Header Photo by Daiki Miura
DAY 3
初の3日間開催となった『POP YOURS』の大トリを務めたのは、アリーナ規模のワンマン公演をすでに幾度となく成功させてきたKEIJUだった。おそらくライブへの自信と、──KANDYTOWNのDNAとでも言おうか──クールであることへの高い基準によってプレッシャーを跳ね除け、“Hold You Down”、“LONELY NIGHTS”など輝かしいキャリアを彩るヒットソングの数々も、KANDYTOWNの面々(HOLLY Q、Gottz、IO、Ryohu)やKvi Babaを迎えた客演陣、オカモトレイジも参加するバンドとの華麗なコンビネーションも、KEIJUは涼しい顔でフロアに届けていった。この人は日本のヒップホップをどこまで大きくするのだろう。壮大なオープニングからエンドロールまで、最大規模となった今年の本フェスを締めくくるに相応しい、卓越したライブだった。

最終日のオープニングDJはuin。“STARLIGHT”や“明るい部屋”をはじめBAD HOPやJJJなど『POP YOURS』に由来のある楽曲をプレイして観客のテンションをぶち上げた。
トップバッターのACE COOLは文学的な傑作『明暗』収録の“自尊心”からライブをスタート。日本語へのこだわり、高次元のラップスキルを巨大スクリーンも駆使してしっかりと表現した。ACE COOLは「広島から両親が観に来ています」と話す。多くの楽曲のフックでコールが起こった。ゲストは盟友・Jinmenusagi。引き算の美学を感じさせるライブの最後は7分におよぶ“明暗”をラップしきった。
次は、「笑われに来たんじゃないぜ」でおなじみのラップするVtuber・ピーナッツくん。存在自体がポップな彼だが、“チャンチョと一緒に鳴らせ!808”でヒップホップの低音を支えている名器・TR-808の使用感を可視化するなど、年々アーティスト性が増しているようにも感じられた。
lilbesh ramkoは巨大スクリーンが設置された本フェスの特性を最大限に活用して、VJと完全に連動したパフォーマンスを見せた。彼のバックボーンにあるナードカルチャーや孤独感などを視覚的にも表現することで、電子音楽やノイズがミックスした彼の楽曲に込められたエモーションを増幅させていた。





轟音のライブが続いた後、ハートウォーミングな歌とラップを聴かせたのは沖縄の柊人だ。サックスの音色でライブを始めると、ラストの“好きなこと”まで、ゲストなしで駆け抜けた。
長崎県平戸市出身、沖縄在住のラッパー・Teteは「NCSL」から枠を広げて『POP YOURS』にカムバック。所属するRIVER SIDE HOLLYWOODのメンバーであるM.O.Cとの甘美な“Before Sunrise”を含むセットリストでハード&メロウな時間を創出した。
最終日の「NCSL」では、まずKiannaがスピーカーが心配になるほどの爆音に激しくライドすると、11は落ち着いたステージングとソウルフルな歌声で幕張に珠玉のR&Bを届け、ネクストブレイク必至のHARKAが切れ味鋭いラップでフロアを光の海に変えてみせた。



日曜の午後1時の『POP YOURS』には、紫煙が立ち上る。Jellyyabashiは神奈川・横須賀を拠点にするクルー・YOKOSQUADのメンバー。冒頭の“Tetris”から暴力的なトラップ〜レイジサウンドでメインステージのエリアを支配していく。その後も、JuggrixhSentana、CFN Malikを含む仲間たちとステージに上がり、マイクで横須賀をレペゼンした。
次は、福岡アンダーグラウンドのトラップスター・Yvngboi Pがステージに。彼が幕張に持ち込んだのはストリートのリアルと爆発的なラップアンセムたちだ。Yvngboi P、Lunv Loyal、YTG、Deechが揃って初披露された昨年屈指のバンガー“Big Step”ではフロアを熱狂の渦に落とし込んだ。
この時間帯を締めたのは、昨年自身のレーベル〈Moltisanti Music〉を立ち上げた愛知県知立市出身のラッパー・C.O.S.A.。“Koshy freestyle”でパワフルに幕を開け、IO、Campanella、JJJという盟友たちと、リリカルなラップと洗練されたビートがどれだけ力を持つのかをこのステージで証明してみせた。




