INTERVIEW

Stars and Rabbit

来日控えるインドネシアの人気バンド・Stars and Rabbit。そのバックグラウンドから古都ジョグジャカルタ・シーンについて訊いた

Stars and Rabbitはその正体を明かしたと思った大ブレイクの矢先、メンバー・チェンジを経て、新たな姿への孵化を始めようとしている。

近年、感度の高い世界の音楽ファンから熱い視線を送られる、謎に包まれた、しかし世界4位の人口からなる巨大な市場を持つ音楽大国インドネシア。そのインドネシアの中でも、飛び抜けて豊かな文化遺産を持つ、古都ジョグジャカルタ(以下・ジョグジャ)。そのユニークで独自なアートと音楽のシーンを持つ古都から2011年、突然現れたデュオ・Stars and Rabbitは、フォーク的なオーガニックなサウンドの中に、ブリットポップを思わせるような、時には心地よく、時には壮大な音世界を武器に、瞬く間に世界中へとその名を轟かせた。

代表曲「Man Upon The Hill」のMVは1000万再生をゆうに超え、アイスランド、タイ、シンガポール、UKを含む国内外の大型フェスへの出演も果たした Stars and Rabbit。この度、月見ル君想フ主催の回遊型フェス『Big Romantic Jazz』への出演を含んだアジア・ツアーを開催する彼らにメール・インタビューを敢行。Stars and Rabbitのシンガーであり、創設メンバーのElda Suryaniにバックグラウンドからこれまでの軌跡、ローカル・シーンの現在について訊いた。

Interview & Text by Yuki Lee


――まず、あなたの音楽キャリアがどのようにスタートしたのかを教えて下さい。

Elda:音楽はいつも私を見つけようとしてくれていたのかなと思います。音楽との初めての出会いはたぶん、私が幼稚園にいた頃で、何かもわからずに合唱隊に加わった時だったと思います。それから数年は近づいたり離れたりで、そんなに特別に意識することなく触れていました。

……いや、ちょっと待って下さい。確か、高校の時に何曲か作ったはず。でも、あまり好きになれなかったんです。だから、そのアイデアはそのまま放っておきました。そこから2011年までのことは早送りで飛ばすことになるのだけど、ついに自分自身で好きになれる曲ができました。そのプロジェクトが、後にStars and Rabbitと呼ばれることになったんです。

――2019年11月に脱退してしまいましたが、元メンバーのAdi Widodoとはどのように出会い、Stars and Rabbitを結成したのでしょうか。

Elda:さっきの話の続きで、2011年の2月頃、Blackberryにハミングやランダムなメロディを録音していたのですが、何か楽器を入れないことには、そこから先には行けないと気付いたんです。どんな楽器でもいいから、そのメロディたちを曲と呼ばれるようなひとつのフレームにまで縫い上げてくれるパートナーが必要なんだ、と。そこで、長く連絡を取っていなかった古い友達のAdiに助けを求めて電話をしてみたところ、それが完璧なマッチだったんです。余談ですが、Adiとはその時まで何年も連絡を取っていなくて、彼が未だに同じ番号を使っていたことに驚きました(笑)。そして一緒に、1stアルバム『Constellation』(2015年)のために11曲を録音しました。

――Stars and Rabbitを始める前はどのような生活をしていましたか。

Elda:様々なクリエイティブなことをしていました。私は古着や中古雑貨、ビンテージ・アクセサリー、ハンドメイドなどを取り扱うお店をやっていて、愛情を持って宝物や古いリサイクル品を集め、そしてアクセサリーを作ったり壁をデコレーションしたりして販売していました。

――影響を受けたアーティストをいくつか挙げるとすると?

Elda:一番影響を受けて来たのは90年代のシンガー/SSWだと思います。Sheryl Crow、Alanis Morissette、Jewel、The CardigansのNina Person、The CranberriesのDolores O’Riordan。彼女たちの言動全てが私をインスパイアしてきました。みな多才で、果敢に自分の道を進んでいる(いた)人たちです。

――「Man Upon The Hill」のMVは素晴らしい映像作品だと思います。あの世界観はどのようにして作り出したのでしょうか?

