INTERVIEW

My Lucky Day

熊本発の新星・My Lucky Dayの現在地。結成の経緯からアルバム『All Shimmer in a Day』制作背景を訊いた

熊本を拠点に活動する男女混成バンド、My Lucky Dayが2020年にリリースした1st EPに新曲を加えたフルアルバム『All Shimmer in a Day』を、〈TESTCARD RECORDS〉よりリリースした。

同郷のバンドtalk(現在は活動休止中)のKensei OgataとJun Kawamotoがレコーディング、ミックス及びマスタリングで参加した本作は、The Pains of Being Pure at Heartや〈Lazy〉時代のMy Bloody Valentineのような、キラキラとした眩いジャングリー・ギターと甘く儚いメロディ&ボーカルが絶妙なバランスで溶け合う極上のシューゲイザー〜ギターポップ・サウンド。耳を傾けていると、とにかく音を奏でるのが楽しくて仕方ないメンバーたちの様子がありありと浮かんでくるようだ。ベースのナカムラが脱退し、4月から3人体制で活動するMy Lucky Dayのメンバーに、結成の経緯やそれぞれの音楽的ルーツ、アルバム『All Shimmer in a Day』の制作エピソードなどについて聞いた。

Interview & Text by Takanori Kuroda


ペインズ、マイブラ、ホムカミ、フォトハイ――バンドの影響源

――皆さん、出身も熊本なんですか?

アサト(Gt.):いえ、私とベースのナカムラは沖縄出身で、(タニグチ)ミクさんは福岡、フジサキさんは鹿児島出身です。4人とも熊本にある大学の軽音サークルみたいなところで出会って、そこでバンドを結成しました。

──なるほど。それぞれの音楽的なルーツは?

アサト:私はギターを始めたのが高校2年生くらいのときでした。そのときはバンドとかも組まず、ひとりで好きな曲をコピーしてみるくらいだったんですけど、そのうちに洋楽、特に90年代のオルタナやシューゲイザーとかが好きになって。大学に入ってからは、「やっぱりバンドが組みたいな」と思って軽音サークルに入ることにしました。

──そこで今のバンドのメンバーに出会ったわけですね。90年代のオルタナやシューゲイザーに興味を持ったきっかけは?

アサト:当時、2ちゃんねるの洋楽スレをまとめた「まとめサイト」みたいな音楽ブログがあって(笑)、すごく好きでよく読んでいたんですよ。いろんなジャンルの音楽を紹介していた中で、自分に一番しっくりきたのがオルタナやシューゲイザーだったんです。後追いですが、最初にペインズ(The Pains of Being Pure at Heart)を聴いて、ギターがうるさいのにメロディは甘くてポップなところに惹かれました。そこからシューゲイザーという言葉を知って、My Bloody ValentineやRideなどルーツを辿っていきましたね。

──ペインズですら後追いの世代なんですね。タニグチさんは?

タニグチ(Vo. / Gt.):私は小さい頃からピアノを習っていたので、音楽は常に身近にありました。高校に入ったときに、友達に誘われて軽音楽愛好会みたいなのに入って。そこでギターを始めて友人とバンドを組んで、お遊び程度に音を合わせていました。でも、大学に入って軽音楽部の先輩の演奏を聴いたらものすごくカッコよくて、そこから本格的にバンドをやってみたくなりました。

──どんな音楽が好きだったんですか?

タニグチ:チャットモンチーやきのこ帝国のような、女性ボーカルのバンドの曲をよく聴いてましたね。でも、大学に入って後輩のアサトからバンドに誘ってもらい、洋楽をいろいろ教えてもらっていくうちにシューゲイザーとかそういうジャンルの音楽も好きになっていきました。

アサト:学年でいうと、私とナカムラが同学年で、ミクさんとフジサキさんが先輩で同学年なんです。ミクさんは、めちゃくちゃ天然でふわふわした感じですけど(笑)、歌っているときはガラッと変わるというか。人の目を惹きつけて離さない魅力があるんですよね。My Lucky Dayを組むときは、ボーカルは絶対にミクさんがいいなと思っていたんです。

──フジサキさんは?

フジサキ(Dr.):本格的にドラムを始めたのは大学生の時です。それまではあまり音楽も詳しくなくて、ASIAN KUNG-FU GENERATIONやBUMP OF CHICKENなど、その辺りをよく聴いていました。大学でよくコピーしていたのはフジファブリック。他にもスーパーカーや、今バンドでやっているような感じの音楽も好きになっていきましたね。

──ドラムをやろうと思ったのは?

