FEATURE

INTERVIEW / The fin.


「自分らしさを出すためには、このメンバーが必要」 ――Yuto Uchinoが明かす、確固たるものとした作曲方法と、そこに必要なもの

2018.03.26

神戸出身、現在はイギリスに拠点をおくThe fin.が、3月14日(水)に待望の2ndアルバム『There』をリリースした。

本作はメンバーの脱退なども経て(ベーシスト・Takayasu Taguchiがバンドを去り、ドラムを担当していたKaoru Nakazawaがベースへとシフトした)、前作となるEP『Through The Deep』からはおよそ2年ぶりのリリース。昨年立て続けにシングル・カットした新曲群を中心に、まるでフロントマン・Yuto Uchinoの心象風景を描き出すかのような、ドリーミーで美しいサウンド・エスケープが詰まった、まさにThe fin.の個性と美学をより突き詰めた一枚だと言えるだろう。

今回のインタビューでは、生活拠点をイギリスへと移して以降の環境、意識の変化を探ることに。すると、独自の表現方法、創作方法を確立したというYuto Uchinoのソングライターとしての成長ぶりや、彼らが純度の高いサウンドを生み出し続ける理由も浮かび上がってきた。

イギリスを中心に、欧米各国やアジア圏でも大きな支持を集めるThe fin.の魅力とは何なのか。他の海外志向のバンドとは何が違うのか。きっと本稿からその答えを見出すことができるはずだ。

Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Kohei Nojima

[L→R:Ryosuke OdagakiYuto UchinoKaoru Nakazawa]


――The fin.としてイギリスに移住してからすでに1年半ほど経ちますが、向こうでの生活や日常はどのような感じなのでしょうか?

Yuto:向こうに引っ越して、初めてみんなと共同生活を始めたんです。おっきな家を借りて、家の中をスタジオみたいにして、ドラムも叩けたり、リハもできたり、簡単なレコーディングも出きるようにして。そういうスタイルが結構このバンドには合ってるなと思っていて。ある程度の音なら、24時間いつ出しても文句言われないし。かなり自由に音楽と向き合えるようになった。だから、移住したのは本当に正解だと思いますね。

――幼馴染とは言え、初めての共同生活の中で、お互い新たに気づくこともあったのではないでしょうか?

Yuto:そうですね。……(ふたりに向かって)どう?

Ryosuke:東京に住んでた時はみんなバラバラに住んでたので、スタジオで顔を合わせるっていう感じだったんですよね。だから、それ以外の時間はメンバーそれぞれ何をしてるのか、どんな風に音楽に向き合ってるのか、そういうことが直接はわからなかったんです。それが向こうに行ってからは、それこそ四六時中一緒にいるんで、そういう部分がお互い見えてきたんじゃないかなって思います。

Yuto:東京にいた2年くらいは、みんなわりと近くには住んでたんですけど、やっぱり集まるときはスタジオとかライブとかで。制作もおれが家でやったり、その間にみんなはスタジオ入ってたりとか、そういう感じで活動してたんです。なので、今から考えると、バンドと自分の距離が結構開いていたなって思うんですよね。正直、他のメンバーもどういう気持ちでこのバンドをやってるのかとか、今何を考えてるのかとか、そういうことがあんまり伝わってこなかった。でも、今は一緒に暮らしてる中で「今、こいつはこんなこと思ってるんやな」とか、「こういう風にバンドをしたいんやろな」とか、結構自然に伝わってくるんです。

そもそも、僕らは友達からスタートしているので、プロフェッショナルなミュージシャン同士として割り切る部分と、友達としての関係が中途半端になっていたんですよね。プロフェッショナルに徹すると、友達としては傷つけてしまうかもしれないし、逆に友達としての関係を優先すると、プロフェッショナルな仕事ができない。でも、一緒に住んで、24時間一緒にいることで、今ではそれが両立できているというか、自分たちの中でちょうどいいバランスが見つかったんですよね。向こうに移住して、それが一番大きなメリットだったかもしれないです。

