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INTERVIEW | goethe


「円」であり「縁」──初のフルアルバムで目指した「より多くの人に届く音楽」

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2026.05.18

R&Bやソウルの要素を礎にポップミュージックへ練り上げるバンド・goethe(ゲーテ)が1stフルアルバム『circle』を完成させた。

Shin Sakiura、knoak、Shingo Suzuki、Michael Kaneko、小西遼といった錚々たるプロデューサー陣を迎えた今作で目指すのは「より多くの人に届く音楽」だという。

ソングライターである樋口太一(Vo., Gt.)の作り出す楽曲は、根底にブラックミュージックからの影響を感じさせるもの。その骨子は持ち続けたまま、現代の音楽市場で広く受け入れられる作品を生み出すため、goetheは今まさに探究の只中にある。

そんな彼らの現在地を知るべく、1stアルバムに込めた思いや制作過程の裏側を中心に話を訊いた。

Interview & Text by Kei Hasumi
Photo by Motomi Mizoguchi

L→R:樋口太一(Vo. / Gt.)、永江碧斗(Key.)、加藤拓人(Ba.)、相蘇勇作(Dr.)


「太一の声をちゃんと届けられる状態にしたい」

――数年にわたるシングルとEPのリリースを経て、待望の1stアルバムです。制作はどのように進んでいったのでしょうか。

加藤:goetheの曲作りはいつも(樋口)太一が作ったデモがメンバーに送られてくるところから始まります。アルバム制作を経て、そのデモに対しての解釈や、「こういう曲なのかな?」っていうすり合わせの会話が深くできるようになった気がしてます。

樋口:ファーストインプレッションを大切にしてるので、どんなものができてもデモを送るときに僕から何か言うことはないんです。反応を見たいというのもあって。

加藤:僕の場合はデモを聴きながら感じたことを書き出していきます。繰り返し聴きながら考えをまとめて、太一に送ってすり合わせていく。

相蘇:自分はデモが届いてすぐにコメントするっていうよりも、ひたすら聴き込んで叩いてみて、太一の表現しようとしていることを自分の中に落とし込んでいく作業に徹してる部分が大きいです。それを経てスタジオで実際に合わせて、すり合わせの会話に入っていく感じです。

永江:僕もめちゃめちゃ繰り返し聴いて自分の中で再構築していくというのをまずやって、その中で会話が生まれていくイメージです。

樋口:たぶん会話は全体的に少ないバンドです。ただ、やっていく中で各々が持ってる「ここはこうしたい」っていうことを深く話し合えるようになってきたと思います。

樋口太一(Vo. / Gt.)

――デモの段階で「これはこのメンバー気に入るだろうな」と予想がつくときもあると思うんですが、今回の『circle』の収録曲だといかがでしたか?

樋口:(加藤)拓人はモータウンや古いソウルが好きなので、“LIFE”はいい反応がもらえるんじゃないかなと思ってました。自分なりにそういうエッセンスを入れた曲なので、わかってくれるかな、感じ取ってくれるかなって。

加藤:感じました。

樋口:実際わかってもらえてうれしかったです。

相蘇:“LIFE”のデモを聴いたとき「これは来たな」って思いました。僕らは今、より多くの人に届くポップなものを作りたいっていう思いが強くて、その点で(“LIFE”は)なんか、いけるんじゃないかって。単純にリスナーとして刺さったし、プレイヤーとしても「この曲やりたい!」という気持ちが高まって。

加藤:“LIFE”は僕も「これだ」と思ったし、メンバー全員がその意識は共有してますね。

永江:(深く頷く)

樋口:僕はこのバンドでは誰でも手に取りやすい音楽を提供したいと思っています。取り立てて音楽に関心のない人でもカッコいいなと思えるものを作りたいです。そのために、今多くの人に聴かれている音楽をチェックして、何か自分にも取り入れられるエッセンスがないか考えたりします。

――参考にしているのはどんなチャートやプレイリストでしょうか?

樋口:チャートに入っているような音楽も一通り聴くんですけど、映像作家の方が動画に使っている楽曲を意識することが多いです。

加藤:自分はどっちかっていうと、今流行ってるものを聴くというよりは時代を遡ったソウルやR&Bを聴き込んで、地固めというか。太一の作ったものを一番いい形で表現できるようになりたいっていうのがあって、であればやっぱりルーツを吸収することなのかなと。とにかく太一の声をちゃんと届けられる状態にしたい。今はそういう時期なんじゃないかなって思ってます。

相蘇:僕はドラマーとしてはポップパンクから始まっているんですけど、今は拓人と近くて、原点を知っておくというか、80年代の曲を聴くことが多いですね。あと、自分はバンド単位というよりドラマーで音楽を好きになることが多いです。今ほど編集でどうこうっていうのが発達していなかった時代の、ドラマー自身の手元でグルーヴを作る意識が強い音楽には学ぶことが多いなと思います。

永江:僕は最近ハウスが好きで、そこから吸収したことをバンドに活かすってことをもっとやっていきたいなと思ってます。キーボード担当としては、ハウスで聴くようないろんな音色を取り入れて、曲にもっといろんな色をつけていきたいです。

永江碧斗(Key.)

