Interview

BJ The Chicago Kid

「自分の信仰や神の創造物がどのように生まれたのかを理解することが音楽」ーー特異な出自を持つソウル・シンガー、 BJ The Chicago Kid

デビュー以前からStevie WonderやKanye Westら大物との客演を経験し、ここ数年はKendrick Lamar、Chance The Rapper、Schoolboy Q、Anderson .Paakなどシーンを引っ張る若手の注目作、更には大御所Dr. Dreの昨年の復活作『Compton』に参加するなど、熱が醒めることない昨今のブラック・ミュージック・シーンにおいて、常にその中心にいたソウル・シンガー、BJ The Chicago Kid。そんな彼が、今年2月満を持して名門〈Motown〉からメジャー・デビュー作*『In My Mind』を発表した。(*インディ時代にもアルバム『Pineapple Now-Laters』を2012年に発表)

Marvin Gayeを初めとしたクラシックなソウルやR&Bを土台にしながらも、前述のKendrick Lamar、Schoolboy Qを初めとした西海岸のラッパーとの客演を通して培ったヒップホップ由来のビート感で、自らのブラック・ミュージックのルーツをアップデートした本作は、批評家筋からも高い評価を得た。そんな今年随一の新人シンガー、BJ The Chicago Kidが絶好のタイミングで6月、初来日公演を行った。しかも、アメリカ以外での公演はこれが初だったという。当のライブは、中盤でこれまでの客演楽曲のメドレーがあったりと、彼のこれまでのキャリア全体を短い時間にぎっしり詰め込んだセットでありながら、全体的にはアルバムのイメージ以上に彼のソウル・R&B愛が強く溢れたステージになった。

そんなBJに、東京公演直前の短い時間で話を聞いた。自身の音楽性やルーツ、同郷のChance The Rapperを初めとしたこれまでのコラボレーションなどについて語ってもらった。

Interview & Text:Daichi Yamamoto
Interpreter:Noemi Minami
Live Photo:Masanori Naruse

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ー今回の来日公演が、あなたにとってアメリカ国外での初のライブだそうですね。既に大阪公演を終えましたが、いかがでしょうか?

最高だよ。素晴らしい時間を過ごせた。東京でもいい時間を過ごしてるよ。

ー今年は初の国外でのライブの他にも、〈Motown〉からのデビュー・アルバム『In My Mind』のリリースも含め、あなたにとって重要な年になっていると思います。ここまで、2016年を振り返ってみてどうですか?

『In My Mind』をリリースして以来、全てが変わったよ。もちろん良い方向にね。遂に人が買って、聴いて、人生を共にするような作品を作ることができた。今まで他のアーティストとコラボレーションという形で彼らの作品に参加してきたけど、これは俺の作品だ。俺のアイデンティティであり俺の音楽だ。人々に俺がどんな人か、どんなミュージシャンかを伝える扉が開けたと思ってるよ。シングルのように1曲リリースとかではなく、アルバムっていうのが重みがあるよね。

ーあなたの音楽性の土台は何より60~70年代辺りのクラシックなR&Bやソウル・ミュージックですよね。しかし、そこに近代的なヒップホップの要素が強く入っているのが非常に個性を際立たせているポイントだと思います。ラッパーではないあなたにとって、ヒップホップはどのような音楽だと捉えているのでしょうか。

う〜ん、どうやったら上手く説明できるのかな……。例えば、Marvin GayeはMarvin Gayeだった。それは彼がどんな音楽を聴いて、何を見て、どんな生き方をしてきたかっていうのが表出しているからなんだよね。もし彼がヒップホップを聴いていたら、彼の音楽はもっとエッジーだったのかもしれない。俺はヒップホップの影響が自分の音楽にとってプラスであることを忘れたくない。ヒップホップは音楽の進化の一部なんだ。Marvin Gayeや60’s〜70’sの頃のアーティストはジャズ、ブルース、カントリー、ソウルを聴いていた……。そしてMarvin Gayeが影響を大きく受けて生み出された音楽に、今俺は影響を受けている。そして例えばその影響を俺の弟が受けて、未来で新しい音楽を作っていく……って言う風に、音楽は受け継がれていくものなんだ。

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ーでは、やはりあなたにとってヒップホップは小さい頃からの大きな影響源といえますね。

うん。確実にね。でもゴスペル、ジャズ、ブルース、カントリーにも影響を受けた。子供の頃はマーチング・バンドや聖歌隊もやっていたし、R&Bグループでも歌っていた。当時はただ音楽が「今何が起こっているか」を理解する方法であり、そしてそれが楽しかったんだ。

ー「ゴスペル」という言葉が今出ましたが、「Church」を始めあなたの楽曲には数多く聖書や神様にまつわるラインが多いですよね。ストレートなゴスペル・ミュージックをやっているわけではないあなたにとって、音楽と神様の関係はどのようなものでしょうか?

神とは音楽。自分の信仰や、神の創造物がどのように生まれたのかを理解することが音楽なんだ。だから音楽が聴こえる。例えば今ここで、何も話さなければ音楽が聴こえてくるんだ……(しばし沈黙して、周囲の音に耳をそばだてる)。……俺は静寂の中に音楽を見つけることができる。それは神が無から創造を行うことと同じことだと思う。無からの創造……それが音楽なんだよ。

ーアルバムのことに話を戻させていただきます。『In My Mind』は、メジャー・デビュー作であるにも関わらずたくさんのアーティストが参加しています。そのコラボレーションについて色々お伺いしたいのですが、特に今まさにヒップホップ・シーンにおいて一番の重要人物になっているChance The Rapperについて聞かせてください。彼とはどのように出会ってコラボレーションを行うに至ったのでしょうか?

