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Interview / Bromance Records Crew


「ぼくらはパリジャンになりたくて音楽やレーベルをやっているわけではない」―フランスはパリの新世代レーベルの哲学に迫る!

2016.04.21

2000年代後半、フレンチ・エレクトロ・シーンに彗星のように現れ、若くしてシーンを牽引したDJ/プロデューサーであるBrodinski(ブロディンスキ)と、そのマネージャーのManu Barron(マニュ・バロン)が2011年に立ち上げたレーベル、〈Bromance Records〉。

同レーベルは明らかにそれまでのフレンチ・エレクトロとは一線を画した世界観を、サウンドやアートワークなど活動全体を通して標榜しており、これまでにSam Tiba(サム・チバ)やCanblaster(カンブラスター)、そしてM.I.A.とコラボしたことでも話題となったSurkinの変名プロジェクトであるGENER8IONなどの作品をリリースしてきた。

さらに、レーベルの代表的アーティストとなる先述のSam Tiba、Canblasterに加え、Panteros666(パンテロス666)、Myd(ミッド)の4人のトラックメイカー/プロデューサーが立ち上げたプロジェクト、Club cheval(クラブ・シュヴァル)はなんとメジャー・レーベルである〈Warner Music France〉と契約を果たすなど、流行り廃りの早い昨今のシーンにおいてもジワジワとマイペースにその勢いは増し続けている。

レーベルのクルー全員揃って大の親日家としても知られる彼らだが、今回、再びアジア・ツアーの一環として日本で”Bromance Night“を開催した際に、レーベルの共同オーナーであるManu Barron、レーベルのクリエイティヴ・ディレクターであり、DJとしても活躍するGuillaume Berg(ギョーム・バーグ)、そしてClub chevalのメンバーでもあるSam TibaとMydに楽屋裏でインタビューを敢行。

韓国からのハードなスケジュールの中、出番直前ということで最初はGuillaume Bergしかいない状態でのインタビューになりましたが、このフランスのエレクトロニックな音楽シーンを牽引する新世代アクトたちの哲学を紐解くために、様々なことを訊いてきました……!

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(L→R:Guillaume Berg、GENER8ION、Myd、Manu Barron、Sam Tiba)

Interview & Header Photo by Takazumi Hosaka
Other Photo by MASANORI NARUSE
Location at SOUND MUSEUM VISION


—今回の来日は韓国での公演が終わってすぐに飛行機に乗り、ついさっき到着するという超過密スケジュールだったようですが、体調は大丈夫ですか?

Guillaume Berg(以下:G):いつもこんな感じだから大丈夫だよ! もう慣れたしね(笑)。

—〈Bromance〉クルーとしては日本には既に何度も来ていると思いますが、どこか日本でお気に入りのスポットとかはありますか?

G:そうだね、この半年でも既に3回くらい日本に来てるよね。お気に入りのスポットはいくつもあるけど、実はぼくはずっと神戸に行きたいと思っているんだ。できればショウじゃなくて純粋な休暇としていきたいね。

—どのようにして神戸を知ったのでしょうか?

G:神戸ビーフだね。あとは神戸出身の男性に出会って、色々詳しく聞いたんだ。海の側にある港町で、都会と田舎の中間くらいだって聞いたから、観光してみたいよ。

—Guillaumeはクリエイティブ・ディレクターとして〈Bromance Records〉に携わるアートワークやデザインを手がけていますよね。

G:そうだね。マーチャンダイズやフライヤー、レーベルのロゴとかはぼくがデザインしている。でも、リリース作品に関しては外部のデザイナーに発注していることも多いんだよね。もちろんぼくがディレクションしているけどね。

—〈Bromance Records〉に関わる全てのデザインにおいて、何か一貫としたコンセプトのようなものはありますか?

