FEATURE

INTERVIEW / SIRUP


“ポジティブな絶望”という言葉の真意。多彩なプロデューサー陣と作り上げた『BLUE BLUR』

2023.05.08

SIRUPが新作EP『BLUE BLUR』を4月にリリースした。

昨年、Years & Yearsやbrb.ら海外アーティストとのコラボ曲を含むシングルを多数発表し、自身初の武道館公演も成功させたSIRUP。まとまった作品としては2021年リリースの2ndアルバム『cure』以来およそ2年ぶりとなる今作は、“ポジティブな絶望”というテーマを元に制作した作品だという。

SIRUPはこれまでも社会的なメッセージを作品だけでなく、日常的にも発信してきた。今作においても現代の世相を反映させた言葉が随所で綴られているが、よりパーソナルに、より親密な空気を纏っているように感じる。

プロデューサーにはKM、Chaki Zulu、uin、TiMTといった初タッグの面々に加え、盟友・Mori Zentaro、そして客演に注目のラッパー・Skaaiを迎えて制作された今作。今回のインタビューではサウンド面での挑戦から各楽曲に込められた想いについて、じっくりと語ってもらった。

Interview & Text by Takazumi Hosaka
Header Photo by Mitsuo Okamoto


無視できない“BLUE”な感情

――まずは昨年11月に行った初の武道館公演の感想からお聞きしたいです。

SIRUP:ツアーが控えていることもあって、最近改めて振り返ってみたんです。あの時点でのやりたいことを全部詰め込めたし、友人や関係者からの感想を聞いても、「ちゃんと伝わってるな」って感じることが多くて。達成感や満足感はかなり得られました。

――いわゆる“燃え尽き症候群”みたいなものもなく?

SIRUP:ちょっとはあったかもしれないですね。僕自身にもスタッフにも。でも、それも一時的なもので、すぐに気持ちを切り替えることができたし、成長できたっていう実感の方が大きいです。これまでライブの演出については、どちらかというと引き算的な考えをすることが多かったんですけど、武道館公演を経たことで今後は新しいアプローチができるんじゃないかなって思います。

――チーム全体でパワーアップできたと。

SIRUP:コロナ禍でライブができなかった時期は、投資してもらってたんだっていう感覚があって。配信ライブもそうですし、音響周りへの予算の使い方もそう。制限のある中でもなんとか工夫してやらせてもらったライブで経験できたことを、武道館できっちり出せたっていうのがデカいですね。チームへの信頼と結束がより高まったなって感じます。

――「すぐに気持ちを切り替えることができた」とおっしゃっていましたが、今作の制作も武道館公演後、すぐにスタートしたのでしょうか。

SIRUP:いつ頃からだろう……。KMさんとの曲(「See You Again」)はかなり昔から着手していて、それこそ去年の夏くらいにセッションした記憶があります。でも、Chakiさんとのセッションも近い時期だったと思いますね。

――最初からEPなどまとまった作品をイメージしていたのでしょうか?

SIRUP:今回は最初からEPというサイズ感を念頭に置いていました。というのも、去年はシングルをたくさん出したので、ここでフルアルバムをどかんと出しても、埋もれてしまう曲が出てくるんじゃないかなっていう不安もあったので。もっと1曲ずつ噛み砕いて楽しんでほしいし、だったらEPくらいのサイズがちょうどいいのかなって。

――ということは、テーマやコンセプトみたいなものも早い段階から浮かんでいた?

SIRUP:ぼんやりとですけど、“BLUE”な感情について思いを馳せることが多くて。“ポジティブな絶望”っていう一番わかりやすく、そしてわかりにくい言葉を使うことにしました(笑)。

コロナ禍を経た今の日本の混沌としたムードって、多くの人が共有しているものだと思うんですけど、音楽を作る上でもそれを無視することはできないなと。無責任に「未来は明るいよ」とか「頑張ろう」とか言うのは嘘だなって思ったんです。それよりも、今の状況やネガティブな感情も受け止めて、その上で前を向きたい。そういうようなことをこの1年くらいずっと考えていたので、自然と自分の曲にも反映されていったんだと思います。

Photo by Mitsuo Okamoto

痛みやトラウマも受け入れて向き合う

――1曲ずつお聞きしたいのですが、KMさんとの共作曲「See You Again」はセルフライナーノーツによると、アメリカで友人とともに行ったライブでの体験から着想を得たそうですね。このときの出来事について教えてもらえますか?

