FEATURE

FEATURE / 『S.W.I.M.』 Vol. 03


『S.W.I.M.』特集第3弾。kycoh、MÖSHI、TOKYO RAVE GROUPIE、カメレオン・ライム・ウーピーパイにショート・インタビュー

2020.10.12

新進気鋭の国内アーティスト17組の楽曲を収めたコンピレーション・アルバム『S.W.I.M. #1 -polywaves-』が9月にリリースされた。

本作は渋谷を拠点とする独立系レコード会社「ULTRA-VYBE」が立ち上げた、“音楽シーンに新たな波を立てるアーティストをリスナーの元へと送り出すこと”を目的とした新プロジェクト、『S.W.I.M.』の第1弾リリース作品。ジャンルやスタイルもバラバラながら、どのアーティストからもどこか新世代ならではのフレッシュな感覚が感じられる。

Spincoasterではそんな新プロジェクト『S.W.I.M.』を連載で特集。第3弾となる今回は、kycoh、MÖSHI、TOKYO RAVE GROUPIE、カメレオン・ライム・ウーピーパイの4組のショート・インタビューをお届けする。

Text by Takazumi Hosaka


  kycoh

[Twitter / Instagram / WEB]

――音楽を始めたきっかけを教えて下さい。

Hiroki Adachi(Vo. / Ba.):ありきたりなんですけど高校の時彼女と別れて,その彼女と一緒にいた流れで部活もやめちゃってたからやることがなにもなかったんですよ.そんなときに友達がバンドに誘ってくれて音楽を始めました。

Masaki Tagashira(Vo. / Gt.):中学校の時に転校する友達のために弾き語りやって,曲で気持ち伝えるのっていいなって思ったのがきっかけですね(笑)。

Rio Kumaoka(Dr.):僕は中学までサッカーばっかりやってたんですけどサッカーに限界を感じて、そこからずっと続けていたドラムを本格的に向き合うようになりましたね.

Gentoku(Manip / Syn.):みんなと同じで中学時代なんですけど中高でオーケストラでコントラバス弾いてて、その流れでベースはじめました。

――現在のスタイルを形成するにあたって、影響を受けたアーティスト/作品を教えて下さい。

Adachi:ずっとブレない自分のルーツはRadioheadですね。「2+2=5」が一番好きな曲です。kycohで自分が作ってる曲もやっぱりRadioheadから受けた影響が大きいです。

――コンピ『S.W.I.M. #1 -polywaves-』に収録された楽曲はどのようにして生まれた作品でしょうか。

Adachi:去年の9月にkycoh始めて、色々な音楽に手を出して1st EP『WOKE』の4曲を作りました。

Tagashira:自分たちでもやりたいこと、表現の形がはっきりしてなかったんですよね.

Adachi:自分たちの軸となるような曲を作りたかったんです。その流れでできたのが「Life-size」です。

――今後の展望を教えて下さい。

Gentoku:10月にも新曲を出したいと思ってます。今までのおれらのイメージともまた違う作品だと思います.

Adachi:kycohを始めてからもうすぐで1年経つんですけど、また去年より自分たちの作りたいものがしっかり見えてきているのでもっと今カッコいいと思うものを作って出していきたいです。

――『S.W.I.M.』の語源にちなんだ以下の4つの質問に答えて下さい。

■「Seek」=最近探しているもの、求めているものは?

Adachi:イケてるtシャツですかね。こんなもん何枚あってもいいですからね。

Rio:映画が好きなんですけど、最近ご時世的に新作の上映が少ないのでおもしろい映画は探しちゃいますね.

■「Wonder」=最近驚いたこと、もしくは不思議に思うことは?

Adachi:これと言ってないんですけど,強いて言うなら手巻きタバコがめっちゃコスパいいってことですね。

Rio:新しい機材買って気づいたんですけど,消費税10%が高いことですね.

Gentoku:それでいうとこの前メンバーでコンビニ行ったときに、タバコ値上げのお知らせ見てみんなで腰抜かしましたね(笑)。

■「Iconic」=あなたのアイコンとなる人物、存在は?

Adachi:ずっと『Trainspotting』の時のユアン・マクレガーですね。いつまでも色褪せなくてずっとカッコいいな〜と思ってしまいます。

Gentoku:僕はリチャード・ファインマンですね。学者とミュージシャンを両立させてる人で、僕自身も研究者なのであこがれです。

Rio:『宇宙兄弟』の主人公のムッタですね(笑)。おれもも弟がいてダンスやってるんですけど、カッコいいことやって背中見せたいなっていつも考えてます。

■「Music」=最近聴いている音楽は?