G:今夜のイベント・フライヤーもそうだけど、ああやって東京の友人の写真を使ったりするのは、内輪ネタというかジョークみたいな、一種のコラボレーションみたいなモノを一環としたテーマとしているからなんだ。
コラボレーション、インターナショナル、フレンドシップ。この3つを大事にしているよ。

FLYER TOKYO

—今挙げてくれたポイントのうち、「インターナショナル」に当てはまるのだと思うのですが、〈Bromance Records〉の作品の、特にここ最近のリリースに関しては、アートワークに欧米以外の文化圏の要素を感じさせるエキゾチックなモノが多いような気がします。

G:確かに、Sam (Sam Tiba)やGEN8ION (Surkin)なんかは日本が大好きだしね。そもそもぼくらはパリジャンになりたくて音楽やレーベルをやっているわけではないから、元々パリを意識するということはないんだ。色々な場所にツアーをしに行って、KIRI(PHIRE WIRE / REVOLVER / YES)みたいな日本の友人ができたりして、そういったことから影響を受けているっていうのもある。ぼくらは様々な境界を超えた表現がしたいんだ。

—Club chevalの作品では、昨年のEPから今作まで無機質なイメージを抱かせるアートワークで統一されていますが、どこかKraftwerkを想起させるような気がします。これはどういったイメージで制作したのでしょうか?

G:YMOみたいだよね。これは実はManu(Manu Barron)のアイディアからこうなったんだ。

—あなたはデザインの仕事とDJをやっていますが、この2つに何か共通する感覚や、重要なポイントなどはありますか?

G:何か複数のモノからインスパイアされた自分の感覚を、混ぜあわせてアウトプットすることかな。

(ここで〈Bromance Records〉の共同オーナーでもあるManu Barron、デビュー・アルバムをリリースしたばかりのClub chevalのメンバーであるSam Tiba、Mydがインタビューに加わる)

—ここで皆さんが来たということで、改めてお聞きしますが、〈Bromance〉は2011年に立ち上がったレーベルですが、この4〜5年を振り返ってみて、変わったモノと変わらないモノを教えてもらえますか?

G:大きく変わってはいないけど、着実に進化していっていると思う。ぼくらは元々テクノ・レーベルになりたいわけじゃなくて、音楽レーベルになりたくて始めたんだよね。最初はダンス・ミュージックだけだったけど、今ではUSラップなんかも手掛けているし、EPだけじゃなくてアルバムもリリースするようになった。

Manu Barron(以下:M):一番の変化は、色々なことを学んできたっていうことかな。最初はたくさんミスを犯してきたけど、今ではしっかりレーベルを回せるようになってきたと思う。
そして最も大きな変化というのは、Club chevalなんかがまさしくそうなんだけど、第一世代のアーティストがメジャー・レーベルと契約するようになったりっていう、そういったアーティスト自身の進化かな。アーティストにそういったチャンスがきたら、彼らがしっかりそれをモノにできるようにぼくらもサポートしているし。
変わらない点は……そうやってアーティストが他のレーベルと契約していっても、ぼくらは今でもファミリーのようなフィーリングを失っていないんだ。そういうところかな。
もちろん新しい世代のアーティストを受け入れるっていうことも常にぼくらはやっているよ。ただ、ぼくらは自分たちが本当に素晴らしいと思ったアーティストしか契約しないし、今でもそういったアーティストたちと純粋に良い音楽を作っていきたいと思っている。たくさんのアーティストを抱えたり、大量の作品をリリースしたりするんじゃなくてね。そこは立ち上げ当初から変わっていない点かな。

—そもそもManuがBrodinskiと共に〈Bromance〉を立ち上げた当初は、どのようなコンセプトを抱いていたのでしょうか?

M:まず一番最初に、音楽に対する熱意がベースにあるっていうこと。お金とかマーケティングは二の次でね。あとは、年老いて経験を蓄えた自分と、20代の若いアーティストとのコラボレーションっていう点が、当初から持っていたコンセプトみたいなものかな。

Myd:そもそも〈Bromance〉はBrodinskiだけのものではなくて、Manuとかぼくらのクルーのようなレーベルなんだ。それが他のレーベルとは違ったスペシャルなことなんだよね。

—なるほど。では次はSam TibaとMydが加わっている、Club chevalについて教えて下さい。このClub chevalというプロジェクトが始まった経緯を教えてもらえますか?

