FEATURE

INTERVIEW / yonawo


初のコンセプトEP『Prescribing The…』をリリースしたyonawo。東京で幕を開けたバンドの新章に迫る

2022.06.02

独自の世界観と不思議な郷愁を湛えた音楽性を武器に、結成以来軽やかに歩みを進める4人組、yonawo。

自主制作EPを発表したのが2018年。その翌年にはメジャー・デビューを果たし、2020年には1stアルバム『明日は当然来ないでしょ』を、2021年には2ndアルバム『遙かいま』をそれぞれリリース。その間にもEPや未発表曲集、アナログ・リリースなどコンスタントに作品を発表。コロナ禍でもそのペースは変わらず、メンバー自身のキャラクターも相まり、どこか飄々としたスタンスのまま、この激動の時代をサバイブしているように感じる。

そんなyonawoの最新EP『Prescribing The…』は“ベッドタイム・サウンド”をテーマに掲げた、バンド初のコンセプト作品だ。煌びやかなポップネスを湛えた2ndアルバムから一転、どこか初期の作品を思い起こさせるような平熱感、そして親密感を擁する楽曲が並んでいる。今回はそんなyonawoの現在地を探るべく、メンバー4人に話を訊いた。

Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Shimizu Elio


[L→R: 野元喬文(Dr.) 斉藤雄哉(Gt.) 荒谷翔大(Vo.) 田中慧(Ba.)]


「より密な感じというか、バンド感が増した」――東京に出てきたことで起こった変化

――今年、福岡から東京に拠点を移したそうですね。何かきっかけなどはあったのでしょうか。

荒谷:音楽と向き合う時間を増やしたかったのが1番の理由ですね。今日みたいな取材稼働やライブなどの度に福岡から出向くのが結構大変で。スタッフとも話し合って、「1回東京に行ってみるのもアリかも」って思うようになりました。今は東京近郊の一軒家をスタジオにして、メンバー4人で一緒に住んでいます。

――拠点を移してから、制作や意識だったり何かしら変わった部分を感じていますか?

荒谷:メンバーといつでも顔を合わせて話し合えるっていうのが大きいですね。それぞれがゼロイチのアイディアを出して、みんなで作り上げていくことが増えてきたと思います。それによって作る曲のテイストも変わってきたように感じます。より密な感じというか、バンド感が増したというか。

斉藤:個人的には友だちが増えたことが変化かもしれません。福岡は狭くて、知り合いや界隈のメンバーも限られてるんです。でも、東京だとお酒飲んでたりすると知り合いの知り合いみたいな感じでどんどん人が増えていって。音楽やってるやってない関わらず、交友関係が広がりました。

――野元さんや田中さんはいかがですか?

田中:自分は福岡時代ひとり暮らしだったので、よく言えば寂しくないというか賑やかになって、悪く言えば騒がしくなったなと(笑)。部屋にいてもコンコンってノックされて、荒ちゃんから「曲作ろう」って呼ばれて、その流れで実際に1曲できたこともあって。

荒谷:ずっと合宿してるみたいな感覚はあるよね。

野元:僕は……福岡でも田舎の方に住んでいたので、今の家は自販機とかが近くて便利だなって(笑)。

荒谷:お風呂もあるしね(笑)。

野元:そうそう。便利で楽しいなって。

――メンバー間での共同生活は初めてですか?

荒谷:そうですね。

斉藤:意外と楽しくやれてるよね。

荒谷:言うてもまだ3ヶ月くらいだけどね。

――何かルールなどは決めているのでしょうか?

荒谷:いや……特にないよね。

野元:みんな結構自由に生活していて。一緒にご飯を食べるときもあるし、ひとりで食べるときもあるし、食堂やキッチンだけ共有の寮みたいな感じに近いですね。

――先日のインスタライブを拝見していたのですが、スタジオとしている部屋も広そうですね。ドラム・セットも置けるんですか?