SIRUP:友だちと一緒にライブを観に行ったとき、ふと隣を観たら泣きながら歌ってて、その光景がめちゃくちゃ美しかったんですよね。例えば、日本でもクラブにスーツのままで来てる人がめちゃくちゃ踊ってる姿を見たりすると、めちゃくちゃいいなって思うんです。日々色々な悩みや辛いこともあるけど、音楽が鳴っている場では解放感を味わえる。その場に自分の選択で来ているということも含めて、すごく尊いことだなって思うんです。決して現実逃避や問題を放棄して「パーティしようぜ」っていうことではなくて、それらをしっかりと抱えた上で、一人ひとりがその場にいる。そういうことを曲にしたかったんです。

――なるほど。

SIRUP:もっと内省的な話をすると、自分は専門家じゃないので具体的なことは言えないのですが、精神的な痛みやトラウマって少なからず誰しもが抱えているものだと思うし、それって全て消し去るのは無理なんじゃないかなって思うんです。一時的に忘れることはできても、また波のように戻ってくる。それを無視せず受け入れようっていうことも歌っていて。

――《痛み波のよう/寄せて返すけど》というラインもありますよね。

SIRUP:そうやって痛みを感じることで、改めて自分に対する理解も深まるかもしれないし、そんなときにこそ音楽が側にあってほしいなと。 あと、KMさんとは「明け方のクラブでかかるような曲にしたいね」っていう話をしていて。みんな思わず歌ってしまうような、アンセミックな曲になったらいいなって思ってます。だからこそ、クラブやライブが終わってみんなそれぞれの日常に帰っていくけど、「またここで会おうね」っていう意味も込めています。

――まさにタイトル通りの曲ですね。

SIRUP:はい。自分の場合、歌詞は一気に書き上げることが多いんですけど、この曲に関してはかなり時間をかけました。ネガティブな言葉も使ってるんですけど、何度も書き直して、そのバランスをじっくりと練って作りました。

――サウンドについてはいかがでしょう? クラブの明け方にかかるアンセム的な曲を意識していたということで、開放感や風通しのよさが感じられますし、管弦楽器の音色も印象的です。

SIRUP:確か最終アレンジでガラッと雰囲気が変わったんですよね。それまではブラスも弦も入ってなかったんです。ヒップホップのアティテュードに根ざしていながらも、ビートの打ち方もユニークで、EPのテーマや世界観的にもすごくしっくりきました。

――KMさんとの曲もそうですが、Chaki Zuluさんとの2曲も含め、どちらかの土俵に上がるのではなく、お互いの新しい側面を出しているような印象を受けました。

SIRUP:それは嬉しいです。基本的に誰かと一緒に作るときはお互いの魅力が混ざってないと意味ないなって思ってるんです。今回はKMさんもChakiさんも「SIRUPと一緒に作るなら」っていうイメージを何となく考えてくれていたらしくて。

――それこそ、Chaki Zuluさんと共作した「スピード上げて」の情報が解禁されたとき、そのアートワークやビジュアルから、ハードなヒップホップやパンキッシュな音を想像しましたが、実際はそんなこともなくて。

SIRUP:狙ったというより自然とそういう形になったんですけど、「スピード上げて」は少し日本っぽいというか、いわゆるシティ・ポップ的な要素もある曲だと思っていて。これは海外のアーティストとコラボすると特に感じることなんですけど、“USっぽい”とか“洋楽っぽい”って言われるような要素より、自分に染み付いてるアイデンティティを出した曲の方が、個性的な作品ができるんですよね。

自分自身の影響源で言えば国内より海外の音楽の方が多いけど、それでもJ-POPも自然と耳にしてきたし、それは隠しようがないなと。作ってるときにこういうことを考えていたわけではないんですけど、自然と表出したんじゃないかなと。

――日本語タイトルも久々ですよね。

SIRUP:確かに。とはいえ、もちろんR&Bシンガーであるというアイデンティティを忘れたわけでもなくて、そこに自然と日本っぽい要素が混ざるのが理想なのかなって。今後もこういう曲は作っていきたいと思います。

――セルフライナーノーツによると、「スピード上げて」は“プライベートで縁を切るしか選択肢がなかった古い友人に対しての想いや、出来事を歌った曲”とあります。この出来事に対しての感情や、自身の中でどのように決着をつけたのかなど、話せる範囲で教えてもらえますか?

