韓国はソウルを拠点とするフューチャー・ファンク系プロデューサー/DJのNight Tempoが、5月20日(日)にリリースするニュー・アルバム『Moonrise』より、日本人プロデューサーのTomggg、韓国のシティポップ・バンド、Super Brassをフィーチャーした新曲「Come On!」が公開されました。
今さらですが、フューチャー・ファンクと言えば、ヴェイパーウェーヴから派生するような形で生まれた潮流のひとつで、主に70〜80年代のファンクやソウル、ディスコ、AORをサンプリングし、ボーカルをカット&チョップするなどしたサウンドが特徴となっていたもの。
それが次第に日本のシティポップや昭和歌謡など、いわゆる“和モノ”と言われるようなジャンルをサンプリング元にするアーティストが増え、いつしかフューチャー・ファンクという言葉の定義自体も(相変わらず曖昧な余白部分も残しつつ)変化してきたように思えます。
Night Tempoもまさしくそういったいわゆる和モノへの強い憧憬を抱くプロデューサー・DJのひとりなわけですが、彼の新作には先述のように韓国のシティポップ・バンド、Super Brassや同じく韓国のプロデューサー/SSWのNeon Bunnyなども参加。本楽曲も、クレジットを見る限りベースやトロンボーンは生音で録音し、Night TempoとTomgggがピアノ(シンセ)を担当しているようです。
ボーカルはおそらくサンプリングだと思いますが、そういったフューチャー・ファンクの原初的な美学も引き継ぎつつ、その上でそのジャンルの枠を拡張、もしくは進化させようとする気概を勝手に感じてしまいます。
同じくアルバム『Moonrise』より先立って公開されていた「Better Days (feat. EXN, Super Brass)」では、同じくサックスやベースはSuper Brassのメンバーが担当していることに加え、何とこの曲はキーボードとドラムをNight Tempo本人が担当しているとのこと。
ボーカルには韓国のシンガー・EXNを招き、本人の歌唱をサンプリングするかのようにカット・アップ。フューチャー・ベースを歌モノのポップスへと落とし込む際と同様の手腕で、本楽曲もフューチャー・ファンクの世界観は残しつつも、より外へ開けたポップスとして機能させることに成功しているのではないでしょうか。
さらに、今夏にはNight Tempo、Desired、Macross 82-99、Tanukら日本の80年代〜90年代の音楽から影響を受けたフューチャー・ファンク・プロデューサーと、その影響元とも言えるアニメ『うる星やつら』シリーズの音楽を手がけたことでも知られる安西史孝や小林泉美、そして同じくアニメ『らんま1/2』の音楽を手がけた森英治ら日本人アーティスト/作曲家3名がコラボ・セッション行う公開イベント“Otaku Spirit Sessions”の開催が計画されており、実現へと向けたクラウドファンディングも先日無事達成。
日本の大御所アーティスト/作曲家と、新世代の海外プロデューサー勢がどのような化学反応を起こすのか。そして、そこからまた新たなフューチャー・ファンクの未来が見えてくるのかもしれません。同シーンでは、まだまだおもしろいことが起こりそうです。
■Otaku Spirit Sessions(Kickstarter):https://www.kickstarter.com/projects/otakuspirit/otaku-spirit-sessions
【リリース情報】
Night Tempo 『Moonrise』
Release Date:2018.05.20 (Sun.)
Tracklist:
1. Overture
2. Come On!
3. Level Off
4. Yuu-Huu
5. Riverside Drive
6. Back To Back
7. Hot Talkin’
8. Starlight Girl
9. Love Game
10. Turn The Light On
11. Better Days
12. Bay City Groove