Interview

Hudson Mohawke

『いまはそれこそ、「何でもあり」な時代だからね』—Hudson Mohawke インタヴュー

最高級のポップミュージックは必然的に純度が高く、一体その純度が何を意味しているかというと、いかに自分自身に素直になれたか、あるいは、いかに自分の感覚を自由にすることができたか、だと思う。そして、最高級のポップミュージックは大抵の場合あまりポップではない要素が下地になっていて、その下地がギリギリ見えるか見えないかの綺麗な塗装が施されているようなモノだと思う。ただ1つ言っておくと、Hudson Mohawkeの場合は塗り方が上手い下手というよりかは、もう在る下地が良い。下地が良いから、多少塗りが大胆でも、その大胆な部分に魅力が凝縮されるし、全体的にもギュッと綺麗にまとまる。『Lantern』に収録された14のトラックはどれも純度(=HudMo度)が高く、エキサイトメントもしくはエモーショナルの塗装がしっかりと施されている。故に、『Lantern』全体のストーリーとしても、仕上がりは最高級のポップミュージックになっている。

ヴォーカルをフィーチャーしたトラックを聴くと分かり易いが、今作のプロダクションの下地になっているのは紛れもなく、前作『Butter』からの6年の間に、カナダのプロデューサーLuniceと組んだユニットTNGHTでのツアーや、Kanye Westに見出されて“Mercy”や『Yeezus』の制作をはじめ、DrakeやPusha-Tのアルバムのプロデュースに関わった経験だ。その全ては、彼の能力、リズム感、身体の中に見事に落とし込まれている。しかしどうだろう、トラックのエキサイトメントとエモーショナルの奥を覗き込んでみると、そういった経験だけが純度の多くの割合を占めているわけではないような気がしてくる。そんな、もう少しHudMoを見つめれば満たされる何パーセントを、『Lantern』について問いながら探していこう。

以下のインタヴューは、あるひとつのロングインタヴューから抜き出して編集したもの。フィーチャーしたアーティストのこと、制作環境のこと、アルバムの中でひと際異様な空気を放っている“Kettles”のこと、ライヴのこと等々は、『HigherFrequency』に掲載(近日、公開予定)しているので、ぜひそちらもご覧いただきたい。

Hudson Mohawke Interview

(Interviewer: Hiromi Matsubara)

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―1stアルバム『Butter』から6年振りのアルバムですね。6年の間に2度のEPのリリースはありましたが、LuniceとのユニットTNGHTや、Kanye Westの〈GOOD Music〉周りのプロデュースといった、ソロ以外の活動もされていました。その最中で、今作『Lantern』のトラックも制作されていたと思うので……相当多忙な日々が続いたのではないでしょうか?

かなりの期間、ソロ・レコードを出したいと思ってはいたんだ。だけど、『Butter』をリリースした後、これまでよりもずっと多くの人々から彼らの作品に参加してほしいとアプローチされるようになってね。本当に多忙だったよ。

―今作は、デビューからこれまでの間、あなたがヒップホップ/R&B向けのトラックやエレクトロニックなダンスフロア向けのトラックを作りながら狙い続けてきたものが、ようやくひとつの理想の形に結実した作品だと思います。今作のメインテーマは何ですか?

最初から最後まで通して聴いてもらえるような作品にしたかった。通して聴くことで、「なるほど」と思える作品を目指したんだ。色んな楽曲やアイディアをランダムに寄せ集めたものではなくね。だから、今作に収録しようと思えば収録できた曲が他にもあったんだけど、僕としては今作のトータルとしてのスタイルにそぐわないものだと思えたから最終的にアルバムには含めなかった、っていう曲もあるんだ。

―昨年リリースされた“Chimes”もそうでしたが、あなたのトラックは全体的に以前よりも壮大になったと思います。“Chimes”はリリースされてから何度もクラブでDJがかけているのを聴きましたが、やはり迫力があります。音数と音域を非常によくコントロールしてトラックが作られていることがリスナーに壮大な印象を与える一因としてあるのではないかと思うのですが、やはり意識して作っているのですか?

