COLUMN

How to Live Streaming:DIYライブ配信メソッド

ライブ配信への需要が増す音楽シーン。Spincoasterが実施した、DIYでのライブ配信ノウハウを共有します

新型コロナウィルス禍の影響により、ライブ配信への注目が高まっている昨今。Spincoasterとしてはこのような事態を受け、予てより構想していたライブ配信の環境構築を急ピッチで進めました。

先日3月28日(土)に実施したFurui Rihoのライブ配信にて、ようやくその方法がある程度確立できました。配信をご覧になった方からもいくつかご質問をいただいたので、本稿ではライブ配信において我々が準備した物事、そして実際に行った際の所感などを綴りたいと思います。

プロや企業に依頼するのは費用面で厳しいという方や、YouTubeなどでDIYでライブ配信を検討されている方のご参考になりましたら幸いです。

Text by Kohei Nojima

※6月13日に配信用のPCの変更と投げ銭の金額についてのデータを追記しました。


目次

1. スタッフ人員・通信回線
2. 配信機材
3. 配信プラットホーム「YouTube ライブ配信」
4. 配信ソフト「OBS Studio」
5. Streamlabs
6. 投げ銭について
7. コンテンツについて
8. 最後に


1. スタッフ人員・通信環境

配信時に稼働したスタッフは映像2名+音響PA1名です。役割分担としてはこんな感じです。

1. 配信設定/スイッチング

2. ハンディ・カメラ

3. 演奏環境の構築及びオーディオの入力調整

 

カメラを全て定点にすれば2名(映像/音響で1名ずつ)でも可能ですが、カメラに動きがあった方がライブ感が出ると思います。余裕があれば、配信やチャットの確認担当として+1名いた方が良いかもしれません。

通信回線の速度目安に関してはこの記事を参考にさせてもらいました。WiFiは急に不安定になることがあるので、可能な限り有線LANでの接続を推奨致します。


2. 配信機材

本映像に使用した映像機材は以下の通りです。会社の備品の他に、社員の私物も含まれています。

・配信用PC:MacBook Pro(2017モデル Core i5 /メモリ16GB)

・HDMIキャプチャー・デバイス兼スイッチャー:ATEM Mini(Blackmagic Design)

・正面メイン・カメラ:SONY α7Ⅲ

・ハンディ・カメラ:OLYMPUS OMD-Em5 Mark2

・ロー・アングル定点カメラ:Go Pro HERO7

・プレビュー・モニター用ミニディスプレイ:Kuman 7インチ HDMI モニター

・その他:三脚、一脚、HDMIケーブル、HDMI変換ケーブル(タイプD → タイプA)

 

Blackmagic DesignのATEM Miniは4系統入力でHDMIセレクターとビデオ・キャプチャ機能を兼ね揃えていながら、価格は税込み4万円以下。これまで同等レベルの機材は20万前後が相場となっていましたが、ATEM Miniの登場によって誰でも手軽に本格的なライブ配信ができるようになりました。

カメラ選びの注意点としては、カメラの画面情報をHDMI出力しない(HDMIモニタリングスルー/クリーン出力)機能が備わっているカメラである必要があります。カメラは高機能かつ、機種を統一させるのがベストです。やはりソニーのα7の映像は圧倒的に綺麗でした。

Go Proは暗所に弱いので、暗い空間でのライブ配信にはあまり向いていませんが、変わったアングルや広角が求められるシーンでは活躍しそうです。

Go Proやカメラの設定では、HyperSmoothや電子手ブレ補正はOFFにしてください。映像の出力が遅れてズレが発生します。また、HDMI出力の解像度やfpsが配信のスペックと一致しているかも事前にチェックしておく必要があります。また、長時間の配信の場合はカメラのバッテリーへの配慮も必要です。予備バッテリーや、モバイル・バッテリー、ACアダプタなどを用意しましょう。

手持ちカメラはスタビライザーなどがあればベストですが、動画用の三脚や一脚を活用してできるだけブレの少ない映像を目指したいです。

ちなみに、音響関係に関しては今回音響を担当して下さった、鈴木てるのぶさんのツイートを参考にして頂ければと。ラインの2ミックスをステレオ・ミニプラグでATEM Miniに送っています。

 


