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REPORT / SIRUP 『Roll & Bounce』


いつもの仲間たちといつも通りのテンションで作り上げた最高の舞台。SIRUP初の武道館公演をレポート

2022.11.17

Text by Takazumi Hosaka
Photo by Leo Youlagi

SIRUPが初の日本武道館公演『Roll & Bounce』を11月11日(金)に開催した。

現名義での活動開始から5年。その間、多くのタイアップこそあれど、いわゆる芸能の領域での露出は決して多くはないSIRUP(MCでも「テレビとかもあまり出ないし」と語っていた)。その一方で、海外アーティストとの積極的なコラボレーションや社会的なメッセージの発信など、いわゆる旧来の国内エンタメ産業とは毛色の異なる、言い換えればグローバル・スタンダートに近い活動を展開してきた。そんな彼が武道館を舞台に繰り広げたのは、いつもの仲間たちといつも通りのテンションで行う特別なライブ・パフォーマンス。華やかな舞台に相応しい力強い演出で、これまでの歩みを実直に提示する一夜となった。

定刻を少し過ぎた頃、バンドが高揚感を煽るイントロを奏でると共に、2段の大型LEDディスプレイが徐々に光を灯す。その下段にはバンド・メンバー、上段にはストリングス・カルテットとブラス隊が配されており、その真中に立つのはもちろんSIRUPだ。逆光に浮かぶそれぞれのシルエット、そして初っ端から会場に響き渡るSIRUPのソウルフルな歌声が華やかな幕開けを告げる。

白を貴重とした衣装に身を包んだバンド・メンバーはお馴染みのShin Sakiura(Gt. / Mani.)、showmore・井上惇志(Key.)、HISA(Gt. / Cho.)、そしてSIRUP自身も籍を置くSoulflexよりRaB(Ds. / Cho.)、Funky(Ba.)、KenT(Sax / Syn.)のフル編成。イントロ代わりの「One Day」からデビュー・シングル「Synapse」、そして「PRAYER」「Why Can’t」と緩急を効かせつつも一気にギアを上げていく。英プロデューサー・Joe Hertzとのコラボ曲「MAIGO」で大きなハンド・クラップが巻き起こった後、「ここからはいつものメンバーで最高に踊らせにいくけど大丈夫?」とのMCからバンドのみの構成に。

流麗なメロディを歌い上げる「Need You Bad」や「Rain」は特にバンド・アレンジが映える。また、この日はSIRUPの多くのMVを手がけるmaxillaが演出を担当しており、楽曲ごとにその世界観を増幅。ディスプレイには映像だけでなく随所でリリックも映し出され、特に「Overnight」でのキメの《は?》がバシッと決まったシーンなどは観ている者のテンションをぶち上げる。いつも以上にタメを効かせた贅沢極まりない「LOOP」、ストリングスも加わり夢見心地なメロウ・サウンドを展開した「一瞬」を経て、ライブはいよいよ後半戦へ。

衣装チェンジしたSIRUPと、Shin Sakiuraの素朴なギター、そしてストリングスを軸に奏でた「Ready For You」ではその映像演出も相まって、幻想的な世界へと誘われる。曲の終盤、バンドが加わった瞬間の無敵感、静と動の鮮やかな対比はまさにバンド・マジックと呼びたくなるほど。音源ではシンプルな構成の「Change」も立体的なアレンジが加えられ、「Runaway」や「Thinkin about us」では会場を包み込むような壮大なサウンドスケープを描き出した。

「今日はここだけが唯一バリ喋るところなんで」と、ようやくここで長めのMCに入る。「自分の好きなことだけをやってるのに、武道館ができるのはみんなのおかげ。マジでありがとう」。管弦チームも含め「いつかやろうね」と話していた仲間たちとこのステージに立てたこと、そして「いつかやるから」と語りかけてきたいつものみんな=オーディエンスが来てくれたことに改めて感謝を告げる。また、「到達点ではなく、通過点のひとつ」と語りつつ、この先10周年、20周年、30周年、果ては来世までと冗談も挟んで笑いを誘う。

オーディエンスの姿をディスプレイに映し出しながら歌う「Your Love」からラストスパートへ。キメが痛快な「Superpower」、多幸感溢れる「SWIM」、そして「Do Well」ではアリーナからスタンドまで会場中が飛び跳ねる。バンド・メンバーやブラス隊の見せ場なども用意されており、単なるサポート・メンバーではなく、長年同じ時を共有してきたメンバーだからこそ出せる一体感と熱量が感じられた。本編の最後に歌うのは「LMN」。「ライトを光らせるやつやろう。俺ああいうの逆にやってこなかったから」という言葉に、オーディンエンスは無数のライトで応える。美しい光に包まれながら、SIRUPが発信し続けてきた大切なメッセージのひとつである《Living in the moment now(=今この瞬間を生きる)》が繰り返しこだまする景色は、まさに大団円に相応しい感動的な一幕であった。

アンコールでは再び衣装を変え、最新シングル「BE THE GROOVE」を披露。およそ2時間、全29曲。本人も語っていた通りまさに詰め詰めの武道館で、1曲でも多く歌いたいという強い気持ちがひしひしと伝わってきた。改めてのメンバー紹介と、来年はアルバムのリリース、そしてツアーを開催する旨を宣言した後、「もうちょっとだけ最高のグルーヴで踊ってって」と言い残してSIRUPは舞台を後に。管弦含めたフル・メンバーによる「BE THE GROOVE」のリプライズで『Roll & Bounce』は幕を閉じた。