Kaoru:小さな話で言えば、Ryosukeはツアーとかでもホテルの部屋をすごく散らかすんですけど、自分の部屋でもそうなんだ、とか。別々で住んでるとあんまり分わからない所とかもいろいろ見えてきて、おもしろいですね(笑)。

Yuto:それに、一緒に暮らすようになってもっと仲良くなったよな? 最初の頃なんてずっと修学旅行みたいな感じで、自分の部屋にいてもつまらないから意味もなくリビングをウロウロしたりして(笑)。

Ryosuke:やたらおれの部屋来たりするよね。

Yuto:ちょっと暇になったらすぐにRyosukeの部屋に行ってふざけて。それで「Ryosukeの歌」ができたり(笑)。

Ryosuke:もうインタビューに関係ないやん(笑)。

――より絆も深まったと(笑)。向こうでは家で制作も練習もできて、さらに各地へツアーに行ったりと、音楽漬けの日々を送っているのでしょうか?

Yuto:そうですね:本当にツアーとかインタビューとか、そういう用事がない限り、基本的にはずっと家にいて。朝起きて、朝ご飯食べてからリハをして、それからみんな散って個人練習したりして。夜ご飯食べた後はたまに『FIFA』(サッカー・ゲーム)やったりして(笑)。

Ryosuke:気分転換にね(笑)。

Yuto:それからまた個人練習とかして、寝る、みたいな感じですね。一日6時間から8時間ぐらい音楽に費やしてると思います。サポート・ドラマーをやってくれてる人はロンドンに住んでて、リハがある時はたまに家まで来てくれて。普段のちょっとした練習とかは、ドラムの音源流して僕らだけで練習してますね。

――今住んでる場所は、ロンドンの隣町くらいに位置するんですよね?

Yuto:そうですね。ロンドンが東京なら、埼玉とか千葉くらい?
 
Ryosuke:千葉よりはもうちょっと近そうだよね。

Yuto:たぶん、結構コンサバな町というか。閑静な住宅街っていう感じですね。住みやすいし、車で40分くらいでロンドンに行けちゃうから便利です。そこからロンドンに通勤してる人も多くて。

Ryosuke:ちょうどいい距離感だよね。

Yuto:個人的にはロンドンより好き(笑)。ロンドンは東京みたいで、結構ごちゃごちゃしてるんですよね。

――ロンドンの音楽シーンについてお聞きしたいのですが、何か肌で感じるようなシーンや盛り上がりはありますか?

Yuto:たぶん、外から見てるのと違って、意外と明確なシーンみたいなものはないと思いますね。ただ、日本と違うのは、そういうシーンみたいなものがなくても常に人々の生活と音楽が近い位置にある。だから、日常的に色々な音楽が耳に入ってくるし、何となく「最近はこういうのがきてる」、「クラブで最近こういう音楽流れてる」みたいな感覚はみんなあると思います。でも、音楽が身近な分、その振り幅もすごい大きくて。バンドとか観てても色々なジャンルの人がいるんですよね。

Ryosuke:グランジっぽいロック・バンドもいれば、ジャズとかブラック・ミュージック的なサウンドのバンドもたくさんいて。

Yuto:ジャズ・バーみたいなところがあって、そういうところで演奏するバンドが、知名度とか関係なくとにかくレベル高いんですよね。
あと、ジャズ以外にもブルースとか、そういうルーツ・ミュージックも常に身近にあって。その上で、新しい音楽のトレンドがある。そういうのは日本との違いだと思いますね。

――ロンドンではベニューがなくなってきているという話も聞きます。

Yuto:少し前に規制とかがあったらしくて、クラブとかは減ってるかもしれないです。あと、時代的にはやっぱりバンドが減ってきているように感じますね。バンドよりも、ソロ・アーティストが目立つ傾向にあって、そういう人が人気出ると、バックに凄腕ミュージシャンをつけていきなり大きいところでライブするようになったり。Tom Mischとかはまさにですよね。

――イギリスに移住してからの生活の変化が、自分たちの作る音楽にどう反映されていると思いますか?

