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Interview / The Bohicas


ーレコードがポケットに入るんだったら良いけどさ! 今音楽はタダで聞けるんだよ?時代は変わったんだ!

2015.08.24

彼らの音楽を聴くといつだって、わくわくしてしまう。昨年アルバムも出していない状態で華々しい初来日を果たしたThe Bohicasが再び日本に舞い戻った。インタビュー前日、フジロックでのライブでは、レッドマーキーにて熱気帯びた演奏を披露。新人にしてロックスターとして貫禄がある彼らのエナジェティックなパフォーマンスに会場は終始、興奮に包まれていた。前身バンドのSwanton Bombs時代から応援していた筆者にとって、この成長ぶりは嬉しい限り。

ーBend Over, Here it Comes Again…(伏せろ、また来るぞ:軍事用語)! 荒廃したロックシーンに投下された彼らのアルバムは、かつてのロック・ファンの心を躍らせ、ロックを知らない若者たちに衝撃を与えるだろう。さて、8月21日に待望のデビューアルバム『The Making Of』がリリースされたが、本インタビューでは発売前であったアルバムについてを聞いてきた。

Interview The Bohicas (Dominic & Ady)

Interview: Aoi Kurihara

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ー昨日のフジロックでのライブ、カッコよかったです!演奏は昨年よりもパワフルになっており、新たなロックヒーローの誕生にわくわくしてしまいました。

Dominic: 本当に?ありがとう!僕たちも楽しんで演奏できたよ。

ーまずは早速ですが、デビュー・アルバムである『The Making Of』のコンセプトを教えてください。

Dominic: 正直に言うとコンセプトと言ったコンセプトはないんだ。これはただ今まで書いてきた曲のコレクションと言ったら良いのかな。僕たちは去年「XXX」や「SWARM」をリリースして、こういったテイストの曲を作っていこうと思って、曲を作ってきたんだ。あえて言うのであれば、ハイエナジーなロックソングが詰まったアルバムになっていると思うよ。

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ーこのアルバムのアートワーク素敵ですね。この女性は誰ですか。

Dominic: いやわからないよ!というか誰でもないと思う(笑)。このアートワークはトーマー・ハヌカ(ジャック・ホワイトのシングルも担当している)が担当してくれたんだ。NYで活動しているペインターなんだ。彼のスタイルが好きで、描いてもらえないか頼んだんだ。

ー黄色と黒で統一されていますが、これらはあなたちのテーマカラーですよね。

Ady: そうだね、いつもこの色を使っているね。

ーなぜデビューアルバムを『The Making Of』というタイトルに付けたのでしょうか。

Dominic: これは収録されている曲の名前でもあるね。映画や本でよくある”Making-of(裏話、舞台裏)”ていうのがあるじゃない、それがクールだと思ったんだ。デビューアルバムだから僕たちにとってスタートになるような意味合いも含ませたかったんだ。

ーオリ・ベイストン(ex.Keith)ら複数のプロデューサーが参加していますね。

Ady: さっき言ったようにこれは曲のコレクションだからね。オリは元々友人だったんだ。プロデューサーの人たちは、そういった人脈でお願いすることもあれば、自分たちで探してお願いすることもあるけど、それぞれの曲とか目的に人を選んだんだ。

ー去年インタビューをしたとき、あなたたちはかなり映画に精通している印象でした。「To Die For」のMV面白いですね。

Dominic: あれが好きなの?!はははっ(爆笑)。たぶんこれが好きって言ってくれたの君ぐらいだよ!このビデオを企画していたときにちょうどツアーで旅してたときでさ。僕の兄も来てくれてアイディアを出してくれたんだけれど、ダークな内容にななっているよね。1番の見所はギターに包帯が絡まっているところかな、いやそんな重要じゃないか(笑)。とにかく君がこれを好きって言ってくれて嬉しいよ。

ー1月にイギリス国内で行われたツアー『The Swarm Over Essexxx Tour』のドキュメンタリー映像を観ました。ジム・ジャームッシュのようなロードムービーのようでとてもかっこよかったです。同映像の監督は、Blurのドキュメンタリー『No Distance Left to Run』やLCD Soundsystemのドキュメンタリー『Shut Up and Play the Hits』を手掛けた映像作家ユニットthirtytwoが担当していたと思いますが、なぜ彼らを監督にえらんだのでしょうか。

Dominic: そうだね、確かにロード・ムービー風なんだ。監督とは友達で僕の兄とたくさんMVを作っていた人なんだ。それでお願いして、ツアー・ドキュメンタリーを作ったんだ。

Ady: 常にカメラが回っていて僕たちは素晴らしい経験をできたよ。

ー東京でもビデオを撮ったらどうでしょう。

Dominic: 良いね!僕たちもっとドキュメンタリーをやりたいんだよ!だから次東京に来たときは撮りたいね。東京はエキサイティングな場所だから面白いと思うんだ。

ー一方でいつも映画風のビデオなのに「Where You At」のビデオはシンプルで驚きました。

Dominic: そうだね。このビデオはバンドっぽさを出したかったんだ。これも僕たち気に入っているんだけどね。

ー2015年のUK音楽シーンはギター・ロックの再興とも言われていますが、実際にはどう感じていますか、

Ady: 世間では……特にイギリスでは、確かにそう言われているけれど、正直いってそれは違うと思う。 まずリバイバルという考え方があまり好きではないね。リバイバルって言うと一つのタイプの音楽がシーンを支配して、流行りが廃れたらそれが終って、そしてまた復活する、みたいなイメージなんだ。でも今はいろいろなジャンルの音楽が時代を問わず聴けるから、何か一つのジャンルがチャートを占領したり、流行らなくなったからといって完全になくなってしまうということはないんだ。

Dominic: ラジオを聴けば、いつだってロックはかかっていたし、リバイバルということではないんじゃないかな。上手く言えないけど、時代とともに音楽への考え方も環境も変わっていくけれど、一つのジャンルがなくなったり、盛り上がったりということではなくて、常にそのジャンルの音楽はあり続けるというか。自分でもなんて言えば良いかわからないんだけれど(笑)。例えば、フジロックだってずっと”ロック”なんでしょ。

Ady: まあ確かに良いギター・ロックバンドが現れてきているというのは事実ではあるんだけれどね。

ーなるほど、あなたたちはやっぱりレコード派? それともオンラインで音楽を聴いていますか。

Dominic: え、僕は音楽を買わないよ。だって超高いじゃん。イングランドではもう誰も音楽なんて買わないよ。みんなストリーミングで音楽を聴くんだ。買うとしてもレコードで、もうCDなんて買わないよ。

Ady: 音楽を楽しむ形もどんどん変わっていっているよね。

Dominic: レコードがポケットに入るんだったら良いけどさ! でも本当に買わないんだ。だって今音楽はタダで聴けるんだよ? 時代は変わったんだ。レコードを買わなきゃとかCDを買わなきゃとかそんなのこだわらなくて良いじゃないか。

Ady: (冗談っぽく)音楽は終ったんだ(笑)!!

ーでも、あなたちミュージシャンでしょ。

Dominic: うん、わかっている。矛盾しているよね。でも僕たち含めイギリス人はみんな本当に音楽を買わないんだ。

ー日本とは事情が少し違うみたいですね。一部の音楽ファンは別としてレコードよりもCDが主流なんじゃないかな。

Dominic: 日本にタワーレコードがあってびっくりしたよ! イギリスではタワレコもHMVもないし、日本ではまだCDが売れているの? 面白いね。


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