※2020年6月13日 追記

上記環境で実施していましたが、その後の何度かの配信で徐々にトラブルが発生したため機材を買い替えました。

・配信用PC:MacBook Pro(2017モデル Core i5 /メモリ16GB)→ msi GF63-9RCX-1039JP ( Core™ i7-9750H / メモリ8GM / GPU NVIDIA® GeForce® GTX 1050 Ti Max-Q)

 

その後の配信でOBSでの配信時に画面がざらつくブロック・ノイズが定期的に乗るようになってきました。原因としてはOBSのアップデートやMacの内蔵GPUの故障が考えられますが定かではありません。また、OBS上で配信と同日同時に高画質な録画を走らせた時、かなりのCPUを消費してしまい配信映像がカクつくようになってしまいました。

そこで、今回新たにWindowsのゲーミングPCを購入しました。ゲーミングPCは強力なグラフィック処理能力をもつGPUが搭載されています。また、GPUとCPUに処理を分散させることができるので、1台のPC内で録画を2つ回し配信を行ってもまだ余裕がありました。

さらに、Macで配信した際にはOBSのアップロードのトラフィックが急に下がり(右下に信号が赤になる)配信が止まってしまうという現象が発生していましたが、この現象もなくなりました。(これはSpincoaster Music Barのインターネットの通信方法をIPv4からIPv6に変更したことが影響しているかもしれません)

こちらのKan Sanoさんの配信は新しいPCで実施しています。

これまで同期オフセットで調整していた音ずれもなくなり、抱えていた問題が全て解決し、高画質で安定したライブ配信ができるようになりました。元々OBSを使用した配信はMacよりWindowsの方が適していると聞いていましたが、この買い替えは大正解でした。


3. 配信プラットホーム「YouTubeライブ配信」について

配信のプラットホームはYouTubeのエンコーダ配信を使用しています。設定において特筆すべきことはありませんが、ライブ配信の遅延が「通常の遅延」だとコメントを読みながらのMCなど、インタラクティブなアクションを取る際に時差が少し気になりました。

また、転換のBGMなど、一般流通音源が配信に乗らないように注意して下さい。10秒程度でも権利者に利用報告が届き、配信停止や最悪の場合アカウント凍結の恐れもあります。特にDJプレイの生配信はリスクが大きいので、気をつけて下さい。

スーパーチャットについては投げ銭のセクションで説明します。


4. 配信ソフト「OBS Studio」の設定について

OBS StudioとYouTubeの設定方法はこちらの記事などを参考にさせてもらいました。設定画面のスクリーン・ショットとポイントをいくつか。インターネットの回線速度とMacのスペックが同等以の場合は、同じ設定で問題ないかと思います。

出力モードを「詳細」にして、エンコーダの設定をMacの方は「アップル VT H264ハードウェアエンコーダ」に、Windowsの方はx264以外(「NVIDIA NVENC H.264 (new)」など)で設定するとCPUの負担が軽減されます。この設定がとても重要です。

出力サイズは「1920 × 1080」にしていますが。通信回線が十分ではない場合は「1280 × 720」でも問題ないと思います。送信するデータ量が増加し過ぎないために限界ビットレートも設定して下さい。FPS(フレーム・レート)はお好みで。「24fps」だと映画やMVっぽい質感に、「30fps」だと生中継感が出ます。今回の配信は「30fps」で実施しました。

また、音声の方が早く、映像が後から付いてくる「音ズレ」が発生することあります。その場合は「対象となる音声チャンネルの設定>オーディオ詳細のプロパティ」から「同期オフセット」に数字を入力して、調整することができます。今回の設定では「+200ms(=0.2秒)」音声が遅れるように設定しています。


5. 「Streamlabs」

「Streamlabs」は2019年にロジテックが買収した、アメリカ発のストリーミング・ツール。主に海外でゲームのライブ配信用に展開しているサービスです。今回Streamlabsで活用したツールは、特設ページの構築、YouTubeと連携したOBSへのウィジェット設置、そしてPayPalのドネーション(投げ銭)システムの3点です。

月額19ドルのPrimeユーザーになると、デザインなどかなり自由度の高い特設ページが作れます。

テキストやSNSへの導線だけでなく、画像+URL(バナー)も自由に設置できるので、物販への導線などもページ内に作成できて使い勝手がかなり良いです。特設ページはYouTubeチャット・スライダーを表示することもできます。