Yuto:今回のアルバム『There』は、ちょうど3年前くらい、初めて海外ツアーを開催した頃くらいに書き始めた曲が収録されているんです。なので、イギリス移住以前の、日本に住んでた頃の経験やインスピレーションの方が多くて。ただ、そこから色々な国に行ったし、様々な人と出会って、そして今ではイギリスに住むようになった。そうやって環境が変わっていくにつれて、僕自身もひとりの表現者として考え方とかがすごく変化してきて。だから、最近はこういう音楽を聴くようになって、とかそういう音楽的なことよりも、自分の思考の変化とか、自分の人生を送ってきた上で得た学びや刺激、そういったことの方が音楽に反映されていると思うんですよね。

――なるほど。では、具体的なプロセスはどうでしょう? 以前はYutoさんがデモをほぼ完成に近い形まで固めてからメンバーに渡すという流れだったと思うのですが。

Yuto:そこは相変わらず変わらないですね。僕がひとりで音を重ねてデモを作り上げていって。そこからメンバーで練習するっていう。

――去年から立て続けにシングルをリリースされていましたが、今回、ようやくそれらの楽曲も含めてアルバムとしてまとめようと思ったのは何かきっかけが?

Yuto:えっと、実は順番的には逆なんです。アルバムがすでに1年くらい前にほぼ完成していて。そのまま出すこともできたんですけど、ヨーロッパとかアメリカと、アジアでのマーケティングの進行具合が全然違くて。アジアではすでに1stアルバムを出してるけど、イギリスやアメリカではアルバムはまだ出していない。そういう状況だったんです。だから、そこでポンと2ndアルバムを出すのはまだ早いなと判断し、シングルをコンスタントに切っていきました。そうしたら、Spotifyが『NEW MUSIC FRIDAY』(Spotify公式プレイリスト。毎週金曜日更新される、膨大なフォロワーを擁する人気プレイリスト)に入れてくれたりして。

今作も実はアジアでは3月、欧米では6月頃リリース予定なんですけど、この1年は、そういう時差みたいなものをどんどん縮めていけたらと。日本を含むアジアの方々には結構長いこと待ってもらったことになるんですけど。

――Spotifyの『NEW MUSIC FRIDAY』に選曲されたのはすごいことですよね。その影響というのは実感できましたか?

Yuto:すごかったですね。Spotifyだと聴かれてる国のデータとかをすぐに見れるじゃないですか。それで一気にイギリス1位、アイルランド2位とかになったりして。再生数も跳ね上がりましたね。リアルの場でも知ってるって言ってくれる人も増えたし、やっぱりすごい影響力があるんだなって。結構前からSpotify UKの『NEW MUSIC FRIDAY』には入れてもらってたんですけど、最近になってSpotify USの方も入れてくれて。それからはアメリカのメディアやブログでもたくさん紹介してくれるようになった気がします。

――アルバム自体は一年前にほぼできていたとのことですが、曲だけでなく、レコーディングも終わっていたのでしょうか?

Ryosuke:はい。レコーディングは2年前くらいからやってて。

Yuto:本当にもう丸々完成してたんですけど、後からマスタリングだけやり直しました。結構有名な方にお願いしてみたんですけど、1年くらい聴いてたらどうしても納得できなくて。もっと絶対よくなるだろうと思って、これまでの作品と同じくJoe Lambert(ジョー・ランバート)に頼んだら、予想してた通り僕らの理想とした音になって。
今回のアルバムは、縦横と前後の全方位にレンジが広がってる。ちゃんと奥行きがあるっていう部分が気に入ってたんですけど、それをより洗練させてくれたっていう感じですね。

――この度初めて外部のプロデューサー・Bradley Spence(alt-j、Radiohead、Kasabian、Coldplay、Beady Eyeなどのレコーディングに携わってきたプロデューサー。最近ではROTH BART BARONの作品も手がけた)を起用したそうですが、その理由と経緯は?