荒谷:一回生ドラムを置いて叩いてみたんですけど、思ってたよりも外に音が漏れてて。これはヤバそうだなということで、ひとまずはパッドだけにしています。

――今回のEP『Prescribing The…』はビートは全て打ち込みですよね? これは今おっしゃったようなスタジオの環境も影響しているのでしょうか。

荒谷:いえ、今回の作品は福岡時代に作っていて。

野元:スタジオの環境に制限されたわけではなく、コンセプトに沿った音を模索していった結果という感じですね。

――そうなんですね。では、“寝る前に聴きたいベッドタイム・サウンド”という今作のコンセプトはどのようにして浮かんできたのでしょうか。

荒谷:活動初期の頃から、眠る前だったりリラックスしたいときに聴いてくれてるっていう声は届いていて。今回は改めてそこに焦点を絞ってみようと思いました。

――前作(『遙かいま』)リリース時のインタビューでは斉藤さんが「次はコンセプチュアルな作品にもトライしてみたい」ということをおっしゃっていましたよね。

荒谷:確かに雄哉はずっと言ってたかもしれない。

斉藤:色々とタイミングがよかったんですよね。そういったことをぼんやり考えていたときに、ミーティングで“ベッドタイム・サウンド”っていうコンセプトが上がって。

――ちなみに、みなさんは寝るときに音楽を聴きますか?

斉藤:寝る前に聴くことはありますね。僕はピアノ系のジャズなどを聴くことが多いです。

荒谷:僕はバラバラで、気分でクラシックだったりポップスをかけたり、ときにはジブリのサントラ、小説の朗読を流したりすることもあります。

野元:最近は好きなドラマーのライブ映像を観ながら寝ちゃうことが結構あって。あとはゲーム実況の動画とかを観ています。

斉藤:音楽じゃないじゃん(笑)。

――(笑)。田中さんはいかがですか?

田中:寝る前はあんまり聴かないんですけど、聴くとしたらアンビエントとかノイズ系ですかね。流しっぱなしで寝落ちしちゃったり。


「コンセプトが重荷になるのはよくない」

――コンセプトが決まってから、具体的にはどのように制作を進めていったのでしょうか。

荒谷:コンセプトを決めたものの、実際には頭の片隅に置いておく程度で、制作は割といつも通りだったかもしれません。コンセプトが重荷になるのはよくないなと思ったんですよね。

斉藤:1回ある程度好きに作ってみて、それからコンセプトと照らし合わせる、みたいな感じでしたね。

荒谷:「苺」の地獄のようなシンベとか、遊び心も入れつつ(笑)。

斉藤:1曲目から寝かせる気ないだろっていうね(笑)。あのシンベはBillie Eilishの「listen before i go」の影響だよね。静かな曲調なんですけどサブベースの音圧がすごくて。車で聴いてたんですけど、車全体が揺れて「これだ」って(笑)。

――なるほど(笑)。

斉藤:今回のEPは全体的に荒ちゃんのボーカルも温度感低めというか、ささやくような感じなんですけど、そういうボーカルの処理などもBillie Eilishの作品は参考にさせてもらいました。

――ドラムの音色の印象が大きいと思うのですが、全体的にこれまでよりもエレクトロニックな質感で、バンド感も薄いですよね。

荒谷:音色はかなり意識していて。削れるところは削ったし、ギターもシンセも空間系の音作りにしました。

斉藤:ギターを歪ませないっていうのは最初から決めていたポイントですね。

――先ほど話に挙がりました「苺」は活動初期からあったという1曲ですが、今回改めてアレンジして発表しようと思ったきっかけは?

荒谷:曲自体は高校生くらいに書いたもので、ずっとアレンジし直したいなと思っていたんです。僕ひとりで完成させたバージョンが『desk』(2020年)に収録されているんですけど、バンドで改めて仕上げたいなと。まぁ、そういう曲は他にもあるんですけど、何でこの曲になったんだろう……。

斉藤:単純に、俺らもやりたいと思ってたしね。

――歌詞なども当時のままですよね。この曲を書いたときのことを覚えていますか?

荒谷:もうあまり覚えてはいないんですけど……“青春感”がありますよね(笑)。若いというか、今振り返ると「何かカッコつけとるで」って思ってしまう。ちょうど日本語で歌詞を書き始めた頃で、音に上手くハメるのに苦戦した気がします。東京事変やはっぴぃえんどを参考にしながら書きました。

――この曲を歌うとき、荒谷さんの中では過去の記憶がフラッシュバックしたりしますか? 荒谷:もちろんそういう感覚もあるにはあるんですけど、すでにライブでも披露していて、バンド・アレンジだと4人で作り上げた新曲に近い感覚ですね。

――それは今回のEPとも違うアレンジで?