Elda:私もそう思います!(笑)。私の友達でもあり、MVのディレクターでもあるBona Palmaのおかげだと思います。Bonaは初めてこの「Man Upon The Hill」を聴いた時、東インドネシアのSumbaと言う、まるで魔法のようなある島を思い浮かべたみたいで。Bonaは心から夢中になってくれて、だからこそこの曲を、とても美しく、そしてミステリアスな世界観に解釈してくれたのだと思います。

――衣装や装飾がとても印象的ですが、ジョグジャやインドネシアの伝統と関係あるのでしょうか?

Elda:イエス! ジョグジャのスペシャルなデザイナー、Lulu Lutfi Labibiにサポートしてもらいました。Luluは伝統的な素材を、尖った先端のものへと仕上げてくれたんです。あと、スタイリストにも助けてもらいました。彼女は素敵なビーズの髪飾りを作ってくれたんです。それは手で縫い上げられたもので、自分のものとしてずっと持っていたいなと思えるようなものでした。

――1stアルバム『Constellation』のリリースから5年が経ちましたが、次の作品リリースは決まっていますか?

Elda:はい。最後にクリエイティヴなモードに入った時からしばらく経ちます。でも、ここで嬉しい2020年のお知らせがあります。Stars and Rabbitは新しいアルバム『Rainbow Aisle』を2月28日(金)にリリースします!🤓💝

1月22日(水)にリリースしたシングル「Little Mischievous」がその始まりです。そして、できたら大きな規模のツアーを行えたらと考えています。

Elda:ニュー・アルバム『Rainbow Aisle』は、これまでで最も制作が大変でもあり、本当に楽しかったアルバムです。とても多くの学びや試みが今日に繋がっています。それはまるで、今まで会ったことのない自分自身に会うような感覚でした。「Little Mischievous」と「Any Day in The Park」の2曲が、このアルバムから始まる旅路の前にリリースされる予定です。

――新メンバーのDidit Saadとは何者なのでしょうか? 加入に至った経緯は?

Elda:彼は常に『Constellation』の制作の裏側にいる人でした。Adiと私は、最初の3曲が出来た時に、レコーディングに際する助けを求めに彼を訪ねました。彼と私は、音楽キャリアの始まりからの繋がりで、2006年には一緒にバンドを組んでいました。そのバンドは6ヶ月くらいしか続かなかったのですが、アレンジのことや技術的なことは全部彼が教えてくれました。こういった理由だけでも、彼をバンドに迎えるのは必然ですよね。彼からハッキリとしたミュージシャン・シップをずっと感じていたことと別に考えても。

――1月にはBottlesmoker(※)とのコラボ・アルバム『Pieces That Fit』もリリースされました。どのような経緯で制作に至ったのでしょうか?

Elda:2016年に、ある地元のミュージシャンとコラボを行うイベントがあったんです。そこでまず頭に浮かんだのが、Bottlesmokerでした。そのイベントで行ったコラボレーションは、おもしろいことにみんなの期待を超えるものでした。そして、その過程で新しい曲を一緒に作ることになったんです。そこからアルバム『Pieces That Fit』に繋がりました。このアルバムのタイトル以外にこのコラボを表す言葉はありません。

※Bottlesmokerはインドネシアのバンドンに拠点を置く電子音楽ユニット。伝統音楽を現代に再解釈をしたり、映像を積極的に取り入れたりと、非常にアーティスティックな存在として知られる。

――同作から、先日「Partikle」の日本語バージョンが突然リリースされたのが驚きでした! そしてもっとびっくりしたのが、その歌詞の素晴らしさです。とても自然で、かつ美しく詩的だと感じました。日本語を母国語とする作詞家が担当しているのでしょうか? また、どうしてS&RとBottlesmokerはこの曲の日本語バージョンを作ろうとしたのでしょうか?

