY vol.11 in KOBE”
日時:2019年5月11日(土) OPEN 17:30 / START 18:00
会場:LIVE ACT BAR 神戸VARIT.
料金:前売 ¥3,500 / 当日 ¥4,000 (各1D代別途)
出演:
Attractions
踊Foot Works
showmore
[O.A.]
ONEDER with FREEDOM BAND
・チケット
e+ / ローソンチケット (Lコード:53389) / ぴあ(Pコード:149-701)
主催:神戸VARIT. / Spincoaster
■オフィシャル・サイト
==
“GOKOH OSAKA”
日時:2019年6月29日(土) OPEN 17:30 / START 18:00
会場:大阪 CONPASS
出演:
踊Foot Works
INFO:清水音泉 06-6357-3666
==
“GALAXY MOTEL vol. 2”
日時:2019年7月3日(水) OPEN 18:15 / START 19:00
会場:東京・渋谷 CLUB QUATTRO
料金:前売 ¥3,500 (1D代別途)
出演:
踊Foot Works
STUTS
チケット一般発売日:5月18日(土)
企画/制作:MIYAKE Inc./踊Foot Works/Bauxite Music wy./VINTAGE ROCK std.
INFO:VINTAGE ROCK std. TEL. 03-3770-6900 [平日12:00-17:00]
【リリース情報】
踊Foot Works 『GOKOH + KAMISAMA』
Release Date:2019.07.03 (Wed.)
Label:Victor Entertainment
Price:¥3,241 (tax in)
Cat No.:VIZL-1595 (2CD)
Track]ist:
[CD-1] album 『GOKOH』
01. 2019 IN EXCAVATE 02. JELLY FISH
03. 髪と紺 feat. AAAMYYY
04. HORSEMAN DRIFT ROMANCE 05. PRIVATE FUTURE
06. HELAGI
07. VIRTUAL DANCER 08. NEASE
09. GIRAGIRA NEON
10. テレコになって
11. SEASONS
12. GOKOH feat. オカモトレイジ
[CD-2] single 『KAMISAMA』
(全2曲収録 / 詳細後報)