荒谷:そうですね。ノリノリな感じで、眠らせない感じになっています。

――ちなみに、「苺」という不思議なタイトルも印象的ですが、ここに込められた思いなどを教えてもらえますか?

荒谷:この曲を書いた当時、苺をよく食べていて……。先に白状しておくと「ココナッツ」も同じです。この時期、タイトルが思いつかなくて(笑)。

斉藤:「ブラウニー」とかもそうだよね。

荒谷:そうそう。めっちゃブラウニー食べてて一時期太ってしまった。でも、ちゃんと響きとかは意識しています。「納豆」とかはさすがに作らないと思う(笑)。

――(笑)。では、2曲目の「Prescribing」はタイトル・トラックとも言える弾き語り調の1曲ですが、この曲はどのようにして生まれてきたのでしょうか。

荒谷:この曲は一番最後に、インタールード的な曲にしようと思って作りました。EPのタイトルを考えているときに、のもっちゃん(野元)が“睡眠薬”とか、そういう意味合いの言葉にするのはどうかってアイディアを出してくれて。そこから少しボカして、“薬を処方する”という意味の「Prescribing」という言葉が出てきました。この曲は雄哉の実家で、ほぼ一発録りで作った曲です。それこそ宅録というか、原点回帰じゃないですけど昔の僕らがやってた作り方をしています。環境音みたいなノイズは雄哉が入れてくれました。

斉藤:今回のレコーディングは全て僕の実家と、福岡のスタジオで完結しています。

――そうなんですね。では、先ほどチラッと挙がりました3曲目の「ココナッツ」についても教えて下さい。これも「苺」同様にかなり古い曲ということですよね。

荒谷:「ココナッツ」は確か高校卒業くらいのタイミングで雄哉が作って聴かせてくれたんだよね。それで僕がメロディと歌詞を付けて、これもライブでは披露していたんですけど、そろそろアレンジし直したいなと。歌詞は何ていうんだろう……今から音楽で生きていきたいなと考えていた頃の不安とか、それと同居する期待感とかも出ているんじゃないかなと思います。

――個人的には《あっちこっちのジャッジに右往左往/自分のジャッジに目が回り/空回り狂ってる奴ら》というラインなどは、少し若さが滲み出ているような気がしました。

荒谷:そうですね。どっちつかずな感じというか……青いと思います(笑)。

――優雅なピアノが少し新鮮な印象ですが、EPのコンセプトにはすごく合っているなと。

荒谷:あのピアノも雄哉の実家に置いてあるアップライトピアノを使っています。

斉藤:サウンド的にはあまり詰め込み過ぎないようにしたくて、ボーカルはわざとドライに処理して、トラックは空間的に鳴るように意識しました。

――では、最後は「空色素肌」ですね。

荒谷:この曲の歌詞は結構個人的なところから生まれているんですけど、サウンド面では井上陽水さんの「背中まで45分」のような淡々としたテンション感を参考にしました。

野元:リゾート感だったり南国っぽい雰囲気も影響を受けたよね。情景が浮かんでくるようなサウンドというか。

――パーカッションや跳ねるような音が印象的でした。

荒谷:あれはのもっちゃんが打ち込んでくれて。

斉藤:ドラムとパーカッションだけでトラック数が50くらいあって、まとめるのがめちゃくちゃ大変だった(笑)。

野元:この曲はゆったりとした4つ打ちなんですけど、4つ打ちだと気付かれないようにしたくて、色々な音を重ねていきました。ただ、やり出したら止まらなくなっちゃって、めちゃくちゃ音を足してしまって。これは流石にやり過ぎかなと思いつつ、みんなに聴かせてみたら採用されたという(笑)。


「次はライブ映えしそうな曲を」

――今年後半の動きに関してはどのように考えていますか?

