REPORT

SPIN.DSICOVERY Vol.07

才媛たちが熱演繰り広げた一夜。その様子はさながら「ドープな女子の集い」?  “SPIN.DSICOVERY Vol.07”のレポートをお届け

「新しい音楽の発見」をテーマに、Spincoasterが今、注目しているアーティストにスポットライトを当てる音楽イベント、“SPIN.DISCOVERY”が6月10日(日)、表参道WALL&WALLにて開催された。

7回目の開催となる今回は、奇しくもオープニング・アクトも含め5組全てが女性アクト、もしくは女性ボーカルを擁したグループ。彼女らの鮮やかな歌唱/演奏は、時に華やかに、そして時に力強く、観ている者を魅了する。また、ジャンルやシーンは異なれど、皆一様に横断的な音楽性を展開していたのも印象的だった。

今回はそんな才能溢れるアクトが集い、熱演を繰り広げた一夜をレポートする。

Text by Takazumi Hosaka
Photo by Yoshida Yuka


 [ OPENING ACT ] eill

まず、オープニング・アクトとしてステージに表れたのは、昨年頃からジワジワとコアなリスナーの注目を集める新進気鋭の若きSSW、eill(エイル)。フューチャー・ベースやフューチャー・ビーツ以降の音使い、リズムを感じさせる先鋭的なR&Bは、国内では中々に類を見ないものだ。バックDJを務めるのは北海道出身のプロデューサー/ビートメイカー、Ninja Drinks Wine。eillにとってDJセットはこの日が初とのことだったが、存在感のある声質、そして高い歌唱力を兼ね揃えたeillのボーカルと、抜けのいいトラックとの分離具合も相まり、新人とは思えないクオリティを感じさせてくれた。

ミステリアスな佇まいとのギャップを感じさせるMCを挟み、最後は6月13日(水)にリリースされた初のオフィシャル音源「MAKUAKE」を披露。ポップでカラフル、そして外に開けたサウンドで、一番手ながらも多くのオーディエンスを魅了してくれた。

■SET LIST
1. HUSH
2. metamorphose par la magie
3. 721 (RHEEHAB+OCEAN)
4. MAKUAKE


 MALIYA

短い転換を挟み、続いて今年2月にリリースした1stアルバム『ego』で大きな話題を集めたMALIYA(マリヤ)が登場。一曲目の「Hard Liquor」では一気に会場を艷やかな夜の空気感で包み込んでいく。そしてErykah Baduなどをのネオ・ソウルを強く想起させるような「Skin」を挟み、「次は踊れる曲なんで」「雨とか関係ないんで」と頼もしいMCと共に披露されたのは、軽やかなギター・カッティングが全体を引っ張る「Dance To My Song」。WONKを擁するレーベル〈epistroph〉に所属するDJ、Harada Kosukeによるスクラッチ、エフェクト使いも冴え渡る。


先述のアルバム『ego』の曲を中心としながらも、〈Pitch Odd Mansion〉と〈MS Entertainment〉による人気コンピの2作目『2 HORNS CITY #2 -Rain Library-』にエクスクルーシヴ収録された「Deep Inside」、2016年リリースの1st EP『ADDICTED』から「Bass」も披露。

さらに、ラス前にはアルバムからのリード曲としてMVも公開されている「Breakfast In Bed」をドロップ。プロデュースをSTUTSが手がけ、KANDYTOWNのRyohuが客演する本楽曲には、もちろん事前に告知されていた通りRyohuが登場。爽やかなトラックに乗っかるRyohuの滑らかなフロウは、MALIYAの情熱的な歌声とのコントラストも感じさせ、会場を大いに沸かした。

■SET LIST
1. Hard Liquor
2. Skin
3. Dance To My Song
4. Wisp Of Smoke
5. Deep Inside
6. Breakfast In Bed feat. Ryohu
7. Bass


 AAAMYYY

この日3組目は、ソロ活動のほかにTempalayやRyohu、TENDREのサポートでも活躍するSSW/プロデューサーのAAAMYYY(エイミー)。音楽活動以外にも、ラジオMC、モデルとしても幅広い活動をみせるが、今年2月にはカセットEP『MABOROSI EP』と、同作収録曲と過去作を合わせた8曲入りの配信限定ミニ・アルバム『MABOROSI WEEKEND』を同時リリースし、ひとりのアーティストとして音楽シーンにその名をしかと刻みつけた。


同作のオープナー・トラックでもある「8PM」にてライブはスタート。ローファイなシンセ・ポップを展開する音源とは異なり、Tempalayのドラマー・藤本夏樹やTENDREらがバックを固め、タフなバンド・サウンドでサイケデリックなグルーヴを生み出していく。疾走感溢れる「JESUS」、TENDREとの掛け合いが素晴らしい「KAMERA」など、バンド・サウンドでアレンジされた楽曲が次々と披露されていく中で、改めて浮かび上がってくるのは彼女のメロディ・センス。外殻のサウンドが変われども、楽曲の骨格ともいえるメロディ・ラインに溢れる魅力はそのままだ。AAAMYYYのエモーショナルなボーカルとともに、ライブではそれがより一層明確になる。