Yuto:彼が僕らのライブを観に来てくれたみたいで、直接向こうから「やりたい」っていう風に言ってくれたんですよね。初めてライブ観てくれた後に「次のロンドンのライブはいつですか?」って連絡がきて、次のライブも来てくれて。そこで喋っていく中で、「一緒に音源作ってみないか?」って言ってくれたんです。
彼は「僕らがどういうものを表現したいか」ということを最優先する人で、すごく仕事がしやすかったですね。レコーディングが始まる前にノートを作って、「この曲はこういう感じ」とか、「この曲はこういうことを歌ってる」「この曲はこういう感じにしたい」とか、そういうことを全部書き出して。その上で、どうやって音でそれを表現していくか、みたいな作業をしていくんです。それも、最終的な決定権は全部僕らに委ねてくれて、向こうの提案とかも取り入れたり断ったり。いいものはいい、違うものは違うってストレートに伝えられたので、ストレスなくスムーズに作業できましたね。
これまではレコーディングもミキシングもほぼひとりで独学でやってきたので、結構わからない点も多くて。自分の中でもそろそろ限界がきてるなと思ってたんです。

――すごくいいタイミングで、外部の優れたプロデューサーと作業ができたと。

Yuto:はい。役に立つことをたくさん教えてもらいましたし、すごく新鮮な体験でしたね。ずっと我流でやってきたことを、ロンドンの第一線でやっている人たちのやり方を見て、「あーこうするんだ」とか、色々と学べて。「こういうサウンドが出したいっていう時は、あれをこうやって作るんだ」っていう感じで、イメージしていた音にパッと仕上げてくれるんですよ。
これまでは、頭に理想の音があるのに、機材を何時間イジってもそれに到達できない、っていうことが多々あって。今回はそういうことが一切なく、「こうしたい」といったらすぐに結果が返ってくる。なので、自分のイマジネーションとかクリエイティブな部分が損なわれることなく、作品に没頭できました。

――前作『Through The Deep』EPリリース時のインタビューでは、コンセプチュアルな1stアルバム『Days With Uncertainty』に対し、EPは溜まっていた曲をまとめたような作品になっていると語っていました。今作『There』はどちらの側面が強いと言えますか?

Yuto:最初作ってた時は、そんなにコンセプチュアルにする必要もないかなって思ってたんです。どっちかっていうEPの時みたいに、曲がバラバラと入ってるみたいな感じにしようかなと。でも、作っていく内に、最終的にはコンセプチュアルになっていったというか、自然とまとまっていきました。一年くらいの間で一曲一曲できていくうちに、自分の中で流れができてきたような感じですね。最初の半分くらいはバラバラに作っていた感じだったんですけど、後半は曲に呼び寄せられるように制作が進んでいって。なので、結果的には結構まとまったアルバムになってるのかな、と。

――以前からミキシングに最も時間をかけるとおっしゃっていましたが、今作も同様に?

Yuto:はい。やっぱり一番時間をかけるのはミックスで。僕の場合、結構デモを作ってる段階でレコーディングもしちゃうんですよね。その素材をそのまま活かして完成させてしまうことも多くて。もちろんアレンジし直したりとかもあるんですけど、そういう作業は短期的に集中してバチッと終わらせて。ただ、機材を変えたりしたので、良い機材で録り直すっていうことはありました。レコーディングも一部Bradley Spenceと一緒にしましたけど、彼が一番大きく手伝ってくれたのはその後のミキシング、アレンジ作業でしたね。

――収録曲も自然と固まっていったとのことでしたが、そうすると候補となった曲なども少ないのでしょうか?

