2009年にリリースした『No More Stories Are Told Today, I’m Sorry They Washed Away // No More Stories, The World Is Grey, I’m Tired, Let’s Wash Away』から実に6年ぶりの新作『+−(プラスマイナス)』をリリースしたデンマークの至宝MEW(ミュー)。先月アルバムリリースに先駆けて来日した際に、フロントマンであるヨーナス・ビエーレ(vo&gu)と今作でカムバックしたヨハン・ウォーラート(ba)にインタビューした。6年間という長い月日で熟成された彼らの音楽は、美しく透明感ある世界観は顕在ながらより壮大で力強い音楽となっている。様々なアーティストともコラボーレションした今作はより幅の広い作品となっている。前日のアップルストアでのライブでは多くのファンがつめかけており、メンバー自身も喜んでいた。今年のサマーソニックで久しぶりにフルセットのライブを日本で披露することになるので乞うご期待。
MEW (Jonas Bjerre and Johan Wohlert) Interview
(Interview and photo by Aoi Kurihara)
ー久しぶりの来日ですが、どうですか。
ヨーナス:日本は素晴らしいよ!アルバムを出し始めたころからリリースするたびに日本で良い反応がもらえるから、その都度来日しているけど、その度に驚かされるね。街の雰囲気やフレンドリーな人々が気に入っているんだけど、先日アップルストアで、ライブを行ったところ、たくさんの人が来てくれたよ。それだけ僕たちバンドに関心があるというのは嬉しいことだよね。
ー早速、新譜の話に移りたいと思いますが、収録曲の「Water Slides」は北欧らしい美しく透明感のある曲ですね。どういったコンセプトでしょうか。
ヨーナス:アルバムに収録されている曲はそれぞれに個性があるので、アルバム全体は幅の広いものとなったように思う。曲を作るときも、「それぞれがなりたい曲になっていいよ」というように作っていったんだ。MVは監督のAnders Malmbergのビジョンで作ってもらったんだけど、不気味な雰囲気になったよね。曲としては高揚感ある明るい部分もあるけれど、コーラスのサビの部分なんかは悪夢を彷彿とさせるような暗い雰囲気があるよね。それを映像の世界観で表現してくれたんだよ。歌詞の内容も不気味といえば不気味だね。
ー2009年『No More Stories…』出してから実に6年ぶりのアルバムリリースですがこの6年間であなたたちに何か変化はありましたか。
ヨーナス:前作の長いツアーが終って、休もうかと思ったんだ。今までレコーディングして、ツアーをしての繰り返しでまとまった休暇がなかったからね。その間にスタジオを作るという作業を行ったんだ。これは僕らの前からの野望だったんだ。コペンハーゲンに元々車屋があったところが空いたのでスタジオにしようと作り替えることをしたんだけど、最終的には上手く仕上がらなかった。ギターの録音なんかはやったんだけれど、ドラムの録音は上手くできなくて、スタジオは完成せず、そこで録音することはできなかったんだ。
あとはそれぞれが別の音楽のプロジェクトに関わったりしていたんだけれど、徐々にこのアルバムの制作に入っていったんだ。作業に入ってからは長かったなよ。
ー休んでいた間も音楽活動を行っていたようですが、音楽以外でも何か活動していたりしましたか。
ヨーナス:えーーーと、音楽以外か・・。ほとんど音楽だね(笑)。僕の場合は映画のサウンドトラックを制作したり、別のユニットの音楽活動をしていたよ。これは音楽だけではなくてビジュアル的な要素のあるバンドなんだ。アート的なことも取り組んだと言えるけど、やっぱり音楽活動ばかりだね。
ー『+ー』というアルバムタイトルは単語2語のみで少しユニークですよね。前作の長いアルバムタイトルと比較して短いのも興味深いです。どういった意味を込めているのでしょう。
ヨーナス:まだアルバムが完成していないときに音源を親交のあるバンドのメンバーに聴かせたんだ。ここ3枚彼らにアルバム製作中の段階で聴いてもらっていたんだけど、『Kyte』の時に同じように曲を聴かせたところ、イメージとしては「グレムリーみたい」って言ったんだ。小さいな生き物みたいな感じだけどある瞬間にぱっと、はじき飛ぶような、攻撃してくるような、イメージだったそうだよ。そういう感じで彼らは音を視覚的に例えることがあるのが上手いんだ。今回のアルバムの曲を聴かせたら「電池のようだ」って例えたんだ、全てのエネルギーをここから放出して、充電して、またエネルギーをためるような、イメージだったみたい。電池といえばプラスとマイナスがついている。このアルバムで僕たちがやったことって、ドラマチックな曲がある一方ですごく静かな曲があったりと両極端な側面を網羅した幅の広い作品と鳴っているという意味では合っているのかなと思い、タイトルにしたんだ。