フジサキ:小学生の時に、母親からドラムかピアノをやるように言われたんですよ。なかなか珍しいきっかけだとは思いますけど(笑)。どうやら母親が昔、ドラムをやっていたらしくて。その時の自分は「ピアノは女の子がやるものだ」という浅はかな思い込みがあって、それでドラムを選んだんです。

アサト:フジサキさんは、ドラムのことを全くわかっていない私からの「こういう感じにしてほしい」という雑なリクエストにも(笑)、しっかり寄せて叩いてくれるのが頼もしいです。アレンジに関してもガンガン意見を言ってくれるので信頼していますね。

タニグチ:アサトも私もマイペースというか、ふわふわしてて一向に話が進まないところを、フジサキさんがビシビシ指摘して前に動かしてくれる。バンドの中のリーダーシップを担ってくれるし、とっても頼りになる存在ですね。

──男性1人、女性3人という編成はHomecomingsを彷彿とさせるし、タニグチさんの歌声はFor Tracy Hydeのeurekaさんにも通じるところがあるなと思いました。

アサト:今おっしゃった2組とも私はすごく好きで、フジサキさんと以前組んでいたバンドでもコピーしたことがあります。私は基本的に洋楽が好きで、その影響がすごく大きいのですけど、国内だとホムカミとフォトハイにはかなり影響を受けていると思います。

──初期のLuby Sparksとかも好きですか?

アサト:ああ、めちゃめちゃ好きです(笑)。Luby Sparksのことはメンバー全員好きだと思いますね。

──ホムカミやフォトハイ、Luby Sparksはみなさんより少し上の世代になるんですかね。同世代で共感するバンドというと?

アサト:Strawberry Generationですね。彼らは去年、私たちと同じく〈TESTCARD RECORDS〉から音源を出したアメリカのバンドなんですけど、同世代だし彼らも大学生活の区切りみたいな感じで音源を制作したらしく、すごく親近感が湧きました(笑)。音楽的にも、今回のアルバムを作る上で彼らからすごく影響を受けましたね。


地元・熊本からのサポート

──バンドを結成したときには、どんなサウンドをやるか話し合いなどしました?

アサト:今思えば、どういう音楽をやるか話し合いも何もなく、ただ私が勝手に作りたい曲を作って、バンドに持って行ってみんなで合わせるみたいな感じでした。私の中ではギターポップとかシューゲイザーとか、ノイジーなギターにポップなメロディが乗っていて、ミクさんの歌声を生かせるような曲にしたいという気持ちはあって。そしたら自然とこういうサウンドになっていた、という感じです(笑)。

──アサトさんが全ての楽曲を手がけているんですよね。

アサト:はい。まず私がバッキング・ギターとリード・ギター、歌詞つきのメロディが入ったデモをメンバーに送り、それをもとにドラムとベースは各々で考えてもらってリハで合わせるという感じです。デモを送るときには、「こういう曲をイメージしてます」みたいな感じで、リファレンスになる曲を聴いてもらうことが多いですね。

──デモ作りの時は、何かDAWソフトなども使用しているのですか?

アサト:去年くらいからようやく使い始めました。それまではずっとMTRで録音していて、未だにドラムの打ち込みとかよくわかっていないんですよ(笑)。

──そこは意外とアナログ志向なのですね(笑)。曲作りの際、音楽以外で影響を受けたものなどありますか?

アサト:実は、今作にも関係してくるんですけど、レイ・ブラッドベリの小説が中高生の頃から大好きで。それが歌詞やアルバム・タイトルの元ネタになっていますね。特に10代の頃に思っていたこと、抱えていた葛藤とか個人的なことを歌詞にしていることが多いです。映画は『レディ・バード』(原題:Lady Bird)とかそういう感じの作品が好きで、そこからインスパイアされてできた曲も、今回のアルバムに入ってはいないけどレパートリーとしてありますね。

──プロフィールによれば、「誰にも明かすことなく誰のためでもなく曲を作っていた」そうですが、どんなきっかけで曲を書くようになったのでしょうか。

アサト:サークルで音楽の趣味が合う先輩とかに、「アサトは絶対、曲を作ったほうがいいよ」と言われたのが大きかったです。「そんなにいい曲をたくさん知ってるなら、自分でも作ってみたら?」と。ただ、曲を作り始めた頃は「恥ずかしい」というか、人に聞かせるようなものでもないなと思っていたんですよね。でも何曲か出来上がったときに、フジサキさんになんとなく「私、曲を作ってるんです」みたいな話をしたら「じゃあ、バンドをやろうよ」と言ってくれて。

フジサキ:アサトは、一緒にバンドを組む前からよく音楽の話をしていたんですけど、彼女が勧める曲はとにかく全部いいんですよ。それはきっと、自分と感性がすごく似ているからなのかも知れないなと。実際に作った曲を聴かせてもらったら、メロディもすごくいいし、歌詞も他の人にはない世界観があるし「才能あるんだなあ」と思いました。

──今、みなさんは熊本を拠点に活動しているんですよね。熊本のいいところを挙げるとしたら?

フジサキ:この前、福岡でライブをやったんですけど、それが県外でやる2回目のライブだったんです。それ以外は、熊本にある「NAVARO」というライブハウスでずっとやってきていて。やっぱりいつもとは違う環境でライブをやるより、安定した環境でライブが出来る方が自分たちには合っているなと改めて思いました。

アサト:My Lucky Dayの初ライブもNAVAROだったし、そこからずっとやっているハコなんです。すごく変わったハコというか、色んなジャンルのバンドが出演しているんですよ。熊本ってすごくローカルな土地だし、東京に比べたら音楽人口もすごく少なく偏っていると思うんですけど、その狭い中から色んなバンドがNAVAROに集まっているんです。それを間近で聴けるのは、私たちにとってもすごく大きいことだなと。

──それは、シューゲイザーやオルタナだけでなく色んなジャンルの音楽から、直接影響を受けることができるから?