荒谷:ライブ、特にフェスが多くなるので、次はライブ映えしそうな曲を作ろうかと考えています。

斉藤:これまでライブを想定して曲を作ったことはなかったよね。

荒谷:そうそう。だからこそ、新しくトライしてみてもいいのかなと。今のご時世的には厳しいと思うけど、コール・アンド・レスポンスとか楽しそうじゃない? yonawoでやったら引かれるかな(笑)。

斉藤:コール・アンド・レスポンスはやり過ぎかもだけど、体を揺らせるような曲を作れたらいいなと。

――今は声も出せないので、オーディエンスの反応もわかりにくいですよね。

斉藤:でも、この前「苺」をライブで披露したとき、本当はダメなんですけどお客さんから声が漏れたのが聞こえてきて、それはすごく嬉しかったですね。

――鈴木真海子さん、D.A.N.、No Busesを迎えた対バン・ツアーも控えています。

斉藤:単純に僕らが好きなアーティスト、バンドをお呼びしたという感じで、すごく楽しみですね。D.A.N.のみなさんとは最近初めてお会いして、No Busesは昔ライブが一緒になったことがあって。これを機会にもっと仲良くなりたいなって(笑)。

荒谷:今回のEPは“ベッドタイム・サウンド”というコンセプトの通り、静かな作品になっているんですけど、ライブはやっぱり熱量高めのアレンジになると思うので、僕らのパフォーマンスも楽しみにしていてほしいですね。

斉藤:同期も使わず、バンド・サウンドでやろうと考えています。

【衣装協力】

■荒谷翔大(Vo.)
パンツ:ADJUSTABLE COSTUME×BARNSTORMER ¥27,800-(+Tax)

[問い合わせ先]
HEMT PR
03-6721-0882
渋谷区神宮前2-31-8 FKビル3F

■斉藤雄哉(Gt.)
シューズ:opposite of vulgarity ¥9,500-(+Tax)

[問い合わせ先]
HEMT PR
03-6721-0882
渋谷区神宮前2-31-8 FKビル3F

■田中慧(Ba.)
スウェット:古着 ¥9,000-(+Tax)

[問い合わせ先]
LEMONTEA
渋谷区神宮前6-11-8
03-5467-2407

パンツ:BAMBOO SHOOTS ¥24,000-(+Tax)

[問い合わせ先]
BAMBOO SHOOTS/バンブーシュート
東京都目黒区上目黒1-5-10 中目黒マンション107号
03-5720-1677

シューズ:HI-TEC ¥13,000-(+Tax)

[問い合わせ先]
ムーンスター カスタマーセンター
0800-800-1792

■野元喬文(Dr.)
ニット:SUGARHILL ¥34,000-(+Tax)
カバーオール:SUGARHILL ¥58,000-(+Tax)

[問い合わせ先]
4K [sik]/シック
渋谷区猿楽町2-1 アベニューサイド代官山III 3F
03-5464-9321

パンツ:F/CE.®¥32,000-(+Tax)

[問い合わせ先]
F/CE. Flagship Store Tokyo
渋谷区猿楽町4ー5 1F
03-6452-5867

シューズ:YOAK ¥25,000-(+Tax)

[問い合わせ先]
HEMT PR
03-6721-0882
渋谷区神宮前2-31-8 FKビル 3F


【リリース情報】

yonawo 『Prescribing The…』
Release Date:2022.03.18 (Fri.)
Tracklist:
1. 苺 
2. Prescribing
3. ココナッツ
4. 空色素肌


【イベント情報】

『東名阪対バン・ツアー ROOM 470』

日時:2022年7月1日(金) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京・渋谷CLUB QUATTRO
料金:ADV. ¥5,000 (1D代別途)
出演:
yonawo

[GUEST]
鈴木真海子(バンド・セット)

Info:03-5720-9999(HOT STUFF PROMOTION)

※オール・スタンディング

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日時:2022年7月7日(木) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:大阪・梅田CLUB QUATTRO
料金:ADV. ¥5,000 (1D代別途)
出演:
yonawo

[GUEST]
D.A.N.

Info : 06-6341-3525(YUMEBANCHI)

※オール・スタンディング

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日時:2022年7月8日(金)
会場:愛知・名古屋CLUB QUATTRO
料金:ADV. ¥5,000 (1D代別途)
出演:
yonawo

[GUEST]
No Buses

Info:052-936-6041(JAILHOUSE)

※オール・スタンディング

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チケット一般発売:4月23日(土)〜ぴあ、ローソン、e+

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