FEATURE

INTERVIEW / yonkey


AAAMYYY、Ace Hashimotoとのコラボ作を発表したyonkey。バンドのフロントマンとしても活動する新世代アーティストの哲学とは

2020.02.29

新世代プロデューサー・yonkeyが新曲「Haunter (feat. Ace Hashimoto)」をリリースした。

現在22歳の若きプロデューサー/トラックメイカーとして、昨年7月にはAAAMYYYとのコラボ・シングル「ダウナーラブ」を発表。さらに、BAD HOPの後輩として親交の深いラッパー・Snozzz、そして彼を擁するクルーOGFのビートも手がけるほか、Klang Rulerのフロントマンとしても活動する、非常に特殊な経歴の持ち主だ。

今回リリースした米ラッパー・Ace Hashimotoとのコラボ曲を軸に、ソロ名義とバンドの両方に一貫しているポップネスのルーツに迫ることに。

Text by Takazumi Hosaka
Photo by Maho Korogi


「僕らに共通して言えるのは、ポップになることを恐れないっていうことなんじゃないかなって」

――昨年7月にAAAMYYYさんを招いた「ダウナーラブ」をリリースしてから、第2弾シングルとなる今作「Haunter」まで、思いの外期間が空いたなという印象です。もちろん、その間にはKlang Rulerとしての活動などもあったかと思いますが、この半年ほどはご自身にとってどのような期間だったのでしょう?

yonkey:「ダウナーラブ」が名刺代わりになって、トラックメイカーやラッパーなど、他のアーティストさんとの繋がりが増えました。色々なイベントに遊びに行ったり、家に呼んで一緒に曲を制作したり。バンドの方でも「MIDNIGHT SESSION」という企画をスタートさせたんですけど、そこにもここ最近繋がったアーティストさん方に出演してもらったりしています。

――「MIDNIGHT SESSION」はどのようにスタートしたのでしょうか?

yonkey:元々僕がSNSに他のアーティストさんの曲のリミックスを制作している様子などを投稿していて、それをバンドでやってみたらおもしろいなって思ったんです。でも、ただカバーするだけではなく、自分たちなりに解釈し直したアレンジを施して、しっかり企画化していこうと思って。

tofubeatsさんの「LONELY NIGHTS」やkZmさんの「Dream Chaser」などのカバーを、最初にInstagramのIGTVで5本くらいUPしてみて、自分たちなりに手応えを感じて。そこからバンドだけじゃなくて、他のアーティストさんともコラボしたいと思い始めた時、ちょうど同じくらいのタイミングでkojikojiさんにお会いする機会があったので、すぐにオファーして一緒に映像を撮りました。そしたらそれがまた大きな反響があったので、もっと続けていこうと思いました。

――――撮影や編集も同世代のチームで行っているそうですね。

yonkey:Klang Rulerの5人と、僕の幼馴染で制作していて。撮影も自分たちでやってますし、人手が足りない時はメンバーがカメラのRECボタンを押して、ダッシュで戻ってきて一緒に演奏する、みたいな時もあります(笑)。映像も音源も全て自分たちだけで完結させるスタイルで、基本的に1日で全て完成させます。他のアーティストさんとコラボする時は2曲撮影して、それぞれのチャンネルでUPするようにしています。

――演出などのアイディアも、その都度チームで話し合って?

yonkey:そうですね。音楽をディグる手段として、普段からストリーミング・サイトだけじゃなくYouTubeもめっちゃ使うんです。そうすると、視覚的なアイディアもどんどん入ってくるんですよね。ストックしているアイディアから、曲に合うものを都度選択して、実践していくっていう感じですね。

――最近ではセッション企画を行うYouTubeチャンネルも増えましたよね。

yonkey:確かに。でも、一番リスペクトしているのは「TinyDesk」ですね。そういったセッション系の中でも元祖的な存在と言えると思うんですけど、1本1本の映像作品としてのクオリティの高さはもちろん、その企画自体にも高い価値が付いているというか。アーティストが自ら出演したがるようなコンテンツになっていますよね。将来的には「MIDNIGHT SESSION」もそういった価値を持った企画へと成長させていきたいです。

――先程お名前が挙がったkojikojiさんとの出会いというのは?

yonkey:クボタカイくんを通じて紹介してもらいました。kojikojiさんと出会う前に、クボタカイくんとSNSで繋がっていて。その後、クボタカイくんが東京に来たタイミングで、kojikojiさんもちょうど東京にいたので、そこで一緒にお会いして。「MIDNIGHT SESSION」のオファーはその日のうちにお声がけしました。

