SIRUPが台湾のSSW/プロデューサー・鶴 The Crane(以下、The Crane)とのコラボ曲「UMAMI」を10月にリリースした。
The Craneは昨年末に1stアルバム『TALENT』をリリースし、今年行われた台湾のインディ音楽の祭典『第14回 金音創作奨(Golden Indie Music Awards/GIMA)』で「ベストR&Bアルバム賞」を受賞し、その他3部門にもノミネートするなど、大型新人として急速的に注目を集めている。
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一方、海外アーティストとのコラボや海外フェスへの出演など、よりグローバルな活動が盛んになってきたSIRUP。両者のコラボ作「UMAMI」はさらにJay Parkやslchldの楽曲も手がける韓国の新鋭プロデューサー・whooshが加わり、3カ国が交わるプロジェクトとなっている。スムースかつメロウなR&B、それでいてボトムヘビーなモダンなプロダクション、恋愛における辛酸甘苦を“味覚”で表現したリリックなど、ミニマムながらも実に味わい深い1曲だ。
今回はSIRUPとThe Craneへのメール・インタビューを通してコラボ曲「UMAMI」の制作背景を紐解くことに。なお、The Craneは12月6日(水)に開催されるSIRUP主催イベント『channel03』横浜公演で初来日パフォーマンスを披露予定。チケットはすでにソールドアウトとなっているが、U-NEXTでのライブ配信も行われるので、ぜひチェックを。
Text & Interview by Takazumi Hosaka
Photo by haruta
Hair:TAKAI
Interpreter(The Crane):Daniel Takeda
日本、台湾、韓国を繋ぐプロジェクトの始まり
――SIRUPさんはラジオでもThe Craneの楽曲をオンエアしていたようですが、彼の存在を知ったのはいつ頃ですか?
SIRUP:確か2年〜3年くらい前に、「LIMO」という曲をプレイリストで聴いて、知ったんだと思います。楽曲自体もめっちゃカッコよくて印象に残っているのですが、その後すぐに僕と彼のエージェントが繋がって。それでThe Craneも僕の曲を聴いてくれてて、「それなら一緒に曲を作ってみよう」となりオンラインで打ち合わせしたのが最初のきっかけですかね。
――SIRUPさんからみたThe Craneの魅力は?
SIRUP:ソングライティング力と、艶やかで表情が多彩な歌声ですね。特に低音がセクシーだなと思います。
――The CraneさんはどのようにしてSIRUPさんの音楽に出会ったのでしょうか?
The Crane:2020年にYouTubeで知りました。最初に聴いたのは「LOOP」。何度もループしたくなるような、リラックスしたチルさがありますよね。
――台湾や日本で食事をしたこともあるそうですね。そういった交流はいつ頃からスタートしたのでしょうか。
SIRUP:オンラインでの打ち合わせや、DMでやり取りすることはたまにあったのですが、直接会ったのは今年の2月が最初です。そのときは彼が日本に来ていたので、一緒にお茶をしました。
The Crane:最初にオンラインで打ち合わせをしたときに感じたのは、彼がとても優しくて謙虚だということ。こんなに自信に満ちていて、そして同時に謙虚な人には会ったことがありません。すごくフレンドリーな先輩、という印象でした。その後、しばらく一緒に仕事をしているうちに、彼はアートに関して、自分が何をしたいのかが明確に見えているし、他の人の意見に対してもとてもオープンだということがわかりました。彼の醸し出す雰囲気は、周りの人たちをもっと精進したいと思わせます。
SIRUP:その後、僕が7月に台湾に行ってスタジオでセッションして、そこで楽曲制作が具体的に動き始めた感じです。台湾に行ったときは彼がUber Eatsで台湾中華を頼んでくれて、スタジオで一緒に食べました。
The Crane:色々な話をしましたね。最初は音楽の話が多かったのですが、だんだんカジュアルな話もするようになって。彼はいつもオシャレだし、僕はポケモンが好きなので、服の話とかポケモンの話とか、行った場所とか東京のナイトライフのおもしろさについてなど。大部分は通訳を交えての会話だったけど、ヴァイブスはすごく合うなと感じました。
SIRUP:彼は異常に褒めてくれるんですよね(笑)。些細なことで感動してくれるし、スタジオで自分が思いついたメロディを歌うだけで、「Amazing……!」みたいなリアクションしてくれるので、一緒にセッションしててすごく楽しかったです(笑)。