Elda:英語の歌詞が出来上がったすぐ後に、なぜか夢で日本語バージョンが浮かんできて、「これは作らなければ!」って思ったんです。そこから誰か手伝ってくれる人はいないか探し始めました。実際に歌詞を手がけてくれたのはカネユキマユミと言う方で、最初に日本語詞を手伝ってくれた友達に紹介してもらいました。その友人は苦戦して諦めることになったのだけど、友達であるマユミが頭に浮かんだみたいで。マユミはかつて翻訳家、そしてミュージシャンとしても活躍していた日本人の女性なので、ばっちりでした。

Elda:……会った時、すぐにピンときたんです。マユミはすぐに曲のことを深く理解してくれて、そしてそれが私の求める全てでした。マユミが歌詞とその翻訳を送ってくれた時、もう「完璧」って言葉以外出てこなかった。あなたが言ってくれたみたいに、とても自然で、同時に美しく詩的だと思う。

――インドネシアの音楽シーンを知りたがっているファンに、いくつかおすすめを教えてもらえますか? 個人的にはBanda NeiraDanillaが気になっています。

Elda:それは多すぎて悩んでしまいます(笑)。Scaller、Kunto Aji、Pamungkas、Faye Risakottaなどなど……。最近知ったアーティストだとMoonglade、Bagus Bhaskaraとか。きっとこれからも、もっともっとたくさんの発見が私を待っていると思います!

――ジョグジャのシーンについて教えてもらいたいです。芸術大学が多いからか、特にアートが非常に盛んなイメージがあります。音楽とのコラボレーションなども行われているのでしょうか?

Elda:ジョグジャのシーンは今も成長を続けています。常に新しい音楽が生まれていて、シーンを豊かにしていると思います。アートと音楽のコラボは常に起こっています。例えば、ジョグジャで私の大好きなカップルであるRiaとIwanは、舞台芸術のグループ・Papermoon Puppet Theaterを運営していて、2013年にはFrauのライブでもコラボしています。

※Frauはジョグジャを拠点にするLeilani Hermiasihによるソロ・プロジェクト。

――ジャカルタやバンドンなどの他の地域とは、異なる雰囲気があるのでしょうか。

Elda:見方によっては異なるかなと思います。でも、イベント運営の形としてはそんなに違わないですね。フェスや音楽イベントはいつでもどこにでもありますし。でも、クリエイティヴ周りのコミュニティの話をすると、私は少し違うものかなと感じます。

――どこが違いだと思いますか。

Elda:ジョグジャ・シーンは独自に創造性を表現するやり方を持っていると思います。限られたリソースであるにも関わらず、深みのある見方を持っているシーンだと言えるんじゃないでしょうか。批評的でありながら、地に足がついているというか。

――ジャカルタとバンドンを繋いだ〈Aksara Records〉のような、シーンに重要な影響を与えているレーベルやムーブメントはありますか。

〈Yes No Wave Music〉をチェックしてみるといいかも🤓

※〈Yes No Wave Music〉は、ジョグジャのアーティスト・Wok the Rockが立ち上げたエクスペリメンタル・ネット・レーベル。商業主義の外に音楽の流れを作ることをコンセプトに、インディ・アーティストの楽曲をフリー・ダウンロードで発信するなど、ユニークな運営方法で知られ、初期にはインドネシアを代表するインディ・バンド、White Shoes and The Couples Companyが楽曲をリリースしていた。

――インドネシアで特に交流の深いアーティストを挙げるとしたら?

Elda:Sandrayati Fayがそのうちのひとりで、彼女はギターの弾き語りをする天使です。

――日本、台湾、韓国で交流したいアーティストはいますか?

Elda:シンパシーを感じてくれるアーティストがいたらどの国のアーティストでも交流してみたいです。

――日本のアーティストで気になっているものや、影響を受けたものがあれば教えてください。

Elda:宇多田ヒカルがとても好きです。歌い方がとても特徴的です。

――今回のアジア・ツアーで個人的にやってみたいこと、楽しみにしていることはありますか?