YouTubeのチャットや同時視聴者数を映像上に表示できるOBSのウィジェットの設定方法に関してはこちらの記事などを参考にして下さい。

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6. 投げ銭について

ライブ配信でマネタイズするにあたって、「ZAIKO」などを活用したクローズドなチケット制とYouTubeなどを活用したオープンな投げ銭、そのどちらが最適なのかは現状ではケース・バイ・ケースと言えるのではないでしょうか。

ただ、Spincoasterとしてはリスナーに新しい音楽を届けることを重視しているので、オープンな配信での投げ銭を基本としています。今回はYouTubeのスーパーチャット、Streamlabsのドネーション(Paypal)、Amazonの欲しい物リストの併用を試みました。

各投げ銭のメリット・デメリットは以下の通りです。

YouTubeのスーパーチャット
【メリット】アプリなどから簡単に投げ銭ができる。投げ銭への導線が分かりやすいい。
【デメリット】チャンネルが使用条件を満たす必要がある。手数料が高い。YouTube手数料30%(+Apple手数料、消費税など)※実質40〜50%程度

Streamlabsのドネーション(PayPal)
【メリット】手数料が安い(3.6%+40円/件)。誰でも利用可能。
【デメリット】PayPalのビジネス・アカウントの開設が必要。PayPalが日本ではあまり馴染みがない。

Amazonの欲しい物リスト (※欲しい物リストでギフト券を登録しました)
【メリット】手数料が0円。誰でも利用可能。
【デメリット】受取が現金ではない。手元に届くまで時間がかかる。

 

手数料だけで見ると、YouTubeのスーパーチャットは中々辛いものがあります。iOSユーザーの方はアプリ内決済で支払うと、Apple手数料とGoogleの手数料が二重でかかります。SafariやChromeのブラウザから投げ銭することで、同金額でもアーティスト/配信者の実収益が変わるということはぜひとも広く知られてほしいと思います。

ちなみに、今回の実際の手数料は以下の通りでした。

実質手数料
・YouTubeスーパーチャット:49.7% (Apple手数料、消費税などを含む)
・Streamlabs(PayPal):6.17%
・Amazon:0%

ライブ配信でのマネタイズや投げ銭に関してはまだまだ工夫の余地があるように感じます。例えばですが、

・「投げ銭で◯◯円以上集まればアーカイブを残す」のようなミッション形式にする。
・noteなどで限定デジタル・コンテンツを合わせて販売する。
・Peatixやクラウドファンディング系のサービスを併用して投げ銭の金額に応じてリターンを用意する。

など、色々な方法が考えられると思います。ここに関してはアーティストのブランドとのバランスを考えながら、それぞれに合った方法を模索したいところです。


※2020年6月13日 追記

過去の実施から投げ銭でどれくらいの金額が集まったのかを集計したデータを公開します。アーティストやジャンルによって大きく変わってくると思いますが、Spincoasterで配信を実施したアーティストでは平均するとこのようなデータとなりました。

リスナーの投げ銭の方法や考え方の理解を促進し、アーティストに還元できる金額を増やしていくことが今後の課題だと感じています。


7. コンテンツについて

せっかくライブ配信でやるからには、演奏してる映像をリアルタイムでただ配信するだけでなく、生配信ならではのコンテンツを検討するべきだと思います。ライブ映像を流すだけであれば、録画・編集した映像をプレミア公開で、“みんなでチャットをしながら一緒に観る”だけでも十分だと思います。

トーク系のコンテンツや質問コーナー、ユーザー参加型の企画など、ライブ感のあるコンテンツが少しでもあれば、視聴者はよりその配信を楽しめるはずです。今回は急遽決定したため、十分な準備ができませんでしたが、MCではチャットのコメントを読んでもらうなど、少しでもインタラクティブ性を持たせることを考えました。


8. 最後に

以上、ライブ配信について、我々が有している知識、情報、そして実際に行っての所感などを綴らせて頂きました。もちろん、本稿がベストの方法なわけではありませんが、多くの方々の間で情報を共有することで、今後もより良い方法を模索し続けることが可能だと考えています。

今回の事態をきっかけに、ライブ配信がアーティストやレーベル、そしてライブハウス/クラブなどの文化施設の活動/運営を支える選択肢のひとつとして、広く定着することを強く期待しています。

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