Best Tracks Of 2017

hikrrr

キュレーター、hikrrrによる2017年の年間ベスト・トラック!

ダークで攻撃的(もしくは物憂げ)なサウンドにずっと惹かれ続ける私ですが、きっと精神的武装でもしているつもりなのでございます。虚勢。もっとポップな気持ちでこのご時勢に向き合えたらいいんですけどね! 自分の心の内だけでも安穏にありたいものです。アンビエント温泉とかほしい。


5. Superorganism / Something For Your M.I.N.D.

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多国籍 × インターネットという現代を象徴するようなバンドの誕生に、もはや“ありがとう”しか出てきません(これが賞賛される世界も素晴らしい!)。その絶妙なバランス感覚によってぐわんぐわんした不安定さが成り立っており、まさにグリッチ・アートとも言える楽曲だと思います。仮想空間への憧れが現実になろうとしている今、逆に私たちは何にすり替わるのでしょうか。私たちは私たちでいられるのでしょうか、果たして。


4. Ouri & Mind Bath / Wild Mother

今年、Forever「Falling」のプロデュースを手掛けたOuriと(そのMVにも出演している)Mind Bathとの共作。中立で中性的なトラックは、これまた時代のアンセムとして位置付けられ得るものです。夜眠っている間に見る夢の中は朝だったり昼だったりする訳ですが、その幻覚と現実との乖離を消し去る芸術性が、この音にはあるように思いました。そして、肉体が透き通るような感覚も。


3. The Caretaker / And heart breaks

ニュー・ムードとでも呼ぶべき音楽ドラッグの大本命『Everywhere at the end of time』は、3年間・6部作に渡るシリーズ・アルバムで、今年9月にStage 3へ到達。死の繊細さは何度吹き込まれても頽ることなく、そして走馬灯のようにリロードされる生の感覚が堪りません。ただ、このプロジェクトに関しては“色褪せない魅力”というより、翳ってゆくその姿に退廃的な美があると言えます。


2. Coucou Chloé / Flip U (prod. by Sega Bodega)

SorryやOr:La、Rina Sawayama(彼女の「Cyber Stockholm Syndrome」も選びたかった!)などと共に、2018年注目のひとり。オブスキュアな雰囲気の中、ポタポタと水が滴り……凍てつくような電子音がダークでとてもかっこいいです。後半にかけて閃光が走るようにトラップ的なハイハットが加わるのですが、彼女の生成する鋭角なサウンドはまったく媚びを感じさせません。


1. Die Orangen / Yaranabe

イスラエル発の新レーベル〈Malka Tuti〉から第1弾として放たれたAUSの2人組! ラテン系のリズムより冷たくて硬質なビートを好む私でさえ、彼らの芳潤でエキゾチックな催眠術には一瞬で落とされてしまいました。植え付けられる液体金属のイメージに加え、野生の血肉の匂いが充満している、とんでもない楽曲。同アルバム『Zest』の「Museum of Old and New Art」も見事です!


Comment

主義、実験として質的/概念的なレビュー(美術館の解説のような)を私は心がけており、それをおもしろがってくださる方がいるのは本当に嬉しい限りです。ありがとうございます。今年、レビューとライブ・レポートを担当したFazerdazeもかなり思い入れのある存在(「Lucky Girl」最高!)なので、以上の5曲を選ぶのは本当に難しかったです。さて、政治的・社会的偏向やハラスメントがきちんと追及される風潮が強まってきたのと同時に、趣味嗜好においては独断と偏見が価値を持つ時代になってきました。実に良いことですね。何のしがらみもなく人が“人として”生きられる社会を作りたいですし、それを支えるような音楽文化やテクノロジーを発展させて行きたいと思っています。ちなみに今年のベスト・アルバムは、Noga Erez『Off The Radar』と〈PAN〉のV.A.『Mono No Aware』が同率1位です(わがまま)。


番外編 マイ・ベスト

【ベスト・旅】

今年の春までの1年間、フランスにおりまして。休暇中に南部の湿地帯、カマルグ地方へ友人と訪れました。その目的は、ピンク・フラミンゴと白馬。ジープ・ツアーに参加して見に行ったのですが、時期によるのか残念ながらフラミンゴはちらほらとしか……。群れでいっせいに飛び立つ姿は見れずじまいでした。しかし白馬が可愛い、非常に可愛かった。金色に輝くたてがみと白百合を思わせる毛並み、そしてつぶらな瞳がまさに美の象徴という感じで、そんな彼らと触れ合えただけでとても感動しました……! ぜひ次回は、あの気持ちいい陽射しと風を浴びながら、乗馬体験をしてみたいと思っています。それと、アルルの闘牛肉のステーキとワインが美味しかったです。
ただ気づいたことがひとつ。日本の温泉カルチャーは素晴らしすぎる。城崎、道後、やばい。

■hikrrr 過去記事:https://spincoaster.com/author/ru_kawa

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Curator

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hikaru nunokawa. 内省的で知性美のある音楽を贔屓にしています。が、バイオレントなものも好きです。普段は暗く涼しいところに保管されたい