Elda:えっと……とりあえず日本にいるときに見つけてみようと思います(笑)。

――『Synchronize Fest 2019』でのライブ映像を拝見しましたが、オーディエンスの大合唱がものすごい迫力で感動しました。同フェスでの体験はいかがでしたか?

Elda:あれはかなりクレイジーだった! 私にとってもすごく衝撃だった。あまりにもみんなの声が大きすぎて、自分の声さえも聞こえないほどだったんです。私は笑顔になりすぎてほっぺが痛くなるくらいで、みんなに歌ってもらうに任せて、最後まで踊っていました。

Elda『Synchronize Fest』はシーンの友達みんなと会えるし、思いもよらない出会いも含めて、あの夜は同窓会のような感覚でした。本当に、ローカルの音楽を祝うような感じでした。

※『Synchronize Fest』は重要な国内レーベル〈DeMajors〉が手がける、ジャカルタにて毎年数万人の動員を誇る巨大音楽フェス。「It’s not just a festival, it’s a movement」のテーマを掲げ、3日間に渡り、5つのステージにて100を超えるアーティストによるライブが行われる。

――今回のアジア・ツアーにおいて、ライブに来てくれるオーディエンスにメッセージをお願いします。

Elda:私のエネルギーをどんな風にでもシェアできるのが待ち遠しい。楽しい時間になるよ! 一緒に楽しみましょう!


【リリース情報】

Stars and Rabbit & Bottlesmoker 『Pieces That Fit』
Release Date:2020.01.03 (Fri.)
Label:Green Island Music
Tracklist:
1. Prelude
2. Partikle
3. Butterfly
4. The Edge of Wonderland
5. Moments of Causeless Bliss
6. Colours
7. Frozen Scratch Cerulean
8. Solace

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Stars and Rabbit 『Rainbow Aisle』
Release Date:2020.02.28 (Fri.)
Label:Green Island Music


【イベント情報】

『BIG ROMANTIC JAZZ PRE#9 “前夜祭”』
日時:2020年2月21日(金) OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京・青山 月見ル君想フ
料金:ADV. ¥3,500 / DOOR ¥4,000 (各1D代別途)
出演:
Stars and Rabbit (IDN)
FANEL (FRA)
児玉奈央 (JPN)

チケット:e+ / Peatix / 月見ル君想フ店頭 ネット予約(03-5474-8137)

※BIG ROMANTIC JAZZ FESTIVALのチケット購入証明提示で1000円キャッシュ・バック

イベント詳細

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BIG ROMANTIC JAZZ FESTIVAL 2020
日程:2020年2月22日(土)
会場:東京 CAY, WALL&WALL, 銕仙会, 南青山MANDALA, 月見ル君想フ 他
料金:早割チケット ¥6,000 / 前売 ¥7,000 (各1D代別途)*
出演:
山下洋輔
Chara + Kan Sano
YAKUSHIMA TREASURE(水曜日のカンパネラ×オオルタイチ)
Sun Rai (Rai Thistlethwayte) (AUS)
Sam Gendel (USA) 出演キャンセル
Stars and Rabbit (IDN)
The Steve McQueens (SGP)
林 以樂(雀斑 / SKIP SKIP BEN BEN)(TWN)
Power Milk (CHN)
MKS (KOR)
Kan Sano
ものんくる
i-dep
あっぱ
臼井ミトン
F.I.B JOURNAL
YOSSY LITTLE NOISE WEAVER
Yasei Collective
CRCK/LCKS
showmore
Saigenji
Bim Bom Bam楽団
MIDORINOMARU
Nao Kawamura
別所和洋
高井息吹
空間現代
Fontana Folle

*早割チケット:e+のみ ※SOLD OUT

前売りチケット:e+ / Peatix / Live Pocket / 月見ル君想フ店頭

オフィシャル・サイト

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