Rumi Nagasawa(Vo. / Gt.)とEmi Sakuma(Ba. / Cho.)を固定メンバーに、スリーピース・バンドとして活動するLIGHTERSが1stアルバム『swim in the milk』を8月25日(水)にリリースした。
2018年に結成されたバンドはこれまで恋愛をモチーフに甘いインディ・ポップを提示してきたが、“架空の映画のサウンドトラック”をテーマにした今作には、これまでバンドが表象せずにいた焦燥や生活への眼差しが含まれている。PavementやSuperchunkに代表されるローファイなオルタナ・サウンドと、ポップ・パンクのエッセンスが加わえられていることも大きな変化として挙げられるだろう。
そうした変化とこれまでのLIGHTERSを表現するために持ち出されたのが“架空の映画”だったのかもしれない。細かい脚本まで作ったのだという、その一本の物語にはどのような景色や情動が込められているのだろうか。バンド結成まで話を遡りながら、影響源となった映画やサウンド、制作時の生活について、オンラインにて話を訊いた。
Interview & Text Yui Tsuda
Photo by Official
ふたりの出会いとバックグラウンド
――おふたりがバンドを始めた経緯を聞かせてください。
Nagasawa:飲食店のアルバイトで知り合って、フィーリングが合うなと思って話し始めたのがきっかけです。その当時はAge Factoryがお互い好きで、ライブについて話してましたね。
――他にも当初から好きな音楽は似通っていたんでしょうか。
Nagasawa:そこまで似てなかったですね。私は日本のスリーピース・バンドが好きで。andymoriとかサンボマスターなど、青春パンク系も好きでした。そこからGreen Dayにもハマっていって。
Sakuma:私は当初はBring Me the Horizonが好きで、他にも聴くのはラウドなロックが多かったです。
――そこまでガッチリと音楽的な嗜好があっていたわけではなかったんですね。曲は完全にNagasawaさんが作っているんでしょうか。
Nagasawa:そうですね。元々は大学の卒業制作に出すためのものを普段から作っていて、それを聴いてもらってバンドをやろうかという話になりました。
――音楽大学にいかれていたわけではないんですよね?
Nagasawa:音楽芸術学科という学科に通っていて、楽器演奏に加えて演奏を支えるための勉強などができる学科だったんです。大学3年生の時に入ったゼミが研究と制作のどちらかを選ぶことができて、最初は研究の方を選択したんですけど、3年生の秋に制作に転向して、そこから作るようになりました。
――研究の方ではどのようなことを学んでいたんですか?
Nagasawa:ライブと社会の繋がりとか、フェスとライブハウスでのイベントが与える影響力の違いなどを研究していました。そのとき学んだことはプロモーション的な部分にも演奏的な部分にも繋がってきているなと思っています。
――初期のシングル「blue」あたりはそのゼミで作ったものですか?。
Nagasawa:そうです。初期はかなりポップス寄りで、そこにバンドの要素も混ざっているものがやりたかったんです。作っていくうちに自分たちがやりたい音楽がどんどん見えてきたという感じで。初期に作っていたものは今とは全然タイプの違う曲も多かったと思います。
――ポップスというとどんなものを聴いていたんでしょう?
Nagasawa:国内だといきものがかりなどのJ-POPや歌謡曲も好きで。あとは海外のポップスであればHansonとかAvril Lavigne、Taylor Swiftなどなど。そういうポップスからの影響はあると思います。
「どうしても乾いた音楽にしたかった」
――LIGHTERSの作品からは“メロディ”へのこだわりが強く感じられます。ご自身ではどのように考えていますか?
Nagasawa:どのジャンルを聴くにしてもメロディを意識していますね。クラシックでも好きなメロディがあったら、そこまでにたどり着くまでの演奏も「このメロディを聴くためだったんだな」という感覚があって。グッド・メロディはどのジャンルにも共通しているし、本能的に好きだと思えるので、どんなにヘンテコな曲でもその要素を入れようということは心がけてますね。
――グッド・メロディを歌う、その歌声もかなり特徴的ですよね。その歌唱スタイルは、前作の『bitter peanut butter』から完成されているように感じます。
Nagasawa:元々歌が苦手なんですけど、自分の声質は変えられないので、質を活かして自分が気持ちよく歌える、なおかつ綺麗だなと思える歌い方を探していくうちに今の歌い方に辿り着きました。
――曲を作り上げていく過程では、おふたりでアレンジを決めていくのでしょうか。
Nagasawa:基本的に私がパーツを持っていって合わせて、大体は持ち帰ってまた自分でアレンジして……というのを繰り返してやっています。
――なるほど。今作『swim in the milk』ではHAPPYのBobさんがドラムで参加されていましたが、アレンジについてお話しすることはありましたか?
Nagasawa:Bobさんとやったことで曲に対する捉え方とかを学べて、考え方が広がりました。見えなかった部分も見えてきたと思います。2曲目の「black moon」の間奏のアレンジがしっくりこなかったときは、「こうしてみたらどうですか?」とアドバイスをくれて。実際にそれを試してみたら「めちゃくちゃカッコいい!」となって。
――ドラム以外のアレンジに関してもお話しされていたんですね。また、今回はDYGLのKohei Kamotoさんがサウンド・プロダクションに携わっています。制作はどのように進めていきましたか?