――今お名前が挙がっている2名に加えて、「MIDNIGHT SESSION」にも参加しているFoodsさん、そしてSNSを見ているとMomさん、Mega Shinosukeさん、空音さんなどとも交流があるようですね。彼らは音楽性や活動拠点もバラバラですが、どこか共通する雰囲気や要素を纏っているような気もしていて。

yonkey:そうですね。たぶん、僕らに共通して言えるのは、ポップになることを恐れないっていうことなんじゃないかなって思います。僕ももちろんそうだし、今名前が挙がったようなアーティストさんはみんなそうだと思うんですが、アンダーグラウンドな音楽とかも好き好んで聴いているですけど、アウトプットする時は、そういったアングラな要素も含めて、いかにわかりやすく表現できるかっていうことを意識していて。例えばクラブやライブハウスにいる人だけでなく、街なかを歩いている人でも思わず足を止めて、反応してくれるような作品にしたいんです。

――なるほど。

yonkey:今おっしゃったように、これまでにも僕がコラボさせて頂いたアーティストさんたちって、みんなルーツやバックグランドが全然違うんです。だから、オススメの曲を教え合ったりしているだけでもすごく刺激を受ける。その一方で、これまで辿ってきた道は違うけど、同じような方向を向いて前進しているような感覚も感じていて。僕はそういった自分と近い世代のカッコいいアーティストを、世の中にもっともっと知ってほしい。そのためには、アーティスト同士の横の繋がりも見せた方が届けやすいですよね。「MIDNIGHT SESSION」にはそういう意図や狙いもあるんです。

――多様なバックグラウンドを持ちつつも、アウトプットはポップでキャッチーなものにこだわる。そういった中で、自分の中で葛藤のようなものはありますか?

yonkey:僕自身、ポップスが大好きなので、それはないです。幼少期にはクラシック、中学校ではヒップホップを聴いたりしていたんですけど、振り返ってみるとGReeeeNやFUNKY MONKEY BABYSのように学校のクラス全員が知っていたようなポップな音楽も大好きだった。そういうバックグラウンドが、音楽制作にも影響しているんだと思います。最近では昭和歌謡にもハマっているんですけど、リアルタイムで体感していなくても、「どこか懐かしい」「親しみやすい」といったような感情を抱く作品が多いですよね。もはや日本人のDNAとでも言うような何かがある。「MIDNIGHT SESSION」でもそういう部分を意識して、荒井由実さんの「ひこうき雲」や和田アキ子さんの「笑って許して」などを選曲させてもらいました。

――中学生の頃にはEminemにのめり込んでいたそうですね。自分の実体験では、中学生くらいで洋楽に出会うと、急に日本のポップスをバカにしてしまう人も多いような気がしていて。そういった捻くれた感覚は一切なく?

yonkey:いや、正直めっちゃありました(笑)。僕の場合はかなり極端で、Eminemとかに出会った時は、日本語の音楽は一切耳に入れないようにしてました。いわゆる“中ニ病”というか(笑)。でも、そこからさらに聴く音楽の幅も広がって、ふと、「何で自分は日本語の曲を拒んでるんだ?」って思うようになって。1周回って、GReeeeNやFUNKY MONKEY BABYSみたいな小学生の時に聴いていた音楽も素晴らしいなって思えるし、同時に今でもEminemに出会った時の感覚や、自分が惹かれた理由もハッキリ自覚できる。何ていうんでしょう……大人になったな、みたいな(笑)。


アナログな質感、パーソナルな響きを湛えたサウンド

――プロデューサー/トラックメイカーとしてのyonkeyさんの、最近のムード、方向性はどのような感じなのでしょうか?

yonkey:トラックメイクでいうと、EDM以降のシーンのアーティストに影響を受けていると思います。とにかく派手なパーティ・ミュージックではなく、洗練された音使いで魅了する。例えば、昨年久しぶりの新作をリリースしたMadeonとか。ゴスペル的要素を取り入れたり、トラックの構成や配置まで、本当に素晴らしいと思いました。

――まさしくEDM、フューチャー・ベース以降のサウンドって感じですよね。

yonkey:はい。あと、僕はトラックメイカーですけど、あまりトラック重視になり過ぎないようにも意識していて。トラックだけじゃなくて、メロディ、ボーカル、ラップ、リリックなど、全部合わせて、良い曲を書くっていうことを念頭に置いています。

