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INTERVIEW / Sala


Shin Sakiura、FLEUR、熊井吾郎らと共作を行う新鋭シンガー・Salaにインタビュー。そのルーツやバックグラウンドを探る

2021.12.14

19歳の新鋭シンガー、Salaが11月に1st EP『Fragment』をリリースした。

SIRUPや春野、Chocoholicなども所属する〈Suppage Records〉傘下の〈Suppage Distribution〉より今年1月より作品をリリースし、R&Bシンガー・FLEURや熊井吾郎、Shin Sakiuraといった面々とも共作。歌唱力はもちろん、確かな存在感を感じさせる艷やな歌声と、ときにラップ調ともいえるフロウを披露するなど、そのポテンシャルはすでに多くのリスナーの注目を集めている。

今回はそんな新鋭のバックグラウンドを探るべく、メール・インタビューを実施。未だミステリアスな雰囲気を醸し出す彼女の素顔に迫ることに。

Interview & Text by Takazumi Hosaka
Photo by Official


――EPについてお話を伺う前に、まずはSalaさんのバックボーンやルーツを教えて下さい。音楽面では実兄であるRyoma Takamuraさんの影響が大きいそうですね。Salaさんが一番最初に音楽に興味を持ったのはいつ頃、どのようなきっかけでしたか?

Sala:家で兄がR&Bやヒップホップをよく聴いていて、それを自然と耳にしていたのですが、小学校4年生くらいから、家にあったCD――確か最初はBruno Marsだったと思うんですけど――を聴いたり、テレビの音楽番組をよく観るようになりました。

――また、歌うことに興味が芽生えたのはどのようなタイミングで?

Sala:小学生のときに初めて友達とカラオケに行って、「上手だね」って言われたのが嬉しくてそれがきっかけで、歌うことが好きになりました。

――現在もRyoma Takamuraさんと共同制作を行っているようですが、兄妹としては小さい頃から仲の良い関係だったのでしょうか。また、音楽を共に作るようになってからその関係性は変化しましたか?

Sala:昔から仲は結構いいですね(笑)。6歳離れてるのであまり喧嘩することもありませんでした。今もレコーディング帰りに2人でラーメンを食べに行ったりします。音楽制作に関しても兄妹なので、正直に意見を言い合えますね。

――シンガーとしての今のSalaさんを形作っている作品、もしくはアーティストをいくつか挙げるとしたら?

Sala:Ariana Grandeですね。親が誕生日に彼女のCDを買ってきてくれて、よく聴いていました。曲だけでなく髪型やファッションも真似したりしてました。あとはMISIAさんもよくカラオケで歌っていて、パワフルな歌声にすごく憧れていました。今は新しい曲をレコーディングする度に、自分が更新されていくような感覚があります。

――1stシングル「Loved More」はお祖母さんのお葬式でみた光景が歌詞になっているそうですね。当時どのようなことを感じたか、思い出せますか? また、それを曲として昇華する工程を経て感じたことなどがあれば教えて下さい。

Sala:歌詞は兄が書いているのですが、この曲は亡くなった祖母の目線から見た光景を描いていて、息子や孫が花を置いてくれる、それだけで幸せなのかもね、という思いで制作しました。同じ光景を一緒に見ていたので、レコーディングはいつもより感情的になっていたと思います。

​​身近な家族や友達がいるだけで、本当はすごく幸せなことなんだけど、意外とそういうことには死ぬまで気づけなかったりするんですよね。この曲はそういう大切なことに気付かせてくれたし、聴いてくださる方には響いてほしいなと思ってます。

――2ndシングルとなった「Bossa」では熊井吾郎さんをプロデューサーに迎え、FLEURさんとコラボを果たしています。2人との制作はいかがでしたか?

Sala:3年前になりますが、FLEURくんと兄、熊井さんで楽曲制作をしたのでその当時の話をしますね。FLEUR君と兄が一緒に曲を作ろうという話になり、当時兄は熊井さんのMPCレッスンを受けていて、そういった繋がりもあり熊井さんのビートを使わせていただくことになりました。

熊井さんのビートを聴いて作詞が始まるわけですが、FLEUR君は関西で兄は神奈川にいるので、LINEでお互いにボイスメモで歌を乗せ合って、そこからFLEUR君が東京に来たタイミングで、一緒にレコーディングをして曲ができました。

さらに、そこから熊井さんと繋がりの深いshowmoreの井上惇志さんがピアノ・アレンジをしてくださいました。イントロとアウトロのアレンジが見事にハマって、最高の曲に仕上がりました。

――「Together」はShin Sakiuraさんがプロデュースを務めています。彼との制作はいかがでしたか?

Sala:レコーディングで一緒にディレクションしていただいたんですけど、最初すごい緊張しちゃって全然声が出なくて、けどすごく指示が的確だしわかりやすくて。ギターで音取って頂いたりもして、自分の声のいい部分を上手く引き出してもらえたなって感じます。

――また、「Together」ではラップ調のフロウも印象的でした。作詞や歌唱について特に意識したことはありますか?