SIRUP:コロナ禍も関係しているんですけど、長い付き合いだった人と価値観や意見がズレてきて……。それだけだったら別にいいんですけど、自分の仲間、友人に対しても嫌な想いをさせるようなことをしたので、これはもうそうする(縁を切る)しかないんだなって思ったんですよね。この判断を下すまでめちゃくちゃ悩んだし、相当カロリーも使いました。でも、自分の人生を前向きに生きるためにはその選択肢を取るしかなかった。

――とても悲しい出来事ですね。

SIRUP:めっちゃ悲しかったです。自分の人生にこんなこと起きるんだっていう感じでした。

――セルフライナーノーツには“ようやく歌にできた感じです”と綴られていましたが、曲にしたことで自身の心境にも変化はありましたか?

SIRUP:感情をひとつの作品にすることで、ちょっと冷静に見れるようになった気がします。気持ちが楽になるというか、前に進めるようになりましたね。これまでは日常で起きる出来事や感情の機微などを全部曲にしてきたのに、この出来事についてだけはずっと曲にしてなかったんですよね。この決断をしたのはだいぶ前のことなんですけど、きっと曲にするまでは自分の中で決着をつけれてなかったんだと思います。ずっと頭のどこかで「まだどうにかできるんじゃないか」って考えていたというか。

Photo by Mitsuo Okamoto

自分がどこに立っているのかを意識する

――Chaki Zuluさんとはもう1曲「もったいない」を共作しています。元々2曲作る予定だったんですか?

SIRUP:どちらかというと流れでそうなったっていう感じですね。Chakiさんのスタジオで制作してたんですけど、「こういう曲はどう?」っていうアイディアをいっぱい出してくれて。チーム内でも「ChakiさんとスムースなR&Bを作ってみたらどうなるだろう」っていう話も上がってたので、自然ともう1曲作ることになりました。

――少しアフロビーツっぽい、跳ねるビートが印象的です。「スピード上げて」と同様に日本語の響きもきれいで、SIRUPさんがこれまでも発信してきたセルフラブなメッセージが込められたリリックも自然と入ってきます。

SIRUP:ありがとうございます。人の外見や行動に対してケチをつけてくるやつがいたり、画一的な価値観を押し付けるような広告だったり、今の日本はまだまだ生きづらいなって感じるんです。でも、そういった外圧に晒されて、自分の好きなものややりたいことを見失ってしまう方がもったいないですよね。あと、人の格好に対して「もったいない」って言ってくる人、よくいるじゃないですか。そういう言葉にムカついて、それを逆手に取ってみました。

――この曲のセッションにはshowmoreの井上(惇志)さんも参加されています。これはどういった経緯で?

SIRUP:ヒップホップやR&Bって基本的にはループ・ミュージックですけど、自分のライブなどではよく途中からコードを変えたり、展開を加えたりすることも多くて。それはいわゆるJ-POP的な展開、構成というよりは、アフリカン・アメリカンの人たちが築いてきたゴスペルやチャーチ(教会音楽)の流れを意識してるんですけど。Chakiさんと作っていく中で、そういったコード・アレンジの話になったので、「無限にアイディアを出してくれる人いますよ」て言って召喚しました。あっちゃん(井上惇志)のこと、僕は“博士”って呼んでるんで(笑)。

――ハハハ(笑)。あと、新しい組み合わせでいうと、ラッパーのSkaaiさんをフィーチャーした「FINE LINE」は、プロデュースもSkaaiさんの盟友・uinさんが手がけていますよね。まずこの組み合わせが意外でした。

SIRUP:出会ったのは結構前で、確かA.G.Oの家で会ったのが最初だと思うんですけど、その前から友だちのTioっていう神戸のシンガーに教えてもらってたんですよね。「Period.」(Skaaiの1stシングル)を聴いたときに「ヤバいラッパー出てきた!」って感じたんですけど、よく考えたら前に教えてもらった人だってことに気づいて。その後にリリースされたEP『BEANIE』を聴いてさらにファンになりました。彼らの作るジャジーな雰囲気も好きだし、メロディックなフロウからは個人的にはネオソウルも感じられる気がして。

――2人との共作はどのようにしてスタートしたんですか?