――前作もそうですが今作「Haunter (feat. Ace Hashimoto)」も、現行のクラブ・ミュージック、ベース・ミュージックの要素を取り入れつつも、どこかパーソナルな響きもある。フロアだけじゃなく、ひとりでヘッドホンで聴くのも合うというか、日常に寄り添うようなサウンドだなと思いました。

yonkey:今ってストリーミングが主流なので、今おっしゃったようにひとりでイヤホン/ヘッドホンで聴いた時の心地よさ、みたいな部分はとても意識しています。僕自身も10代の頃は家でひとりでSkrillexを聴いてブチ上がっているような人間でしたし、今でもクラブでみんなと一緒に盛り上がるより、ひとりで聴く時間の方がシックリくるんですよね。そういうリスニング体験は反映されていると思います。

――AAAMYYYさんやAce Hashimotoさんなど、他のアーティストとコラボする時はどのように制作していくのでしょうか?

yonkey:AAAMYYYさんの時も今回も、まず一緒にコラボするアーティストさんの作品などを徹底的にインプットして、理解を深めます。そこからアイディアを練って、3パターンくらいトラックを用意します。テンポもカラーもバラバラのモノを制作して、そこから一緒に絞り込んでいくっていう感じですね。基本的にトラックをストックしたりはしないので、効率は悪いし時間はかかってしまうんですけど。

――今作「Haunter」でコラボしているAce Hashimotoさんとの出会いについて教えて下さい。

yonkey:RhymeTubeさんと一緒にやられていた「ALL 4 U」で存在を知って。僕のトラックと絶対合うなって、直感でピンときてしまって。ちょっとローファイな部分だったり、メロウなテイストを散りばめている感じもすごく良くて。しかも、ちょうど知り合いのフランス人プロデューサー・Moe Shopが彼と繋がっていたんです。なので、彼を通じてすぐにオファーしました。

yonkey:3トラック作った中から、Ace Hashimotoさんが選んでくれたトラックを元に、一緒に詰めていって。特にメロディの部分はふたりで何回もやり取りしましたね。それに際してトラックも徐々に当初の形から変わってきて。最初は夜を想起するようなトラックだったんですけど、最終的には夜っぽくなくなりました(笑)。一方で、リリックに関してはほぼノータッチでしたね。仮歌の段階でリリックもほぼ完成している状態で送ってくれたんですけど、こちらが伝えていないのに、この曲に感じるテーマみたいな部分が僕と一致していて。言語も育ってきた環境も違うのに、音だけでそういったことを共有できたのが嬉しかったですね。

――今作は打ち込みにも関わらず、アナログ的な温かい質感を感じます。これは意識的に?

yonkey:最近、すごくアナログっぽい音に興味あるんです。まだアナログの機材は入手できてないんですけど、DAWでどれだけアナログな質感を出せるかっていうことを研究していて。今作にもわざとヴィニール・ノイズなどを取り入れたりしていますし、シンセサイザーやエフェクターも、アナログ機材をモデリングしたものを使ったり、音色にはかなりこだわっています。今、トレンド的にもそういうカッチリし過ぎない音の方がシックリくるような気がするんですよね。

――そういう、生音っぽい質感であったり、アナログ感みたいな部分で、リファレンスとしているアーティストや作品などはありますか?

yonkey:ちょうどこの壁面に飾られているレコードの中にも、かなり参考にしている作品があるんです。Maggie Rogersのパーカションとか、HONNEのローファイ・チックなプロダクションなどは特に参考にしていますね。James Blakeが使っている「Prophet-5」っていうシンセサイザーを僕も使っていて、彼の作品からも影響を受けています。あとは……Mura Masa、FKJ、Anderson .Paakとか、本当に好きな作品ばっかり。ここのレコードたちが、僕の影響元といっても過言ではありません(笑)。

取材場所となったSpincoaster Music Barの壁面(Photo by Spincoaster)


求めるのは「自分の枠を超えた作品」

――yonkeyとしては、今後もシンガーやラッパーなど、他アーティストとコラボしていく予定なのでしょうか?

yonkey:今のところはそう考えています。ただ、ある程度楽曲が溜まってくれば、EPやアルバムなどまとまった形態でもリリースしてみたいですし、そういった作品の中には、もしかしたら僕だけのソロ作品が入ってくるかもしれません。でも、基本的には常に新たな出会いを求め続けると思います。

――今の時点で、コラボしてみたいと思うようなアーティストはいますか?

yonkey:藤井風くんですね。カバー動画の時からずっと観ていて、最近発表したオリジナル楽曲もめちゃくちゃ良かったので。あとはVaundyくんとも一緒にコラボしてみたいです。絶対良い曲ができるっていう自信があります(笑)。

――先ほど「新たな出会いを求め続ける」とおっしゃっていましたが、それはコラボすることで自分が想定していなかった作品ができあがったり、自分にはないモノを得られるから?