Myd:知ってると思うけど、ぼくらは最初それぞれみんなソロで活動していたんだ。でも、だんだんエレクトロニック・ミュージックに対する共通の愛情を抱いているメンバーが集まるようになり、そこから何か新しいエレクトロニック・ミュージックを生み出せないかっていうアイディアが生まれてきた。
それこそ最初はバンドじゃなくてクルーのような感じだったんだけど、だんだん楽曲を共作することが増えてきたから、いっそのことバンドみたいなプロジェクトにしてしまおうってことになったんだ。

—今おっしゃったように、2010年リリースの『Club Cheval EP』では、Sam Tiba、Canblaster、Mydがそれぞれの楽曲を収録した形でしたが、その後Club chevalという名義で楽曲を制作/リリースしていくようになったキッカケなどはありますか?

Myd:あのEPはまだ自分たちのサウンドを見つけるための実験段階だったというか、いろいろなことを試していた時期だったんだよ。そういった時期を経て、やっと自分たちのサウンドって呼べるモノが見つかって、今回『Discipline』 っていうアルバムをリリースすることができた。だから、Club chevalにとってはここからが本当のスタートっていう感覚があるんだ。

—4人のプロデューサー/トラックメイカーからなるこのグループにおける、作曲のプロセスを教えて下さい。

Sam Tiba(以下:S):何か音楽以外のコンセプトを元に楽曲制作をスタートするっていうことはこれまでに一度もなくて、メロディやビート、声ネタだったりといった断片的なアイディアを持ち寄ってスタートさせるんだ。あと、必ず誰かひとりではなく、全員が曲作りに関わるようにしているよ。

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—今作のタイトル『Discipline』には「訓練」、「鍛練」という意味がありますが、今作の制作環境というのは、まさにそういった言葉が相応しい状態、状況だったのでしょうか?

S:ぼくらは”良いポップ・ミュージック”を作りたいんだ。”良いポップ・ミュージック”っていうのはまず第一に、ソングライティングがハイレベルじゃないとダメだと思う。その点がまずは修行のようなものだった。
あと、これは4人のコラボレーションではなく、4人でひとつのモノを作るっているプロジェクトなんだよね。だから、それぞれ好きな音楽や影響を受けたモノは違うけれど、4人が向かっていく方向をシッカリと確立させなければいけない。そのために、まるで学校のようにお互いが自分の知識、技術をみんなに教え合って、自分たち自身で鍛え上げるような作業を経て、完成させたアルバムなんだ。だから、君の問いはまさしく正解だよね。

—今おっしゃったように、今作はとてもポップなカラーが強いです。その理由のひとつとして、ボイス・サンプルではなく、しっかりとしたボーカルが入った曲が多い点が挙げられると思うのですが、どの曲もボーカリストの名前が曲名にクレジットされていませんよね。なので、ゲスト参加のボーカリストを教えてもらえますか?

S:ほとんどのボーカルはRudyというマイアミのシンガーに歌ってもらったよ。あと、3曲目の「From The Basement To The Roof」にはPhlo Finisterっていう女性シンガーが参加している。

Myd:ぼくらは声をシンセサイザーのような楽器のように扱いたかったので、敢えて曲名にシンガーの名前を明記しなかったんだ。
インストゥルメンタルのエレクトロニック・ミュージックに感情を込めたりするのは難しいけど、そこに人の声や歌詞が入ることによって、それが伝わりやすくなるよね。で、どうせ伝わりやすくするならやっぱり英語で歌える人にお願いしたかった。やっぱりより広い層へと届くようになるしね。そこで知り合いを介してRudyを紹介してもらったんだ。
もちろん彼以外のシンガーにも色々アプローチしてたんだけど、やっぱり自分の声をぼくらの好きなようにエディットさせてもらいたいっていうお願いをすると、みんな首を縦には振ってくれないんだ。

S:R&Bのようなフィーリングを楽曲に落としこみたかったんだけど、ぼくらは歌えないから、外部のシンガーを呼ぶしかなかった(笑)。
ちょうどDaft Punkの『Interstella 5555』で使われていた楽曲のように、それを観たり聴いたりしただけでは誰が歌っているのかわからないようなものにしたかったんだよね。

—少々話が変わりますが、Sam Tibaは数日前に日本の曲オンリーのMIXをSoundCloudにUPしてましたよね。あなたが音楽も含めた日本のカルチャーに興味を持ち始めたキッカケは何だったのでしょう?