Nagasawa:私のなんとなくのイメージを伝えて、Kamotoさんがそれを音にしてくれたような感じですね。
――具体的にはどのようにイメージを共有して行ったのでしょうか。
Nagasawa:まず人間味を大事にしたいねっていう話はしていました。参考音源としてはBest CoastやSnail Mailが上がりましたね。
――前作は比較的リヴァーヴィーなサウンドが多かったかと思うのですが、そこからまた音の変化があり、乾いたオルタナやポップ・パンク的な音像に仕上がっているかと思います。
Nagasawa:前作は、その時にいいなと思う音でとりあえず録ったような感じだったんですけど、後から聴き返してみたら好みの音をもっと追求できたかもなと思ってしまったところがあって、今回はサウンドに関しても追求できたなと思っています。どうしても乾いた音楽にしたかったし、あまり湿度はいらないかなって。やっぱりPavementとか、海外の音楽を聴くとちゃんとその土地の匂いがしてくるようなサウンドだなと思うので、それを出せたらいいなと思っていました。
――今作のコンセプトから見るに、それは自分の生活する土地の匂いというよりかは、“架空の映画”の土地、舞台ということですかね。
Nagasawa:そうですね、カリフォルニアの乾いた空気というか。聴いた人にもそういう空気が感じられるようなサウンドにしたかったです。
――Sakumaさんは今作でベースの音はどういった部分を意識しましたか?
Sakuma:乾いた音は私も好きなので。シンプルで乾いていて、その中に自分の個性があるっていう音を大切にしていて。あとは「you and me」のような落ち着いた曲と「black moon」とか他の曲との差を音色で出そうというのは心がけました。
――「black moon」のまるで不協和音のように聴こえるベースが特に印象的でした。
Nagasawa:Pavementのアルバムを聴いた時に「どうしたらこのヘンテコさを出せるんだろう?」と思っていて、だけどそこがグッド・メロディを引き立ててるんですよね。程よい音の隙間がバランスを取っていて。それをやれる範囲でやろうとした曲が「black moon」です。パッと聴いた感じ、「これで合ってるのかな?」っていう感覚になると思うんですけど、聴いていくにつれてそれが意外と合っていって、という“ヘンテコだけどグッド・メロティ”みたいなことがやりたかったので、そこは達成できたのかなと思います。
――先程ポップ・パンクがお好きだという話も出ました、「little me」や「milkshake」のフックはまさにポップ・パンクを彷彿とさせるものですね。
Nagasawa:元から好きなんですけど、自分の表現の範囲だと取り入れるのに限界があるなと思って、これまでは中々トライすることができなかったんです。でも「little me」とかは特にポップ・パンクの好きな部分とポップスのバランスを取って作ることができたなと思います。
――一方で「coffee」のような弾き語りの曲も入っていて。
Nagasawa:最初のEPで弾き語りの曲を入れてみたら、思っていた以上に全体のバランスが良くなって、それぞれの曲がより引き立てあっているなと思いました。「coffee」は元々バンド・セットでやっていた曲なんですけど、もしかしたら弾き語りの方がいいかもなと思い、今回はアコースティックVer.で収録しました。
「作品がどんどん自分たちのものになっていく感覚」
――今作は“架空の映画のサウンドトラック”というコンセプトを掲げたアルバムとのことですが、それぞれの曲に物語が存在するのでしょうか。
Nagasawa:そうですね。最初に脚本を全部作って、それにどういう曲が当てはまるかなと作っていきました。元々ティーン・ムービーがすごく好きで、そのサウンドトラックみたいな作品を作りたいなという話から、今回のコンセプトが生まれてきました。
――ちなみに、どういった映画がお好きなんですか?
Nagasawa:今回のアルバムで影響を受けているなと思うのは、『ウォールフラワー』(原題:The Perks of Being a Wallflower)、『レディ・バード』(原題:Lady Bird)、『ブックスマート』(ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー/原題:Booksmart)ですね。最初に作った脚本もそういった内容になっていたと思います。
――脚本に関してはどれくらい事細かく書いたのでしょう?
Nagasawa:情景が浮かぶくらいに細かく書きました。ただ、歌詞では映画を想像できるように、登場人物を“君”と“ぼく”にして。情景は訴えるけど、感情な部分は濁して、結末はどっちなんだろう? と、その後を想像できるようなおもしろさが出せればなと思って書きました。
――制作に際して、実際のサントラなどは参考にしましたか?
