9月6日(水)にリリースが予定されている、PAELLASの新EP『D.R.E.A.M.』。現在は「Shooting Star」のMVが先行公開されている他、タワーレコード店舗では「Together」、「Fade」も含めた計3曲をフル尺で聴くことができます。
前作となる1stアルバム『Pressure』においては、馥郁(ふくいく)として豊かなナイト・ライフや、仄暗い中でちらつく男女の機微のようなディープな魅力が光り、あらゆるジャンルのエッセンスを取り込みながら独自のバンド・サウンドを展開する、彼らの真価が発揮されていました。そこで、さらなる進化が期待される今作。本稿の表題曲「Shooting Star」にフィーチャーしながら、全6曲それぞれの姿に迫って行きましょう(ついに解禁された日本語詞にも注目です)。
#1「Together」
さて、もう皆さんは味わいましたか、鼓膜を軽やかに叩くこのシンセ・フレーズを。幕を開けるナンバーのイントロで早くも、全体としての質感がこれまでとは異なることを匂わせます。都会的なロマンスや夜の艶やかさはそのままに、青や白の光がきらめく印象。ポップで爽やかなこちらの楽曲は、アペリティフさながらに緊張をほぐしカラダのゆらぎを誘います。
“上昇感”という意味で、このシュワッとした炭酸こそが今回のEPを象徴している、とも言えるかもしれませんね。
#2「Shooting Star」
冒頭でもご紹介したMVがこちら。夜が明けるまで、火が燃え尽きるまで、星が流れ去るまでのその刹那が、巧みに表現されたビデオとなっているのではないでしょうか。ここにリンクするのが、この曲を占めている愁いの漂うメロディや諦めとも取れるようなリリック。その一方で、(特にサビにおいては)睨むような、試すような挑発的な視線も感じます。楽曲全体の表情を引き締め、EPをリードするに相応しいものにしているのはきっと、この眼差しの介在です。
そうしたサウンドに見つめられ、気恥ずかしさから瞼を閉じてみる――そうすると段々と全体像が浮かび上がってきます。それは、口数は多くなく野心を内に秘めたクールな青年の、燃え上がるように踊る様。”いずれ星になるくらいなら”、”i don’t wanna be a shooting star”などといった詞の加勢もあって、抵抗や執着心、そして生命力が強く感じられます。ここに、バンドとしての飛躍を見ることができるのでは。つまり、今まで彼らが得意としていた優雅さや儚さを醸し出すライブ・パフォーマンスのほかにも、聴衆を魅了し、シーンを圧倒するカードが確実に揃ってきているということです。
#3「Lying」
“色気”――この2文字を抜きにしてPAELLASを語ることはできません。彼らのライブを観ると、まるで妖気にあてられたかのようにうっとりすると言っても過言でないほどですから。過去作「Cat Out」、「Fire」、「Take Baby Steps」などはひときわ色っぽく、”セクシー”という形容が似合います。
ただしこの新曲は、毛色を少し違えているように思います。気品を兼ね備え、より美しく研ぎ澄まされたと言いますか。”水の滴る”というよりも、ゆらゆらと立ち上がる香りのような落ち着きがあります。例えば、シルキーなボーカルと透明感のあるギターが溶け合い、そこへ優しく絡みゆくリズム。それから、一定のテンポで響くハイハットの音色にはしとしとと降る雨をどこか連想させるものがありますが、成長を遂げた彼らが魅せるのはそれそのものではなく、”ペトリコール*”でしょう。こちらの方が強く印象に残ります。
#4「MOTN」
サンプリングされた台詞から始まるこの一曲。「Lying」から一転してなんだか不穏な気配すら感じるのは、その無機的なサウンドのせいかもしれません。ミニマル・テクノなどを引き合いに出せば、これは随分と温かみのある音だということになりますが、彼らの楽曲の中では比較的淡白な方であると言えます。
そんな本ナンバーは(単体でも揺れる肢体にとって心地よくはあるものの)、EPの内の1曲として捉えるとその重要性がより明確に。このタイミングで一度方向性を転換することによって、『D.R.E.A.M.』という作品が昇華するわけですね。
(※2017.12.14 UPDATE; パフォーマンス映像が公開されたため差し替え)
#5「Fade」
淡くきらめくさっぱりとしたカクテルが、舌の上を滑るようにすっと入ってくる――なんて想像を掻き立てる”上モノ”がかなり気持ちよく、それに乗って踊るのもまた。ファルセットとカッティング・ギター、浮遊感あるシンセという”口当たり”のよい音。カラダの火照りを感じながら、静かに高揚してゆくフロアが目に浮かびます。
#6「Eyes On Me」
ラストにして、ダークホースの出現。ボコーダーのフックが効いて、もしかしたら個人的には一番好きかもしれません。疾走感があり、BPM155〜160という数値からしてもアップ・テンポの曲だと言えるのですが、どこかミステリアスな雰囲気があるのです。ネオン輝く街をクルマで駆け抜けるような派手なイメージではなく、どこまでも高く昇ってゆくエレベータの中でガラス越しに夜の光をぼんやり眺めているような、そういう少し怪しげなスピード感のせいでしょうか。たまりません。
ところで「Shooting Star」で感じたあの視線は、今や私たちの方から”彼”へ向けられ、釘付けに。魅力的ですから。
……という感じで、今回の作品には全体として軽快な印象を抱きました。前作のようなインディR&Bな楽曲から少し離れ、ギターを中心とした構成に回帰したり、シンセの使い方としてもエレクトロ・ファンクの方へ接近したり、といったことがその要因として挙げられると思います。
各都市で開催予定のリリース・ツアーでは、新たなダンス・ナンバーや多彩な表現によって、ますます私たちを虜にしてくれるはずです。期待しましょう。
*雨が降ったとき、地面から上がってくる匂いのこと。
【イベント情報】
“D.R.E.A.M.” Release Tour
2017/09/08(金) 大阪 CONPASS w/ iri
2017/09/16(土) 渋谷 WWW w/ ROTH BART BARON
2017/10/04(水) 名古屋 ell.SIZE w/ Kan Sano
2017/10/06(金) 福岡 Kieth Flack w/ the perfect me
[一般発売] 7月22日(土)
イープラス、ローソンチケット、チケットぴあ にて販売中
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『D.R.E.A.M.』発売記念インストアライブ、先行試聴についての詳細は、こちらからどうぞ。
【リリース情報】
PAELLAS 『D.R.E.A.M.』
Release Date:2017.09.06 (Wed.)
Label:Space Shower Music
Cat.No.:PECF-3184
Price:¥1,600 + Tax
Tracklist:
1. Together
2. Shooting Star
3. Lying
4. MOTN
5. Fade
6. Eyes On Me
■PAELLAS オフィシャル・サイト:http://paellasband.com/