アサト:そうですね。

──地元からのサポートもありますか?

アサト:めちゃめちゃありますね。先日も、FM熊本のラジオに出演させていただいたり、よく曲を流してもらったり、熊本のTSUTAYAさんで大きく展開していただいたり。

──それは嬉しいですよね。

アサト:本当に嬉しかったし感動しました。


今できること全てを詰め込んだアルバム『All Shimmer in a Day』

──さて、本作『All Shimmer in a Day』は、2020年にリリースした1st EPに新曲を加えた作品だとお聞きしました。1stアルバムということで、結成してから現在までの楽曲をよりすぐった、現時点での集大成的な“名刺代わり”の作品ということになりますか?

アサト:まさにそうです。手持ちのカードを全部切ったというか(笑)、今ライブでやっている楽曲を全て収録していますね。ちなみに新曲は、「Young and Lost」と「Sunny day Highway」、「Farewell summer」の3曲で、去年11月くらいにレコーディングしました。

アサト:1st EPのレコーディングは2019年の7月くらいで、場所はNAVAROで録っています。音作りとか右も左も分からなくて、同郷のバンド、talkのKensei Ogataさんと、Jun Kawamotoさんの2人にミックスとマスタリングを手伝ってもらいました。アレンジを突き詰める時間も余裕も全然なかったんですけど、今回新しく録った3曲は2回目ということもあって、以前よりは考える余裕ができたし上達しているはずです(笑)。

──ペインズや初期マイブラが好きなのが、音の端々から伝わってくる作品です。

アサト:ありがとうございます。それこそOgataさんやKawamotoさんに、AlvvaysやYuck、ペインズの1stなどをリファレンスとしてお渡しして。「こういう音にしたいんです」と相談して一緒に作っていきました。

──例えば「Bootleg」のキラキラとしたサウンドなど、シンセが隠し味として使われているのかなと思いました。

アサト:そうですね。あの曲はミックスの段階でOgataさんにお願いして弾いてもらいました。その時もペインズの曲をリファレンスに挙げていましたね。

──アルバムの中で、特に印象に残っている曲というと?

アサト:「Sunny day Highway」は、バンドでアレンジをめちゃくちゃ考えましたよね?

タニグチ:ギターとかたくさん重なってて、私は立ち会わなかったけど大変だったんだろうなって(笑)。あと、曲の入りが、音源ではアコギから始まると思うんですけど、そこは最初はそうじゃなくて。

アサト:そうそう。ライブは全然違うイントロだったんですけど、それをレコーディング中にみんなで考えてアレンジして作ったという、初めての経験もしました(笑)。

タニグチ:曲のBPMも、ちょっとずつ変えながら一番しっくりくる速さを考えたりして。ドラムも大変だったよね?

フジサキ:曲が出来てすぐレコーディングだったので、アレンジもイマイチ固まり切れていなかったので、録りながらフレーズを調整していった。そういう意味でも手こずりましたね。

──この曲、8ミリっぽい感触のMVに映る熊本の景色が、どれも本当に素敵でした。

アサト:ありがとうございます(笑)。曲の最後の方は、さっきお話ししたNAVAROで撮影をしています。

──ところで、アートワークの写真はどうやって撮ったのですか?

アサト:これ、実はチェキの二重露光を利用しています。熊本の江津湖という名スポットがあるんですけど、ミクさんに湖の辺りに座ってもらって、他のメンバーとワイワイ言いながら撮影しました。多重露光で空や湖がうまく重なるよう何度も試行錯誤しましたね。そうやってレイヤーを重ねていく撮影法は、私たちのサウンドとも共通する世界観なのかなと。歌詞の中にも「空」「湖」「女の子」と言った言葉が出てくる儚い感じをイメージできるジャケットに仕上がったかなと思っています。

──では最後に、今後のバンドの目標、抱負などをお聞かせください。

アサト:3月に今のベースが抜けちゃうんですけど、これから新しいベースを見つけて4人でできる限り精力的に活動していきたいです。今作『All Shimmer in a Day』では、今のMy Lucky Dayにできること全てを詰め込んだので、ここからどう変わっていくかを楽しみにしてほしいと思います。次はミクさんにシンセを弾いてもらって、その音をフィーチャーしていくのもいいかなあ。

タニグチ:えー、頑張ります……!(笑)


【リリース情報】

My Lucky Day 『All Shimmer in a Day』
Release Date:2021.03.03 (Wed.)
Label:
Tracklist:
1. March
2. Young and Lost
3. Bootleg
4. Sunny day Highway
5. ameagari
6. no title
7. Farewell summer
8. Tully

■My Lucky Day:Twitter / Instagram

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