ー当時ヒットしたアルバム『Kyte』のプロデューサーMichael Beinhornがと今作でまたタッグを組んでいますが、なぜ、また彼と仕事をしようと思ったのでしょう。また、彼との仕事はどうでしたか。
ヨーナス:このアルバムを作り始めようとしたときに、たまたまMicahelとロサンゼルスで会ったんだ。それで旧交を温めようという感じで食事をして、「クリエイティビティとは何か」という話をしたんだ。ちょうどそのときバンドが新しい作品に向けて動いていたので、その話をしたら、マイケルが「ぜひ曲を聴かせてくれよ」と言ってくれてね。まだ曲書き始めの初期段階だったんだけれど、Michaelがコペンハーゲンまで来てくれて曲を聴いてもらったり、バンドの現状なんかを話しんだ。
Michaelはちょうど少し前まで、自分探しをしていて、「クリエイティビティとは何か」というものをさぐっていたらしくて、「音楽とはこういうものだ」「創造するとはこういうことだ」というようなことを語ってくれたんだ。そういった話を聴いて僕たちも触発されて、ぜひ彼にプロデュースをやってもらおうかなと思ったんだ。そしたらMichaelが「曲のアイディアは良いと思うけれど、何かが足りない、何か一人足りない」と言ったんだ。「ヨハンに戻ってきてもらって、バンドとしてやらないといけない」とMichaelに言われたんだ。彼に言われるまでもなく僕も気づいていたんだけれどね。やっぱり音楽を一緒に続けてきた仲間だからさ。一人いないという状況にずっと違和感を感じていたんだ。Michaelの言葉が僕たちの背中を押してくれて、ヨハンにに戻ってきてもらったんだ。戻ってきてもらったら一度も抜けてなかったかのように、しっくりきたんだ。
ー「My Complications」ではBlock Party(ブロック・パーティ)のRussell Lissackを招いているようですが、どういった経緯で彼が参加したのでしょう。
ヨーナス:何年か前にBlock Partyとアメリカツアーをしていたんだけれど、たしか、僕の記憶ではRusselが僕らのことを気に入ってくれてそのツアーに読んでくれたんだ。ロンドンでのショーを見に来てくれたんだ、当時MySpaceが流行っていたからMyspaceでツアーの話をしたのを覚えている。曲を書く段階でバンド内だけでなく、外にも広げようと思い、いろいろな人たちとコラボレーションしたいと思ったんだ。僕らがリスペクトできる内の一人がRusselだったんだ。それでコラボして作ったのがこの曲だよ。他にも何曲かアルバムには入っていないけれど共作があるので、いつか公開するつもりだよ。
ー他に共演したいアーティストはいますか。
ヨーナス:自分たちにとて音楽のヒーローは」たくさんいるけれPixies(ピクシーズ)のギタリスト、Joey Santiago(ジョーイ・サンティアゴ)かな。
ヨハン:マッカートニーだとかボウイだとか挙げられるけれど、彼らと共演したら彼らの方が主役になっちゃうかもしれないね(笑)だからコラボはお互いの良いところを上手く引き出し合えるような相手を選ばないと。
ー「The Night Believer」ではKimbra(キンブラ)をフィーチャーしていますね。彼女の美しい声はあなたちの世界観とマッチしていると思います。
そうだね。彼女は視覚的な表現力を持っているアーティストなんだ。あの曲は僕が仮ボーカルをして渡したんだけれど、戻ってきたものは僕の意図していたものよりも素晴らしいものになっていたんだ。
ー先ほどMyspaceの話がでてきましたたが、あなたちがバンドを始めた20年前と今の音楽シーンはずいぶん異なると思います。ネットでミュージシャンがすぐに世界に広まったり、リスナー側も簡単に音楽を手に入れることができるようになりました。こういった現状に対して どういう風に感じていますか。
ヨーナス:僕らが音楽をは始めたころなんてインターネットすらなかったからね!今思うとそういえば子供の頃って携帯なかったよなとか考えると不思議な気分になるよね。
僕はフィジカルなものが好きなんだ、アナログ盤をのせて、音楽を聴くとか行為を伴うことはすごく大きいと思う。デジタルだったらすぐに曲を変えられるけれどアナログみたいないちいちやらなくてはいけない方が良いように思えるね。
ヨハン:世の中はどんどん便利になっているけれど、便利だからといってそこに価値があるわけではないね。
ヨーナス:ネットはみんなを結びつけるというけれど、レコードショップに行って、お店の人と会話しながらアナログを探すという直接のやりとりに勝るものはないと思う。ソーシャルメディアは素晴らしいものだけれど、お店やそこにいる人々とのやりとりに取って代わることはないよ。
ー最後に日本のファンにひとことどうぞ!
ヨーナス:今年またサマーソニックに来るのでぜひチェックしてね!