Sala:メロを崩さずに、タイトに言葉を詰める曲が意外と少ないので、他と差をつけたいということを考えました。歌詞は、《今は過去の蓄積》とあるように、今が不安であろうと過去の自分が大丈夫だったんだから、今も大丈夫だよと、自分を励ますような内容になっています。また、湘南育ちだったこともあり、地元を離れた友人に、海の香りを思い出してほしいとの願いを込めて、自然の風景描写をしています。

Sala:ラップ調の部分は言葉がとても詰まっているので、特に難しくて何度も練習しました。疾走感を出したかったのでなるべくブレスを挟まずに、特にスピード感を意識しました。サビではおそらく自分の中で1番高いキーを出していて、そこがとても難しかったです。

――「Shadows feat. 熊井吾郎」はミニマルなトラックの上で画面越しの距離感などを感じさせる歌詞を歌い上げる様が印象的です。この曲はどのようにして生まれたのか教えてもらえますか?

Sala:この曲も兄が作詞をしていて、兄からの言葉になるのですが、例えば“自分が1万円をもらって他の人が1万円損しているパターン”と“自分が1万円をもらって他の人が50万円もらっているパターン”があったとして、両方とも1万円得しているはずなのに、なぜか後者は損をしているような気になってしまいますよね。SNS社会ではこういった状態にすごく陥りやすいと思っていて。「自分も幸せなのに、他の人はもっと幸せそう」とか、みんな無意識のうちにこんな思いがあって、本来の幸せを忘れかけることがあるんじゃないかなと。

でも、Instagramでは基本的にいいところしか見せないですよね。歌詞にある《iPhoneの中のスマイルは表層的》とは、こういったことを表現しています。でも、きっとみんなそれぞれ苦悩があるはずで、それは現実世界で共有できる。だから、イヤホン越しに「大丈夫、あなたは幸せなはず」と語りかけています。

曲が完成した経緯に関しては、熊井吾郎さんに「曲作ってみたんです」ってレコーディングした曲を聴いてもらったら褒めてもらえて。そのあと熊井さんにビートをアレンジして頂くことになり、曲が完成しました。

――「Fullmoon」、「Night」などタイトルから分かる通り“夜”を想起させる楽曲が多いように思いますが、自身の歌やクリエイティビティと夜には密接な繋がりがあると思いますか?

Sala:実はこのEPは1曲目から順に聴くと、日の動きを表していて、歌詞にもぜひ注目してほしいです。

「Together」 《a first day》
「Bossa」 《it’s 5 o’clock morning》
「Shadows」 《日が沈むまで》
「Loved More」 《moon 照らす夜》
「Fullmoon」 《時に満ちる》
「Night」 《ライトをつけたまま、いや少しだけ暗く》

6曲を通して1日が終わり、また始まる。みんなそうやって苦悩や幸せを繰り返すんです。夜はひとりになる時間が多いので、自分に向き合って、心情を素直に表現できる曲が多くできるのかなって思います。

「Fullmoon」は兄が高校生のときに書いた曲で、受験期で将来の曖昧さが果てのない霧のように感じ、そんな中で雲が晴れて満月が見れたりする時期もあれば、曇り続ける時期もある。そういう月をモチーフにした人生観を表した曲です。

Sala:「Night」は1番最近できた曲で、SNSが当たり前になった今は、四六時中、社会に晒されて喧騒の中にいると思います。そういうときはiPhoneを置いて、静寂な空間にいく。そうやって喧騒から逃避するのが、心にとってはいいと思います。この曲の1番は社会から離れて大切な人と一緒にいるときのこと、2番は現在から離れて心の奥・記憶に逃避する様子。『エターナル・サンシャイン』(原題:Eternal Sunshine of the Spotless Mind)という映画が2番のモチーフになっています。クレメンタインという主人公の女性がよく髪色を変えるのですが、恋をしているシーンは赤い髪をしているんです。この映画を観てから、この曲を聴いてくれたら歌詞をより深く理解してもらえんじゃないかなって思います。

あと、全体的に韻が散りばめられていて、2番では特に「ou/oo」の母音で終始韻を踏んでいます。歌詞・メロディ・韻それぞれこだわりがあるので、味わいある曲に仕上がったと思います。

――1st EPとなる今作に『Fragment』と名付けた理由は?

Sala:“Fragments”という単語には“断片”、“未完成”という意味があるんですが、この作品はまだSalaの一片に過ぎなくて、まだまだ成長したり新しい世界をみせたいという意味で、このタイトルにしました。

――今後のヴィジョンはどのように描いていますか? 今後予定していることなどがあれば教えて下さい。

Sala:とにかくライブをしたいです! コロナ禍であったのもあり、まだほとんどライブをしたことがないのですが、こないだ初めてインスタライブで自分の楽曲を歌ってすごく楽しかったので、お客さんがいたらもっと楽しいだろうな……と思います。

――何か大きな夢や目標などがあれば教えて下さい。

Sala:私は歌うのが大好きなので、いまは大きな目標というよりも、一つひとつのライブで心を込めて曲を歌っていきたいです。そうやって地道に経験を積み重ねて行けたらと思います。


【リリース情報】

Sala 『Fragments』
Release Date:2021.11.24 (Wed.)
Label:Suppage Distribution
Tracklist:
1. Together feat. Shin Sakiura
2. Bossa feat. FLEUR, 熊井吾郎
3. Shadows feat. 熊井吾郎
4. Loved More
5. Fullmoon
6. Night

■Sala:Twitter / Instagram


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