S:やっぱり最初はアニメやマンガだったんだけど、徐々にそういったものに飽きてしまったんだ。あと、徐々に日本のことを知っていくうちに、それ(アニメやマンガ)だけが日本って思われるのが嫌になったんだ。そっから『凶気の桜』っていう映画に出会ってから、さらに日本語や日本のカルチャーに深くハマっていくことになったね。高校生の頃には日本語も勉強していたんだよ。

—今年リリースした〈Bromance Records〉のコンピの第二弾『HOMIELAND vol.2』には、日本のラッパー、KOHHの「Paris」の、Sam Tibaによるリミックスが収録されていますよね。これはどのような経緯で実現したことなのでしょうか?

S:元からぼくは彼の大ファンだったんだ。そしたらマネージャーから「興味があるなら連絡とってみようか?」って言われて、お願いしたら実現してしまったんだよね。
ちょっと日本のフィーリングを取り入れたかったんだ。聴けばわかると思うんだけど、尺八の音色を使ったりね。あのリミックスの出来には本当に満足しているよ。
あと、実は数日前に東京のスタジオで彼と一緒に楽曲制作を行ったんだ。今夜のパーティーでも流すよ。

—日本のラッパーであるKOHHの「Paris」を、実際にパリを拠点にしているあなたがリミックスするっていう話が、本当に出来過ぎているような気もしました。

S:確かに、本当に面白いことだよね。なかなか自分の住む都市についての曲をリミックスする機会なんてないしね。
ぼくはあの曲の歌詞がすごい好きなんだ。自分は東京の、きっと渋谷とかにいるのに「俺は今パリにいる」っていうさ、なんていうのかな……ちょっとこう、威張ったような感じで言うのがカッコいいよね。


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Club cheval『Discipline』
Release Date:2016.03.04
Labele:Warner Music France
Cat.No.:B01972NCTC
01. Debut
02. Young Rich And Radical
03. From The Basement To The Roof
04. sam tiba interlude
05. Nothing Can Stop Us Now
06. Bells
07. myd interlude
08. Legends – Intro
09. Legends
10. canblaster interlude
11. Other Guy
12. Scream
13. panteros666 interlude
14. Discipline
15. Dream On

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VA.『HOMIELAND vol.2』
Release Date:2016.01.15
Label:Rambling RECORDS
Cat.No.:RBCP2974
Price:¥2500(tax out)
Tracklist: ※国内盤2枚組
CD1
1. GENER8ION – “MALIBU”
2. BRICC BABY FEAT. KING KANOBBY – “FIGURE ME OUT
3. WITH YOU. -“SNAPS”
4. THE BLAZE – “VIRILE”
5. MYD – “AGAIN”
6. BOY STEPHEN – “DRUMTRAICKS”
7. PANTEROS666 – “MILAGRO”
8. CANBLASTER – “VOXES ROLL”
9. ADAM – “QUARREL”
10. JENSEN INTERCEPTOR – “THE FONTAINEBLEAU”
11. Straight Razor – “The Adversary”
12. MAELSTROM – “ARTERIES”

CD 2
1. COPING MECHANISM – “SWAY TOWARDS”
2. KENT HAMMER – “BEING KENT HAMMER”
3. BRODINSKI & SHY GLIZZY – “WOAH”
4. FERAL – “WASP”
5. SISTER CITY – “BLOOD MIND”
6. DISTAL – “FLAWLESS WEAPON”
7. SUICIDEYEAR – “DON’T SPEAK”
8. TOMMY KRUISE – “RAMEN”
9. 8TM – “AIRPORT”
10. SEBB BASH – “PULASKI”
11. SAM TIBA FEAT. JEFF CHERY – “ ONE CALL AWAY ”
12. KOHH – “ PARIS ” (SAM TIBA REMIX)


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