その頃、Terminal 6 STAGEではクリエイティブチーム・YeYanによるパーティがスタートした。MANDO、vyst、yena(Spider Web)、101、JINが代わる代わるDJして、Saggypants Shimba、SpiderWeb、YTG、Lil Mafuyuも次々とマイクを持って、サンデーアフタフーンを深夜のクラブのように盛り上げた。
Kaneeeは、リズミカルかつスムースなフロウで大観衆を味方に。「このフェスのヘッドライナーになりたい」「地球一のラッパーになりたい」という宣言が嘘ではないとわかる非凡なラップだった。
このフェスの常連であるOZworldは、1曲目“フツーって何?”から過酷な幼少期の記憶を共有。Yvng Patra、KUJAも招き入れつつ、自らのアイデンティティを表現するヒップホップというアートフォームの魅力を体現したステージを見せた。
続いて支持率右肩上がりのMIKADOがステージへ。“ENVY”、“TIME IS MONEY”などヒット曲の連打にフロアは3日間の中でもトップクラスの盛り上がりを記録。HARKA、ENELとのバイラル“GUNSO WALK”では、屋根が吹き飛ぶかと思うほどのオーディエンスの歌声が幕張に轟いた。
最終日のSPECIAL LIVEを任せられたPUNPEEは、2052年のニュースの映像(そのときまでこのフェスを続けようという願いが込められている!)を前振りに最新曲“Mornin’26”でパフォーマンスを開始。OMSBとの“Life Goes On”やBonbero、ANI、BIMとの“MUSEIGEN”などに加え、フリースタイルまでぶっ込んだライブには、今と未来が地続きであるというメッセージが宿っていた。
この時間帯のTerminal 6 STAGEはMASATO & MinnesotahのDJセットで、BSC、DIAN、MUD、Neetz、KIKUMARUがステージに現れKANDYTOWNの楽曲を歌うサプライズも! ラストソングはJJJ“BABE”の元ネタのあの曲だった。
Watsonは『POP YOURS』で徐々に重要なステージを任せられる存在へと成長してきたアーティストだ。ユーモアが効いたキレのいいラップをする悪ガキから、クールな男性へ。コーディネートもシックに。ジュエリーは控えめ。客演も地元の仲間・Lucyと、新鋭・Sonsiと少なめ。そんな彼の現在は、喉が枯れてしまうのではないかと思うほど熱くスピットした“今日と言う日は”に集約されているように感じた。


G-k.i.dはBAD HOP時代から毎回このフェスに出演している数少ないラッパー。彼の魅力は間違いなく会場を一体にできるソウルフルな歌声だろう。“Black List Remix”では川崎の後輩・DeechとCandeeとダーティなトラップソウルを響かせた。G-k.i.dは「今年で5年目だっけ? 毎年このステージに立たせてもらっていて、本当にいい思い出が毎年あって。みんなも今日最高の1日でいい思い出を残して帰ってくれよ」と話して新曲“HOME”を熱唱した。

ANARCHYはリリースしたばかりのアルバム『Crest』からの楽曲だけでセットリストを組んだ。本作は全曲KMがプロデュース。“Doudemoii”でフィーチャーした3Li¥enとはこの会場で初めて実際に会ったという。その流れから「ラップには歳関係なくて。1年目でも3年目でもイケてるやつはいる。イケてるやつはラップやる前からイケてるから。ここにはラップやってなくてもイケてる人いっぱいいるでしょ? そういう人たちに届くラップをしたいと俺は思っている。このステージに立つのも簡単じゃなくて。このパーティに出てる人みんないろんな苦労をしてここに立ってるのよ。俺もそうやし。みんなオシャレしてステージに上がる。全部をこのステージに注ぎ込んで、力を全部使うんよ。それがラッパー。だからみんなリスペクトしてあげてください」と話した。元スケーターでもあるANARCHYはその感性を存分に発揮した最高にスタイリッシュなパフォーマンスもぶちかました。
『AMAPINIGHT』は『POP YOURS 2026』のMCのひとりとして3日間活躍したSAKURAと、AOI、RINAの3人が主催しているパーティ。国内のフェスもはじめ、海外のさまざまなパーティともコラボしている。今回はおなじみのSAMO、YUUGOH、TAKENOKOといったDJ陣に加えて、ANARCHYと共演した3li¥en、thepini、ZENDAMAN、ARIWA、Tanziがショーケースを行った。DJタイムではホストの3人を含む大量のギャルたちがハイセンスなダンスミュージックに合わせてイケてるダンスを見せていた。

序盤からあっつ〜いライブを見せたのはNENE。“Cho Fast”〜“ヘビー”ではステージに大勢の男たちが現れお祭り騒ぎ状態に。Daichi Yamamoto、MIKADOとのフェスオリジナル楽曲“違う”で超高温のハイライトを生み出しフィニッシュした。
大トリ前を務めるKohjiyaには、大歓声がよく似合う。ファーストアルバムからの新曲もドロップしまくったほか、信念を語ってから披露された“Tell Me How It Goes”や、Kaneee、Yvng Patraとの2024年の『POP YOURS』オリジナル楽曲“Champions”などを伸びやかな声で歌って超弩級のシンガロングを巻き起こした。

過去最大の規模で行われた『POP YOURS 2026』は、「ザ・ヒップホップじゃない」Peterparker69から始まって、「ザ・ヒップホップな」KEIJUで幕を下ろした。ヒップホップはなんと多様な音楽なのか。違う場所、違う道のり、違う価値観、違う性別、違う信条でも、全員ヒップホップを心から愛している。そこだけは共通していた。ポップカルチャーの視点からヒップホップを立体的に表現する。それが『POP YOURS』だ。すべての観客、すべてのアーティスト、すべてのスタッフ、関係者にリスペクトを。そんな気持ちになった3日間の体験だった。
取材・構成 : 宮崎敬太、高久大輝
【イベント情報】

『POP YOURS 2026』
日程:2026年4月3日(金)、4日(土)、5日(日)開場 9:30 / 開演 11:00
会場:千葉・幕張メッセ 国際展示場 展示ホール1-6
問い合わせ:HOT STUFF PROMOTION 050-5211-6077(平日12:00〜18:00)
主催:株式会社スペースシャワーネットワーク
制作:SMASH / HOT STUFF PROMOTION / WWW
Supported by Spotify
Art Direction:Kei Sakawaki
Key Visual Design:Kei Sakawaki, Hiroaki Hidaka
Movie Director / CG Artist:Kazusa
SE:Taishi Sato
Track Produce:KM