メンバーが去った後にディスプレイに映し出されたのは、自身のライブが全ての人にとってのセーフゾーンになってほしいという願い、そしてそれを実現するために努力し続けるというメッセージ。最後のMCでも「No One Left Behind(誰も置き去りにしない)な世界にマジでなってほしい。みんなで最高の世界を目指しましょう」と語っていたように、SIRUPはこの混沌とした時代と真正面に向き合いながら音楽を奏でている。彼が発信し続ける“Love & Educate Yourself”の精神が今後どのように広がっていくのか、そしてその先にはどのような世界が待っているのか。その景色を見届けたいと改めて思わされるライブだった。

なお、本公演は生配信も同時に行われており、アーカイブ映像は12月4日(日)まで視聴可能。最後に捌けたはずのSIRUPがトロンボーンを持って戻ってきたチャーミングな姿も含め、細部までじっくりと視聴することをおすすめしたい。

SIRUP 『Roll & Bounce』 Setlist
M1. One Day
M2. Synapse
M3. PRAYER
M4. Why Can’t
M5. Pool
M6. MAIGO
M7. Need You Bad
M8. バンドエイド
M9. CRAZY
M10. Rain
M11. Last Dance
M12. Overnight
M13. Evergreen
M14. No Stress
M15. LOOP
M16. 一瞬
M17. Ready For You
M18. Last Lover
M19. Trigger
M20. HOPELESS ROMANTIC
M21. Runaway
M22. Change
M23. Thinkin about us
M24. Your Love
M25. Superpower
M26. SWIM
M27. Do Well
M28. LMN
[Encore]
M29. BE THE GROOVE


【イベント情報】


『Roll & Bounce』
日時:2022年11月11日(金) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京・日本武道館

配信チケット(ぴあ):〜12月4日(日)20:00
※アーカイブ視聴期間:〜12月4日(日)23:59

〈Roll & Bounce Live Band Member〉

Vocal : SIRUP
Drums (Cho.) : RaB
Bass : Funky
Sax / Synth : KenT
Guitar (Cho.) : HISA
Keyboard : Atsushi Inoue
Guitar / Manipulate:Shin Sakiura
Violin : Anzu Suhara, Asano Mekaru
Viola : Yasuko Murata
Cello : Shuhei Ito
Trumpet : Takezo Yamada, Hajime Gushiken
Trombone : Nanami Haruta

〈Roll & Bounce Live Staff〉

[Stage Production]
Stage Manager : Koichi “Nax” Nakata (DME)
Assistant Stage Manager : Kuninori “Kuni” Suzuki (Freelance)
Stage Set Designer : Tomomi Taguchi (SHIMIZU OCTO)
Stage Set Production Manager : Yoko Tannai (SHIMIZU OCTO)

[Creative Staff]
Stylist (SIRUP) / Styling Direction (Band) : TEPPEI
Stylist (Band) : Yuki Nagase
Hair stylist : TAKAI, Junko Hirakose

[Live Scenography]
Creative & Art Director : Masaki Watanabe (maxilla)
Director : Tetsuro Abo (maxilla), Charles Chung (maxilla), Kazuya Futagoishi (maxilla)
Producer : Seiya Suzuki (maxilla)
Project Manager : Moe Niitsu (maxilla)

[Sound Technician]
Sound (FOH Sound Engineer) : Kenta Arai (Arai Onkyo)
Sound (Monitor Engineer) : Yuki Uchibayashi (United Sound Promotion / Styrism Inc.)
Sound (Stage) : Asaka Suzuki (APR.)
Sound clair_japan
Live Recording : Tsutomu Oya (LSD Engineering)
Live Mixing Engineer : Hiraku Someno (Styrism Inc.)

[Lighting Technician]
Lighting Design & Operate : Kentaro Saiki (KYORITZ), Nanae Sawada (Freelance)

[Instrument Technician]
Backline Technician : Ryo Nakaya (DEUCE), Akira Goto (Freelance), Kensuke Yagi (DEUCE)

[Live Video / Photography]
Director of Photography : Yuzuru Hashimoto (Freelance)
Technical Director : Eiji Hashimoto (IMAGE DEVICE)
Switcher / Director : Yuji “Shunin” Endo (avex entertainment Inc.)
LED Video Engineer : Hiromichi Yamanaka (AZFELLOWS)
Live Photographer : Leo Youlagi

[Trucking Staff]
Trucking : Shuji Miyagi (Ahny global link)

[Live Production]
Operation : Sadayuki Ide (Kyodo Factory), Tatsuhiko Hashimoto (Kyodo Factory)
Ticketing : Saki Kamohara (Kyodo Tokyo)
Live Production : Susumu Kakisaka (Kyodo Tokyo), Yusuke Dairaku (Kyodo Tokyo)

企画制作:Styrism / キョードー東京
主催:Styrism / キョードー東京

SIRUP『Roll & Bounce』特設サイト

SIRUP オフィシャル・サイト


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