Best Tracks Of 2018

ヒラギノ游ゴ

キュレーター、ヒラギノ游ゴの2018年ベスト・トラック!

多趣味を標榜している手前、何にどれだけ時間を投資するのかということは人一倍シビアに考えなくちゃいけないのに、結局12月まで迷い続けた一年だった。

今年はお笑いやスニーカーといった、音楽同様に大切にしてきたカルチャーを扱う記事の執筆依頼があり、それ以外にも自分の生い立ちやキャリアが報われるような仕事にありつくことができた。2019年はただ自分が光栄な思いをするだけでなく、自分の感じてきた種々のエンターテインメントの煌めきを読み手に還元する窓口として動く。まずは後述するアジア音楽について考えていることに取り組んでいきたい。


  5. Juice WRLD / Lucid Dreams

去年から今年にかけて、アジアのポップ・ミュージックに次いで注目してきたのがいわゆるエモ・ラップ勢。マイケミあたりがヒットした時期以降、メロディアスでエモーショナルな音楽がいなたいものとされる期間が長らく続いたように感じていて、このことがラップ隆盛の一因でもあるんじゃないかと考えてる。その揺り戻しが来るのは時間の問題だろうと思ってはいたものの、まさかラップ側から出てくるとは予想してなかったから、エモ・ラップが台頭してきたときは本当にワクワクした。しかも、マチズモ傾向の強いヒップホップの諸先輩方とは違う、ナードな精神性の若者が中心になったムーブメントであるっていう特大のおまけ付きで、こんないっぺんにおもしろいこと起こっていいの? って感じ。

  4. 折坂悠太 / みーちゃん

ハンズクラップ主体のトラックに、思ってたのと違う拍で、ほとんど民謡みたいな歌が乗っかってくる。童謡に近い風合いがありながらどこかおどろおどろしくて、谷山浩子を連想したりもした。よりキャッチーなのをまず聴きたければ「旋毛からつま先」を。そっちにしたって民謡とカントリーのあいのこだけど。ほか、本邦のシンガーでは中村佳穂とMomにもたまらなく惹かれてる。

  3. The 1975 / Sincerity Is Scary

筆者は結局バンドマンなので、ロックやバンド・サウンドには死んでほしくないと思っていて、でもみっともなく生き永らえるくらいならとっとと死んでくれとも思ってる。

相変わらず最高だな、でも2018年にバンドでやるならこうなるんだよなあ、まあ今ゴリゴリのガレージ・ロックやられてもきっと響かないだろうしな、でも聴きたいんだけどさ、いやいい音楽だからいいんだよ! とかひとりで悶々と評価が上下左右したけど、これって本質的じゃない葛藤なんだろうなとも思う。

  2. Cory Wong / Jumbotron Hype Song (feat. Antwaun Stanley & Sonny T)

カッティングのタイム感が狂気を感じる正確さ。今世界で一番グリッドに忠実なギタリストのひとりだろう。ファンクらしいモタりがないのに「こんなのファンクじゃない」とはならないのが本当に稀有。Tom Mischの影響を感じる指弾きのギタリストはInstagramなんかに散在してるけど、Cory Wong風のカッティングをやる人はまだ見かけない。でも時間の問題って気もしていて楽しみだ。

ちなみに、自分ならではの異能ファンクを確立した人が今年もうひとりいて、堂本剛っていう人なんだけど、ここに収まるように書けないのでまた別の機会に。

  1. Phum Viphurit / Lover Boy

来日公演めちゃめちゃよかった。今年も〈88rising〉勢をはじめとした中国、台湾、韓国、タイなどのアジアのポップ・ミュージックがおもしろい一年だった。けど、これらのアーテイストを取り上げた日本語の記事はまだまだ少なくて、名前の読み方すらわからないアーティストも多いので、来年はこの辺りの情報を提供する役回りとして動いていきたい。

  Comment

ラインナップが偏ってるのは重々承知なのだけど、もっと総括的な面子は他のキュレーターがしっかりカバーしてくれてると思うので。今年はアジアのポップ・ミュージックを聴き漁ったものの、情報源の少なさが心をくじいて、充分な批評ができず、広めることに貢献するところまでいけなかった。

せっかくSpincoasterにキュレーターとして加わる機会をもらったので、2019年はアジアのポップ・ミュージックに関する日本語の記事を増やすことに助力したいと思う。目指すのは、誰にでもアクセスしやすいよう情報を集めて整えて開いて、「ちょっと引っかかった」程度の人でもすぐに一定の情報を得てファンを名乗れるような状態。しっかり情報を供給すれば、次の来日ではPhum Viphuritが新木場STUDIO COASTを埋められるはずだって本気で思ってる。

  番外編マイ・ベスト

「ベストスニーカー」

1. エアジョーダン33

2. エアジョーダン3 “ティンカー”

3. クレイジー BYW コアブラック/オレンジ/ハイレゾレッド

4. エアマックスペニー “リルペニー”

5. エアフォース1 “ア・コールド・ウォール* ”

過去に敬意を払い、未来への期待を促す製品が今年もたくさんリリースされた。

ラッパーがビートメイカーやフィーチャリング・ゲストを選ぶセンスによってファンからの信頼を勝ち得るのと同じように、オフホワイトとのコラボ以降のナイキには「次はどこと組むんだろう」とワクワクさせられて楽しい。

Yu Go Hiragino

Yu Go Hiragino

ヒラギノ游ゴ。平成東京生まれのライター・編集者。音楽、お笑い、スニーカー、90~00年代ストリートカルチャーなどについて寄稿。