FEATURE

Rootscoaster Vol.103 / 弦先誠人 (Free Throw)


Free ThrowレジデントDJによるRootscoaster。3人目はフリスロ創設者でもある弦先誠人が登場です!

2016.04.07

2月に記念すべきレギュラー開催100回を迎え、さらにはなんと5月にイベント発足から10周年を迎えるということで、まだまだその勢いは衰えるどころか加速し続ける人気DJパーティー、”Free Throw“(通称:フリスロ)!
2月からマンスリーでこのRootscoasterに登場頂いているレジデントDJも遂に3人目になります!
今回登場いただいたのは、フリスロ創設者のうちのひとりでもあるDJ、弦先誠人!

そのDJプレイ同様、熱のこもったエモーショナルな文章にて綴られる、自身のルーツは必見です……!

(Text By Takazumi Hosaka)


1. The Beatles / I Want To Hold Your Hand

高校一年の頃、僕にはとても仲の良い友人がいた。彼がどんな人間だったかと言うと、一言で言うと格好がいい人だった。
容姿だけを取れば、彼よりも見た目のいい人間は同学年にもいたかも知れない。彼には天性のユーモアがあった。バカなことをやれる知性に溢れていた。
日々、目の前の勉強机は彼にとっては枕に等しく、そもそも一限の始業時間に彼を見かけることも稀であったが、それでいて成績に困っているようではなかった。
僕たちは数人のグループだったが、彼とはよく授業をさぼってバカなことをやった。高い所が好きだったし、川で泳いだりもした。古風な規律と戒めがいまだ残るその学校生活で、それは革命的なことであったと、錯覚もしたりした。
ある時僕らはカラオケに行った。その頃の僕はと言えば音楽にはとんと無知であったし、興味もなかったし、人前で歌うだなんてもっての他だった。
藹々とする空気を読もうとする僕の努力は、空しく空振りに終わろうとしていたが、その時彼が当たり前のように歌い出したその歌に僕は驚愕をしたのだった。
彼は僕がそれまで聴いたことがないとてもいい曲を、英語で歌っていた。
今にして思えばたったそれだけのことを、当時の僕はまるで雷に打たれたかのような衝撃に見舞われていたのだった。それが初めて聴いたThe Beatlesだった。
翌日僕はBeatlesのCDを買いに行き、数週間後にはほとんどの作品を揃え、在学中の間にほとんど全ての曲をソラで歌えるようになっていた。
今でもBeatlesを聴くと、学校をさぼった彼と二人で数々の名曲を大声でハモりながら、そこに行くあてなんか特になかったのにフラフラと海を目指して、田舎道をチャリンコを漕いでいたりした数々の日々のことを思い出すのだ。


2. The Stone Roses / Begging You

高校を卒業する頃、僕は人生に絶望していた。
それは有体に若い頃の人特有の一つの病であったが、それは若さゆえに純粋な衝動であったと言えたかも知れなかった。
その頃の僕は人生のほとんどを知らなかったのに、それを退屈なものであると断じていたのだ。
Beatlesを通じて知った音楽は依然として大切なものだった。メンバーのソロは勿論、Rolling Stonesにオールディーズ等々、その頃の僕は評価の定まったある種の古典にこそタイムレスな価値を見出していた。それでも人は退屈してしまうものなのだ。
OasisのDefinitely Maybeを手に取ったのはその頃のことで、なるほどそれはBeatles二世と言われることもあって素晴らしいレコードだったけど、僕の興味はそのアルバムの、ある種異様なラーナーノーツに移っていた。
それは当時、雑誌ロッキングオンの編集長を務めていた増井修という人が書いたものだったのだけど、それはOasisのライナーノーツであるにも関わらず、ほとんどがThe Stone Rosesという他のバンドのことについて書かれていたのだ。
これは一体なんなのだろう。
次の日僕はStone RosesのSecond Comingを手に取っていた。陳腐な物言いになるが、人生が変わるほどの体験を一つの音楽作品から感じ取ったのはそれが初めてのことだった。
それまで音楽とはメロディのことで、その旋律の美しさにこそ価値があると思い込んでいた自分にとって、Stone Rosesの音楽は革命的なものだった。メロディはある。あるけどそれ以上に強いグルーヴ。身体を持っていかれる感覚。
気が付けば、あの頃確かに絶望をしていたはずの自分は、どうやら踊っていたらしかった。
これは一体なんなのだろう。
それがロックへの目覚めだった。


3. Underworld / Born Slippy(Nuxx)

音楽の目覚めがThe Beatlesでロックの目覚めがThe Stone Rosesだったとしたら、自分にとってダンス・ミュージックへの目覚めはUnderworldだったと思う。
20代前半の頃、僕は当時新宿にあったリキッドルームのClub Snoozerに毎回のように遊びに行っていて、そこでは二年くらい一人も友達は出来なかったけど、ミラーボールの光沢とでっかいスクリーンに映し出されたVJのジャケット写真以外には真っ暗な巨大なフロアーの中、音楽と他人に埋没出来るあの瞬間は、何にも代えることの出来ない至福の時間だった。
ロックとダンス・ミュージック。どこまでもハイ。ともすれば「運動」に陥りがちな四つ打ちのビートは、アルコールと暗闇っていうスパイスでいくらでも自由で、ヘンテコなステップの、「ダンス」ってやつになってしまう。
それは本当に素敵なことで、そんなものにハマっていなければ、後に出会う大切な友人たちに出会うこともなかったのだ。


Message

格好の悪い言い方になってしまうけど、音楽に救われた人っていると思うんですよね。
だから自分はそんな人に向けて、「ロックをかけるDJ」ではなくて「ロックDJ」でありたいと、常日頃思っていたりします。
今日もまた素晴らしい音楽と共にありますように。


Profile

2002年10月、puke!にてDJを始める。2006年5月、FREE THROW始動。COUNTDOWN JAPAN OSAKA 06/07、COUNTDOWN JAPAN TOKYO 07/08、BAYCAMP等でレジテントDJを務める。
レギュラーParty : 「FREE THROW」毎月第二土曜日@新宿MARZ
FREE THROW WEB : http://freethrowweb.com/in.html

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“FREE THROW Vol.102”
2016/4/9(土)@新宿MARZ
open&start 23:30
※18歳以下入場不可/要身分証書
adv.¥2300(D別) / day.¥2500(D別)
LAWSON TICKET(Lコード:72476)
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