SIRUP:EP収録曲をインスタでシェアしたら2人がDMくれたので、「一緒に何か作らへん?」って僕からオファーさせてもらいました。まだその段階では軽くしか喋ったことがなかったので、スタジオに入ってからいつもどんなことを考えて作品を作ってるのかなど、じっくりと言葉を交わして。最初は2人に対してクールな印象を持っていたんですけど、話してみると意外と少年っぽいところもあって。インスタに「Superpower」(SIRUPの楽曲)を歌ってる姿をUPしてくれたり(笑)。

――(笑)。「FINE LINE」のテーマやコンセプトについてはどのような話を?

SIRUP:最初は何かキーになる言葉を決めたいねっていう話になり、3人で考えてくなかで浮かんできたのが「FINE LINE」という言葉でした。情報化社会は加速するばかりだし、さらにパンデミックや戦争も起こってより一層混沌とした世の中になっている。だからこそ、まずは自分がどこに立っているのかを考えるべき、意識するべきだと思ったんです。じゃないと、自分たちが何をやりたいのかもわからないし、その意義みたいなものも見えてこないんじゃないかなと。僕が考えていたのはそんな感じですね。Skaaiも彼なりの境界線を綴ってくれました。

――サウンド面でいうと、この組み合わせてガラージ調なのにも驚かされました。

SIRUP:3人で色々な音楽の話をしていくなかで、PinkPantheressなどが入っているプレイリストをよく聴いてるっていう話になって。たまたま僕も同じプレイリストをチェックしてたんです。その流れであのサウンドに辿り着いたんだと思います。狙ってガラージになったというよりかは、その場のヴァイブスでそうなったというか。イントロのボイス・サンプルもその場で録ったフェイクをuinがすぐにエディットしてくれて。

――すごく有機的なコラボだったんですね。「MY BAD」でタッグを組んだTiMTさんは、一度PEARL CENTERとSoulflexのコラボ(2020年発表の「Mixed Emotions」)でも一緒になっていますよね。ただ、ソロ名義では今回が初になります。

SIRUP:PEARL CENTERも大好きだったし、TiMTが元々作ってたローファイ寄りのヒップホップ・ビートもすごく好きだったので、いつか作ってみたいとは思ってたんです。それがこのタイミングになったという感じで。「MY BAD」も結構前に作リ始めたような気がします。……というか、今回のEPで一番最初に作ってたのがこの曲かもしれません。

最初に手を付けたのは確か2021年の後半くらいだと思うんですけど、当時、ヒップホップにインディ・ポップっぽいトラックが増えてきた頃で、それに触発されて自分もインディ・ポップを作ろうと思ったんですよね。

――2年近く寝かしていたのは何か理由が?

SIRUP:これといった理由はないんですけど、去年はたくさんシングルをリリースしていて、物理的に時間がなかったんです(笑)。その大部分がその前年からスケジュールが決まっていたので。

去年の3月くらいにはリリック含めほぼほぼ今のような形ができてたんですけど、この曲はミックスにすごく時間がかかって。というのも、あまりキレイに整えすぎると、自分の求めるインディ・ポップ感が出なかったんです。最終段階でスネアの音色を変えたり、ボーカルもダブルからシングルにしたり、色々と試行錯誤しました。自分たちのいつものセオリーで作ると狙い通りの音にならなくて。すごく苦労したんですけど発見もいっぱいあって、めっちゃおもしろかったんです。

――リリックは恋愛におけるすれ違いというか、不和を綴った、ある意味R&Bマナーに沿ったとも言えるのかなと。

SIRUP:そうですね。恋愛って……特に若い頃はお互いのことがよくわからないまま終わってしまうこともあると思っていて。もちろん歳を取った今でも、人のことを理解しやすくなったのかと言われればそんなこともないのかもしれないですけど。相手のことを理解するよう自分なりに努力したけど、上手くいかなかった。その当時はめっちゃ悲しかったけど、時間が経つとだんだんイライラしてくるんですよね。「俺、めっちゃ譲歩したやん」みたいな(笑)。

そんな昔のあれこれを思い出しながら、「もう俺が悪かったってことでいいよ」っていう投げやりな感情を投影して書いたんですけど、最後の《都合のいい思い出で溺れて》というラインは、相手に言っているようで自分にも当てはまる気がして。書き上げてから気づいたんですけど、不思議な感覚だなって思いました。でも、それも恋愛なのかなって(笑)。