あと、とにかく紳士。いつも他者を気にかけていて、いいやつでふざけたりもするし大好きです(笑)。僕のグッズで作ったバンダナをプレゼントしたら、すぐ首に巻いてファッション・ショーごっこしてました。表に出てるイメージよりお茶目だと思います。
――今作「UMAMI」へ向けたプロジェクトがスタートした経緯を教えて下さい。プロデュースは韓国のwhooshさんが手がけていますよね。
SIRUP:The Craneと打ち合わせができたのも、僕の海外エージェントである竹田ダニエルが彼のエージェントと繋がったからなんです。その後、今回のサウンド・プロデューサーのwhooshくんとも繋がり、トラックを送ってもらえることになって。それが今回のコラボ・プロジェクトのスタートへと繋がっていきました。
The Crane:最初はこのプロジェクトのためだけに新しいトラックを作ろうと思っていたのですが、2人に合うビートがなかなか思いつかなくて。そこで一年以上ストップしてしまいました。でも、whooshが提供してくれたトラックを聴いた瞬間、「これだ!」と思いました。あのビートには哀愁とほろ苦さがあって、僕ら2人にぴったりだと感じたんです。それから作曲を始めて、その後は全てがスムーズに進みました
――whooshさんのトラックのどのような点に惹かれましたか?
SIRUP:彼とはまだ直接会ったことがなくて、間接的にしかやり取りしてないんですが、チルで気持ちいいのに刺激があるムードと、どこかドリーミーな空気を感じる彼のトラックに魅力を感じましたね。
The Crane:彼のトラックはとにかく繊細。彼が手がけた他の作品でも、そのディテールに魅了されます。
3つの言語が溶け合う「UMAMI」
――「UMAMI」というタイトルがとても印象的です。このタイトルや楽曲のテーマはどのようにして生まれたのでしょうか。
The Crane:曲作りの時間の大半は自分で、テーマやコンセプトを考えることに費やしました。今回のテーマはかなり自信作だと思います(笑)。身近だけど、曲のテーマとしてはかなり珍しい。しかも、中国語や英語を使う人にとってもそれほど難しくない。そんなテーマで歌詞を書き始めたのですが、SIRUPたちがどう思うか、とても緊張したのを覚えています。いい反応をもらえたときは安心しました。
SIRUP:The Craneがこのテーマを送ってくれて直感的に「めっちゃいい!」って感じました。ワードもキャッチーで、日本語として英語圏などでも知られている言葉だと思うし。
確か、「恋愛をテーマにしたい」っていうのと、「もっと愛したい」とか「四六時中夢中」みたいな歌をつくりたい、というのはアイデアとして先にこちらからシェアした記憶があります。恋愛関係の中でマンネリ化した気持ちって、誰しもに生まれるものだと思うんですけど、それはその反面、「もっと愛したい」って気持ちでもあるのかな、とか。どんな関係にもその「UMAMI」は見つけられると思うし、そんなリレーションシップの話だと僕は解釈しています。
――SIRUPさんとThe Craneさんのボーカルはヴァース毎ではっきり分かれているわけではなく、入り混じっていますよね。作詞やパート分けはどのようにして行ったのでしょうか?
SIRUP:パート毎で綺麗に分かれている曲もいいけど、こういうスムースで繊細な楽曲は、ボーカルが交互に細かく出てくる方が構成としておもしろいいんじゃないかなって思ったんです。ダニエルが英詞のディレクションも担当してくれているんですけど、客観的な視点で「ここにSIRUPの声が入るといいかも」とか、アドバイスもしてくれて。もちろんマネージャーがそういった意見をくれるときありますし、そんな感じでチームみんなでワイワイ話しながら進めた記憶があります。
The Crane:SIRUPがどういうメロディや歌詞をつけるのか全くわからないまま、まずは自分のメロディを書き始めました。その後、SIRUPが僕のアイディアをベースに色々と書き加えてくれたのですが、どれも最高でした。しかも、一部を日本語で書いてくれたことにも感動しています。日本語と彼の声があまりにもマッチしていてとても驚かされました。あまりにいいサウンドだったので、それぞれが担当する歌詞を分けて、フックで2つの言語を交換しながら歌ったらいいんじゃないか、って思いついたんです。
――お互い相手の言語でもコーラスを入れているのが印象的でした。これは自然と湧いたアイディアですか?