錚々たる外部プロデューサーたちとの共作

――今作には錚々たるプロデューサー陣が参加しています。いずれもブラックミュージックの素地があり、それでいて皆さん同様にポップネスと向き合い、チャートインする楽曲を作られてきた方々です。

樋口:僕たちが最初にご一緒したプロデューサーは小西遼さんでした。小西さんは本当にお兄ちゃんって感じで、慣れない僕らが萎縮しないように対等に接してくれました。

加藤:プロデューサーとのやりとりってもの自体がよくわからない状態だったんですけど、リラックスしてやれるムードを作ってくださいました。

樋口:勉強になるなっていうのもあるし、それまでの自分たちのコミュニケーションの未熟さを改めて感じもしました。僕らでは作曲の過程で言語化できることの限界がかなりあるなって。そういう面でもっともっと成長していきたいですね。

――続いて、メンバー全員が強い手応えを感じた“LIFE”のプロデューサーであるknoakさんはいかがでしょう。

樋口:knoakさんも親しみやすい方というのと、たぶん空気感が僕らと近いのかなと思っていて。

――文字で伝えるのが難しいところですが、goetheは皆さん物静かで、かけるべき時間をかけて考えを言葉にしていくような印象です。knoakさんの動画インタビューを拝見したことがあるのですが、おっしゃるとおり非常によく似た雰囲気を感じます。

樋口:だからか話しやすくて、気兼ねなくアイデアを伝えられる。丁寧で物腰の柔らかい方です。

――knoakさんはキャリア初期、ロックギタリストとして注目されたところから、劇伴や広告のコンポーザーを経て今回のような外部プロデューサーとしての活動が目立つようになりました。そうしたバックグラウンドが、より多くの人に届くものを作りたい今のgoetheにマッチしているように思います。

樋口:はい。僕らの音楽をすごく理解したうえで一緒にやってくださっているって強く感じられました。

加藤:デモを聴いてこれは外部のプロデューサーさんと一緒にやりたいねとなったときに、それぞれのプロデューサーさんにお願いしたいことは違ってくるんですけど、knoakさんの場合はまさに自分たちが間口を広げたいと思ったときにお願いしてますね。

加藤拓人(Ba.)

――Ovallのベーシストとしても知られる、Shingo Suzukiさんの場合はいかがでしょうか。

加藤:Shingoさんの場合は、自分たちが持ってるブラックミュージックの要素をさらに伸ばしてほしいという狙いがありました。小西さんに関しては、“Runaway”で(永江)碧斗が持ってたハウス的な要素とか、ダンサブルな部分をブーストしてくれた部分もあって。

永江:(深く頷く)

相蘇:そういう意味では、小西さんは自分たちにない、新しい要素を持ってきてくれる方だなって思います。

樋口:Michael Kanekoさんに関しては僕が元々好きで、いつかご一緒したいなと思っていたタイミングで“Friendship”って曲のデモができて、お願いしたら快諾してくれたという流れです。試行錯誤して、話し合いを重ね合いながら作っていくスタイルでした。

相蘇:結構バンドの一員くらいの感じでがっつり入ってくれるスタイルでした。「これはどう?」ってメンバーと横並びでアイデアをくれて。

樋口:僕のイメージとはまた違う角度からアイデアをくれて、僕自身も「これめっちゃカッコいいじゃん」ってなる。そういうやりとりが多かったですね。

――Shin Sakiuraさんはいかがでしょう。

樋口:Shinさんもコミュニケーションを大事にされる方で、これまでやってきたプロデューサーの方々の中で一番LINEでのやりとりが多かったです。とても細かく聞いてくれる、細部まで理解しようとしてくれるんです。しっかりコミュニケーションして曲ができたなっていう実感があります。

――個人的には、今回のアルバムではShin Sakiuraさんプロデュースの“Sick!!!”が特に印象に残りました。まずタイトルからして言語感覚がおもしろいですよね。あまり「!」が後ろに来ることがない単語じゃないですか。しかも3つというのがまた「何かやってくれるんだろうな」と興味を掻き立てられるというか。

