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REPORT / Early Noise Night vol.5


羊文学、カネコアヤノ、SPiCYSOL、ドミコらが白熱の一夜を演出! 新鋭ピックアップ・イベント、“ENN”の第5回目をレポート

2018.06.04

Spotifyがプッシュする旬のアーティストが集うイベント、“Early Noise Night”の第5回目が5月16日(水)代官山SPACE ODDにて開催された。

プレイリストと連動し、これからの活躍が期待できる気鋭の国内ニューカマーたちをより広い世間へと知らしめることを目的とした本イベントは、毎回入場料は1000円という格安の設定や、オーディエンスがアーティストの周囲を囲うセンターステージといった特殊な仕様も相まり、リスナーからの注目度も高まっている。そして実際、毎回エキサイティングかつ印象的なライブ・パフォーマンスが数多く披露されてきた。

ヒップホップに特化した前回とは打って変わり、今回は羊文学、カネコアヤノ、SPiCYSOL、ドミコといったバンド編成のアクトが中心。どのアクトも熱量の高めの、エネルギッシュなライブを披露してくれた。

 羊文学

今宵の1番手は塩塚モエカ(Vo. / Gt.)、ゆりか(Ba.)、フクダヒロア(Dr.)によるスリーピース・ロックバンド、羊文学。昨年リリースの『トンネルを抜けたら』、今年2月リリースの『オレンジチョコレートハウスまでの道のり』と、2枚のEPでインディ・リスナーの注目を集め、遂に今年7月には待望の1stアルバムのリリースも決まった注目株だ。

塩塚が「スカートの中は写真撮らないでくださいね」と、軽く笑いを誘うMCから、先述の『オレンジチョコレートハウスまでの道のり』のオープナー・トラックとなる「ハイウェイ」を1曲目に披露。抑揚が抑えられた演奏ながらも、その中に流れる熱い血潮のようなものをヒシヒシと感じさせるような、鋭角的な音の粒が肌を刺す。塩塚のボーカルは決して力強くはないが、凛とした声質のせいか不思議と一本筋の通った説得力を擁している。そして、ある種内省的とも取れるリリックを、時に優しく、そして時に突き放すかのように投げかけてくるのだ。海外のインディ・ロック、特に80〜90年代のアノラック系のバンドやギターポップ〜シューゲイザーといった要素を、日本語の歌モノ・ポップスへと消化するそのバランス感覚は絶妙。

トップバッターということもあり、会場はまだ温まりきっているとは言えない状況だったが、彼らの演奏の静かなる熱は、ジワジワとオーディエンスの心へと届いていたのではないだろうか。

【羊文学 セットリスト】
ハイウェイ
ブレーメン
ドラマ
涙の行方
Step

 カネコアヤノ

続いて登場したのは、独特の言語感覚を擁するSSW・カネコアヤノ。この日はバンド・セットということで、音源よりもさらにアグレッシブかつエネルギッシュな演奏を展開。カネコアヤノも自在に自らの声を操り、時にフリーキーに、そして時にシリアスな表情を見せ、会場を魅了した。
バンド・メンバーは元・踊ってばかりの国の林宏敏(Gt.)、Gateballersの本村拓磨 (Ba.)、HAPPYのBob(Dr.)という新作『祝祭』と同じく鉄壁の布陣。3人がカネコアヤノを支える、といった感じではなく、四位一体となってパンキッシュに弾けたサウンドを掻き鳴らしていく。


「ロマンス宣言」、「ごあいさつ」、「祝日」など、4月末にリリースされたばかりのニュー・アルバム『祝祭』からのナンバーを軸としながらも、日本語の響きのおもしろさを再発見するかのような「とがる」(2nd EP『ひかれあい』収録)、まるでネオロカ〜カウパンクのような趣きすらある「春」(昨年リリースのアルバム『群れたち』収録)なども披露。どの曲も抜群に息の合った演奏をみせつけてくれる。特に白眉だったのは、終盤に披露された「恋しい日々」。最後のサビ前には一瞬ブレイクを入れ、印象的なフレーズ「冷たいレモンと炭酸のやつ」をメンバー全員でシャウトするなど、ライブならではのアレンジで会場を大いに沸かす。ほとんどMCもないまま、最後はソリッドなギター・リフで引っ張る「アーケード」で終幕。しかし、その熱気は彼らが去った後もステージに立ち籠めていた。

【カネコアヤノ セットリスト】
ロマンス宣言
とがる

ごあいさつ
祝日
恋しい日々
アーケード

 SPiCYSOL

この日の3番手を担ったのは、「Surf Beat Music」を掲げ、ロックやR&Bなど様々なジャンルを横断する4人組、SPiCYSOL(スパイシーソル)。この日のラインナップの中では最もロック色の薄いサウンドながらも、そのアウェイ感を感じさせない安定感抜群のライブを披露してくれた。