Adachi:Samm Henshawの「Doubt (feat.Wretch32)」ですね。チルい日曜日感があって好きです。自分の曲がシリアスな曲が多いので、自分も社会の一因だとかそういうことを考えられる曲なんですよね。後は最近ランダム再生してたらBeckが流れてきて、懐かしくてまた聴いてますね。

【Profile】

2019年から東京を拠点に活動する4人組のバンド。ポストロックやシューゲイザー、アンビエントやダブステップまでを取り入れたダイナミックな表現が魅力。デビューEP『WOKE』をタワーレコードの店舗限定で販売。配信リリースした「Life-size」がAmazon Musicによる次世代アーティストのプレイリスト『Weekly One』に選出されるなど、注目を集めている。


  MÖSHI

MÖSHI


[Twitter / Instagram]

――音楽を始めたきっかけを教えて下さい。

昔のことなのでこれがきっかけか定かではないのですが、小学生の時に植松伸夫さんのサウンドトラックが大好きでCDを買ってずっと聴いていたので、漠然と中学受験が終わったら音楽をやってみたいと思っていました。そしてその通りに、中学に入学した時に吹奏楽部でパーカッションを始めました。その後、アメリカの高校でマーチング・バンドに所属し、帰国後は幾つかのバンドでドラマーとして活動していました。ロンドンのセントラルセントマーチンズ芸術大学へ入学してからは音楽活動を一切やめてしまっていたのですが、2018年の10月頃に〈Laastc〉というアートコレクティブを仲間と立ち上げ、初めて曲を作り始めました。

――現在のスタイルを形成するにあたって、影響を受けたアーティスト/作品を教えて下さい。

もちろん様々なアーティストの影響が入り混じっているとは思うのですが、ラップの仕方、声の出し方に関しては最近のアーティストだとTyler, The Creator、DPR LIVE、Jojiなどから影響を受けていると思います。

――コンピ『S.W.I.M. #1 -polywaves-』に収録された楽曲はどのようにして生まれた作品でしょうか。

この曲に関しては〈Laastc〉のクルーであるPause Catti(彼の作品『EP1』も最高なのでぜひ聴いてみてください!)がトラックを制作しているので、2人で回答しようと思います。

MÖSHI:2019年の12月、冬休みでJFK空港から日本に帰ろうとしていた時に、空港に予定よりかなり早く着いてしまい、ぼーっとタバコを吸っていました。その時にクルーであるPause Cattiから10秒程度の短いループが送られてきました。空港だったこともあり、「行ったり来たりする自分」というワードが頭に浮かび、その時には「Back and Forth」という言葉をすでに曲にハメていました。空港でLogicを開いて、すぐにリリックを入れ始めていましたね。とても良いビートだと思ったのでなるべく早くリリックを入れて完成させたいと思ったのを覚えています。

Pause Catti

・制作した時期
2019年の12月下旬です。

・プロセス
確か始めにドラム・パターンを作り、それにエレピとベースを重ね発展させました。その数十秒のデモをMÖSHIにパスしました。それがこの曲のはじまりです。音のコラージュをメインにしたバージョンはPause Cattiの『EP1』に「Négatif」として収録されています。

制作当時、1970年代のKing Tubbyから2019年のSevdalizaまで繋がるダブ周辺の文脈に対してアクションをしたいと考えていました。(「Back and Forth」のインスピレーション源をまとめたプレイリストも公開しています)。曲全体を覆い尽くしているコラージュ的な音の連鎖は、僕が本名名義で制作している電子音響音楽に由来しています。Karlheinz Stockhausenの「Kontakte」、John Cageの「Fontana Mix」などのエンジニアリングから生まれた制作手法を発展させたものです。象徴的な音色を持つという点はSalvatore Sciarrinoの楽曲にアイデアをもらいました。多くの人々に受け入れられる軽さと、音楽を先に進める先進的な試みを同居させたいという願いを持っています。

――今後の展望を教えて下さい。

フジロックに出演した際も多くの方からアルバムはないかと言われたのですが、現状ありません。なるべく早くリリースするので、それまではぜひライブまたはライブ配信で新しい曲をお楽しみいただけたらと思います。

――『S.W.I.M.』の語源にちなんだ以下の4つの質問に答えて下さい。

■「Seek」=最近探しているもの、求めているものは?

曲のバランスでしょうか。今年出す予定のEPに関しては国内をかなり意識しているので、それ以降のリリースは研究しつつ、国内のリスナーはもちろんのこと国外のリスナーにも届く曲のバランスを追求していきたいと思っています。

■「Wonder」=最近驚いたこと、もしくは不思議に思うことは?