相蘇:あれは結構考えたんです。「単なる“Sick”ではないよね」「ビックリマークを付けるにしても何個が一番いいかな」って。僕の感覚だと3つがちょうど綺麗だなって、なんか感覚で。

――コーラス、でいいのか、とても特徴的な音色が後ろで鳴ってますよね。あれは声をピッチシフトしたものでしょうか。

樋口:そうです。元々声で、ピッチを変えて使ってます。あれは自分自身のパーソナリティを表現したいなと思って、以前から自分の引き出しの中にあったアイデアだったんです。それを元に、Shinさんがカッコよく仕上げてくれました。


ソングライター・樋口太一への信頼とメンバー間の関係性

――歌詞について「意味やメッセージがありすぎない」ものを目指しているといったことを過去のインタビューの中でたびたび言及されていると思うのですが、今作でもそれは変わらずでしょうか。

樋口:そうですね。僕が思う日本語のよさは奥ゆかしさ、言い切らない美学、行間を読む、といったところです。そういう部分を美しいと感じているので、自分もそういう表現をしたい。例えば、松本隆さんの“赤いスイートピー”の《あなたの生き方が好き》っていう一節が特に好きなんですけど、この曲の中で具体的に「あなた」がどんな「生き方」をしているのかっていうのは示されないんです。

シンプルな「好き」っていう言葉が、理由を説明せずにぽんとあるのがいいなと。今回のアルバムの最後の曲“Town”はそういうことを意識して作りました。

――音の面でいうと、今回のアルバム全体、アウトロがコンパクトなものが多いように感じられました。現代の音楽市場では、イントロにサビを持ってくるとか、ギターソロはいらないだとか、とにかく再生されたら即アテンションを掴んで離さない方向に最適化された楽曲が覇権的です。そんな中、あまり触れられないですがアウトロも同様に重要なのではと思うことがあります。聴いていて間延びしないよう、音楽家それぞれがやり方を模索しているような。

樋口:歌詞においては意味がありすぎないものを、という思いがありつつ、曲の構成に関しては逆に意味がないものは入れたくないという思いがあります。リスナーそれぞれが余韻を感じるためにも、曲のメイン部分が終わったあとにアウトロが不必要に長く続いてしまうと、余韻を感じる余白がなくなってしまうのかなと。そんなことを考えているかもしれません。

この曲はアウトロを付けたほうがいいのか都度考えて、付けないほうが響くのなら、それがいいなっていう感じですね。

加藤:“LIFE”のアウトロに関しては、転調してからアウトロに入っていて、今の話でいうとちゃんと「意味がある」アウトロっていう感じだよね。僕としては「物足りない」「もっと何かしたい」ってなっても、必要なら太一が付け足してくるだろうと思うから、僕のほうから「アウトロ伸ばさない?」って提案したりはしないですね。

――お話を伺っていると、みなさん一様にソングライターへの揺るぎない信頼を感じます。

加藤:そうですね。

相蘇:さっき拓人が言ったように、太一の作るものを一番いい形で表現したいっていうのは自分にもあります。

永江:(深く頷く)

相蘇勇作(Dr.)

――フルアルバムを作るというのはバンドにとってひとつの節目になるかと思います。そこを経た今、自分たちの変化を感じることはありますか?

相蘇:自分としては、改めて多くの方に向けて音楽を届けるっていう意識が強くなったっていうのがそうかもしれません。

加藤:僕も音楽への向き合い方が変わったっていうのはあるんですけど、メンバーとの関係性についても結構変化してきたなと思います。僕たち全員、地元も一緒で同い年ですけど、元々めちゃめちゃ友だちだったってわけじゃないんです。

共通の知り合いを通して集まって、あんまり会話したことない状態でバンドを組んだので、最初は結構よそよそしかったんです。でも、最近だと全然ぶっちゃけた話もできるようになって。いい意味であんまり気を遣わないで話せるようになってきました。

相蘇:バンドをどんどん大きくしていく上で、各々思ってるけど言わないできたことがちょっとずつあって。さっき言ったようにちょっとよそよそしい期間には触れずに来たようなところも、今はちゃんと言っていこうみたいな感じにだんだんなってきてますね。

スタジオ入るでもなく集まってみんなで一緒にカフェに行って長時間話すとか、昔はなかったよね。話す内容もメンタルというか、生き方の話というか、だんだん時間が経つにつれて変化してきたなって思います。