――「BE THE GROOVE」はこれまでも何曲も名曲を生み出してきた盟友・Mori Zentaroさんプロデュースの1曲で、“これぞSIRUP”なグルーヴィー・チューンですよね。

SIRUP:まさしく、ラップと歌を行き来するSIRUPのスタイルのど真ん中であり、その最新版の曲って感じですね。〈BOSE〉さんとのタイアップ曲を作るにあたって、Zentaroが何パターンか作ってくれたんですけど、申し訳ないけどどれもいまいちピンとこなくて。考え過ぎておかしくなったのか、「これはダメだと思うけど……」ってZentaroが送ってくれたのがこの曲の原型で、「これじゃん!」みたいな(笑)。あのシンセのちょっと不安定でレトロな感じも最高だったし、聴いた瞬間にトキメキました。

――ウネるようなベース・ラインも印象的です。

SIRUP:ベースは(Soulflexの)Funkyに弾いてもらってるんですけど、ちょっと特殊な進行らしく、めっちゃ難しいって言ってました。

――リリックには《ノイズは全てキャンセル》や《音が鳴る Right side Left side》といったイヤホンを想起させるようなワード・チョイスもいいですよね。

SIRUP:そこはタイアップも意識しつつ(笑)。でも、大枠のテーマでいうと、これまでも何度も歌ってきた“音楽”そのものにフィーチャーした作品なんです。それをどうやって角度を変えたかというと、今回はみんなそれぞれがグルーヴを持っているんだってことにフォーカスしていて。音楽を鳴らしている人だけじゃなくて、受け取る側、聴いている人自身も音楽の一部だし、グルーヴそのものになれるんだよっていうことを歌っています。


自分たちと共鳴する人たちを探し求めて

――“ポジティブな絶望”というテーマを掲げ、ネガティブな感情も混沌とした現実も正面から受け止めて、作品に昇華する。こういった工程を経て、SIRUPさんの心境やマインドセットに変化は起きましたか?

SIRUP:シンプルに前向きな感情になれました。でも、この感情の裏には諦めや絶望があって、自分自身が動いて、発信して、やるべきことをやるしかないんだという気持ちがより強まったというか。これはアメリカに行って強く感じたことなんですけど、結局どこも同じようなものなんだなって思ったんですよね。

――というと?

SIRUP:自分はコロナ禍以降、色々と気づかされることがあったし、もっと学ばなきゃいけないなと感じることも多かった。だから、色々と調べたり考えたりすることが増えたんですけど、そうするとどんどん自分たちが置かれている環境に絶望してしまうんですね。でも、いざアメリカに行ってみたら、結局同じような考えを持っている人は極めて少数派で、日本とあまり変わらないなっていうことに気づいた。だったら日本で頑張るしかないんじゃないかなと。

――自分たちの考えを少しずつ広めていくと。

SIRUP:広めるというよりは、自分たちとフィールしてくれる人たちと連帯していきたいという気持ちですね。全く同じ考え、思想でなくても、何か共鳴してくれればいいなと。自分たちが生きやすい世の中にしたいと思うのは当たり前のことなので、声は上げ続けるべきだと思います。

ただ、自分はゲーム・チェンジャーや代弁者になりたいわけでもなくて、自分の活動と個人的な人生を繋げて発信しているだけなんですよね。今すぐ大きな変化を期待するのは厳しいと思うけど、少しずつ変わっていければ、その変化のスピードは加速度的に増すんじゃないかなとも思います。これは僕の希望的観測も含まれてますけど。

――途方もない道のりを想像して、無力感に苛まれたりはしませんか?

SIRUP:たとえ自分が生きてるうちに大きな変化が起きなくとも、続く世代のためにその土壌を残せたらいいなって考えています。これは綺麗事じゃなく、そういう気持ちで動くことで、自分に還ってくるものがあると思うので。

――状況は決してよくないけど、少しずつ変化を促せていけたらいいですね。早いもので今年も3分の1が終わってしまいましたが、SIRUPさんの今後の動きについても教えて下さい。

SIRUP:ライブの場が戻ってきたので、なんと言ってもまずはツアーを楽しみにしているのと、フェスにもいっぱい出させてもらいます。最初にもお話したとおり、武道館を経てチームの力も上がっていると思うし、前回のツアーではキャパシティも制限されていたけど、現状ではそれも元に戻っているので、個人的にもすごく楽しみにしています。