Yuto:基本的にいつもそうなんですけど、あんまりワーって大量に作って、そこから選ぶっていう感じではなくて、できてきたものをそのままハメっていったらしっくりくる、みたいな。そういう感じなんですよね。そもそも、僕らってあんまり色々なことはやってないんで(笑)。
「次はこういう音楽やってみよう」とか、「ダンス・ミュージック作ってみよう」とか、そういう意識で曲を作ることってあんまりなくて。例えば、その時々で自分の中から出てくる感情、フィーリング、ニュアンスみたいなものを音に変換していく。その作業をやってるうちに、曲がだんだんとできあがってくる、みたいな。だから、急激に僕の人間性とかが激変しない限りは、The fin.の音楽性が大きく変わることはないと思います。交通事故とかで頭バーンって打って人が変わるとか、そういうことがなければ(笑)。

Nakazawa:音楽的な面で言えば、きっとYutoが絡んだら全部The fin.らしいものにはなるよね。

Ryosuke:そうそう。まさにYutoの内面がこのバンドの個性、The fin.らしさっていうものなんですよね。で、僕らメンバーも、そのバンドの核となっているYutoと24時間一緒にいる、一緒に生活しているっていうことがひとつの強みなのかなとも思ってて。たくさんの時間を一緒に共有しているからこそ、彼の内面を理解しようと思える。

Yuto:でも、僕が自分らしくいれるのも、結局はこのふたりがいるからなんですよね。やっぱり、メンバーが変わったらその人に合わせちゃったりもするだろうし。結局自分らしさを出すためには、このメンバーが必要なんです。

――Ryosukeさん、Nakazawaさんのおふたりはプレーヤーとして、渡英後プレイヤーとしての意識に変化はありましたか?

Yuto:たぶん、それだけで2万字くらい書けるんじゃない?

Ryosuke:ハハハ(笑)。単純に音楽に向き合う時間も増えたし、あとはメンバーがひとり脱退したっていうことも、改めて自分たちの活動について考える大きいきっかけになったと思います。さっきYutoも言っていましたけど、僕らはみんな幼馴染で、いい意味でも悪い意味でもそこがなぁなぁのままここまできてしまった。でも、外部からサポート・ドラマーを入れざるを得ない状況になって、改めて「プロのミュージシャンとは」っていうことについて考えたんですよね。サポートで参加してくれたミュージシャンはみんな本当にプロとして自立していて。そういう人たちと接することで、自分の意識も変わってきたと思います。

Nakazawa:技術的な面で言うと、サポート・ドラマーに限らず、向こうのミュージシャンって本当にレベルが高いんですよ。それを常に間近で見れるのは、やっぱりすごく刺激になりますよね。

Ryosuke:そうやってプロのミュージシャンと接する機会があれば、具体的な練習法とかも教えてもらったりして。

Yuto:本当に意識が変わったよね。何か、リズムに対しても貪欲になったというか。

――バンド内でもいい緊張感が生まれたと。では、Yutoさんの歌詞についてはどうでしょうか? 単純に、イギリスで生活することで英語も上達していると思うのですが、そういった点は作詞に影響していますか?

Yuto:確かに普段から英語をメインで使うようになったっていうのは、影響しているかもしれませんね。昔に比べると、よりリアルに表現できるようになったというか、自分のハートと英語が繋がった。自分の感情を英詩に変換する時に、よりロスが少なくなったっていう感じですね。英語圏の人にも詩を褒めてもらえることが増えて、それは自分としてはかなり嬉しいことでした。

――作曲プロセスにおいて、どういった工程を経てメロディを作り、そしてそこに歌詞を乗っけていくのでしょうか?