Nagasawa:聴きすぎると寄ってしまうなと思ったので、軸は守りつつ“色々な要素を頭に入れるため”ということを意識しつつ聴いていました。小さい頃聴いて頭に残り続けているものを聴こうと思い、『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ』(原題:Hannah Montana)のサウンドトラックを聴いたり。あとは映画を観るときには音が入ってくるので、意識してみなくても自然と参考にしようと考えてましたね。特に『彼の見つめる先に』(英題:The Way He Looks)っていう映画にBelle And Sebastianの音楽が使われているシーンがあるんですけど、それが素晴らしくて。映画が音楽のおかげでよりよくなっているような感じで、コンセプトを決めてから観た映画の中では一番喰らいました。
――これまでの曲は比較的恋愛についての歌詞が多かったと思うのですが、今作ではそういった点も大きく変化しているように思います。
Nagasawa:今までの作品は愛おしい人に対して、「自分はこう思うよ」といういろんな角度からの思いを表現したいなと考えていました。今作は初のフル・アルバムということで、このフォーマットでしか表現できない感情も絶対あるなと思い、負の感情や強気な部分などもしっかり乗せたいという気持ちが湧いてきて。それと、恋愛以外の部分が健康的であるということがすごくいいなと思って、そういった日常の生活的な部分も表現できたらいいなと。
――そうした“負の感情”の部分は自身の体験から生まれたものなのでしょうか。
Nagasawa:過去の経験とリンクしている部分はあるし、今の心情が入っている曲もあります。でも、特に映画で観た景色や感情が入ってるかな。
――ちなみに今作の制作を始めたのはいつ頃ですか?
Nagasawa:前作を出してからすぐ作り始めました。制作期間は半年くらいですね。
――あまり外に出られない生活の中で作られた作品かと思うのですが、家にいる時間が増えたことによる変化はありましたか?
Nagasawa:これまで表現したかったけどできなかった部分が広がってきたという期間でもあったし、何度もThe Beatlesを聴いたり、Pavement、Taylor Swiftなども聴き返したりして、自分のルーツ的な音楽と改めて向き合う時間にもなったと思います。その結果、自分の制作に対する向き合い方も変わりました。ちょっとした違和感を見過ごさないようにしようということを決めて、「思っていたのとはちょっと違うけど、これもいいよね」とか、「とりあえずこのまま進めてみよう」というのを積み重ねていくと、自分たちが本当にやりたかったことを忘れてしまうんですよね。前作を作ったときには、そういった違和感を見逃してしまった部分もあったと思うので、今回は自分たちが当初から思い描いていたものを突き詰めることができました。
――それはこれからのLIGHTERSの作品にとっても大きな影響を及ぼしそうな変化ですね。次作についての構想もすでに見えてきていますか?
Nagasawa:すでに次の制作に取り掛かっています。意識の変化以外にも、Kamotoさんから学んだことを活かすようになって、これまでより進んだところからスタートできている気がします。ギターの振り分け方やドラムのキックの位置など、音をどう組み合わせていくかというプロセスを学べたので、悩める材料が増えたんです。あと、今回のフル・アルバムではやりたいことがやれて、作品がどんどん自分たちのものになっていく感覚があって。今後はそれをどれだけ深めていけるか、というところも大事なポイントかなと思っています。
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— Spincoaster/スピンコースター (@Spincoaster_2nd) September 8, 2021
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※当選のお知らせに対して48時間以内に返信がない場合、誠に勝手ながら辞退とさせて頂きます。
※住所の送付が可能な方のみご応募下さい。頂いた個人情報はプレゼントの発送以外には使用致しません。
※フリマサイトなどでの転売は固く禁じます
【リリース情報】
LIGHTERS 『swim in the milk』
Release Date:2021.08.25 (Wed.)
Label:LATER YOUTH RECORDS
Tracklist:
1. Little me
2. black moon
3. could be
4. you and me
5. Date at IKEA
6. coffee
7. milkshake
8. eternal sunday
9. Leave me alone
【イベント情報】
LIGHTERS 1st full album Release Tour
日時:2021年11月21日(日) OPEN 17:00 / START 17:30
会場:福岡 Live House 秘密
料金:ADV. ¥3,500 (1D代別途)
☎ Info:092-712-4221(BEA)
日時:2021年11月26日(金) OPEN 17:45 / START 18:15
会場:愛知・名古屋 Live & Lounge Vio
料金:ADV. ¥3,500 (1D代別途)
☎ Info:052-936-6041(JAIL HOUSE)
日時:2021年11月27日(土) OPEN 17:00 / START 17:30
会場:大阪 CONPASS
料金:ADV. ¥3,500 (1D代別途)
☎ Info : 06-6535-5569(SMASH WEST)
日時:2021年11月30日(火) OPEN 18:00 / START 18:30
会場:東京・渋谷 WWW
料金:ADV. ¥3,500 (1D代別途)
☎ Info:03-3444-6751(SMASH)
※下記開催におけるガイドラインをご確認の上、
お客様への当日のお願いごとを十分にご周知頂いた上でのチケットお申し込みをお願いいたします。
・チケット
オフィシャル先行予約(抽選制/e+):9月7日(火)17:00〜9月13日(月)23:59
先着先行(e+):9月15日(水)18:00〜9月16日(木)18:00
一般発売:9月18日(土)〜
*お一人様1回の購入のみで購入枚数制限4枚まで。
*全公演電子チケットのみ
*全公演チケット購入時に同行者含め個人情報の入力が必要になります。
*小学生以上はチケット が必要となります。
主催:各地イベンター
企画/制作:WAREHOUSE TRACKS/ SMASH
総合問合せ:SMASH