SIRUP:そうですね。僕が海外のアーティストとコラボするときには、基本的に相手の言語でもできるだけ歌ってみたいって思っています。もちろんリスペクトを忘れずに。個人的にはそういう挑戦が楽しいし、音楽的なおもしろさにもつながるんじゃないかなって。
The Crane:楽曲制作の上で、3つの言語を自然に融合させるのが一番難しかったことだと思います。でも、SIRUPはその辺りが本当に上手で、韻の踏み方も完璧でした。
――The Craneさんは自身の作品では全てセルフ・プロデュース、もしくは他者との共同プロデュースで制作していますよね。今回の制作プロセスはいつもとは異なる体験でしたか?
The Crane:謙虚な気持ちになりました。みんなそれぞれが自分のワークフローを持っているので、それを学ぶことで、音楽ってこんなに複雑な芸術なんだと感じますし、自分がちっぽけに思えてきます。でも、その中でも共有できるテイストもあるので、効率的にアイデアを交換できるし、最高の気持ちになれます。
――曲名にちなんで、ここ最近で感じた一番の旨味(UMAMI)を教えて下さい。
SIRUP:最近は家でトマトソース煮込みばっかり作ってます。
The Crane:間違いなく東京で食べた天ぷらですね。
――SIRUPさんは以前、brb.やSUMINなどともコラボしていますし、以前よりアジアのシーンに注目されていると思います。現在特に注目しているエリアやアーティストがいれば教えて下さい。
SIRUP:アジアも大好きなアーティストはもちろんたくさんいますが、昨年はCosmo’s Midnight、最近だとCody Jon、Taka Perryとも制作していて。なので、オーストラリアのシーンにも注目しています。Young Francoっていうプロデューサーは自分のラジオでもかけるぐらい大好きですね。
――今年も残りわずかですが、今後の動きについて何か計画していることや考えていることを教えて下さい。
SIRUP:『channel 03』でお祭り騒ぎしましょう! 絶対遊びにきてください! よ!
The Crane:今のところ「UMAMI」が一番おもしろいプロジェクトかな。すでに2作目のアルバムも制作を進めているので、応援してくれると嬉しいです!
【リリース情報】
SIRUP, The Crane & whoosh 『UMAMI』
Release Date:2023.10.25 (Wed.)
Label:Suppage Records
Tracklist:
1. UMAMI
■The Crane:Instagram
■whoosh:Instagram
【イベント情報】
『channel 03』
日程:2023年12月6日(水)
会場:神奈川・KT Zepp Yokohama
料金:ADV. ¥7,700 ※SOLDOUT
[Guest]
iri
BIM
Skaai
Shin Sakiura
The Crane
showmore
[Opening DJ]
KM
==
日程:2023年12月15日(金)
会場:大阪・Zepp Namba
料金:ADV. ¥7,700
[Guest]
Soulflex
WILYWNKA
TENDRE
SUMIN
[Opening DJ]
YonYon
※横浜公演U-NEXT ライブ配信の詳細はこちら
※大阪公演は配信を予定しておりません。予めご了承ください。
[配信時間]
ライブ配信:2023年12月6日(水)19:00~ライブ終了まで
見逃し配信:準備完了次第~1月5日(金)23:59まで
※視聴可能デバイスに関してはこちらをご確認ください。
※ライブ配信には1時間に最大約5.5GBの通信量を消費します。当日はWi-Fi環境での視聴を推奨します。
お問い合わせ:キョードー東京 0570-550-799 オペレーター受付時間(平日11:00〜18:00/土日祝10:00〜18:00)
■公演詳細