作詞、作曲、編曲全てを自身で行う2000年生まれの若きクリエイター、Mega Shinnosukeが初の全国流通盤となるEP『HONNE』を6月5日(水)にリリースする。
高校二年生の秋頃より福岡を拠点に音楽活動を始動させたMega Shinnosuke。昨年11月には初のソロ作品『momo』収録曲がSpotifyの各種プレイリストにピックアップされるなど大きく注目を集め、続いて年始にはSpotifyの“Early Noise 2019”にも選出。今年注目のニューカマーとして一躍その知名度を広げることとなった。
そんなMega Shinnosukeが5月9日(木)にSpincoaster Music Barにて、18歳のMega Shinnosukeが“今やりたいことを詰め込んだ”という新作『HONNE』の先行試聴会&トーク・イベントが開催された。この日の進行を務めたのは“音楽コンシュルジュ”のふくりゅう氏。終始アットホームな雰囲気の中、ふくりゅう氏と冒頭から“お話し好き”を宣言したMega Shinnosukeによる軽快なトークが展開された。
本レポートでは第一部のトークを中心に、二部の内容も加えてお届けする。
Text by Nojima
「現在18歳、今年19歳になります。Mega Shinnosukeは本名です。よろしくお願いします」と、Mega Shinnosukeによる簡単な自己紹介からトーク・セッションがスタート。ふくりゅう氏が音楽を始めたきっかけ尋ねると、「『人がいないから出て欲しい』と先輩に言われて入ったバンドのライブを観に行ったら、あまりにもダサくて。自分が作ったらもっとカッコいい音楽ができると思って始めた」と語る。ちなみに、その時に作ったのが「blue men.」だそうだ。リスナーとしての原点はRADWIMPS、BIGBANG、椎名林檎。特にRADWIMPSの7thアルバム『×と○と罪と』(2013年)が音楽に興味を持つ大きなきっかけになったらしい。
EPが完成した今の気分を尋ねたところ、「卒業式の前日にレコーディングをして、卒業式はほとんど寝ずに参加した」「とても慌ただしい中で作ったので、前半の記憶が後半にはないくらいで。改めて聴いてちゃんと出来ててよかった」と、安堵の笑みを浮かべていたのが印象的であった。さらに、中盤からはEPの楽曲を1曲ずつ聴きながら進行していく。
1. 桃源郷とタクシー
配信デビュー曲となった本楽曲。Mega Shinnosukeというアーティストの存在をたくさんの人に知られるきっかけとなった楽曲だが、本人はこの楽曲を通じてストリーミング・サービスの力を実感したという。コーラスにAAAMYYYが参加していることに言及されると「元々Tempalayの大ファンで、ダメ元でインスタのDMでオファーをしてみたら、なんと受けてくれました」「AAAMYYYさんもMVに参加してくれて、撮影もめちゃくちゃ楽しかった」と嬉しそうに語っていた。なんでも、ゲームセンターで撮影するというのも彼のアイデアで、ロケーションは高田馬場にあるゲームセンターだそうだ。
2. O.W.A.
人生で2番目に作った楽曲を再録したファンキーな本曲。自分のラップにも納得の出来だと語る。今回、新しく公開されたMVの予算はなんと1万5000円(!)。また、MVにもこだわりがあり、「MVは音楽がまずあって、そこに+αとなることが絶対条件だ」と、語気を強めた。「お気に入りMVは何か?」という質問にはPUNPEEの「タイムマシーンにのって」を挙げていた。
3. 憂鬱なラブソング
「キャッチーだけど、パンキッシュな歌詞が好き」と、ふくりゅう氏が伝えると、「この曲は歌詞にこだわっていて、弾き語りから作った」と答えた。特に一番お気に入りのフレーズは<こんなに悲しいことってある? ってくらいに愛しい。世界が終わる日が今日ならばさ あると思えるよ>という最後の2行。人の死、世界の終わりといった悲観的な視点から愛情の強さを表現したフレーズだそうだ。
さらに「シティ・ポップの文脈で語られることが多いが、結構邦楽ロックから影響を受けた人間でもあることを知ってほしい。こういう歌詞は邦楽ロックを通った人じゃないと中々書かないと思う」とも。
4. 狭い宇宙、広いこの星
この曲のテーマは宇宙に逃げ出したくなるような現実逃避。サビでは音を抜いて軽さや宇宙っぽさやイメージしたという。小沢健二やフリッパーズ・ギターの雰囲気を感じたと伝えると、「韓国のADOYやキリンジの“エイリアンズ”から影響を受けた。むしろフリッパーズ・ギターは“恋のマシンガン”くらいしか、知らないです」と言葉を返す。
音楽以外の話になると「読書をしない、映画も観ない、コーヒーも飲まない。もちろん未成年なのでお酒もタバコもできない。ミュージシャン的な側面やインプットが全くない」という。最近の趣味はもっぱらファッション。原宿には通いすぎて、「原宿にもう良い服はない」と断言するほど。
5. 本音
EPの最後を飾るのは、タイトル・トラックとも言える「本音」。壮大なシューゲイザー・サウンドに実体験や恋愛感をモチーフに自分の中の哲学を歌詞にしたという同作において最も感情的な楽曲だ。また、EPのタイトル『HONNE』は、「この曲を聴いて欲しい」という想いと、他の楽曲でも自分の素直な気持ちを言葉にしている点から名付けたそうだ。
EPの試聴後には来場者からの質問コーナーも設けられ、和やかで笑いの耐えない1時間となった。最後に今後の展望をふくりゅう氏が伺うと、「素直に健康に生きること。それが音楽とクリエイティブに繋がる」との言葉でイベントを締め括った。
「人見知りが全くない」「対談したい人はYouTuberの水溜りボンド」「ギターは1曲も弾けない」といったミュージシャンらしからぬ発言に加え、「The 1975とコラボしたい」「音楽より服の方が好きかも」など、冗談なのか本気なのか、終始とらえどころのない奔放な言動でリスナーを惹きつけるMega Shinnosuke。
既成概念や“あるべき論”を物ともせず、自らの意思を明確な言葉として発していく姿には、「これが新しい世代のアーティストのあり方なのかもしれない」ということを強く実感させられた。彼の発言やクリエイティブの裏には、新しい時代や世代を理解するヒントが潜んでいるような気がしてならない。音楽業界のみならず、今大いに注目すべきクリエイターのひとりであることは間違いないだろう。
【リリース情報】
Mega Shinnosuke『HONNE』
Release Date:2019.6.5 (Wed.)
Label:Mega Shinnosuke
Price:¥1,204(Tax out)
Cat.No:MGSN-1001
Tracklist:
01. 桃源郷とタクシー
02. O.W.A.
03. 憂鬱なラブソング
04. 狭い宇宙、広いこの星
05. 本音