今後の話でいうと、海外でもライブしたいし、海外のアーティストとももっと交流したりコラボレーションしていきたいですね。世界中にいるであろう僕らと共鳴する人たちを、探しに行きたいです。

――3月に大阪で開催した『Grooving Night』もとてもおもしろい試みでしたね。あのイベントも“共鳴する人たちを探しに行くこと”に繋がるのかなと。

SIRUP:確かに。『Grooving Night』をプロデュースしている読売テレビの門上(由佳)さんも、共鳴してくれた人の1人だと思います。コロナ禍になったばかりの頃から「何か一緒にやりたいです」って言ってくれていて、今年になってようやく実現できたんです。自分たちの考えや思いを発信できる場であり、純粋にエンターテインメントとしても楽しめる、そのバランスを大事にしました。

SIRUP:徐々に変わってきているとは思うんですけど、ミュージシャンってあまり自分の意見を言わないことがよしとされてきたというか。ある意味神格化するような風潮がこれまでの日本の音楽業界にはあったと思うんです。でも、それって全然リアルじゃないし、そのアーティストの人となりを知った方がより音楽を楽しめると思うんですよね。音楽ってすごく奥深いものだから、知識や情報が増えれば増えるほど新たな魅力に気づけるし、色々な味が滲み出てくるはずだなと。

もちろん発信したくない人はしなくていいと思うんですけど、もし我慢してるのであれば、出していった方が精神的にもリスナーにとってもいいことなんじゃないかなって思います。

――『Grooving Night』は今後も続けていくんですよね?

SIRUP:できる限り続けていきたいと思っています。関西ベースで始まっているんですけど、行くゆくは東京や他の地域でもやってみたいので、興味ある人はぜひ遊びに来てほしいですね。

Photo by Shun Komiyama

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※発送先は国内のみとさせて いただきます。
※フリマサイトなどでの転売は固く禁じます


【リリース情報】


SIRUP 『BLUE BLUR』
Release Date:2023.04.26 (Wed.)
Label:Suppage Records
Tracklist:
01. スピード上げて (Prod. Chaki Zulu)
02. BE THE GROOVE (Prod. Mori Zentaro)
03. FINE LINE feat. Skaai (Prod. uin)
04. もったいない (Prod. Chaki Zulu)
05. MY BAD (Prod. TiMT)
06. See You Again (Prod. KM)

配信リンク


【イベント情報】


『BLUE BLUR TOUR 2023』

日時:2023年5月29日(月) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:北海道 Zepp Sapporo

日時:2023年6月2日(金) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:神奈川 KT Zepp Yokohama

日時:2023年6月4日(日) OPEN 16:00 / START 17:00
会場:宮城 Sendai GIGS

日時:2023年6月9日(金) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:愛知 Zepp Nagoya

日時:2023年6月11日(日) OPEN 17:00 / START 18:00
会場:大阪 Zepp Namba

日時:2023年6月16日(金) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:福岡 Zepp Fukuoka

日時:2023年6月17日(土) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:広島 Blue Live Hiroshima

日時:2023年6月23日(金) OPEN 18:00 / START 19:00
会場:東京 Zepp Haneda

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料金:
ADV. 1Fスタンディング ¥6,500 / 2F指定席 ¥7,000
DOOR 1Fスタンディング ¥7,000 / 2F指定席 ¥7,500

※2F指定席のある会場は、北海道・神奈川・愛知・大阪・福岡・東京公演になります。
※1Fスタンディングに関しては整理番号順のご入場になります。
※お一人様4枚までの購入とさせて頂きます。

チケット一般発売:3月25日(土)10:00〜

主催:
札幌公演:WESS / キョードー東京
横浜公演:キョードー東京
仙台公演:ジー・アイ・ピー / キョードー東京
名古屋公演:サンデーフォークプロモーション /キョードー東京
大阪公演:キョードー関⻄ / キョードー東京
福岡公演:BEA / キョードー東京
広島公演:YUMEBANCHI / キョードー東京
東京公演:キョードー東京

企画/制作:
Styrism / キョードー東京

お問い合わせ:
キョードー東京 0570-550-799 (平日11:00〜18:00/土日祝10:00〜18:00)

SIRUP オフィシャル・サイト


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