Yuto:作曲の順番としては、基本的にまずコードを考えていくんです。コードっていうのは自分の気持ち、感情みたいな感じで。その時の自分にぴったりハマるコード進行が見つかったら、絶対にいい曲になるんですよ。逆に、「とにかく曲を作ろう!」と思ってコード進行を強引に決めたりすると、大体変な曲になっちゃう。
そのコード進行を元に、ビートやベースといった骨組みを組み立てていくと、その時点でメロディは頭のなかに浮かんでて。そのまま作詞まで同時並行的に進んだりしますね。コードやギター、シンセとかでも自分の気持ちを表現しているつもりなんですけど、歌詞に比べると抽象的、直感的な、言葉にできないもやもやとした感情とかを表していることが多くて。一方で歌詞は、当たり前なんですけど言語なんで、もっと論理的、具体的な感情や気持ちに寄っていく。いつもその両方のバランスを上手くとっていくことを意識しています。

――意識的に「曲を作ろう」というよりは、「今の自分を表現する。アウトプットする」という意識の方が、曲になりやすい。

Yuto:はい。もちろん、常に「曲を作ろう」とは思ってるんですけど、目的が「作曲」になると、僕の場合はあまりよくないみたいで。その時にちゃんと表現すべきものが自分の中にないと、やっぱりダメなんですよね。外殻だけ無理やり作ったけど、中身がなんもない、みたいな。何がしたかったのかわからなくなるんですよね。
逆に核となる自分のフィーリングがちゃんとブレずにあれば、外側は大体何を付けても納得できるものができるんです。最近はそういう自分の中での曲作りの法則みたいなものがわかってきたような気がしていて。

――なるほど。

Yuto:だから、アルバムを聴き返したりすると「自分がいっぱい!」みたいな感覚になるんですよね(笑)。でも、逆に昔の自分に教えてもらうこともいっぱいあって、「この時はこんなこと言ってる」とか「今はこんな風に思えないな」とか。そういう気づきや発見も色々あって。それがライブ中に起こったりするのがすごくおもしろいんですよね。ライブ中にひとりで勝手にエモくなったり、感動したりしていて(笑)。

――今後はこの新しいアルバムを引っさげてのツアーが控えており、パフォーマンス面での変化も楽しみです。

Yuto:最近。バンドがすごくいい状態になってきているので、今までで一番いいツアーができそうな気がしてるんですよね。去年から各々の演奏力も上がってると思うし。

Nakazawa:僕もツアーを楽しみにしていて。たぶん、そこからまた色々なものを得ることができるんじゃないかなって。それがまた次のアルバムに繋がったら最高ですよね。

Yuto:実はすでに新曲も結構作ってて。ツアーが終わったらそれを完成させて、次のアルバムを作りたいなって思ってます。あと、もっと色々なプロデューサーさんとも仕事をしてみたいなって思うようになりました。去年シングルを切っていく中で、結構有名な方からもメールを貰っているので。最近のアーティストって、一枚のアルバムで複数のプロデューサーを起用したりしてるじゃないですか。ああいう手法もおもしろそうだなって思ってて。もしかしたら次のアルバムはそういう作品になるかもしれないですね。


【リリース情報】

The fin. 『There』
Release Date:2018.03.14 (Wed.)
初回盤 RDCA-1055 ¥3,300 (Tax Included)
通常盤 RDCA-1056 ¥2,500 (Tax Included)
Tracklist:
1. Chains
2. Pale Blue
3. Outskirts
4. Shedding
5. Afterglow
6. Missing
7. Height
8. Heat (It Covers Everything)
9. Vacant Sea
10. Through The Deep
11. Snow (again)
12. Late at Night
13. Alone in the Evening (1994)

※ライブ会場でDVDと引換出来るステッカー封入 (初回プレス分のみ)
※DVDには2017/9/23 渋谷WWW Xの映像が収録されます。


【イベント情報】

“The fin. Tour 2018 in Japan”

4月4日(水) OPEN 19:00 / START 19:30
福岡 The Voodoo Lounge

4月6日(金) OPEN 19:00 / START 19:30
大阪 Shangri-La

4月7日(土) OPEN 18:00 / START 18:30
名古屋 Jammin’

4月13日(金) OPEN 18:15 / START 19:00
東京 WWW X

4月14日(土) OPEN 18:00 / START 18:30
札幌 Spiritual Lounge

ADV ¥3,500(Drink代別)
一般発売日:2月3日(土)

■The fin. オフィシャル・サイト:http://www.thefin.jp/


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