最後は「MABOROSI」を叙情的に歌い上げた後、タメの効いたシンセと特徴的なギター・リフが高揚感を演出する「BLUEV」。ここで再びRyohuが登場。低空飛行するようなフロウで、AAAMYYYと鮮やかなコラボレーションを展開。アーバンでメロウな楽曲ながらも、その内に秘めた熱をしかと感じさせるパフォーマンスだった。

■SET LIST
1. 8PM
2. JESUS
3. KAMERA
4. IRONY
5. MABOROSI
6. BLUEV feat. Ryohu


 ものんくる

トリ前を務めるのは、ジャズを軸にしながらも、いかにも新世代とでも言いたくなるようなクロスオーバーしたサウンドと、絶妙なポップ・センスが光る楽曲群で人気を集めるものんくる。

その凛とした歌声とは裏腹に、テンション高くオーディエンスを煽る吉田沙良。そして、相方である角田隆太を始めとした演奏陣は確かなスキルで盤石のバンド・サウンドを奏でる。長尺のソロこそないが、ポップ・ミュージックの枠を逸脱しない範疇で、演奏の随所に各々のスキルを見せつけるパートが挟み込まれる。高いミュージシャンシップを感じさせながらも、同時に華のあるボーカル・吉田の立ち居振る舞いはどこまでもキャッチー。見る見るうちに抜群の求心力を持ってして会場の空気を掌握していく。


「今日はすごいね。ドープな女子がたくさん出てる、そんな夜。楽しんでいって下さい」と会場の笑いを誘ったかと思えば、「Driving Out of Town」、「最終列車 君を乗せて」とメロウなパートへ突入。また、昨年リリースの3rdアルバム『世界はここにしかないって上手に言って』の印象的なクロージング・ナンバー「the dawn will come」では、カオティックなまでのインプロ・パートも挟みつつ、バンド・サウンドならではのダイナミズムを存分に味わうことができた。「ものんくるは今、穴ぐらに籠もって制作している時期なんですが、制作が続いていると、ライブが本当に救いで。みんな今日は来てくれてありがとうという気持ちでいっぱいです」と、飾らない笑顔とともに、感謝の気持ちを告げる吉田。コレまで以上にポップ、そしてファンキーな新曲「Reloading city」を挟み、最後はオーディエンスとのコール・アンド・レスポンスも感動的な「ここにしかないって言って」で出番を終えた。

■SET LIST
1. 空想飛行
2. 花火
3. 優しさを重ねること
4. Driving Out of Town
5. 最終列車 君を乗せて
6. the dawn will come
7. Reloading city
8. ここにしかないって言って


 chelmico

そして、最後はMC MAMIKOとMC RACHELからなるラップ・ユニット、chelmico(チェルミコ)。「Timeless」のイントロから流れるように登場するや否や、「Honey Bunny」、「ママレードボーイ」と立て続けに披露。特に緩急の効いた展開が印象的な「ママレードボーイ」では、ふたりのラップのスキルの向上を強く感じさせてくれた。

MCではいつものゆるく、砕けたキャラクター全開。喋っているだけでも会場にはハッピーなヴァイブスが漂っていく。しかし、MCのテンションとは一転、chelmicoのメロウな側面を強く打ち出した「Night camel」、「ずるいね」ではしっとりと聴かせてくれる。さらに、ありがたいことにSpincoasterへの言及も含むMCを挟みつつ、今度は一転、5月に同時リリースされたニュー・シングル「BANANA」、「OK, Cheers!」や、「ラビリンス’97」といったハイテンションな楽曲を投下。オーディエンスとのコール・アンド・レスポンスも行いつつ、会場をガッチリとロックしていく。ラップのスキルだけでなく、明暗を付ける表現力豊かな歌唱などからも、この数年で多数の現場を経験してきたふたりの成長ぶりが伝わってきた。


昨年リリースの『EP』からのリード曲「Highlight」では駆け足気味のフロウながらもカッチリとしたライミングをみせ、最後はやはり「Love is Over」で大団円。ふたりの喉が張り裂けんばかりの「Love Is Over」の掛け声に対して、オーディエンスもこの日最大の声量で応える。熱いライブの余韻を残しつつ閉幕。ドープな女子が集った“SPIN.DISCOVERY Vol.07”を、華々しく締めくくってくれた。

■SET LIST
1. Timeless
2. Honey Bunny
3. ママレードボーイ
4. Night camel
5. ずるいね
6. BANANA
7. ラビリンス’97
8. OK, Cheers!
9. Highlight
10. Love is Over


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