COVID-19が全世界で流行してから音楽やファッションのプレゼンの仕方が大きく変わり、日々様々なジャンルのアーティストが色々な方法で表現し始めていて毎日新鮮な驚きがあります。Travis Scottの『Fortnite』でのライブもエキサイティングでしたし、最近ですとchelmicoのヴァーチャル・ライブは驚きました。この状況でどのように素晴らしい音楽体験をリスナーに届けていくか、自分自身もこれから模索していきたいです。

■「Iconic」=あなたのアイコンとなる人物、存在は?

様々なクリエイションを高いレベルでクロスオーバーさせている人がアイコンであり、ロール・モデルですね。Jesse Kandaに関してはDoon Kanda名義で〈Hyperdub〉から曲もリリースされているのですが、彼のグラフィック作品にも通ずるアイデンティティがあっていいですね。

Tylerも同じでミュージシャン、ファッション・デザイナー、映像作家など様々な顔を持っていることが僕にとって魅力的です。僕も彼らのように様々な表現活動を組み合わせてトータルで自分の美学を表現していきたいです。

■「Music」=最近聴いている音楽は?

中々選ぶのが難しいですが、よく聴く10枚のアルバムを挙げます。気に入った音楽はずっと聴いてしまうので、セレクトが最近のリリースのみではなくなってしまうのですが……。

Sevdaliza 『Ison』
Holly Herndon 『Platform』
DPR LIVE 『Is Anybody Out There?』
Keith Ape 『Born Again』
Mount Kimbie 『Cold Spring Fault Less Youth』
Battles 『Mirrored』
Ibeyi 『Ibeyi』
XXYYXX 『Xxyyxx』
Vince Staples 『Big Fish Theory』
Para One 『Passion』

【Profile】

NY、ロンドン、日本に拠点を置くコレクティブ、〈Laastc〉に所属するラッパーMÖSHI。ロンドンのセントラルセントマーチンズ芸術大学を卒業後、UNIQLOのスポンサーシップを得て、NYのパーソンズ美術大学院に在学中。『FUJI ROCK FESTIVAL’20』内『ROOKIE A GO-GO 2020 LIVE』に出演。


  TOKYO RAVE GROUPIE

[Twitter / Instagram / SoundCloud / WEB]

――音楽を始めたきっかけを教えて下さい。

JG(Ba.):元々は弾き語りをしたくてアコギを買ったのが始まりでした。そのあとバンド・サークルに入り、エレキ・ギター → ベースに転向しました。その頃はロックばかりで、ヒップホップを聴き始めたのは5年くらい前です。トラックは3年くらい前から作り始めました。最初はMPC1000で簡易的に作っていましたが、そのあとDTMだったりピアノやドラムの打ち込みをやり始めました。

FANCY(MC):小学6年の時、nobodyknows+を聴いてから自分で歌詞を書き始めたので、その頃からです。

――現在のスタイルを形成するにあたって、影響を受けたアーティスト/作品を教えて下さい。

JG:Justin Timberlakeの『FutureSex/LoveSounds』です。それまではロック中心に聴いていましたが、R&B〜ヒップホップに触れるきっかけになりました。メロディアスな歌メロ + ラップという点でも影響されました。Sweet Williamもトラックを作り始めた3年ほど前、かなり聴いていました。トラックのメロディアスさ、ジャズっぽいニュアンスにハマりました。

FANCY:RIP SLYMEのPESです。韓国のアーティスト・グループ、offonoffも好きです。それぞれどの作品も影響を受けてます。

――コンピ『S.W.I.M. #1 -polywaves-』に収録された楽曲はどのようにして生まれた作品でしょうか。

JG:この曲はTeddyがネタを見つけてきてメロディとラップの原案を持ってきて、そのあと僕がアレンジしつつ弾き直してトラックを作って、Fancyがラップを乗せた感じです。FANCYが撮影から動画編集まで手がけたインスタのストーリー風のMVもYouTubeで観れるので、ぜひチェックしてください。

FANCY:ヒップホップってセルフ・ボーストという手段もあって、生き様を謳うため、それが全面に出がちなのですが(例えば、フローが優れているかなど)、この曲はトラックがシンプルだったのもあって、誰かが、何かのタイミングでイヤホンとかで、この曲を聴いてる姿に寄り添うように優しく作りました。

――今後の展望を教えて下さい。

FANCY:直近だと、オリンピックに呼ばれるようになり、今後はアジアを代表するヒップホップ・グループになることです。

――『S.W.I.M.』の語源にちなんだ以下の4つの質問に答えて下さい。

■「Seek」=最近探しているもの、求めているものは?

