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REPORT / Spotify presents Early Noise Special


Spotifyが気鋭の国内新人をプッシュする、“Early Noise Night“の特別回をレポート!

2019.04.05

世界で2億人以上のユーザーが利用する音楽ストリーミング・サービス「Spotify」が3月28日(木)、東京・EX THEATER ROPPONGIにて“Spotify presents Early Noise Special”を開催した。

本公演はSpotifyが注目する新しい才能を耳の早い音楽ファンにいち早く紹介するプレイリスト『Early Noise』をきっかけに、リスナー数や再生回数を伸ばし大きく躍進を遂げたアーティスト8組を、彼らを応援し続けてきたファンと共に祝福する一夜限りのスペシャルなライブ・イベント。

チケットがソールドアウトしているだけあり、開演前から多くのオーディエンスが駆けつけた会場には、これまでに東京と大阪でコンスタントに開催してきた“Early Noise Night”での写真や今回の出演アーティストの写真を用いたキー・ビジュアルなどを展示し、今夜がメモリアルな日となるであろうことを確信させた。

定刻通りにイベントはスタート。この日の司会を務めるハリー杉山が登場し、オーディエンスとのコール・アンド・レスポンスも取り入れつつ、本イベントの趣旨などを説明。そしてこの日の一番手としてステージに登場したのは、昨年6月に大阪にて開催した“Early Noise Night #6”にも出演したラッパー、あっこゴリラ。

あっこゴリラの楽曲を複数手がけるプロデューサー、PARKGOLFをバックDJに従え、「100%AKKOGORILLA」から、向井太一とのコラボ曲であり、SpotifyのCMにも起用された「ゲリラ×向井太一」に流れ込む。同曲の途中からお馴染みのバック・バンド、BNNZの面々も登場し、「会場、こんなもんですかー!」と煽りつつ、パワフルなラップ&パフォーマンスで会場を一気に掌握する。さらに、この日は気鋭の映像監督・加藤マニがVJに加わり、楽曲とリンクした映像で彼女の世界観をより強固なものとする。

「春は過ごしやすいけど、病みやすい季節でもある」ということで、メジャー“再”デビュー曲となった「余裕」では、そのような負の感情を吹き飛ばすようなポジティブなメッセージを投げかける。最後は誰かが勝手に決めた“女性らしさ”や“ジェンダー感”に対してのアンチテーゼを掲げる「GRRRLISM」。旗を振りながら楽しそうにパフォームする彼女の姿に、オーディエンスも諸手を挙げて応えていた。


■あっこゴリラ Setlist
M1. 100%AKKOGORILLA
M2. ゲリラ×向井 太一
M3. グランマ
M4. 余裕
M5. GRRRLISM


今夜のスペシャル回は、全8組が出演とのことで、テンポよくハイペースに進行していく。パフォーマンス後にはハリー杉山とあっこゴリラのトークを挟みつつ、お次はビッケブランカのステージへ。一曲目の「ウララ」からギア全開。バック・バンドを従えたパワフルな演奏で、会場をカラフルに彩っていく。

時にピアノを弾きながら、時にはハンド・マイクで歌うビッケブランカのボーカルも安定感抜群。その歌声や、軽やかに笑いも誘う仕草やトークからは、天性のスター性のようなものをビシビシと感じとることができる。「この日をずっと楽しみにしていたんです。僕はSpotifyをすごく使っていて」と、このステージに立てたことへの喜びも伝えるビッケ。しっとりとしたバラード「まっしろ」では思わずその美声を存分に披露。最後の「Winter
Beat」ではQueenへのオマージュと思われる箇所も見受けられ、ビッケの流麗なファルセットも、スタジオ音源よりも一段とエモーショナルに響き渡る。終了後、「こういった特攻(特殊効果)は初めてでした」と語っていた通り、華やかな空気のままステージを後にした。