彼と知り合ったのは大昔のことだよ。シカゴの友達が経営する「LEADERS」って店で出会ったんだ。たくさんのアーティストが集まる店で、日々のやっかいなことからも離れられる最高の場所だったよ。ある日、その店にTシャツを買いに行ったら、彼がいたんだ。まだ子供だったよ。それで彼が「ヘイ、俺DJなんだ。君の音楽大好きだよ。俺の曲とかビデオを見てくれないか?」って話しかけてきたんだ。そのあと2年くらいは特に一緒にコラボしたりとかはなかったんだけど、あるとき店のオーナーをやっている友達が「BJ、チェックしてみろ」っていうから、それで見てみたらすごくよかったんだ。彼にコンタクトしたのはその時だね。それから俺たちがどれだけリンクし合えたかを考えると、夢を追いかける上で人生を変えるキッカケがこんな風に存在するなんておもしろいよね。

ーあなたとChance The Rapperは、何度もコラボレーションをしていますが、あなたたちは音楽的にもゴスペルの影響を強く共有しているように思えます。それをあなたはソウルフルな方法で、Chanceはラップやジューク/フットワークと結び付けるようなやりかたで表現している、そんな風にも。彼とは音楽面を含め、どんなところをあなたと共有していると思いますか。

彼とは音楽を超えて共有しているものがある。Chanceは俺と同じようにシカゴで、そして教会で育った。二人とも悪い仲間もいた。悪いやつらと一緒につるんでた時もあった。そういう全ての経験が俺たちの強みなんだ。そういった経験を経たおかげで、特定の人にリーチし心と心で話せるようになった。全てのアーティストはどんな人にでもリーチすることができると思っている。それが広がっていく時っていうのは特別なことなんだよ。

ー彼と共有する点として「シカゴで育った」という点を挙げていましたが、あなたにとってシカゴとはどんな場所でしょうか?

シカゴは全てだよ。俺はBJ the Chicago Kidだ。つまり、それだけ大切なことなんだよ。俺の名前を呼ぶ時、俺の街の名前を言わなきゃいけない。それだけで分かるだろ。俺の街の名前を人々が口にする時、あの街(シカゴ)のポジティブな光とエネルギーを連想出来るようにしたいと思っている。

ー他にもあなたがこれまで客演で参加してきた曲についていくつかお聞かせください。Schoolboy Qの「Studio」は全米シングル・チャートでも38位にエントリーし、あなたのキャリアの中でのターニング・ポイントの一つだったと思います。彼とはどんなキッカケで共演するに至ったのでしょうか?

実際はすごいシンプルな話なんだよ。俺は〈TDE〉(〈Top Dwag Entetainment〉。Kendrick Lamar、Ab-Soul、Schoolboy Q、Jay Rockらが所属するレーベル)の面々と長い間一緒に働いてきて、彼らとは既にいい関係を築いていたんだ。あのコラボーレションに至った経緯については、Schoolboy Qが俺とやるのに完璧な曲があるって電話してきてくれたんだ。でも、まだその時は完成していなくて、そのまた一ヶ月後にまた電話をくれて。それでスタジオに行ってみると、コンセプトも出来上がっているし、ヴァースも出来ていたんだけど、まだフックがなかった。彼が「Studio」っていう曲名にしたかったことはハッキリしていたから、彼のメロディーに合わせて俺は自分のパートを足して、それで「Studio」が出来上がったんだ。あの曲はグラミーにもノミネートされた。ソングライターとかではなくて、アーティストとしてノミネートされたのは始めてだっから、とても大切な思い出となった曲だよ。

ー〈TDE〉のメンバーと関係が深いようですが、彼らをはじめこれまで共演してきた方々はあなたにとってどんな存在なのでしょうか? 中にはSchoolboy Qのようにギャングスタ・ラップに近い音楽をやっている人もいますし、あなたのスピリチュアルなソウル・ミュージックとは少し距離があるようにも思えます。そんなあなたが、彼らとこれほどまでに親密な関係を築き、そして作品で多数共演しているのがとてもおもしろいなと思いました。

とてもいい質問だね。クレイジーって思うかもしれないけど、ギャングスタ・ラップやヒップホップといった音楽の全ての要素が少しずつ俺の中にあるんだ。少しの50 Centが俺の中にあり、少しのKanye Westが俺の中にあり、少しのJay Zが俺の中にあり、少しのYoung Jeezyが俺の中にあり、少しのFreddy Gibbsが俺の中にあり、そしてたくさんのMarvin Gayeも俺の中にある。Sam Cook、Willie Hutch、Barry White……。まだまだ続けられるよ。Frankie Lymon、Stevie Wonder……。俺は様々なスタイルや音楽の総合体なんだ。それが最高なんだ。自由に自己表現をさせてくれる。『In My Mind』は俺の心の中とかっていう意味ではなく、俺が出来ることの総合体なんだよ。

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【リリース情報】

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BJ The Chicago Kid 『In My Mind』
Release Date:2016.02.23
Label:Motown
Tracklist:
01. Intro (Inside My Mind)
02. Man Down
03. Church
04. Love Inside
05. The Resume
06. Shine
07. Wait Til The Morning
08. Heart Crush
09. Jeremiah/World Needs More Love
10. The New Cupid
11. Woman’s World
12. Crazy
13. Home
14. Falling On My Face
15. Turnin’ Me Up

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