いいや、別に意識はしていないよ。それはただ……(苦笑)、……それってやっぱり自分がガキだった頃にレイヴ・ミュージックをさんざん聴いていた事実と関わっているんじゃないかな。というのも、壮大な盛り上がりってのはレイヴ系の音楽の大きな要素なわけだし……ああいうエキサイトメント、ある意味ちょっと過剰なまでの盛り上げの要素っていうのは、何もクラブ・ミュージックを強く志向していない楽曲であっても、それを使って、とてもダイナミックな、非常に高揚感のある響きを持つ音楽にすることができるものなんだよ。で、それはレイヴ・ミュージックを熱心に追いかけていた頃の自分にとって関心があったポイントだし(苦笑)、いまでも自分にとって強い興味の対象なんだ。そうは言っても決して……、だからといって「(強い口調で)これはものすごくアンセミックで壮大な曲にしなくちゃ!」なんていう風に考え抜いて作るってことはないし、とにかく自分自身で「こうだろう」と自然に感じられるものを作っていくだけのことであって……。だから、音楽を作っている間に自分の頭の中から自然に出てくる何かに過ぎないんだよね。正直、壮大さ云々は自分では深く考えてはいないし、それにあれこれ意図したり考え過ぎてしまうのも、それはそれで問題を生むことになるわけで。だから深く考え込むことなく、ただ音楽の成るがままに任せるという感じかな。

―それで言うと、“Scud Books”や“Shadows”といった今作のインストトラックにもレイヴ系のエキサイトメントがあると思うのですが。

うん。

―あなたの中での、そういったフロアを踊らせる、あるいは高揚感を与えるような要素や感覚は、今作に至るまでのどのような経験を通して洗練されていったのですか?

そうだなあ……うーん、自分でもよく分からないけども……。

—例えば、オーディエンスを前にしたDJプレイを通じて経験を重ねていったとか?

あぁ、そうなんだろうね。だから部分的には、このアルバムの前までに何年もツアーやライヴをやっていて、そこで本当に……どういう種類の要素がクラブの環境では実際に活きるのかを学んだよ。っていうのも、クラブではウケることがフェスの場だと通用しないことだってあるし、逆にフェスではウケてもクラブではイマイチ、なんて要素もあってさ(苦笑)。あるいは、他の場面では有効なのに、シアター型のホール会場でのパフォーマンス、いわゆるバンドを伴っての生のライヴ演奏の場ではあんまり効果がない要素もあるって感じなんだよね。だから、思うに……各々の状況、特定の「場」において、どういうタイプのセットをやるのが有効なのか、そこで自分に求められるのがどんなことなのか、それらを学ぶことはとても重要なんだろうね。で、そういうことって……少なくとも僕にとってはそうだったんだけど、自分のキャリアの最初期の段階から学んでいくことができなかったことなんだよ。というのも、僕はただ……自分があの当時作っていた音楽の分野では、とにかくもう、ものすごく奇天烈で、可能な限りクレイジーな何かをやるってことに重点が置かれていたからね。だけど、いまの自分が作っている音楽というのは、もちろん過去の自分の持っていたクレイジーな要素もまだ含まれてはいるけど、それと同時にここ数年で自分が経てきたパフォーマンス体験の数々から学できたこと、そこに対する配慮も少し含まれたものなんじゃないかと思うね。

―では、あなたがクラブアンセムを作ろうと意識しているかはともかく、あなたが思う「クラブアンセムの条件」は何ですか?

ははは(笑)。っていうか、ここ最近で自分が気付かされた最もケッサクなことといえば、いまは「クラブアンセムに必須の条件」みたいなものは一切存在しないんだってことだね。

―(笑)

どんな曲だって、クラブでウケるとヒットになり得るんだよ。というのも、いまはものすごい数の……本当に沢山の数の楽曲が「グレイトなクラブ受けする曲」を目指して作られているわけだけど、そういう曲はことごとく失敗していて。そうやって狙って作られた曲は誰もプレイしないし、その一方で、絶対にヒットしないだろうな、これは無理だろうと思われていたような曲が、結果的に超ビッグなクラブ・ヒットのひとつになったりもしている(※ここでHudson Mohawkeが考えているのは、以前の取材で彼が例として挙げていたMark Ronsonの“Uptown Funk”のような、予想外の大ヒット曲をイメージしていると思われる)。だから、いまというのはクラブを重視した音楽にとっては素晴らしい時代でもあるなと僕は思っていて。というのも、かつてはビッグなクラブ・レコードを作るためにはある特定の公式、「フォーミュラに従わなくちゃいけない」というような時期が長く続いていたわけだけど、いまはそれこそ、「何でもあり」な時代だからね。