■ビッケブランカ Setlist
M1. ウララ
M2. まっしろ
M3. Winter Beat


この日の3番手は、“Early Noise Night”の東京、大阪回への出演経験もあるSIRUP。盟友・Shin Sakiuraとのミニマル・セットでの出演だ。HONDA「VEZEL TOURING」のCMにも起用されたことで大きな注目を集める「Do Well」の4つ打ちビートと共にSIRUPがゆったりと登場。「Spotify Early Noise Special、みんなどんな感じ?」との呼びかけから、ダンサブルな展開で会場を横に揺さぶる。Shin Sakiuraのファンキーなカッティング・ギターも相まり、さながら巨大なディスコのような空間を演出していた。

SIRUPの「もうみんなだいぶ熱くなってるやん。ちょっとチルしようか」とのMCから、人気のバラード曲「LOOP」へ。ステージにはShin Sakiuraと、SIRUPのロゴをあしらったネオン管のみ。シンプルな演出ながらも、ステージの真ん中に立つSIRUPの圧倒的な説得力を擁する歌声に、グイグイと引き込まれる。終演後のトークでは、5月にニュー・アルバムがリリースされることも明かされるなど、嬉しいサプライズも起こった。


■SIRUP Setlist
M1. Do Well
M2. LOOP

同じく“Early Noise Night”に出演経験のあるドミコは、ボーカル/ギターのさかしたひかると、ドラム・長谷川啓太による2ピース・バンド。いつも通りの斜めに向かい合うようなセットで、幽玄なイントロから「ベットルームシェイクサマー」でゆったりと幕を開ける。深いリヴァーブがかけられたドラム、そして気だるいさかしたのボーカルは、曲名通りうだるような夏の暑さを想起させるよう。靄がかかったような映像と共に、サイケデリックな世界観を展開していく。

そこから一転、なんと今度はバンド史上最速BPMを叩き出した「ペーパーロールスター」へ。一気にギアを上げて、パンキッシュな演奏で会場の温度はますます上昇。ルーパーを駆使した演奏で、2ピースながらも骨太なサウンドをかき鳴らす。ギター・ソロではささくれ立ったノイジーなギターも炸裂。性急なテンポで一気に駆け抜けて終了。その寡黙さも含めて、“自分たちを貫いた”パフォーマンスとなった。


■ドミコ Setlist
M1. ベットルームシェイクサマー
M2. ペーパーロールスター


十二分に温まった会場に登場したのは、2017年の“Early Noise”にも選出され、“Early Noise Night”の第1回目にも出演した19歳のSSW、RIRI。煌びやかな衣装で登場し、「これからさらに盛り上がっていきましょう!」との掛け声と共に「That’s my baby」を披露。先鋭的なトラックと、その若さとは裏腹に洗練と色気を感じさせる歌声を会場に響かせる。曲の途中では4人のダンサーが登場し、ライブに華を添えた。

続いて資生堂「アネッサ」のCM曲として、小袋成彬、KANDYTOWNのラッパー・KEIJUとコラボした新曲「Summertime」では、先述のKEIJUがサプライズ出演。会場は嬉しい驚きに包まれる。RIRIのパワフルかつ表現力豊かな歌唱と、KEIJUによる滑らかなフロウの対比でオーディエンスを魅了していく。最後はアメリカ・サクラメントで撮影されたMVも話題を呼んだ「Honey」。ダンサーが再登場し、会場にはシャボン玉も撒かれ、非日常的な空間を演出した。


■RIRI Setlist
M1. That’s my baby
M2. Summertime feat,KEIJU
M3. Honey


次に現れたのは昨年武道館公演を成功させ、Spotify上で様々なプレイリストのカバーをジャックした企画でも大きな注目を集めたNulbarich。大量のスモークと共に始まったジャム・セッションの中、ボーカル・JQによる「ひとことで言えば、“グルーヴィー”です」「好きなように楽しんでください」とのMCが印象的だった。ダブル・ギターにベース、ドラム、シンセの6人編成で、「It’s Who We Are」をプレイ。各楽器がそれぞれ主張しながらも、絶妙に一つに溶け合い、全体としてグルーヴィーなポップ・ソングに昇華しているという絶妙なバランス感。武道館をソールドアウトさせたバンドの貫禄のようなものが感じ取れた。