JG:最近探しているもの……何でしょう……。少し大きめの観葉植物を探しています。この前、自宅で新曲MVを撮った際に150cmくらいあるかなり大きい観葉植物を買ってから、他も欲しいな、と(笑)。

FANCY:でっかい冷蔵庫です。小さい冷蔵庫だと、生存するには不利でした。

■「Wonder」=最近驚いたこと、もしくは不思議に思うことは?

FANCY:驚いたことは、SNSプラットフォームが成長する中、5秒で記憶に残るような音楽が売れる時代に市場が変わってきていることです。消費者の暇な時間を奪い合う中で、音楽もコンパクトになっているみたいなので、16分ぐらいある曲作りたいです。

■「Iconic」=あなたのアイコンとなる人物、存在は?

FANCY:パタゴニア社の創業者のイヴォン・シュイナード(Yvon Chouinard)です。物の考え方などは、常に参考にしてます。

■「Music」=最近聴いている音楽は?

JG:最近は高校〜大学時代に聴いていた洋楽を聴き直してます。Daft PunkやJusticeなどのエレクトロ系から、The StrokesやOasisなどのロック系、当時は“ニュー・レイヴ”と言われていたCSSやMGMTなども好きでした。Coldplayの初期やKeaneなどのいわゆる美メロのピアノ・ロックも今聴いても良いですね

FANCY:group_inouを聴いてます。

【Profile】

メロウなトラックにメロディアスかつ3か国語(日本語/英語/韓国語)が入り混じったラップが特徴の“次世代のヒップホップ・バンド・グループ”、TOKYO RAVE GROUPIE。音楽、ビジュアル・プロダクトへの強い拘りをモットーにフットワーク軽く表現する。


  カメレオン・ライム・ウーピーパイ

カメレオン・ライム・ウーピーパイ


[Twitter / Instagram]

――音楽を始めたきっかけを教えて下さい。

人生何も上手く行かず最後にやりたいことをやろうと思い音楽を始めました。

――現在のスタイルを形成するにあたって、影響を受けたアーティスト/作品を教えて下さい。

James Brown、Michael Jackson、忌野清志郎、Beastie Boys
『チャーリーとチョコレート工場』(原題:Charlie and the Chocolate Factory)

――コンピ『S.W.I.M. #1 -polywaves-』に収録された楽曲はどのようにして生まれた作品でしょうか。

中国で活動できる話を頂いた時に、ヒップホップ色が強めな曲を作りました。チルっぽい曲にワブルベースを足すことにより、ポップさを出してみました。

――今後の展望を教えて下さい。

ジャンルや感情、世代などをぐちゃぐちゃに混ぜカメレオン・ライム・ウーピーパイのバランスでできたものを世界中に広め、最終的にはそれがジャンルになるように目指しています。

――『S.W.I.M.』の語源にちなんだ以下の4つの質問に答えて下さい。

■「Seek」=最近探しているもの、求めているものは?

カメレオン・ライム・ウーピーパイを求めている人。

■「Wonder」=最近驚いたこと、もしくは不思議に思うことは?

カメレオン・ライム・ウーピーパイが意外とスッと受け入れてもらえている現状。

■「Iconic」=あなたのアイコンとなる人物、存在は?

アイコンとなる人物はいないです。自分自身が自分の理想の人物になろうと思い活動しております。

■「Music」=最近聴いている音楽は?

ファンク

【Profile】

これまでのリリースした5曲のシングルが累計100万回再生を突破するなどバイラル・ヒット。オレンジ色の髪の毛が特徴的なChi-が中心となっているバンド、カメレオン・ライム・ウーピーパイ。モータウン・サウンドや80〜90年代ロック/オルタナティブを、次世代のフレッシュな価値観で現行のヒップホップ/R&Bに落とし込み懐かしくも新しい世界観を表現している。


【リリース情報】

V.A. 『S.W.I.M. #1 -polywaves-』
Release Date:2020.09.09 (Wed.)
Label:ULTRA-VYBE, INC.
Tracklist:
01. VivaOla / Runway
02. YOHLU / &I
03. I’m / BATHROOM
04. Alex Stevens / BEACH HOUSE CLUB
05. Gi Gi Giraffe / Jail Out
06. asmi / anpan
07. Peggy Doll / Beautiful Like That
08. SPENSR / LIPS
09. American Dream Express / Make Me Stoned
10. gato / G0
11. kycoh / Life-size
12. MÖSHI / Back And Forth (prod. Pause Catti)
13. TOKYO RAVE GROUPIE / Mellow Down Easy
14. カメレオン・ライム・ウーピーパイ / Free Elephant (S.W.I.M.Mix)
15. illiomote / ブラナ#15
16. UNERI / ちょっといいこと
17. 碧海祐人 / 夕凪、慕情

S.W.I.M. オフィシャル・サイト


Spincoaster SNS