―では、今作のアルバムタイトルの由来は何ですか?「Lantern」は暗い場所を照らす灯なので、 個人的にこの言葉からはポジティヴな印象を受けます。いまの音楽シーンを照らす灯になりたいというあなたの願望の現れでもあるのでしょうか?

いや、そういう意味ではないかな……。このアルバムは一種の「ファンタジーの世界における24時間」を描こうとしている作品だから、その時間の推移をガイドしてくれるものとして「Lantern(角灯)」が相応しいだろう、と。基本的にはそういうことなんだ。

―興味深いですね。「ファンタジーの世界における24時間」というのは具体的にはどういうストーリーなんでしょうか?

何と言うか、1日=24時間を通してランタンの動きを追って行く、みたいな。で、アルバムは夜明けや日の出を思わせるトラックから始まるし、それ以降も日中を思わせるポップ・ソングが続き、日が暮れてからのもう少しダークなトーンの曲、そして最後は夜になってクラブなモードになっていく……って風に、時間の流れを感じられるように全体をアレンジしてあるんだ。

―ちなみに、アルバムのトレーラー映像は、雪が降り積もる寒そうな夜に、偽物のドナルド・マクドナルドが何者かから逃げているような映像でした。あれも『Lantern』のストーリーの一部だと思うのですが、何を意味しているのですか?

ハハハッ(笑)!

—続きがとても気になるのですが、あれはどんなストーリーやメタファーが隠されているのでしょう(笑)?

クハッハッハッハ!(ひとしきり笑っている)……えーっと、まぁ、あそこでやりかたったことっていうのは、とにかく……今回のアルバムは、自分としてはかなりアップリフティングなものだと思っていて――。

—でも、不気味な予告映像ですよね?

そうそう! いや、そこなんだよ、僕が言わんとしているのも。だから、アルバムそのものは……作品の全体的なテーマというのは、かなりメロディックな内容だし、かつアップビートで高揚させられる響きのある、そういうものなわけだよね。だからこそあの映像では、何と言うか、もうちょっとだけ「不快なところ」も見せたかったっていうのかな。気味の悪い感じ……そうだな、アップリフティングな表層の下にもう一枚潜んでいる、別の奇妙な層みたいなものの存在を聴き取ることも可能なんだよ、と。だからまぁ、それがあのヴィデオのもともとのアイディアだったんだけど、実は最初の段階では僕の父親がメイクと仮装であのピエロ役をやるはずだったんだ……。

―そのヴァージョンも見てみたかったです……(笑)。では最後に。7月に3年振りに来日することが決定していますね。それも日本を代表するフェスティバル『FUJI ROCK FESTIVAL』への出演です。意気込みを教えてください。また、HudMoのライヴに備えて、私たちが準備すべきことがあったら教えてください!

ずっと「フジロックでプレイしたい!」って思ってきたからね。とても光栄に思っているよ! これまでのHudson Mohawkeのショウとはまったく違う経験になるはずだよ。楽しみにしてて欲しいな!

 


『Lantern』

『Lantern』

Hudson Mohawke 『Lamtern』
Release Date: 2015.6.16
Label: Warp/Beat Records

Tracklist
1. Lantern
2. Very First Breath (feat. Irfane)
3. Ryderz
4. Warriors (feat. Ruckazoid & Devaeux)
5. Kettles
6. Scud Books
7. Indian Steps (feat. Antony)
8. Lil Djembe
9. Deepspace (feat. Miguel)
10. Shadows
11. Resistance (feat. Jhené Aiko)
12. Portrait Of Luci
13. System
14. Brand New World
15. Chimes *Bonus Track for Japan
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