yonkey:それが一番大きいですね。20歳くらいの時は、家にずっといて、朝から夜までひとりで音楽を作っていたんです。めちゃくちゃトラックメイクについて勉強しながら、ずっとDTMをやっていたんですけど、そうすると、ある程度自分の限界や法則みたいなものが見えてくるんです。でも、AAAMYYYさんと一緒にやった時、ボーカルが乗っただけで僕が想像していたサウンドからガラッと変わって。自分の枠を超えた作品が生まれたんです。そういう部分が、今の自分のクリエイティヴの源とも言えると思います。

あと、バンドもそういうところがあるんですよね。5人全員が音楽好きで、それぞれの意見がある。それをまとめるのはもちろん難しいことだけど、「これは自分ひとりでは作れなかったな」っていう曲ができた時は最高の気分になります。

――なるほど。

yonkey:Klang Rulerって、特定のアーティストが好きな者同士で集まったわけではないので、制作段階でも全員バラバラの意見やイメージを持っていて。それをまとめるのが僕の仕事、っていう感じなんです。みんなで僕の家に来て、その場でギターを入れてみたり、セッション的に練っていって、全員それぞれの円が重なる部分を探っていくというか。

――Klang Rulerは曲毎に様々なサウンド・アプローチを試みていますが、一貫して日本的なメロディ、日本的な歌い回しが印象的でした。そこはとても自覚的に?

yonkey:日本語にしかない、日本語ならではの言葉の響き、発音みたいな美しさっていうものがあると思っていて。自分が英語をあまり喋れないので、やはり自分の持っている言語で勝負するってなった時に、それを最も引き立たせる方法を取っているっていう感じですね。

――確かに、yonkeyさんのボーカルも発音がとても明瞭で、日本語のリリックがとても聞き取りやすいです。

yonkey:ありがとうございます(笑)。歌詞を雰囲気でごまかしたくないんですよね。さっきの話にも通ずるのですが、メロディ、トラック、リリック全てに手を抜きたくないというか。全て合わさってこそ、良い曲になると信じているので。

――Klang Rulerとして、今後の展望のようなものがあれば教えて下さい。

yonkey:今のところの予定では、まず4月に自主企画『Magnet』を予定しています。「このイベントに来れば、いつでも良いアーティストに出会える」というようなイベントにできればいいなと思っていて。「MIDNIGHT SESSION」同様、イベント自体の価値を高めていきたいです。あとはオリジナル楽曲がまだストリーミング解禁できてないので、それに向けての準備もしています。

昨年12月に初開催された『Magnet』のフライヤー

――今のは直近の話でしたが、長い目でみた際に目指すものは?

yonkey:いわゆる界隈というか、僕らの世代のシーンにおいて、Klang Rulerや僕らのイベント『Magnet』が重要な存在になれればいいなって思います。いくら素晴らしいアーティストでも、ひとりで頑張っているだけでは中々見つけてもらえたなかったりする。そういうアーティストたちといち早く繋がって、おこがましいかもしれないですけど、僕らがシーンを牽引することができれば嬉しいですね。

――では、yonkeyとしての展望は?

yonkey:結構色々なところでもお話しているのですが、同じ事務所(ASOBISYSTEM)の先輩である中田ヤスタカさんのような、プロデューサーでありながら広く名前が認知されているような存在になれればなと思います。現状、プロデューサー/トラックメイカーってまだまだ裏方的存在で、クレジットされないことも多い。シンガーやラッパーは認知されていても、制作陣が知られていない、みたいな。そういう環境も徐々に変わっていくと思うんですけど、その流れを少しでも加速させるような存在になれるよう頑張りたいです。そのためにも、誰が歌ってても「yonkeyの曲っぽい」と言われるような作品を作っていきたいです。

――yonkeyさんのように、バンドのフロントマンでありながらプロデューサーとしてソロ名義でも活動しているっていうのは、世界的に見ても中々いないですよね。

yonkey:そうですね。ありがたいことに周りの方々もこの活動スタイルの後押しをしてくれているので、これからもどちらがサブとかではなく、並行して活動していきたいです。バンドもプロデューサーとしての活動も、始まったのは同じくらいのタイミングですし、相互がいい関係に作用するような活動がベストですね。


【リリース情報】

yonkey 『Haunter (feat. Ace Hashimoto)』
Release Date:2020.02.19 (Wed.)
Label:LINE RECORDS
Tracklist:
1. Haunter (feat. Ace Hashimoto)

作詞:Ace Hashimoto
作曲:yonkey

※2020年2月19日(水)LINE MUSICより配信スタート
LINE MUSICApple Music / iTunesSpotify

■yonkey:Twitter / Instagram / LINE公式アカウント


Spincoaster SNS