加藤:バンドとして同じものを追いかけてる中で、それぞれが感じてることがなるべくズレないようにちゃんと話し合うようになってきたというか。


goetheが目指す「普遍性」。時が経っても残る音楽を

――案外珍しいタイプのバンドかもしれません。音楽を一緒にやるパートナーとして出会って、徐々に友だちになってきた、というか。

加藤:逆に変わってないところでいうと、音楽をやるうえでのそれぞれの芯の部分、譲れないところというか。それがいい方向に働くときも大変なときもあるんですけどね。でもやっぱ4人ちゃんとそれぞれ芯があるからいいのかなって。

相蘇:あと、昔から太一は「人との縁を大事にしたい」ってことを言ってて、 俺ももっと深く考えないとなって、人間として成長していかないとなって思います。

バンドの規模が大きくなっていく中で、どんどん関わる人たちを変えるのではなくて、昔から一緒にやってきた、僕らのことを真剣に考えてくれてた人たちと長く一緒にやっていきたいよねっていう。

樋口:「縁」というのは、今回のアルバムのタイトルにも繋がっていて。アルバムのタイトルを考えるために色々なワードを探していく中で、「circle」という言葉が自分的にすごくしっくりきたんです。「なんでこの言葉なんだろう?」って、その理由を考えていくうちに、自分たちの曲って「人の暮らし」だったり、一人ひとりのパーソナルな部分にスポットを当てているんだなと気づいて。その人それぞれのパーソナルな部分や空間、時間、事象といったものを様々な「円」に見立てて、その重なり合っている部分を曲にしているんじゃないかなって。

――「円」であり「縁」でもあると。

樋口:はい。今回のアルバムにはプロデューサーの方々と関わって生まれた曲もたくさん入っていますし、僕たち自身、そういった人たちに支えられてバンド活動が成り立っているという想いを大切にしたい。それから、僕たちには季節の曲も多いので、「季節の循環(サイクル)」という意味合いも込めています。

――最後に、今後実現したいことや展望を教えてください。

樋口:そうですね……普遍的でありたい、と思っています。自分たちが作ったものが、時が経っても残っていたらいいなって。ただ、普遍的というのは、必ずしも流行を意識しないということではないとも思うんです。その時代時代で一過性に見えたものの中にも、残っているものがあるわけなので。例えば、「80年代っぽい」って言われるものが今でも聴かれていたりしますよね。結果的にそういうふうになれたらいいなと思っています。

あと、これは活動初期から言ってることなんですけど、映画の劇伴や主題歌を作ってみたいです。音楽で映像作品に関わりたいというのが僕の夢ですね。

相蘇:演奏のロケーションとして僕はホールが好きなのもあって、今後はより大きな会場でやっていきたいなって思ってます。

加藤:……最近、表現ってなんなんだろうなって考えることが多くなって、生活の中で鳴ってる音が気になってきたりして。例えば僕らが育ってきた札幌の自然の中にも音楽がある。そういうところから新しい自分なりの表現を持ってこれたらいいなと思ってます。

永江:自分は野望みたいなものがあんまりなくて。それこそ海外のチャートに入りたいとか、めっちゃたくさん稼ぎたいとか、本当に欲がないんですよ。ただ、おもろいなって思い続けていたい。それは思ってます。自分たちのやってることを、楽しみながら続けていられたらいいなって思います。


【リリース情報】


goethe 『circle』
Release Date:2026.05.13 (Wed.)
Tracklist:
1. Introduction
2. LIFE
3. キリン
4. Dear
5. Friendship
6. 煙管
7. 熱りが冷めやらぬうちに
8. Warumono
9. Runaway
10. Sick!!!
11. ふらふら
12. ユーモアを交えて
13. 彼誰
14. Town


【イベント情報】


『goethe Live at LIQUIDROOM』
日時:2026年5月30日(土)OPEN 17:15 / START 18:00
会場:東京・恵比寿 LIQUIDROOM
料金:ADV. ¥5,500 / 学割 ¥4,500(1D代別途)
出演:
goethe

[SUPPORT MUSICIANS]
Guitar:小池隆太
Chorus:東風あんな
Trombone / Horn Arrangement:池本茂貴
Trumpet:鈴木雄太郎
Saxophone:屋嘉一志

チケット詳細(e+)

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『goethe Live Tour 2026』
2026年11月1日(日)福岡 graf
2026年11月8日(日)北海道・札幌 PENNY LANE24
2026年11月14日(土)宮城・仙台 enn 3rd
2026年11月21日(土)大阪・梅田 Shangri-La
2026年11月29日(日)愛知・名古屋 ell.FITS ALL

チケット詳細(e+)

■goethe:Instagram / X


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