メロディアスな歌メロでグイグイと引き込む「VOICE」、「次の曲は踊る曲」と、なぜかカタコト調のMCと共に披露された「Zero Gravity』。「RIRIちゃん、グラミー賞いけるっしょ」、「RIRIちゃんの次はやり辛い(笑)」と冗談も交えながら、ラストの「Almost There」へと流れる。ポップを体現しつつ、各パートのソロでは確かな演奏力に裏打ちされた遊び心のようなものも感じられる、エンターテインメント性の高いパフォーマンスとなった。最後は金テープが会場に降り注ぎ、会場のボルテージはまたしても最高潮に達した。


■Nulbarich Setlist
M1. It’s Who We Are
M2. VOICE
M3. Zero Gravity
M4. Almost There


「Spotify presents Early Noise Special」もいよいよ終盤戦。Spotifyが「Early Noise 2019」として選出した2019年期待のニューカマー10組の紹介を挟みつつ、1994年生まれのシンガー・ソングライター、ReNがひとりでステージに現れる。スタイルは大きく異なるが、この日共に出演したドミコのさかしたひかると同じく、ルーパーを駆使してアコギの音色や自身の声を次々と重ねていく。歯切れのいいギターとシンプルながらも低音の効いたビートでプレイするのは「Life Saver」。その若さとは裏腹に、ブルージーな歌声でオーディエンスを魅了する。「今日だけしか出せない音を作っていきます」とのMCから始まった「What I’m feeling」では、一転して透明感のある高音ボイスを披露。シンガーとしての高い能力を感じさせてくれた。最後は「せっかくの機会なので新曲をやってもいいですか」と、4月にリリースされる「HARRICANE」 を演奏。マイナー調の物悲しい楽曲ながら、同時に力強さを湛える歌声に、思わず聴き入ってしまった方も多いだろう。

その後のトークでは、自身が音楽活動を始めるキッカケとなったというEd Sheeranの来日公演が行われた会場、新木場Studio Coastでのライブが5月に決定していることなどを語ってくれた。


■ReN Setlist
M1. Life Saver
M2. What I’m feeling
M3. HARRICANE


この日の最後を飾るのは、山陰発ピアノPOPバンド・Official 髭男dism。ドラマチックな照明とSEをバックに、この日のトリに相応しい荘厳な幕開けを演出。フロントマンの藤原聡曰く、「Spotifyですっごい聴かれてるなっていう楽曲」でセットリストが組まれているというこの日のライブ。オープニングに相応しいアッパーな人気曲「ノーダウト」、曲名通り炎の特殊効果と映像、そして小笹大輔による早弾きギター・ソロで沸かした「Fire GROUND」、藤原のリリシズムが最大限発揮されたドラマチックな「115万キロのフィルム」などを次々と披露し、会場は熱気を増していく。ハンドクラップとコーラスで会場が一体となった「Stand By You」で3時間強にわたるライブは閉幕。終演後のトークで「全部無視して、3倍くらい(の曲数)やりたいって思うくらい楽しかったです」と語る藤原の表情からは、この日の確かな手応えが伝わってくるようであった。

なお、Official 髭男dismはドラマに引き続き、映画版『コンフィデンスマンJP』の主題歌を手がけることも発表されており、藤原はタイアップというよりはコラボレーションに近いと語っていた。


■Official 髭男dism
M1. ノーダウト
M2. Fire GROUND
M3. 115万キロのフィルム
M4. Stand By You

この日は出演したアーティストをSpotify上で最も聴いて応援してきたトップリスナーたちを数名、日本全国から招待しており、それぞれのアーティストとのミート&グリードも実施。また、これまで開催してきた“Early Noise Night”でも、東京公演ではオーディエンスがアーティストの回りを360度囲むようなセンター・ステージを採用しているほか、大阪公演ではバー・スペースに卓球台が用意されるなど、アーティストとファンが自然にコミュニケーションを取れる場づくりを重視している。

今回の“Spotify presents Early Noise Special”も会場規模は大きいながらも、アーティストとファンが一体となって楽しめる演出を追求しており、音楽を愛するアーティストとファンが集い、リラックスした雰囲気の中で心から音楽の素晴らしさを堪能した夜となった。

Text by 保坂隆純 (Spincoaster)


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