ルーツに根ざしているであろうブラック・ミュージックの影響をありありと感じさせてくれる都会的なナンバー「Sex On Fire」で一気に会場の空気を塗り変えるやいなや、お次は昨年5月にリリースされた配信限定シングル「Cyanotype」で南国のような陽性のフィーリングを醸し出す。近年、世界のメインストリームにおけるR&Bやヒップホップにも取り入れられることも多い、ダンスホール〜ムーンバートン的な跳ねるリズムを導入した同曲には、無条件にオーディエンスも体を揺らす。


また、KENNY(Vo. / Gt.)筆頭にバンド・メンバーの立ち居振る舞いも実に様になっており、コール・アンド・レスポンスもお手の物。これまでに踏んできた場数の多さを感じさせもする。7月4日(水)にリリース予定の2ndアルバム『Mellow Yellow』からは新曲「GOOD DAY(仮)」をプレイ。「雨の日もあれば晴れの日もある。でも、どんな1日でも、あなた次第でいい日になる」という、楽曲に込めた想いの通り、ポジティブなヴァイブを我々に届けてくれた。

【SPiCYSOL セットリスト】
Sex On Fire
Cyanotype
Monsoon
GOOD DAY(仮)
Honey Flavor

 ドミコ

今夜のトリを務めるのは、昨年初の全国ツアーと中国ツアー、そして“SXSW”出演にUSツアーを経て、一回りも二回りも逞しくなったギター・ボーカルのさかしたひかると、ドラマーの長谷川啓太からなるドミコだ。

2人だけというミニマルな編成ながらも、そのタフなグルーブはバンドにも全く引けを取らない。「マカロニグラタン」、「バニラクリームベリーサワー」、「こんなのおかしくない?」など、昨年リリースの2ndアルバム『hey hey,my my?』からの楽曲を中心に、曲間にはセッションのようなインプロ的展開も挟みつつ、次々と楽曲を繰り出していく。

また、ループや様々なエフェクトを駆使するさかしたの器用さには目を見張るものがあり、たった2人だけで中毒性の高いグルーヴィーなサウンドを生み出していく。時にはギターを重ね、分厚い音の壁を作り出し、また時にはベースの低音までもギターで鳴らしていく。ループを多様したミニマルな展開ながらも、そのフックの効いたメロディ・ラインでどの曲も抜群のキャッチーさを感じさせる。ストレンジな世界観のリリックは音の響きに優れ、さかしたの流麗なフロウに乗っかり我々の耳に心地良く届けられる。

そんなさかしたの相棒である長谷川啓太のパワフルかつタイトなドラムは、このさかしたのフリーキーなスタイルを力強く支える。まさしくバンドの屋台骨とでも言いたくなる安定感は、シーンにおける同世代のバンドたちからも頭一つ抜きん出ているのではないだろうか。ふたりきりで向かい合う形で淡々と演奏する様は、まるで対話をしているかのようでもあった。


ステージを後にするも、鳴り止まないオーディエンスからの拍手に応える形で、アンコールでは「ミッドナイトネオン」を演奏。性急なグルーヴだけでなく、時には巧みにプレイでメロウに聴かせられるのも彼らの強みだ。終盤のノイジーなギター・リフには思わず鳥肌も。今宵の最期を締め括るに相応しい1曲であった。

早耳リスナーを中心に、確かなセンスとラインナップで支持を集める“Early Noise Night”。早くも次回の開催も発表されている。次回はなんと初の大阪公演となっており、あっこゴリラ、Attractions、SIRUP、向井太一らの出演が決定。シーンやジャンルは違えど、どのアクトも新世代ならではの感性を感じさせる、絶妙な並びとなっている。関西方面の方は、ぜひとも大阪初上陸の“Early Noise Night”をお見逃しなく……!

【ドミコ セットリスト】
マカロニグラタン
バニラクリームベリーサワー
こんなのおかしくない?
まどろまない
united pancake
くじらの巣
-encore-
ミッドナイトネオン

Text by Takazumi Hosaka
Photo by 渡辺綾


【イベント情報】

“Spotify Early Noise Night #6”
日時:2018年6月15日(金) 開場 22:00 / 開演 22:30
会場:大阪 Music club JANUS
料金:前売券 ¥1,000 / 当日券 ¥2,000(各2ドリンク別)
出演:
あっこゴリラ
Attractions
SIRUP
向井太一

[問い合わせ]
キョードーインフォメーション (Tel 0570-200-888)

[主催]
Spotify

[企画・制作]
Spotify、キョードー関西

[協力]
Spincoaster

チケット販売:イープラス http://e-plus.jp

※注意事項:未成年(20歳未満)のご入場はお断りさせていただきます
※出演者のキャンセル・変更によるチケットの払い戻しはいたしま
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